「埼玉にかつて海があった」なんて、信じられますか?
海なし県として知られる埼玉県ですが、約6000年前の縄文時代には幸豊かな海が広がり、周囲には人々の暮らしがありました。
関東の歴史スポットといえば城郭や寺社が思い浮かびますが、埼玉県富士見市にある国指定史跡・水子貝塚跡は、縄文人の暮らしを体感できる貴重な史跡です。
そこには「リアルな竪穴住居」があり、縄文人のセンスに脱帽する「ムササビ土器」があり、当時の食卓を映し出す「貝塚跡」があるなど、歴史マニアならずともワクワクする発見が詰まっています。
都心からアクセスしやすいにも関わらず比較的知られていない、歴史散策の穴場スポットをご紹介。
目次
埼玉にも海があった!?「水子貝塚公園」で体感する縄文時代の暮らし
水子貝塚跡、約6000年前の県内最古の貝塚跡の一つ

水子貝塚は縄文時代前期中頃の、貝塚を伴う約6千年前の集落遺跡です。
水子貝塚発見の歴史
■明治27年(1894年):水子貝塚が発見された。
■昭和42年(1967年):富士見町教育委員会により、発掘調査と貝塚の分布調査が実施される。それにより49カ所の貝塚を確認。
■昭和44年(1969年):遺跡の学術的価値が認められ国指定史跡となる。
■平成6年(1994年):その後の調査や用地取得などを経て、貴重な史跡を残す歴史公園として「水子貝塚公園」が開園されました。
県内では水子貝塚(富士見市)、真福寺貝塚(さいたま市)、黒浜貝塚(蓮田市)、神明貝塚(春日部市)の4ヶ所が、国指定史跡を受けている代表的な貝塚跡です。
中でも真福寺貝塚と神明貝塚が約4千年前の貝塚なのに対し、水子貝塚と黒浜貝塚はさらに古い約6千年前のもの。水子貝塚は縄文時代前期を代表する貝塚の一つとなります。
埼玉にも海があった!? 海を生み出した「縄文海進」と呼ばれる現象
貝塚があったことからも分かる通り、海なし県として知られる埼玉県ですが、実はかつて縄文時代には海が存在しました。

水子貝塚公園の芝生広場
今から約7千5百年前から約3千年前、温暖化で地表の氷が溶け、海面が現在よりも最大5mほど上昇。
「縄文海進」と呼ばれる現象により、関東平野西部の中川低地や荒川低地に沿って、海水が内陸部まで侵入します。
縄文人はその内湾周囲に海産資源を求めて集まり、高台に集落をつくりました。
そうした人々の生活の痕跡の一つが貝塚で、埼玉県内には200ヶ所以上も存在していたそうですよ。
水子貝塚のここが凄い!集落全体を公園として整備・保存
そんな集落の一つを公園として整備したのが、本日訪問している「縄文ふれあい広場・水子貝塚公園」です。
公園の大きな特徴は以下の3つ。
・縄文時代前期の貝塚として最大規模である。
・直径約160mの環状に分布する小貝塚から、貝塚形成当時の集落の規模や形態を推察できる。
・貝塚全域が良好な状態で保存されている。
公園の敷地面積は約4万m2ありますが、これは一つの集落全体が公園化されたもの。
関東には多くの縄文時代の遺跡がありますが、集落全体の造りが分かる規模で保存された史跡は少ない。
水子貝塚は縄文人の暮らしぶりをうかがい知ることができる貴重な遺跡で、歴史散策好きにはおすすめしたいスポットです。
約6000年前の縄文人の暮らしを体感!水子貝塚公園の見どころ5選
広範囲に広がっている水子貝塚公園ですが、その見どころを5つのポイントに分けて紹介します。
①復元された5棟の竪穴式住居(15号住居は内部見学OK)
芝生広場から少し離れた場所に、竪穴式住居が復元されています。

水子貝塚の最初の発掘は、東京考古学会によって昭和13年(1938年)におこなわれました。
その初めての調査実施がおこなわれた住戸を復元したものが、こちらの「1号復元住居」。記念碑的な復元物といえますね。
住居の特徴
規模:奥行4.7m・幅3.9m・床面積18m2
構造:長方形の床面に4本の主柱が立ち並んだ造りで、屋根は寄棟茅葺き。
18m2というと約11畳分くらいの部屋かな。見た目より中は広そうですね。

