千葉県香取市佐原(さわら)は江戸時代より水運で栄え、町を流れる小野川沿いに商家が続く景観は「小江戸」と称されました。
重要伝統的建物群保存地区に指定されている佐原の町には、現在も古い建物が多く残っており、昔ながらの風情ある町並みが楽しめます。
また、佐原は日本初の実測による全国地図を作った伊能忠敬が住んでいた町でもあり、旧宅や国宝指定されている関連資料の一部を記念館で見ることができます。
目次
『小江戸の情景と伊能忠敬をめぐる散策』
関東初の重要伝統的建物群保存地区
千葉県の北東部に位置する香取市は、利根川周辺の都市の一つです。
この地域は江戸時代中頃から昭和初期にかけて水運で栄えた、水郷商業都市でした。
町中を流れる利根川支流の小野川が流れ、その両岸に河岸問屋や醸造などが軒を連ねる町並みは「小江戸」と称されました。
本日は今もその景観が残されている佐原の町に、小江戸散策にやって来ました!
いや~実際来てみると思った以上の軒数の古い建物が並んでおり、町中が時代劇のセットのよう。
まるで江戸の町の様な古い景観はたまらないですね!
平成8年(1996年)、関東で初めて「重要伝統的建物群保存地区」に選定されたのが佐原の町なんですよ。
川沿いには土蔵造りの立派な商家の建物が多く残ります。
道端に続くシダレヤナギも、小江戸の響きにマッチしますなぁ。
商家の建物は、家業が引き継がれ現在も使用されているものが多いらしい。
そのため「生きている町並み」、なんて呼ばれ方もあるようですよ。
おっ!遊覧船も古風な感じですね。絵になるなあ~。
水上を涼し気に進む景観は、川の町ならではの風情を感じますね。
遊覧船は約30分の町並み遊覧が楽しめる、有料サービスです。
写真の奥に川に降りるための石階段が見えますが、これは「だし」と呼ばれる荷揚げ場の跡。
現在は遊覧船の発着場として使用されています。
観光遊覧船について
公式ページ
コース:町なみコース(所要時間約30分)
料金:大人 1,300円、小学生 700円
※季節により運行終了時間が変わります。公式ページでご確認下さい。
※当日増水又は渇水等気象状況により運行を休止又は中止する場合があります。
「伊能忠敬旧宅」 忠敬が30年過ごした邸宅
小江戸の町並みが楽しめる佐原にはもう一つの見どころがあり、それは伊能忠敬が住んでいた町ということ。
まずは伊能忠敬ゆかりのスポットをめぐりつつ、その人物像をたどってみます。
樋橋(とよはし)越しに見えるのが「伊能忠敬旧宅」です。
このあたりもそのまま時代劇に出てきそうな景観ですわ。
伊能忠敬(1745~1818年)は江戸時代の商人で、後に天文学者・地理学者・測量家となる。
そして、日本で初めて実測による全国地図を作ったことで、その名を歴史上に残します。
昔歴史の授業で習ったなあ。
その忠敬が30年余りを過ごしたのが、この伊能忠敬旧宅です。
伊能忠敬関連概略
■延享2年(1745年):上総国山辺郡小関村(現、九十九里町)に、神保三治郎として生誕。
■宝暦12年(1762年):17歳、下総野国香取郡佐原村の商家・伊能家の婿養子となりミチと結婚。実業の合間に天文暦学の勉強を続ける。
■寛政6年(1794年):49歳で隠居し江戸で本格的に勉強を始める。
■寛政12年(1800年):55歳のこの年から10回に分けて全国測量を実施。
■文政元年(1818年):73歳、死去。
■文政4年(1821年):大日本沿海輿地(よち)全図が完成。
隠居後に勉強を重ね、それでもって55歳から測量の全国行脚を始めるって、なかなか凄いですよね。
10回の測量に際し歩いた日数は3,736日、距離は約3万5千kmだったとのこと。
並々ならぬ情熱と根気強さを持っていたのでしょう。いや、凄い!
忠敬はこちらの旧宅で、17歳から50歳までの30年余りを過ごしました。
主な家業だった酒造業に使用された店舗や、生活空間だった母屋などの江戸時代の建築物が残ります。
店舗だった建物は、忠敬が婿養子に入る以前の古い時代のものだとか。
建物は国指定史跡ですが、気軽に無料で見学できるのが良いですね!
