川越には名所として人気のある寺院、喜多院があります。
「仙波日枝神社」は、その隣にひっそりとたたずむ神社です。
東京都千代田区には、江戸城とゆかりの深い赤坂日枝神社があります。
実はその赤坂日枝神社は、こちら、川越の日枝神社より勧請されて始まったといわれてるんですね。
そんな仙波日枝神社の見どころを、その歴史や神社にまつわる伝承なども交えながら紹介します。
目次
『仙波日枝神社』 千五百年前の古墳の上に鎮座
太田道灌は仙波日枝神社を江戸に勧請
川越喜多院は、川越でも名所として人気のある寺院です。
「仙波日枝神社」は、その隣にひっそりとたたずみます。
※社名は日吉神社ですが、所在地から仙波日枝神社と呼ばれるので以下統一。
関東の日枝神社というと、江戸城とゆかりが深く規模も大きい、東京の赤坂日枝神社が良く知られています。
実はその赤坂日枝神社は、こちらの仙波日枝神社を勧請して創建された、といわれています。
仙波日枝神社の境内は、こじんまりとした感じ。
広い境内を持つ喜多院が隣にあるので、ことさらそう映りますねえ。
赤坂の日枝神社は徳川家康が江戸城を居城とした際、「徳川家の守り神」「江戸の産神」とした神社です。
ですが、その創建はさかのぼること文明10年(1478年)。
江戸城を最初に築城した太田道灌が、城内の紅葉山に川越の日枝神社を勧請したのに始まる、といわれているんですね。
そんなことで、川越にゆかりの深い太田道灌が勧請した仙波日枝神社には、一度参拝してみたいな、と思っての訪問でした。
\ 赤坂日枝神社詳細についてはこちらをどうぞ!/
室町時代の建築様式の本殿(重文)
仙波日枝神社の創建は、喜多院と同じ頃とされます。
平安時代の天長7年(830年)に慈覚大師 円仁(じかくだいし えんにん)が、勅願所として現在の喜多院と中院にあたる無量寿寺(むりょうじゅじ)を創設しました。
その際に、近江(現、滋賀県大津市)の日吉社(日吉大社)を勧請したのが、仙波日枝神社の始まりとされます。
勅願所は、天皇の発願による国家鎮護などの祈願寺のことだそうです。
拝殿は新しい感じの建物ですね。
祭神として、大山咋神(おおやまくいのかみ)と大己貴命(おおなむちのみこと)を祀ります。
大山咋神は山・水を司り、地主神として崇められる神です。
一方、本殿は古い建物が残ります。
室町末期の建築様式が見られるということで、国指定重要文化財です。
屋根は銅板葺で、千木や堅魚木が飾られています。
透塀越しに、ちょっと本殿をのぞかせて頂きました。
三間社流造りの、朱塗りの鮮やかな色彩の建築物でした。
造りや規模からは、簡素な感じの印象です。
この本殿の建立時期は、はっきりとしていないそうなんですね。
慶長17年(1612年)頃に喜多院が再興されているので、その際こちらの本殿も再建された可能性があります。
その一方、様式からそれ以前に建造された可能性も残る、となっています。
社殿左手の土手には、いくつかの石碑が建っていました。
不思議な「底なしの穴」があった!?
境内の一角には石柱の柵に囲まれた、なんだか不思議なエリアがありました。
ここには昔、のぞき込んでも底が見えない深い穴があったそうな。
その昔のある日、穴の深さを知りたくなった近所の人々が、鍋を投げ込んだ。
しかし、いつまでたっても落ちた音がしない。
その後もお椀や下駄を投げ込んだが、やはり何ひとつ音がしない。
しかし500mほど離れた、弁天を祀る双子池の水面に異変が。
投げ込んだ物が、ぽっかりと浮いているのが発見されたそうなんですわ。
人々は不思議な穴だ!と驚き、「底なしの穴」と呼ぶようになったといいます。
ちなみに、川越城には戦時になると霧が吹き出す「霧吹きの井戸」の伝承がありました。
そのため霧隠城とも呼ばれました。
この地には井戸や沼に関する伝承が多いようだ。
かつてこの辺りが低湿地帯だった風土に関係しているんじゃないかな~、と推測しています。
鎮座地は1500年前の古墳だった
ところでこの仙波日枝神社の鎮座地、周囲に盛り土がある独特の地形をしています。
実はここ、墳丘に埋もれ気味の看板に記載があるとおり、もともと古墳だった場所なんです!
