都心から比較的近いわりには、自然豊かで里山の雰囲気が楽しめる埼玉県宮代町。
そんな宮代の町に、まるで東南アジアや竜宮城のような不思議な建物があるのをご存知ですか?
それは沖縄県名護市庁舎の設計で知られる「象設計集団」が手掛けた、進修館と笠原小学校です。
そこに広がる迷路のような回廊やブドウ畑と化した屋根など、建築ファンならずとも圧倒される独創的な空間をレポート。
都心から1時間の異世界へとご案内します。
目次
「進修館」迷路のようなワクワク感を感じさせる建築物
宮代町、のどかな景観を残す東武動物公園のある町
宮代(みやしろ)町は埼玉県東部の中央に位置する、人口約3万4千人ほどの町です。

町の中心にある駅が東武動物公園駅といえば、おっ!と思うかもしれません。
そうです、関東最大級のレジャー施設、東武動物公園がある町なんですね。
その宮代町は利根川水系の河川に恵まれた土地柄で、農地や雑木林が残り、自然と共生するまちづくりが特徴です。
一方、東武伊勢崎線の急行を利用すれば50分程度で浅草に出られるなど、都心へのアクセスが良いので、住宅地としても発展しています。
\ サイクリングで宮代町を巡った記事はこちら!/
あわせて読みたい
里山気分がのんびり味わえる、宮代町のサイクリングに出かけよう!【埼玉・宮代町】
埼玉県東部にある宮代町は、関東でも屈指の大型レジャー施設である東武動物公園がある町です。首都圏にありながらも、自然豊かで里山のような雰囲気が楽しめるエリアで…
「進修館」えっ、これ公共施設!?あまりにも独創的な建築物

東武動物公園駅の西口を出て歩くと直ぐに、公園のような広々とした空間が現れます。
そして芝生広場の先のすり鉢状に窪んだ場所に、なんとも形容し難い、不思議な形状の建造物が建っていました。
こちらは宮代町のコミュニティーセンター「進修館」。思わず「これが公共施設!?」と驚いてしまいますね。

近づいて観察してみますが、その形状をお伝えするのがなかなか難しい。。。
建物の特長を挙げてみると、
■横に長く続き、左右非対称
■全体は広場を囲むように、緩やにカーブした楕円形
■建物を構成するパーツは、中央のガラス張りの建物を含めて直線的
■柱のような構造物が多く並ぶ、高さも不規則で、一部は屋根から突き出ている!?
■コンクリート打ちっぱなしの構造ですが、アースカラーでちょっと木造建築のような風合い
といった部分が見て取れます。
この進修館は「象設計集団」という設計事務所により、昭和55年(1980年)に建てられました。
建物も個性的ですが、設計事務所の名もこれまたユニークだ。
吉阪隆正に師事した象設計集団は、ル・コルビュジエの系譜

象設計集団の実力を建築界に知らしめたのが、昭和56年(1981年)竣工の沖縄県名護市庁舎。
この設計・建築により、建築界で権威のある日本建築学会賞の作品賞を受賞しました。
以降も教育施設や文化施設などを中心に、独創的な視点で多くの設計を手掛けています。
象設計集団を立ち上げたのは、戦後の日本を代表する建築家である吉阪隆正(1917-1980年)氏の下にいた5名の建築家、大竹康市氏、樋口裕康氏、富田玲子氏、重村力氏、有村桂子氏。
象設計集団の公式ページ
吉阪隆正氏は近代建築の巨匠、ル・コルビュジエに師事したことで知られ、師のモダニズム・スピリットを持ち帰り日本の風土に適応させた一人です。
迷路のような回廊にコルビュジエの”建築的散歩道”を見る

そんな象設計集団の生い立ちを知ると、一見掴みどころのなかった進修館の建物も、吉阪隆正氏を通じて吸収したであろうル・コルビュジエの思想が見え隠れしてきました。
建物内に入ると現れたのが、コロネードと呼ばれるダイナミックなアーチ型の回廊。
コルビュジエは”歩くことで空間の豊かさを発見させる”という「建築的散歩道」を唱えましたが、これはまさにそれを体現したもの。
移動手段としての通路の役割にとどまらず、迷路のようなワクワク感を感じさせる動線となっています。

中央部の背の高いガラス張りの建物は、その多くの部分が吹き抜けに充てられていた。これは贅沢な空間の使い方ですね。
陽の光がたっぷりと入ってくる、非常に開放的な造り。
外観の第一印象にはアジアンテイストを感じましたが、建物内を巡ってみるとヨーロピアンな感じもあり、まさに多国籍な感じ。
非日常感が感じられる、実に刺激に満ちた空間です。