忠敬はこちらの書院で勉強をされていたのでしょう。
測量に使用された機器の模型です。
象限儀(しょうげんぎ)と呼ばれる右側の大きい機器は、緯度を求めるために北極星などの高度を観測したもの。
分度器に望遠鏡を取り付けたような装置とのこと。
左の半円方位盤(はんえんほういばん)と呼ばれる機器は、遠方の山や島の方位を測るための方位磁石盤です。
庭にある土蔵(どぞう)は、観音開きが普及する以前の引き戸式扉のもの。
江戸時代の古い様式のものとして貴重なんだそうだ。
確かに土蔵って、観音開きの重厚な扉のイメージが強いですなあ。
伊能忠敬先生之像が庭の一角にあります。
細身に見えますが、相当な体力をお持ちの方だったことでしょう。
伊能忠敬旧宅
住所:千葉県香取市佐原イ1900-1(GoogleMapで開く)
休館日:年末年始(12月29日から1月1日まで)
開館時間:9:00~16:30
入場料:無料
「じゃあじゃあ橋」 日本の音風景100選に
伊能忠敬旧宅前に架かる樋橋には、”じゃあじゃあ橋”という風変わりな通称が付いています。
元々は対岸の水田へ用水を送るための、江戸時代の大樋(とい)だった。
戦前にコンクリートの橋に改築されましたが、水が小野川に「ジャージャー」と音を立ててあふれ落ちるので「じゃあじゃあ橋」の通称が付いたとのこと。
現在の橋は観光用で30分ごとに落水させています。
落水の音は「残したい日本の音風景100選」の一つに選ばれています。
「国宝展示 伊能忠敬記念館」地図と映画・大河への道
その樋橋を挟んだ西側にある「伊能忠敬記念館」は、伊能忠敬旧宅と併せて立ち寄りたいスポットです。
旧宅と対照的なコンクリート造りの建物内では、伊能忠敬に関する資料が公開されています。
実は伊能忠敬関連の資料2,345点は、国宝に登録されているんですよ。凄い点数ですね!
資料群は地図・絵図類のみならず、文書類や器具類など広範囲に渡ります。
記念館ではその資料の一部のほか、地図製作の方法や忠敬の生涯が紹介されています。
館内は写真撮影不可ですが、一部撮影可能なエリアがありました。
忠敬と弟子たちが全国を歩いて作った「大日本沿海輿地全図」は、現代の日本地図と比較してもかなり精度の高いものだったそうです。凄いですね!
ところで、訪問の少し前に伊能忠敬を題材にした映画「大河への道」が公開されました(2022年5月公開)。
撮影に際しては小野川沿いの町中や、佐原駅前ロータリーなどでロケがおこなわれました。
主演の中井貴一さんが企画までおこなったこの映画、意外にも元ネタは落語家・立川志の輔さんの創作落語だったんですね。
志の輔さんは伊能忠敬記念館で忠敬の日本地図を見て感動し、これをなんとか落語に!という思いで作られたんだそうだ。へえ~、ですよね。
後日映画を拝見したいと思います。
伊能忠敬記念館
公式ページ
住所:千葉県香取市イ1722-1(GoogleMapで開く)
開館時間:9:00~16:30
一般入館料:大人 500円、小・中学生 250円
休館日:月曜日(国民の祝日は開館)、年末年始
アクセス:
電車)JR成田線佐原駅から徒歩15分
車)東関東自動車道「佐原香取IC」から10分
立川志の輔による落語が原作の、伊能忠敬をテーマにした映画。
中井貴一・松山ケンイチ・北川景子ら実力派キャストが、現代と江戸時代の一人二役を演じる歴史発見エンタテインメント!
「中村屋商店」 忠敬橋前のランドマーク
佐原の偉人の功績に触れたところで、ふたたび町並みに視線を移します。
魅力的な建物群が多く目移りするので、県指定文化財の建築物を中心にめぐってみます。
保存地区の中心部にある「中村屋商店」は、形の良い建物でランドマーク的な存在。
安政2年(1855年)に建築された母屋は、雑貨や畳材などを扱う店でした。
母屋は現在は喫茶店となっており、さつま芋のモンブランが人気のお店らしいです。
実は香取市はさつま芋の名産地なんですよ!
母屋の横に連なるのは、明治27年(1894年)築の白壁で3階建ての土蔵。
1階は、和雑貨や小物を販売する店舗として使用されています。
2階・3階部分は、店の歴史を振り返るミニ博物館として公開されていたのでお邪魔してみました。
土蔵の中は、外観の見た目よりも広々した感じ。
古い人形などが並び、まるで時が止まったような空間でした。
「正文堂」 サツマイモスイーツの店
中村屋商店から道を隔てた場所にあり、赤い暖簾が掛かっているのが「正文堂」。
享保年間(1716~1736年)から続いた書店だそうで、建物は明治13年(1880年)のもの。
2階の窓は観音開きの戸があり、その内に引き戸がある上にさらに板戸もあるという3重扉のつくり。
防火対策仕様が念入りにされているのが特徴です。
この建物に注目した理由は。。。、さつま芋を使った「十三里屋」というお菓子屋さんが営業されているから(笑)。
メディアでも取り上げられる人気のお店で、”マツコの知らない世界”にも出てましたわ。
大学芋はカリカリ食感で素朴な味が美味しかった!
