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埼玉県行田市にあった戦国の城・忍城は、豊臣秀吉軍の石田三成から水攻めによる攻撃を受けました。
この戦いは映画・のぼうの城にも取り上げられ良く知られています。
その際、石田三成が水を貯めるため、広域に渡り築いた堤防は「石田堤」と呼ばれました。
実はこの石田堤の一部が、遺構として結構綺麗に残っているんですね。
その石田堤の遺構を巡りながら、忍城水攻めの詳細に迫ってみます!
『石田堤」 石田三成の忍城水攻め

かつて、現在の埼玉県行田市に忍城(おしじょう)という城がありました。
忍城は室町時代に成田氏によって築城されたといわれ、利根川や荒川などを堀に見立てた造りの城でした。
小田原北条氏方についていた忍城も、石田三成率いる豊臣軍の兵に攻め入られました。
天正18年(1590年)、石田三成は忍城周囲の広大な範囲に大堤防を築き、そこに利根川・荒川から水を引き城を水攻めにしました。
しかし、忍城はこの水攻めに落城せず耐え、忍城には「浮き城」の異名も付きました。
この話は映画「のぼうの城」で取り上げられ、良く知られるものとなっています。
この堤防は後世には石田堤と呼ばれることになります。
その石田堤の遺構が、埼玉県の行田市と鴻巣市の境目地域に残っているということで訪ねてみました。

『石田堤歴史の広場』 行田市の遺構

車での訪問でしたが、街外れにあり目安になる建物も無く少々心もとなかったのですが。。。
なんとか見学者用駐車場の看板を見つけられ、ほっ!。
こちらには行田市「石田堤歴史の広場」として282mの石田堤の遺構が残っています。
県の指定史跡となります。
この先南側の忍川(おしかわ)を越えた鴻巣市側には、更に300mの遺構が残っています(後述)。
地元では石田堤を守る会が結成されており、広場と周囲の除草・清掃等の保存活動がされているそうですよ。
ありがたいですね!
「石田堤の遺構について」 石田堤碑

広場近くの堤には石碑があります。
左側のは最近のものですが、右側の石碑は江戸時代末期の石田堤碑でした。
石田堤の規模については諸説ありますが、広場の説明看板ではそれらの客観的な説明があり分かり易かった。
- 石田堤の規模推定について
- ■ 大正2年(1913年)に地元の郷土史家・清水雪翁(せつおう)氏が実地調査と地形や言い伝えから、約14kmの堤を推定復元したとあります。
これが一つ、スタンダードになる調査結果の様です。 - ■ 全長を28kmとする説(これ、一般に良くいわれる規模)。
- ■ 自然堤防を利用しており、実際に築いたのは4km程度(これまた随分小規模。。。)。
といった具合です。
構築はそのポイント毎、地形に合わせた手法が採られたようです。
この地域には古墳も点在しており、それを取り崩した土なども利用されたみたい。
ああ、文化財が。。。
ちなみに石田堤歴史の広場があるこのあたりも、古墳時代・奈良~平安時代・中世の集落遺跡だそうですよ。

築堤期間ですが、一説では石田三成は堤を僅か5日間で築いたとも言われます。
ただし、忍城攻めの開始1ヶ月後、堤の補強実施が記録に残っています。
突貫工事の後、補強しながら完成させたようですなあ。
築堤の実際としては、自然堤防や高台を巧みにつなぎ合わせたものだった模様。
広場周囲に残っている堤も、自然堤防上に1~2m程盛土をしたものだったそう。
確かにそれほど高さはないですね。
「石田堤の並木」 江戸時代は松並木に

石田堤の遺構には松が植えられており、街道っぽい並木道の景観が続いています。
江戸時代には堤の上に黒松が植えられ、館林道という街道沿いの松並木として活用されたそうですよ。
石田堤の並木として市指定文化財になっていますが、現在残っている松は主に昭和40年代に補植されたものだそう。
アクセス
住所:埼玉県行田市堤根1251(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR高崎線「北鴻巣駅」東口から鴻巣市コミュニティバス フラワー号乗車で5分、吹上コース「袋」バス停下車、徒歩15分
・JR高崎線「吹上駅」北口から鴻巣市コミュニティバス フラワー号乗車で15分、「袋」バス停下車、徒歩15分
*「フラワー号」時刻表(鴻巣市)
・JR高崎線「吹上駅」東口から徒歩で約40分(約2.9km)
・JR高崎線「北鴻巣駅」東口から徒歩で約45分(約3.4km)
車)
・駐車場あり
『堀切橋』 石田堤決壊の地

石田堤の並木に沿って南に歩いてみます。
歴史の広場から続く堤のヘリに辺り 、その先は元荒川支流の一級河川・忍川が流れます。
このあたりは水を堰き止めるには、かなり低い堤に見えますが。。。

