埼玉県行田市は古墳の多いエリアで、10ヶ所もの古墳群があります。中でも国宝指定されている鉄剣が出土された、埼玉古墳群は全国的にも有名です。
今回紹介する八幡山古墳は、その埼玉古墳群より新しい時代に現われた権力者のもの。巨大な石室が剥き出しになったその遺跡の姿は独特で、まさに関東の石舞台と呼ぶに相応しい!
そんな少し穴場的な史跡スポット、八幡山古墳を紹介します。
目次
「八幡山古墳」 関東の石舞台といわれる巨大石室
稲荷山古墳から始まった行田の古墳の歴史

八幡山古墳整備記念之碑
行田市内には10ヶ所もの古墳群があり、そこでは150基以上の古墳が確認されています。
その古墳群の中でも良く知られるのが「埼玉(さきたま)古墳群」で 全国的にも有数の大型古墳群として珍しいほか、発掘品の鉄剣が国宝指定されています。
行田における古墳の変遷
■5世紀末頃:約1,500年前のこの頃に稲荷山古墳が築かれ、そこから埼玉古墳群が発生してゆきます。その強大な権力者に従う中・小規模の権力者の古墳がその後各地に出現。
■6世紀後半頃:真名板高山古墳や小見真観寺(おみしんかんじ)古墳など、100m級の大型前方後円墳が周辺地域でも築かれるなどの変化が現れる。その一方、埼玉古墳群の古墳は大きさがやや小さくなってゆき、勢力図に変化が現れます。
■7世紀:埼玉古墳群では浅間塚古墳(現在の前玉神社)・白山古墳・戸場口山古墳などの円墳・方墳が築かれますが、若小玉古墳群ではより大型の八幡山古墳が築かれており、力関係が逆転したことが伺えます。
その後に埼玉古墳群は途絶え、若小玉古墳群では7世紀後半の地蔵塚古墳まで古墳が築かれ続けました。
ということで今回紹介する八幡山古墳は、埼玉古墳群よりも後の時代に発生した若小玉古墳群を代表する古墳です。
\ 国宝の鉄剣が出土された埼玉古墳群についてはこちら! /
「八幡山古墳」 若小玉古墳群を代表する大型古墳

八幡山古墳は、埼玉古墳群から北に約2km程離れた場所にあります。街中からは少し離れており、工業団地内にあるちょっと辺鄙なエリアですね。
若小玉古墳群は市内では埼玉古墳群に次ぐ規模をもつ古墳群で、40基以上の古墳が築かれていたことが確認されています。
工業団地建設の際にほとんどの古墳が削平されましたが、わずかに残っているのがここ八幡山古墳と後ほど紹介する地蔵塚古墳の2つです。
八幡山古墳のある一角は、八幡山公園として整備されていました。

公園に入ると八幡山古墳が見えてきますが、墳丘のある一般的な古墳の遺跡とは一味違う景色が目に入ってきました。

手前には昭和54年(1979年)の復元記念の碑があった。八幡山古墳は昭和19年(1944年)に、埼玉県指定史跡となっています。
全長17mの石室が出現、まさに関東の石舞台!

おー、これは凄い。石室が露呈している古墳といえば奈良県の石舞台古墳が有名ですが、関東でこんな姿の古墳が見れるなんて驚き!
八幡山古墳は元々は直径約80mの大型の円墳で、7世紀前半に造られたと考えられます。
遺跡が発見されたのは昭和9年(1934年)で、近隣の沼の干拓事業のために古墳の封土を崩した際に石室が出現。発掘調査の結果、石室は前・中・後室の3室からなる全長16.7mの巨大な石室であることが分かりました。

現在復元されている姿は、円墳の盛土をどけて石室だけ露出させている状態のものです。

こうして全景を見ると、まさに「関東の石舞台」と呼ぶにふさわしい、ロマンあふれる古代遺跡の情景だと思いませんか?
石舞台古墳
奈良県明日香村にある日本最大級の方墳で、飛鳥時代(7世紀初頭)に築造されました。
巨大な花崗岩の石材を用いた横穴式石室が特徴で、天井石の重さは約77トンにもなります。被葬者は蘇我馬子とされる説が有力。墳丘はすでに失われて現在は石室が露出した状態で保存されており、国特別史跡に指定されています。
石室には秩父地方の緑泥片岩を使用