「旧油惣商店」 佐原最古の土蔵
寛政10年(1798年)に建てられた「旧油惣(あぶそう)商店」は、佐原最古の土蔵といわれます。
町をめぐってみると、江戸時代に建てられた建築物が実は少ないことに気づきます。
佐原では明治25年(1892年)に大火が起きており、中心部の町並みに大きな被害を与えました。
そのため江戸時代の建造物は、残念ながら土蔵造りを除き大部分が焼失しています。
現在の景観は、その後に再建された建物を中心に構成されています。
「三菱館」 大正モダンなレンガ建築
最後に紹介する「旧三菱銀行佐原支店」は、他とは少し毛色の違うレンガ造りの2階建て洋館。
大正3年(1914年)の建築物で、レンガはわざわざイギリスから輸入されたそうです。
佐原の町には、このようなレンガ造りやモルタル外壁の洋風建築も点在しています。
町の繁栄期が比較的長く昭和初期まで続いたため、多様な時代の建物が見られるのもまた面白い部分だったりします。
こちらは建物内の見学もできます。
内部は広い吹き抜けとなっており、2階周囲に回廊があるのが特徴的。
古いアメリカの映画で、ギャングに襲われる銀行がこんな感じの店内イメージですな。
建物は市に寄贈されており、ギャラリーなどにも活用されています。
金庫室だった部屋にも展示物がありましたが、バタン!と閉まったりしないよな?と何だか気になりつつの見学でした(苦笑)。
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佐原観光情報と佐原へのアクセス方法について
~ 観光案内所とガイドマップについて ~
観光案内所
水郷佐原観光協会 駅前案内所
JR佐原駅前にある観光案内所です。
住所:千葉県香取市イ74-31(GoogleMapで開く)
営業時間:9時~17時
休業日:12月28日~1月1日
町並み観光中央案内処
町並み観光の中心地小野川沿いにある観光案内所です。
住所:千葉県香取市イ498(GoogleMapで開く)
営業時間:10時~16時
休業日:毎週月曜日、12月28日~1月1日
水郷佐原観光協会公式ページ
ガイドマップについて
観光案内所で配布されているほか、水郷佐原観光協会の公式ページでダウンロードもできます。
レンタサイクルのサービスについて
貸出時間:9:00~16:30
一般利用料金:普通自転車 700円/日、電動自転車 1000円/日
貸出方法:水郷佐原観光協会駅前案内所にて、申込書に必要事項記入。
注意事項:
1.駅前案内所から概ね10km圏内での利用に限る。 2.雨天時の貸出はおこなわない。 3.佐原の大祭期間中の貸出はおこなわない。
※事前予約不可
お問合せ先:水郷佐原観光協会(TEL.0478-52-6675)
佐原へのアクセス
電車)
・東京駅から:JR総武線快速約1時間15分で「成田駅」、JR成田線乗換にて「佐原駅」まで約30分
・成田空港から:JR総武線快速約10分で「成田駅」、JR成田線乗換にて「佐原駅」まで約30分
車)
・東京方面から:首都高・京葉道路・北関東道で約1時間~1時間30分「佐原香取IC」が最寄りインター
・成田空港から:一般道で約40分
・東京駅八重洲口から高速バスあり、「佐原駅」まで約1時間30分
・町中に市営駐車場あり *町並み観光駐車場(GoogleMapで開く)、水郷佐原山車会館駐車場(GoogleMapで開く)
佐原商家町ホテル NIPPONIAは重要伝統的建造物群保存地区内にある。
歴史建築の粋を残す洗練された空間で過ごせる宿泊施設です。
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住所:千葉県香取市扇島1837-2(GoogleMapで開く)
※忠敬橋より車で約20分。 ※香取市循環バスの利用可。
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※忠敬橋より車で約30分。電車の場合はJR鹿島線乗車にて、佐原駅から鹿島神宮最寄りの鹿島神宮駅まで約21分。
香取市コミュニティバスについて
市内にはコミュニティバスが運行されているので、上手く利用できれば移動に便利。
観光地をめぐる「休日周遊ルート」が、土・日曜日、祝日のみ限定で運行されています。
香取市のコミュニティバスのページ
佐原周辺の立寄りスポットを探して予約しよう!割引プランも!
佐原の町へ出かけてみませんか?
古い建物の多くが今でも現役の店舗として使われているので、佐原の町を歩くのは楽しいですね。
食事処も洋食・和食のお店など様々ありますが、人気店は混みますので予約して出かけるのがベターです。
香取市には全国の香取神社の総本社である香取神宮もありますので、参拝とあわせて出かけてみませんか?
記事の訪問日:2022/6/19
\ 香取市はブランド芋や鰻が美味しそうだ!/
古い街並みスポットをさらにチェック!
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