建物の周囲には植物のツタが茂っているのですが、実はこれ、宮代町を代表する農産物であるブドウ(巨峰)なんですね。
建物を畑に見立てて特産物を植えるなんて、”農”のある土地柄ならではのユニークなアイディアだわ。
建物全体の印象は、コルビュジエの建築論からは離れてしまいますが、私的には”秘密基地のような建物”という表現が一番シックリくるような気がしました(笑)。
童心に帰って、ここでかくれんぼや缶蹴りなんかをやったら隠れる場所が沢山ありそうで、さぞかし面白いだろうなあ、なんて思ったりして。
コミュニティセンター 進修館の詳細情報
コミュニティセンター 進修館
公式ページ
住所:埼玉県南埼玉郡宮代町笠原1-1-1(GoogleMapで開く)
開館時間:9:00~21:30
休館日:12月29日~1月3日、臨時休館あり
アクセス:
電車)「東武動物公園駅」西口より徒歩5分
車)駐車場有、45台+障がい者用2台
「笠原小学校」まるで竜宮城!?宮代の伝統が生んだ異国情緒
「笠原小学校」宮代町の農村住宅を再現
象設計集団による超個性的な建物が、宮代町にはもう一つあります。それが「宮代町立笠原小学校」です。

進修館の500m程南側にある笠原小学校へは、歩いて10分足らずで到着。
入口側から見えたのは、コンクリート然とした学校建築のイメージとは異質の雰囲気を持つ建物でした。
学校がある場所は東武動物公園の東側入口のそばにあたるため、動物公園に向かう通り道となっています。
行く人々を見ていると、足を止めて建物にカメラを向けている人の姿もチラホラ。
建物目当ての訪問でなくても、やはり一際目を惹く建物のようですね。

敷地内から入口側を撮った写真ですが、「東南アジアのジャングルの中にある学校ですよ」といわれても違和感ないのでは?
生い茂った木々と異国情緒あふれる建物とがあいまって、「ここはどこ?ホントに日本?」感に襲われてしまいました(苦笑)。
笠原小学校は昭和56年(1981年)に開校した学校です。

校舎はどこか東南アジアの建物がモデルなんでしょ?と思いきや、デザインは宮代町に古くからある切妻型瓦葺きの2階建て農村住宅がモチーフなんだそうだ。
これは意外でした。
”土地の物語を形に”をコルビュジエから継承
温故知新により、斬新な風貌の学校として誕生した笠原小学校。
ル・コルビュジエの後期の特徴として挙げられるのが、近代建築の機能性をその土地の気候・風土と融合させたこと。
笠原小学校の設計における象設計集団にも、そのマインドの継承が感じられました。

先の進修館でも感じたのですが、施設内には野外のような、それでいて室内の一部のような、そんな中間的な空間が多く設けられている印象がしました。
その至るところに建物内への出入口が設けられているのは、どうやら日本家屋の”縁側”のような役割を担っているようですよ。
”竜宮城みたいな学校”の呼び名も納得!?

全国的に見てもたいへん個性的な学校建築である笠原小学校へは、各地から建築関係の方々がたびたび見学に訪れるという。
「竜宮城みたいな学校」といった呼ばれ方もされているそうだが、校庭などを見ると、なるほど言い得て妙だなあ、と妙に納得してしまいました。

ところで、象設計集団の師であった吉阪隆正氏は建築界の弟一人者であったとともに、アフリカ横断一万キロの達成や、キリマンジャロやマッキンリーを登頂するなど、登山家・探検家としても著名でした。
そんな吉阪隆正氏のもとで象設計集団は、設計に関する技術のほかに、建築における”冒険心”をも学んだのではないか?とちょっと想像してみた。
笠原小学校の詳細情報
宮代町立笠原小学校
公式ページ
住所:埼玉県南埼玉郡宮代町字百間1105番地(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・「東武動物公園駅」西口より徒歩約13分
・バス:西口「東武動物公園」行きバス(乗車約5分)、「東武動物公園東口ゲート」より徒歩1分
【記事の参考にした情報】
・訪ねたい・使い続けたい建築~埼玉の戦後建築「コミュニティセンター進修館」 NPO法人都市づくりNPOさいたま=つくたま−
・宮代町立笠原小学校 公式ページ
・象設計集団 公式ページ
東京には素敵な名建築が沢山ありますが、そこでお茶できたり食事できたりすると素敵ですよね。
テレビ大阪,BSテレ東の真夜中の人気ドラマ「名建築で昼食を」の原案本!
1万歩から2万歩で歩けるって条件がはっきりしているのがグッド!歩きたい場所満載。
宮代町訪問のお役立ち情報
立ち寄りスポット
観光農業園「新しい村」

笠原小学校のすぐ北側にある観光農業施設「新しい村」は、農の町・宮代町を感じられるスポットなので、立ち寄りスポットとしてオススメ。
トラスト保全地に指定されている山崎山の雑木林や、江戸時代開墾当時の様子が現存する「ほっつけ」と呼ばれる水田などが隣接しており、自然が感じられるスポットです。