石室に使用されている石には、秩父地方から運搬された巨大な緑泥片岩(りょくでいへんがん)と安山岩が使われています。
長瀞町から小川町を中心とする荒川上流域の沿岸一帯には、緑泥片岩の最大級の産地がありました。
緑泥片岩は中世仏教における供養塔である板碑の材料として、多く使われています。この頃は切り出した石の運搬には荒川の水運などが利用された様ですが、古墳時代はどうやって運んだんでしょうねえ。
わざわざ遠方から石を持ってこさせる程、埋葬者がかなり有力者だったことが伺えます。
石室は前室・中室・奥室に分かれていた

扉越しに見た石室の様子。
実はここ、石室の中に入っての見学もできるんですよ!土曜日・日曜日・祝日が公開日となっています。
訪問した際は新型コロナウイルス対策のため、内部の見学には平日の事前電話予約が必要だったようだ。残念ながら本日は柵の隙間から覗くのみ。
巨大な横穴式石室で、手前から羨道・前室・中室・奥室で構成されており、元々は全長16.7mあったと推定されますが、現在は羨道の大部分は失われており約14.7mが現存長となります。

石室の形状は前室が方形・中室が胴張り形・奥室が陽丸方形をなしており、奥室の横幅は4.8mです。
発掘調査では漆塗木棺の破片や銅鋺などの豪華な遺物も発見されており、それからかも葬られていた人物がかなりの権力者であったことが伺えます。
若小玉古墳群は、埼玉古墳群を築いた権力者を補佐した権力者が築いた古墳群だと考えられています。
八幡山古墳は聖徳太子に仕えた物部連兄麻呂(もののべのむらじえまろ)という人物の墓ではないか、という説もあるそうですが、真実は如何に?
八幡山古墳の詳細情報・アクセス
八幡山古墳
住所:埼玉県行田市藤原町1-27-2(GoogleMapで開く)
石室内の公開:土曜日・日曜日・祝日(年末年始を除く)
アクセス:
電車)
・秩父線「行田市駅」から市内循環バスで15分(東循環コース・右回り)、藤原町1丁目下車、徒歩約8分
・JR「行田駅」から市内循環バスで15分(南大通コース・工業団地由行き)、藤原町下車、徒歩約5分
車)
・東北自動車道「羽生IC」から約25分(約12km)、「加須・栗橋IC」から約30分(約14km)
・関越自動車道「東松山IC」から約40分(約18km)、「花園IC」から約60分(約32km)
・圏央道「白岡菖蒲IC」から約35分(約18km)
「地蔵塚古墳」 若小玉古墳群の古墳の一つ

八幡山古墳から1km程の近隣にある「地蔵塚古墳」にも立ち寄ってみた。こちらも若小玉古墳群の古墳の一つで、埼玉県の史跡に指定されています。
古墳は一辺約28mの方墳で、高さは約4.5m。周囲に約1m幅の堀があったと考えられています。
石室入口に扉があり秘密基地のような雰囲気ですが、実はこの石室内では左右及び奥に描かれている線刻画が発見されている。そこには烏帽子を被った人物、馬、水鳥、家と思われるものが確認できるそうだ。
壁画保護のために施錠されて中には入れませんが、さいたま市にある埼玉県立歴史と民俗の博物館ではその複製が展示されています。

階段があり墳丘のに上がれるようになっています。

墳頂に地蔵堂があることから、地蔵塚古墳の名で呼ばれています。

こちらが古墳名の由来となるお地蔵さんですね。

古墳の背面には竹林があり、その先には小さな公園がありました。
ちなみに古墳にも公園にも駐車場はなかった。古墳前にちょっとしたスペースがあったので、短時間だけ駐車させて頂き見学した。
車で訪問してゆっくり見たい場合は、八幡山古墳に車を停めて歩く手もありそうだ。
地蔵塚古墳
住所:埼玉県行田市藤原町2-28-1(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・秩父線「行田市駅」から市内循環バスで10分(東循環コース・右回り)、若小玉郵便局前下車、徒歩約3分
車)
・東北自動車道「羽生IC」から約25分(約12km)、「加須・栗橋IC」から約30分(約14km)
・関越自動車道「東松山IC」から約40分(約18km)、「花園IC」から約60分(約32km)
・圏央道「白岡菖蒲IC」から約35分(約18km)
関東60カ所の古墳・古墳群を、わかりやすい実測図掲載にて紹介!
各県とも結構見応えのある様々な古墳があるんですね!
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八幡山古墳へでかけてみませんか?
関東の石舞台ともいわれる八幡山古墳は、歴史好きであれば訪れてみたい興味深い遺跡でした。
観光地とは無縁の雰囲気の場所にポツンとありますが、埼玉古墳群に出かける際などに併せての訪問をオススメしたいスポットですね。
八幡山古墳へ出かけてみませんか?
記事の訪問日:2021/5/2




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