「千五百年前古墳・仙波日枝神社古墳」と、書かれています。
6世紀中頃に造られた前方後円墳だそうで、勾玉や埴輪などの出土品もあったそうですよ。
形状としては、現在は神社が鎮座する前方部分が残るのみ。
大半部分は、大正13年(1924年)の県道工事で壊されてしまったそうだ。
ふ~む、そんな歴史が交錯する場所だったんですねえ。
もともと仙波日枝神社は、喜多院境内側にあったそうです。
しかし道路建設のため、古墳を開削して移転させたのが現在の鎮座地らしい。
さらに。。。、現在の喜多院境内には、喜多院のトレードマーク的な建築物である多宝塔があります。
こちらも、当時はこの道路側に延びていた古墳の墳丘上にあったようなんですね。
喜多院や日枝神社が現在の配置に落ち着くには、紆余曲折あったみたいですよ。
「あんたがた何処さ」の発祥地
神社前の道を挟んだ向かいに、こんな看板がありました。
看板によると、「あんたがた何処さ」の手まり唄は川越が発祥地だった、という説があるそうだ。これは。。。
幕末の戊辰戦争の時、薩長連合軍が川越の仙波山に駐屯したそうだ。
(仙波山は日枝神社古墳のことですね。)
その際、地元の子供と「あんたがたはどこから来たのさ」「肥後から」「肥後って何処さ」「熊本のことさ」、という問答を唄にしたという説らしい。
熊本弁ではないことが熊本で作られた唄ではない、という論拠の一つとなっているようです。
そういった歴史研究もされているんですね。興味深いです。
仙波日枝神社の御朱印
御朱印は拝殿前に書置きのものが置かれていました。
御朱印代300円を賽銭箱に納めて、頒布頂きました。
白山権現と天海大僧正像
日枝神社と喜多院の間の山門寄りに、白山権現と天海大僧正の像がポツンとありました。
「白山権現」は慈覚大師円仁が喜多院を創建した際、天台宗の霊場である白山(現、石川県)からの分霊を祀ったそうです。
何故この位置にポツンとあるのかは未確認。
明治時代の神仏分離の際か、はたまた。。。
天海僧正は徳川家康からの信頼が厚く、宗教政策の助言をおこなったことで知られます。
江戸時代初期には喜多院を復興し、第27世の住職に就いています。
亡くなられたのは108歳とあります。
長生きされたんですねー。
神社に参拝に行くと、神々についてや神社施設の呼び名・役割について知りたいけど、聞ける相手もいない!
ってことありません?そんな時、網羅範囲が広い本書は結構頼もしいですよ!
仙波日枝神社の詳細情報・アクセス
日枝神社
川越喜多院公式ページ内の関連施設紹介
住所:埼玉県川越市小仙波町1丁目4-1(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・東武東上線・JR線「川越駅」下車、徒歩約20分
・東武東上線「川越市駅」下車、徒歩約18分
・西武新宿線「本川越駅」下車、徒歩約15分
・「川越駅」東口、又は「本川越駅」から西武バスの南古谷駅行き乗車、「喜多院前」バス停下車(西武バスHP)
・「川越駅」東口、又は「本川越駅」から小江戸名所めぐりバス乗車、「喜多院前」バス停下車(東武バスHP内関連ページ)
・「川越駅」西口、または「本川越駅」から小江戸巡回バス乗車、「喜多院前」バス停下車(イーグルバスHP)
車)
・関越自動車道「川越IC」より約20分
・圏央道「川島IC」より約19分
・喜多院脇に有料駐車場あり
観光向け巡回バスについて
市内では、川越駅(JR・東武東上線)を出発地とする観光向け巡回バスが2路線運行されています。
いずれも主要な観光スポットを経由します。
休日は市内の道路や駐車場は混雑しますので、巡回バスは効率良く巡るのに便利ですよ。
■小江戸巡回バス(イーグルバス株式会社) 公式ページ
■小江戸名所めぐりバス(東武バスウエスト株式会社) 公式ページ
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記事の訪問日:2023/8/28
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