忍川に架かる「堀切橋」は、ちょっとレトロな感じの柱がアクセントになってます。
この橋は埼玉県の土木遺跡に指定されており、解説ボードがありました。

竣工は昭和8年(1933年)で、県内では8ヶ所目の土木学会選奨土木遺産だそう。
親柱頂部に尖頭半球が施されているのが特徴。
そして。。。忍城を水攻めにした際、この付近で石田堤が破堤したことが堀切橋の名の由来とあります!
堤の決壊は石田勢にダメージを与え、水攻め失敗の一因となりました。
へえ~、敗因につながった決壊地点がこの辺りだったのかあ。
『石田堤史跡公園』 鴻巣市の遺構
「石田堤史跡公園について」

堀切橋を越えると、今度は鴻巣市側の「石田堤史跡公園」があります。
公園は「シンボルモニュメントゾーン」「堤修復ゾーン」「堤跡保全ゾーン」「広場活用ゾーン」に分かれて構成されていましたす。
結構きちんと歴史公園として整備されてますね。
市街地から離れているので、やはり歴史がほんとに好きな人向けという気はしますが。。。

公園用地は旧吹上町が平成元年から購入の交渉を始め、平成8年度から3ヵ年をかけて史跡公園として整備したそうです。(吹上町はその後、鴻巣市に編入。)
粘り強い交渉活動により整備された公園なんですね!
えらいぞ、吹上町。
「堤修復ゾーン」 石田堤断面の見学施設

公園整備と同時に発掘調査を実施。
堤の遺構の状態を確認しながら保存修復がおこなわれたそうです。

堤の断面図がガラス越しで公開されています。(周囲が写り込んで見辛いです。。。)
なかなかマニアックな見学ポイント。
歴史好きにとっての「萌え断」ってやつですかね。
断面は地層のように見え、元々あった堤を固めながらその上に盛土した過程が読み取れます。

断面展示の上部は見晴らし台になってます。

この先も更に堤は続いていました。
よくこれだけ残したよなあ、と感心。
道の先には駐車場とトイレ施設もあります。
「シンボルモニュメントゾーン」 豊臣秀吉の朱印状

シンボルモニュメントゾーンは、野外ミュージアムみたいな空間で楽しい。
ここは上越新幹線の線路の高架下で、なんでこんなところに、って感じの場所(笑)。
中央の櫓チックな建物の下に入ると、人感センサーで石田堤の解説音声が流れます。
急に音が出てちょっとびっくり。
俵の形のオブジェには、構築作業時に人夫に支払われた賃金が書かれており興味深い。
昼は銭六十文+米一升、夜は銭百文+米一升とある。
きちんと夜間料金は払われていたようですな。

忍城の水攻めに関連する、朱印状の内容紹介のプレートもあった。
内容は「水責の普請を油断なく行うように」「浅野弾正(長吉)・真田(昌幸か)の両者を遣わすのでよく相談するように」「普請ができたら使者を派遣して見にいかせる」などなど。
石田三成のみならず、他にも有名どころの武将の出動があったようですね。
ちなみに巨大な堤を造り水攻をする戦略は、その威厳を見せつけたかった秀吉の意向だったともいわれます。

手前シンボルモニュメントゾーン、奥が堤修復ゾーン。
「堤跡保全ゾーン・広場活用ゾーン」

あずま屋風の休憩所。

広場活用ゾーンと堤跡保全ゾーンは遺構の跡を残しつつ、緑地公園に整備されています。
木造の見張り場が設置されていた。
登ってみたが、周囲は畑が見えるばかりかな。

見張り場には一帯の航空写真が埋め込まれていました。
忍城の所在地や、三成軍が本陣を張った丸墓山古墳などの位置が示されています。
周辺を一日かけて歩きやサイクリングで巡ってみたりするのも楽しそうだな。
これにて本日の石田堤の探訪を終了します。
アクセス
住所:埼玉県鴻巣市袋326-1(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR高崎線「北鴻巣駅」東口から鴻巣市コミュニティバス フラワー号乗車で5分、吹上コース「袋」バス停下車徒歩5分
・JR高崎線「吹上駅」北口から鴻巣市コミュニティバス フラワー号乗車で15分、「袋」バス停下車徒歩5分
・JR高崎線「吹上駅」東口から徒歩で約30分(約2.3km)
・JR高崎線「北鴻巣駅」東口から徒歩で約35分(約2.5km)
車)
・駐車場あり
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石田堤を散策してみませんか?

石田堤の遺構を紹介しましたが、いかがでしたか?
城の周りに堤を造りそこに水を流す、そんな大掛かりな作戦をホントにやったんだな、って実際の堤跡を見て改めて驚きました。
堤の断面を見たりとか、いささかマニアックな歴史スポットではありますが(苦笑)、忍城址と併せて立ち寄ってみると興味深く見れるスポットだと思います。
石田堤に出かけてみませんか?

サステナブルにお得な買い物ができるって、いいんじゃない。
【記事の訪問日:2021/10/24】