江戸時代、埼玉県越谷市には日光街道の宿場町「越ヶ谷宿」がありました。
宿場町としての規模は千住宿に次ぐ大きさで、現在も古い建物が多く残る旧街道を歩くとその面影を感じさせます。
また、リノベーションされて利用されている古民家も多く、喫茶や食事ができるスポットもありますよ。
徳川家康や秀忠がしばしば鷹狩りで越ケ谷に訪れた歴史などもたどりながら、旧越ヶ谷宿散策の見どころを紹介します。
目次
かつて越ヶ谷宿と御殿があった越谷を歩く
日光街道 越ヶ谷宿について
日光街道は江戸時代に整備された、五街道のひとつです。
江戸日本橋から徳川家康を祀る日光山への主要道として整備され、全長は約142kmに及びます。
日本橋を出て千住宿を過ぎると、次の宿場町から現在の埼玉県に入ります。
県内に入ると、草加宿・越ヶ谷宿・粕壁宿・杉戸宿・幸手宿・栗橋宿と、6か所の宿場町が続きました。
「越ヶ谷宿」は日光街道の3番目の宿場町で、日光街道の中では千住宿に次ぐ大きな宿場町でした。
「ガーヤちゃんの蔵屋敷」 御宿場印も販売
越谷駅東口を出てすぐにある観光物産拠点施設「ガーヤちゃんの蔵屋敷」で、まずは地元情報を仕入れます。
お土産コーナーはせんべいの品揃えが充実していたので、思わず一枚購入だ(笑)。
~以下、後日訪問しての追記~
訪問日した後日、日光街道の旧宿場町で訪問記念の「御宿場印」の販売が始まりました。
再訪してガーヤちゃんの蔵屋敷で、越ヶ谷宿の御宿場印を購入しました。1枚300円でした。
越谷の名産品のだるまがオマケで頂けたのは嬉しい。
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ガーヤちゃんの蔵屋敷(観光物産拠点施設)
住所:埼玉県越谷市弥生町505-2(越谷駅東口高架下)(GoogleMapで開く)
営業時間:9:30~19:30
休館日:月2回、年末年始
宿場町は越ヶ谷宿と大沢宿で構成
駅東口から1~2分歩くと、こちらの旧日光街道にぶつかります。
江戸時代にはこの旧街道沿いに越ヶ谷宿がありました。
越ヶ谷宿は、慶長7年(1602年)に伝馬継立所としての町並み整備に始まります。
旧越ヶ谷町であるこの辺りから1kmほど越ヶ谷宿が続き、その先の元荒川を越えた旧大沢町側にさらに大沢宿が1kmほど続きました。
越ヶ谷宿の呼称は、この約2kmに及ぶ2つの宿場の総称でした。
旧越ヶ谷宿には街道の面影が残る
かつての宿場町の構成には特徴があり、越ヶ谷町は商店が集中した町で、北側の大沢町には本陣ほか旅籠機能が集中していました。
越ヶ谷が商業の町として発展したのに寄与したのが、昔より続いていた六斎市。
市の日には近隣の村々から穀類などが運びこまれ、道の両脇に多くの出店が並んだそうだ。
ということで旧街道を歩きだすと、さっそく古い感じの建物が見えてきます。
写真の「田中米穀店」は昭和初期の建物で、築90年以上の木造建築物。
2階の雨戸を収める戸袋が、緑色の銅板製なのが特徴的です。
田中米穀店近くの「行徳屋(ぎょうとくや)」にも似た様な銅板戸袋があるので、同時期の建物ですかね?
ちなみに。。。
越ヶ谷町では明治7年(1874年)と明治32年(1899年)の2回にわたり、大火が発生しています。
それにより、以前の木造建築物の多くは残念ながら残っていません。
「横田診療所」 レトロな洋風建築物
おっと、やけに惹かれるレトロな建物が現れました!