こちらは2号復元住居。
それぞれの住居内には、ヤマトシジミなどの貝層が残っていたとのことです。

博物館に行くと、中庭などに竪穴式住居が復元されているのをよく見かけますが、それらも大抵一つか二つ。
一方、水子貝塚公園には全部で5棟もあるので、縄文時代の集落にタイムスリップしたような没入感が感じられます。

5棟の竪穴式住居はそれそれ同じような造りですが、住居者数によって大きさには個体差があるようです。
②貝層の保存状態がわかる「白いプレート」

所々に白っぽいプレートが点在していますが、これは、この下に貝塚が保存されていることを示す「貝塚表示」。
主役の存在である割には絵的にちょっと地味目ですが(苦笑)、貝塚が埋まっている確かな痕跡となります。
あらためて貝塚とは、縄文人たちが食べ終えた貝殻や魚の骨、壊れた土器などを捨てたゴミ捨て場のこと。なのですが、実はそこを調査することにより様々なことを知ることができます。
貝塚を分析することで判明する主な内容
1.詳細な「食卓メニュー」:貝殻の石灰分が土壌をアルカリ性に保つため、通常は腐って消えてしまう魚の骨、動物の骨、植物の種子などがきれいに残る。
2.当時の「気候」と「周辺環境」:貝の種類によって、当時の海が「暖かかったか、冷たかったか」「干潟だったか、岩場だったか」が分かる。
3.季節ごとの「暮らしのサイクル」:貝殻には樹木の年輪のような「成長線」があります。これを顕微鏡で分析すると、その貝が「春・夏・秋・冬」のいつ採られたかが特定できます。
4.縄文人の「精神世界」と「文化」:貝塚からは丁寧に埋葬された人骨や、意図的に並べられた動物の頭骨が見つかることがあります。
古代のゴミ捨て場だった貝塚は、当時の暮らしを鮮明に描き出す「縄文時代のタイムカプセル」でもあるわけです。
③思わずタイムスリップ!リアルな縄文人マネキン

こちらのだいぶ大きめのサイズの15号復元住居は、内部が公開されています。
地元の小学生たちが、入れ替わり立ち代わりで嬉しそうに見学していました。きっと彼らは歴史好きな青少年に育つことでしょう(笑)。

住居内にはマネキン人形で縄文人の生活ぶりが再現されているのですが、この人形がなかなかリアル!
食料確保のために漁に出かけて行く父ちゃん、ご飯を用意している母ちゃん、そんな朝の慌ただしい一コマという感じ。生活レベルは違えど、いつの時代にも通じる場面かもしれませんね。
建物の構造に目を向けると、結構しっかりした造りだったことが伺えます。
ちなみにこの住居跡からは、多くの土器・石器とともに埋葬された女性の骨も出土されているとのこと。
住居内に”生活の場”と”死者の埋葬の場”が同居していた、という点に、現代との死生観の違いを感じさせます。
④「水子貝塚展示館」入場無料!発掘現場のリアルな実物大模型
公園内には野外展示だけではなく、「展示館」と「資料館」の2つの見学施設があります。
これは史跡への理解が深められるのでありがたい。

展示館に入場すると、中央に発掘調査時の様子を再現した、実物大の模型がどど~んと置かれています。
これは先ほど見学した、15号復元住居をモデルにしたもの。

埋葬されていた人骨も再現されており、マネキンで再現された先程の住居内とは違う、生々しさを感じさせます。

こちらは15号復元住居内にあった、貝塚の断面の復元。
発見された貝殻の総量が約15m3(約5トン)、と聞くと結構ありそうですが、期間から逆算して1日あたりに換算すると約10Kg(約2,000カロリー)とのこと。
貝だけを食べたとすると、栄養量としては一人分しかまかなえない少量なんだそうだ。
栄養不足の状態が続いていたのか、他の食物からも栄養を取っていたのか。

縄文時代における周辺の立体地形図。
陸地は武蔵野台地の端に位置しており、東半部を占める低地は海だった様子が分かります。
⑤「水子貝塚資料館」の至宝!愛らしいムササビ土器