施設内には農産物直売所や、食事ができるカフェもあります。
天気が良い日は、テラス席でのカフェランチが気持ち良い!
宮代ランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
レンタサイクルについて
本記事でも紹介したコミュニティセンター進修館では、レンタサイクルのサービスがあります。
宮代町はサイクリングで一日めぐるのには、程よい感じの広さの町ですよ。
自転車レンタルについて
レンタル場所:コミュニティセンター 進修館
利用料:500円/台・日、利用時間:9時~18時
※利用の際、身分証明書の提示必要(運転免許証、健康保険証など)、自転車の台数は5台(程度)。
\ サイクリングで宮代町を巡った記事はこちら!/
宮代町へのアクセス情報
宮代町(東武動物公園駅)までのアクセス
電車)
・「渋谷駅」から半蔵門線直通急行で約80分
・「大宮駅」から東武アーバンパークラインで約30分(春日部乗換)
・「柏駅」から東武アーバンパークラインで約43分(春日部乗換)
車)
・東北自動車道最寄りICは「蓮田スマートIC」、または「久喜IC」
・圏央道最寄りICは「白岡菖蒲IC」、または「幸手IC」
近隣スポットもチェック!
あわせて読みたい
日光街道 杉戸宿、旧商家の建物や復元高札場が宿場町情緒を感じさせる【埼玉・杉戸町】
杉戸宿は江戸日本橋から数えて、5番目の日光街道の宿場町です。宿場があった旧日光街道には比較的旧道の雰囲気が残っており、復元された高札場や、今も残る築100年以上…
あわせて読みたい
日光街道 すぎと七福神めぐり、スタンプラリーで楽しく開運!【埼玉・杉戸町】
五街道の一つである日光街道沿いにある埼玉県杉戸町は、江戸時代には宿場町「杉戸宿」として栄えました。そんな街道沿いの寺院にある七福神を巡拝するのが、「日光街道…
あわせて読みたい
鷲宮神社は鎌倉幕府・後北条氏など、関東武士との繋がりが深かった古社【埼玉・久喜市】
「鷲宮神社」は明治時代に明治天皇が定めた准勅祭社の一社にも選ばれている、関東を代表する一社です。鎌倉時代には源頼朝や執権北条氏から尊崇を受け、歴史書・吾妻鏡…
あわせて読みたい
春日部八幡神社はかつて領主の館があった、春日部の歴史ゆかりの地【埼玉・春日部市】
春日部八幡神社は鎌倉時代に当地を治めていた領主・春日部氏が、鎌倉の鶴岡八幡宮を勧請したのに始まったとされる神社です。境内も春日部氏の館跡の一部だったといわれ…
さらに「埼玉県」に関する記事を探す




宮代町周辺の立寄りスポットを探して予約しよう!割引プランも!
宮代町へでかけてみませんか?
東武動物公園のすぐそばに、こんなにも独創的でワクワクする空間が広がっているとは驚きでした。
大人にとっては知的な建築探訪、子供にとっては最高の遊び場になる進修館や笠原小学校。
動物園のついでに寄るだけではもったいない、宮代町という町の奥深さを再発見する小さな旅。
あなたなら、この秘密基地でどんな景色が見つけられるか、週末に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2020/7/24

建物がテーマのスポットをさらにチェック!
あわせて読みたい
誠之堂は渋沢栄一の喜寿を記念して建てた、煉瓦造りの洋風建築【埼玉・深谷市】
新一万円札のデザインに採用されて話題の、日本資本主義の父と称される渋沢栄一。その生誕地である埼玉県深谷市には旧渋沢邸・中の家や渋沢栄一記念館などがあり、その…
あわせて読みたい
高度成長からバブルへ、東京を形造った丹下健三の名建築10選
昭和から平成にかけて活躍した建築家、丹下健三氏。その活動は単なる建築家の枠にとどまらず、都市計画家としても世界各国で活躍し「世界のタンゲ」と呼ばれました。先…
あわせて読みたい
建築探訪!角川武蔵野ミュージアムは隈研吾の石の代表作だ【埼玉・所沢市】
埼玉県所沢市の「角川武蔵野ミュージアム」の建築は、日本を代表する建築家・隈研吾氏の設計によるものということで建築物探訪に出かけてみた。その建物物は奇想天外で…
<a href=”//ck.jp.ap.valuecommerce.com/servlet/referral?sid=3694017&pid=890454465″ rel=”nofollow noopener” target=”_blank”><img src=”//ad.jp.ap.valuecommerce.com/servlet/gifbanner?sid=3694017&pid=890454465″ border=”0″></a>
クラブツーリズムはバスツアーやテーマ旅行が充実!