昭和から平成にかけて活躍した建築家、丹下健三氏。
日本を代表する建築家にとどまらず、国際的な活躍により「世界のタンゲ」と呼ばれました。
丹下氏は時代の先を見据えた独自の視点で、多くの独創的な建築物を生み出しました。
今もって色褪せない建築物もあれば、現在ではエキセントリックに映る建築物も。。。
そんな丹下健三氏が東京に残した、刺激がたっぷり詰まった建築物7つを紹介します。
目次
建築家・丹下健三氏について
建築家・丹下健三(たんげけんぞう)(1913-2005年)氏は、日本を代表する建築家の一人。
日本人建築家としては早くから国際的な活躍をし、建築や都市計画を世界中で手がけます。
それにより「世界のタンゲ」とも呼ばれました。
晩年に建築された「東京都庁舎」は、東京副都心のランドマークとして良く知られます。
しかしそれ以外にも、都内には丹下氏が設計した建築物が色々残ってます。
そのなかから、7件の建築物を紹介します。
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「国立代々木競技場」 丹下氏の代表作の一つ
丹下健三氏が設計した建築物の代表作の一つで、知名度も抜群に高い「国立代々木競技場」からスタート。
昭和39年(1964年)に開催された、東京オリンピックに合わせて竣工された建造物です。
それから半世紀以上経った令和3年(2021年)、2度目の東京オリンピックが開催されました。
その際、国立代々木競技場がオリンピック会場として、2度めの使用を迎えたのは記憶に新しい。
競技場設立の当時、東京オリンピックは日本の戦後復興を象徴するイベントでした。
そんななか丹下健三氏は、世界的にも例がない、斬新な競技場を設計・施工しました。
空間をさえぎる柱を使わない構造とし、屋根を吊る”吊り橋”のような工法を採用。
大きな2本の支柱の間に、全長280mのケーブル2本を渡し屋根をささえています。
当時、これほど巨大な屋根を吊り上げる建築物はどこにもなく、前代未聞の技術への挑戦だったそうです。
屋根部を見ると、1本の支柱から螺旋状形に吊りパイプが架けられている。
そこから屋根面が吊り渡されているのがわかります。
以前より、代々木競技場って巨大なサーカスのテントみたい、って印象だった。
それもあながち、的外れな表現ではなかったようだ。
客席側は宇宙船みたい。
今もって斬新な建築物ですが、観戦しやすさを求めた結果での工法・形状だった、という点に共感。
- 建築物概要
- ■ 竣工:1964年 / 建築設計者:丹下健三都市建築研究所他 / 施工:清水建設株式会社(第一体育館)、株式会社大林組(第二体育館)
- ■ 敷地面積:91,000m2 / 延床面積:34,204m2 / 建築面積:20,620m2
- ■ 階数・高さ:【第一体育館】地上2階地下2階・40m【第二体育館】地上1階地下1階・42m
国立代々木競技場
公式ページ
住所:東京都渋谷区神南2-1-1 (GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR山手線「原宿駅」から徒歩5分
・東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前 駅 」から徒歩5分
・東京メトロ千代田線「代々木公園駅」から徒歩10分
「静岡新聞・静岡放送東京支社ビル」 高度成長期を反映
続いての建築物は、昭和42年(1967年)施工の「静岡新聞・静岡放送東京支社ビル」。
場所はJR新橋駅のすぐ近くである。
電車の車窓からも見えるので、見たことがある方もいるかもしれない。
初めて見る方は、このアングルで見ても「ん?どういう形しているの?」と、ピンとこないかも。
はい、こちらが建物の全景です。
正面から見ても、んん?っと唸ってしまう形状。
円柱部分から、箱状のオフィスが張りだしている。
木の幹に葉がくっ付いているような、独特の風貌。
円筒形部分はコアと呼ばれ、なんと箱状オフィスは後からの増設も可能だそうです!
高度経済成長期の当時、急成長するオフィス需要に対して、フレキシブルにフロア追加できるというコンセプトだったようです。
凄い発想だわ。
- 建築物概要
- ■ 竣工:1967年 / 建築設計者:丹下健三・都市・建築設計研究所 / 施工:大成建設
- ■ 敷地面積:187m2 / 建築面積:162m2 / 延床面積:1,493m2
- ■ 階数:地下1階、地上12階 / 高さ:57m
静岡新聞・静岡放送東京支社
住所:東京都中央区銀座8-3-7 (GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR「新橋駅」徒歩5分
・都営地下鉄三田線「内幸町駅」から徒歩5分
「駐日クウェート大使館ビル」 SFチックなフォルム
次は昭和45年(1970年)に竣工された、三田にある「駐日クウェート大使館ビル」です。
積み木を互い違いに積み上げたような、超個性的なフォルム!