資料館には、市内の各遺跡から出土された出土品が展示されています。

2部屋からなる展示室のスペースはそれほど広くありませんが、当地における古代の様子を知ることができる貴重な展示物が並んでおり、なかなか充実している印象でした。
台地部を囲むように、市内では60か所に及ぶ遺跡が確認されているとのこと。
富士見市は豊富な湧水や河川などの自然環境があり住みやすそうですが、古代より既に住み心地の良い地域だったであろうことが伺えます。

そして資料館の目玉は、市内の羽沢遺跡で発見されたこちらの獣面装飾付土器で、「ムササビ土器」の愛称がついています。
縄文時代中期後半(約5千前~4千5百年前)のもので、獣の顔と尻尾のような立体的な装飾が付いた、高さ53cmの大型の土器です。

実は近年の研究により、この立体装飾のモデルはムササビではなく、「向かいあう猪と人の顔を誇張したもの」であることが判ったんだそうだ。
見学の際には、猪と人の顔が浮かんでくるかジックリと眺めてみてください。
写真で紹介されるムササビ土器は正面からが多いですが、資料館では実物を360度チェックできますからね。
しかし、これらの装飾は飾るためのアートだったのか?信仰のための祭具だったのか?想像してみると、古代へのロマンは尽きませんね。
【セットで寄りたい】カエルがいっぱいの「水宮神社」

水子貝塚公園の見学は以上ですが、公園のすぐ向かいに「水宮(みずみや)神社」という、少し変わった神社あったので立ち寄って参拝しました。
何が変わっているか?というと、ご覧のように神社の神使いが可愛いカエルなんですね。

参道に並ぶカエル像は圧巻の数!

水宮神社は、室町時代に京都聖護院を本山とする寺院として創建された神社。
明治時代の神仏分離令を機に、天照大神ほか五祭神を祀る神社を名乗るようになったとのこと。
社殿前にいるのはやはり狛犬ではなくて、狛カエルだった。