「どういう構造だ?」と、またもや唸りますなあ。。。
大使館ということもあり、ガードマンが目を光らせている。
あまり前をウロウロするのもはばかれるが。。。、もう少しゆっくりみたいなぁ。
はい、全貌が見える場所を発見しました!
軸になる2本の柱があり、その周囲に階段と部屋がくっついてる構造。
全体はとてもアンバランスな印象。
構造的には、前述の静岡新聞・静岡放送東京支社ビルにも少し通じるものがありそう。
巨大なロボットのように見えたりもする、何だかSFチックなフォルムだ。
実はこんな感じで、手前のビル建設前の期間限定のビューポイントからでした。
- 建築物概要
- ■ 竣工:1970年 / 建築設計者:丹下健三 / 施工:鹿島建設
- ■ 敷地面積:923m2 / 建築面積:551m2 / 延床面積:4,137m2
- ■ 階数:地上7階地下2階塔屋2 / 高さ:25m
駐日クウェート大使館
住所:東京都港区三田4-13-12(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR「田町駅」、三田口(西口)より徒歩10分
・地下鉄「三田駅」、A3出口より徒歩9分
「電通旧本社ビル」 ビルを空中で連結する計画!?
※電通旧本社ビルは2021年4月より解体工事が開始されています。
ここは東銀座の外れで、築地の入口あたりの場所。
中央の飾りっけなしのビルは、かの大手広告会社・電通の「旧本社ビル」です。
昭和42年(1967年)に竣工。
以来、平成14年(2002年)に現在の汐留本社ビルに移転するまで、ここに本社機能が置かれました。
コンクリートの塊のような、無骨で無機質な質感のビル。
現在の銀座にある周囲ビルと比較すると、異質な雰囲気ですなあ。
このビルは不動産会社に売却されており、利用されていない。
そのうち取り壊されることになるのでしょう。
建築物の最大の特徴は、建物脇にある何やら不思議な突起物のある形状。
実は丹下健三氏は当時、複数の高層ビルを建てそれらを空中でつなぐという、「築地再開発計画」を持っていました。
これはその連結計画の名残なんだそうだ。う~む、凄い計画だ。
プラン第1号としてこのビルが建てられたが、計画はこのビルのみで終了。
天下の電通のビルで、都市計画の実験的な試みができたなんて。
当時の丹下氏の影響力の凄さを物語っていますねぇ。
- 建築物概要
- ■ 竣工:1967年 / 設計者:丹下健三・都市・建築設計研究所 / 施工:大林組
- ■ 敷地面積:3,258m2 / 建築面積:1,590m2 / 延床面積:31,334m2
- ■ 階数:地上13階・地下3階、塔屋2階 / 高さ:60m
電通旧本社ビル
住所:東京都中央区築地1-11(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・地下鉄「築地駅」から徒歩約3分
・地下鉄「東銀座駅」から徒歩約5分
「草月会館ビル」 赤坂御用地を借景に
次に赤坂の青山通り沿いに移って、鏡面ガラス張りの「草月会館ビル」です。
こちらは昭和52年(1977年)竣工の建物です。
草月会館ビルの向かいは、樹木に囲まれた広大な敷地を持つ「赤坂御用地」。
御用地周辺の自然を映しだすことにより、四季折々の模様替えをしちゃおう、というデザイン意図なんだろうなあ。
一見無機質に見える建物ですが、ロケーションを生かした演出はさすがです。
- 建築物概要
- ■ 竣工:1977年 / 建築設計者:丹下健三 / 施工:鹿島建設
- ■ 敷地面積:1,425m2 / 建築面積:1,194m2 / 延床面積:12,300m2
- ■ 階数:地上11階地下4階塔屋2棟
草月会館
公式ページ
住所:東京都港区赤坂7-2-21(GoogleMapで開く)
開館時間:平日9:30〜17:30、休館:土・日・祝
アクセス:
電車)
・東京メトロ銀座線・半蔵門線、都営地下鉄大江戸線「青山一丁目駅」南青山4番出口より徒歩5分
・東京メトロ銀座線・丸ノ内線「赤坂見附駅」A出口より徒歩10分
「国際連合大学ビル」 ピラミット型の重厚な建築物
築年代が平成に移ってゆきます。
平成4年(1992年)竣工の「国連連合大学ビル」です。
青山通りに面した、青山学院大学の真向かいに建っているので、ご覧になっている方も多いかもしれませんね。
正面から見ると、全体が三角のピラミッドのような特徴的な建物。
重厚な威厳を感じさせる建造物です。
国連連合大学は一般的な大学ではなく、日本に本部を持つグローバルなシンクタンク機関です。
ちなみに丹下氏はこのビル竣工の前年に、東京都庁舎を竣工しています。
そのこともあり、外観の風合いが東京都庁舎に似ているなあ、という印象です。
鉄筋コンクリート造りですが、外壁素材には花崗岩も使用。
そのため、石で作ったような風合いを感じさせます。
側面から見ると、太いパイプの様な金属の補強材が特徴的。
あえてイカツさを見せるデザインなのかな、とも感じました。
- 建築物概要
- ■ 竣工:1992年 / 建築設計者: 丹下都市建築設計 / 施工:鹿島建設ほか
- ■ 敷地面積:7,044m2 / 建築面積:2,858m2 / 延床面積:21,301m2
- ■ 階数:地上14階地下1階 / 高さ:65m
国際連合大学
住所:東京都渋谷区神宮前5-53-70(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・地下鉄「表参道駅」徒歩7分
・JR・地下鉄「渋谷駅」徒歩10分
この周辺は新しくて斬新なデザインのビルも多く、都会的で面白い街並みが楽しめます。
もう一つ楽しかったのが国連連合大学ビルの隣で出会った、岡本太郎氏作のオブジェ「こどもの樹」。
岡本太郎氏は、南青山に42年間にわたって住んでいました。
アトリエ跡は「岡本太郎記念館」として公開されています。
記念館はなかなか刺激的な空間で、オススメのスポットであります。
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「フジテレビ本社ビル」 ハイビジョンサイズの建築群
最後は平成8年(1996年)竣工の「フジテレビ本社ビル」。
フジテレビジョンをはじめとする、フジサンケイグループの本社やスタジオなどが置かれています。
台場地区のランドマーク的なこちらのビルも、忘れちゃいけない丹下健三氏設計の代表的なビルです。
建築物群の全体は、横長の長方形になっています。
これはハイビジョンテレビの画面の縦横比率と同じで、16:9で設計されています。
う~む、そうきたか、って感じですね。
ハイビジョン放送は、竣工2年前に実用化試験放送が始まったばかりの技術でした。
これを建築物に取り入れた、その先鋭性はやはりスゴイ。
そしてビルは、多くの高視聴率番組を持ちイケイケだった、当時のフジテレビの勢いの象徴でもあります。
高層部は、オフィスタワーとメディアタワーの2棟で構成。
この2棟を、3つのフロアーにある空中廊下(コリドール)でつないでいます。
そして最大の特徴は、ど~んと置かれたこの球体部分。
直径が32mもあり、内部は展望室になっています。
何度見ても、不思議な構造の建築物ですよねぇ。
- 建築物概要
- ■ 竣工:1996年 / 設計者:丹下健三・都市・建築研究所、小堀鐸二研究所 / 施工: 鹿島建設
- ■ 敷地面積:21,102m2 / 建築面積:14,171m2 / 延床面積:141,825m2
- ■ 階数:地上25階・地下2階 / 高さ:124m
フジテレビ本社
お台場フジテレビガイド
住所:東京都港区台場2丁目4-8(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・ゆりかもめ「台場駅」下車、徒歩3分。
・りんかい線「東京テレポート駅」下車、徒歩5分。
車)
・首都高速道路「有明IC」「臨海副都心IC」が最寄り
東京の建築遺産をめぐる、全50ルートを紹介。
1時間で約10の名建築に出会え、効率よく建築さんぽができる1冊。
東京には素敵な名建築が沢山ありますが、そこでお茶できたり食事できたりすると素敵ですよね。
テレビ大阪,BSテレ東の真夜中の人気ドラマ「名建築で昼食を」の原案本!
建物見て歩きに出かけてみませんか?
東京にある丹下健三氏の7件の建築物を見て歩きましたが、いかがでしたか?
都市設計の観点からも設計された、先鋭的な建築物たち。
時代を超えて斬新さを感じる建物と、今となっては少々奇抜な印象に映る建物もあった印象です。
ところで、特に昭和に竣工された建築物は、今後老朽化に伴う解体や建て直しの時期を迎えると思います。
気になる建築物があれば、早々に出かけて見ておくことをオススメしたい。
丹下健三氏が設計した建築物をめぐってみませんか?
記事の訪問日:2020/10/12~11/2
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