頂いた御朱印にも、可愛らしいカエルのスタンプが押されていました!
カエルは「旅先から無事かえる」「失くし物がかえる」「若がえる」などにかけられるため、願掛けの参拝者が絶えないそうだ。
水子貝塚見学時の帰りに、水宮神社にも立ち寄ってみてはいかが?
水子貝塚はこんな人におすすめのスポット
- 関東の歴史散策スポットを探している
- 有名観光地以外の穴場スポットを歩きたい
- 縄文時代や考古学に興味がある
- 首都圏で気軽に非日常を味わいたい
- 城跡や寺社とは違う歴史スポットを訪ねたい
【記事の参考にした情報】
・文化遺産オンライン「水子貝塚」 文化庁
・「国指定史跡水子貝塚について」 富士見市
関東60カ所の古墳・古墳群を、わかりやすい実測図掲載にて紹介!
各県とも結構見応えのある様々な古墳があるんですね!
タモリさんならではの視点で、川越の歴史が解き明かされてゆきます。
読めば出かけてみたくなるはず!
水子貝塚公園へのアクセス・近隣立ち寄り情報
水子貝塚公園へのアクセス情報、池袋から富士見市は最短約25分!
水子貝塚公園へのアクセス・詳細情報
水子貝塚公園
公式サイト
住所:埼玉県富士見市大字水子2003-1(GoogleMapで開く)
[公園]
休園日:なし
開園時間:4月~9月) 9時~18時、10月~3月) 9時~17時
[展示館・資料館]
休館日:月曜日(祝日を除く)、祝日の翌日(土曜・日曜、祝日を除く)、年末・年始
開館時間:9時~17時
入館料:無料
アクセス:
電車)
・東武東上線「みずほ台駅」から徒歩約15~20分(約1.2km)
・東武東上線「みずほ台駅」東口から 水子貝塚公園経由 富士見市役所行きバス(約5分)
「水子貝塚公園」バス停下車すぐ
・東武東上線「志木駅」東口 から下南畑行き、又は、ららぽーと富士見行きバス(約15分)、「貝塚公園入口」バス停下車、徒歩2分
車)
・駐車場48台
富士見市へのアクセス方法
【電車の場合】
・池袋駅から東武東上線の急行などを利用し、市内主要駅(みずほ台駅、鶴瀬駅、ふじみ野駅)まで約25~30分でアクセス可。
・東京メトロ有楽町線・副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線との相互直通運転を行っているため、渋谷、新宿三丁目、有楽町、横浜方面からも乗り換えなしなどでスムーズにアクセスできます。
【車の場合】
・都内からは一般道の国道254号(川越街道)や富士見川越バイパスを利用するルートが一般的です。
・高速道路を利用する場合、関越自動車道の「所沢IC」や「三芳スマートIC(ETC専用)」が近く、そこから一般道を経由してアクセスできます。
富士見市市内の移動手段
・富士見市が運営している、市内を循環するコミュニティバス「ふれあい号」は、鶴瀬駅・みずほ台駅・ふじみ野駅などを起点に、市役所や主要施設、住宅地を結ぶ複数ルートが運行されています。
市内循環バス『ふれあい号』のサイト(富士見市)
・一般路線バスは東武バスや国際興業バスなどが運行しています。
国際興業バスのサイト 東武バスのサイト
・シェアサイクルのサービスがあり、市内には多くのシェアサイクルステーションがあるので、利用してみるのものよいでしょう。(最初にアプリでの会員登録が必要。)
富士見市ハローサイクリングのサイト
近隣立ち寄りスポット(難波田城公園)
難波田城公園
中世の館跡を復元した歴史公園。
城跡を囲む水堀や土塁が再現されており、敷地内には古民家を移築した資料館や古民家園も併設。当時の暮らしや歴史を無料で学べる、市民の憩いの場です。
水子貝塚公園からの距離は約1.7km。歩いて約25分程、車で4~5分です。
公式サイト
住所:埼玉県富士見市下南畑568-1(GoogleMapで開く)
休憩におすすめのカフェスポット
遺跡見学の後は、縄文時代ののんびりした空気を引きずりながら一息つきたいですよね。
水子貝塚公園のすぐ近くや、最寄りのみずほ台駅周辺で「余韻に浸れる」素敵なスポットをピックアップしました。
【カフェ】Fireman Coffee
水子貝塚公園から徒歩すぐの住宅街にある、元消防士のオーナーが営む自家焙煎珈琲の隠れ家カフェ。
古民家を改装した落ち着いた空間で、靴を脱いで上がるスタイル。遺跡で歩いた足を休めるのに最適です。テラス席もあります。自家焙煎のこだわりコーヒーと手作りデザートがおすすめ。
公式instagram
住所:埼玉県富士見市水子2117(GoogleMapで開く)
【カフェ】Parrucchiere-di-Caffé(パルキエ・ディ・カフェ)
公園からほど近い場所にある、開放的なハワイアンカフェです。
洒落たインテリアと旬のフルーツを使ったスイーツが人気。遺跡の「静」の雰囲気から少し気分を変えて、明るくリフレッシュしたい時にぴったり。テラス席もあり、ペット連れや子供連れでも入りやすい雰囲気。
公式サイト
住所:埼玉県富士見市水子5029-1(GoogleMapで開く)
【パン・テイクアウト】しあわせパン工房 KoMugiみずほ台本店(こむぎ)
みずほ台駅近くにある人気のパン屋さんです。
遺跡を見学する前にここでパンを買い、水子貝塚公園の広場でピクニック気分で食べるのが通の楽しみ方かも!?縄文時代の集落跡を眺めながら食べるパンは格別です。カレーパンや地元の人に愛される豊富な種類の焼き立てパンがおすすめ。
公式instagram
住所:埼玉県富士見市東みずほ台1丁目3-14 高野ビル101(GoogleMapで開く)
富士見市のランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
無料で楽しく学べる水子貝塚公園で、週末のタイムスリップに出かけよう!
6000年前の貝殻や土器が、時を超えて私たちの目の前にある。そう思うだけで、いつもの景色が少し違って見えてきませんか?
「水子貝塚公園」は、教科書で見た歴史を、風の匂いや土の感触とともに「体験」できる貴重な場所です。
竪穴式住居内での生活振りの再現や、古代の人々の思いが形となった土器に出会えば、縄文人がぐっと身近な存在に感じられるはず。
そして歴史のロマンに触れた後は、近くのカフェで美味しいコーヒーを飲みながら、ゆっくりと余韻に浸る。
そんな「縄文散歩」へ出かけてみませんか?
記事の訪問日:2023/2/18




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