こちらの洋風建築は、昭和10年(1935年)に越谷郵便局として建築されたものだそうだ。
「横田診療所」として、現在でも現役で使われている建物です。雰囲気ありますねえ。
「油長内蔵」 カフェもあるコミュニティ施設
そして今度は蔵造りの建物が現れました。
暖簾が掛かっているので店だろうか?
「油長内蔵(あぶらちょううちくら)」は江戸時代末期の旧家の内蔵を、解体せずにそのまま移動し整備した建物なんだそうだ。
この改修方法は曳家(ひきや)と呼ばれます。
現在はコミュニティ施設として使用されています。
こちらでは住まいの相談を受けているほか、まち蔵カフェも運営しているようです。
残念ながら本日は休館日でした。
周辺は住宅街でしたが、綺麗にリノベされており街並みに溶け込んでいました。
NPO団体を中心に運営されており、歴史とデザインを継承しつつ、新たな付加価値を見出すまちづくりを推進しているそうだ。とても興味深い活動ですね。
まちづくり相談処 油長内蔵
公式ページ
住所:埼玉県越谷市越ヶ谷三丁目2-19-5 (GoogleMapで開く)
開館時間:10時~17時 ※イベント開催時には変更する場合があり。
休館日:水曜日、年末年始 ※その他随時に休館することもあり。
「中町浅間神社」 市内で一番大きなケヤキ
車の往来も多い青葉通りにぶつかると、その道筋にポツンと「中町浅間神社」が鎮座していました。
中町浅間神社は室町時代からの古い由緒を持った神社です。
当社には富士山をかたどった丸い木型が銅板を張り付けられた、懸仏が残っていたそうだ。
添え書きには応永32年(1425年)の年号があったとのこと。(懸仏は他所にて保管)
懸仏は文字通り懸けるタイプの仏様で、江戸時代までは結構作られていたそうだ。
現在残っている物は少ないようで、貴重とのこと。
浅間神社のケヤキは、越谷市内で一番大きなケヤキなんですって。
樹齢は約600年で、越谷市指定の記念物です。
「木下半助商店」 国登録文化財指定
青葉通りを越えると、古い建物が集中して残っているエリアに入りました。
こちらの「木下半助商店」の建築物は、国登録有形文化財です。
店舗のほか、土蔵・石蔵・主屋・稲荷社がそれぞれ文化財指定を受けています。
商店としての商いは江戸時代からの創業ですが、建物は明治の大火以降のものです。
現在でも金物屋の店舗として使われています。
店舗以外は一般公開はされていません。
中町浅間神社の駐車場の塀越しに、奥の建物群を横からチラ見させて頂いた。
「小泉家」 店舗と蔵が横並びで現存
こちらの「小泉家」は、古い建物が綺麗に一式で残っています。
越ヶ谷宿で唯一店舗と蔵が横並びで現存する建物とのこと。
江戸時代末期には、こんな感じの屋敷がずらっと並んでいたんですかねえ。
蔵部分は明治の大火以前の建物ですが、燃えずに残りました。
店舗と自宅は、大火後の明治32年(1899年)に再建されたものです。
小泉家は江戸時代から続く呉服商でした。
こちらの「鍛冶忠(かじちゅう)商店」は、江戸時代末期創業のお店。
蔵造りの建物は明治33年(1900年)に建てられたもので、現在も店舗として使用されています。
ピンクの扉に目がとまる、新旧入り混じった建物ですね。
「蔵カフェ 糀屋」 大正時代の味噌蔵
「糀屋(こうじや)」という蔵カフェがありました。
江戸時代創業の味噌醸造・販売をしていた糀屋の、大正時代の味噌蔵を改造したもの。
発酵食品や飲み物などの、ヘルシーメニューが用意されているようです。
元々は、この後紹介する斜め向かいの「はかり屋」で私設文庫を開いていたそう。
こちらの改築・移転を機に、カフェもオープンしたんだとか。
古民家の活用が地域で循環してる感じが、なんだかイイですね。
糀屋を通り過ぎ「米長(こめちょう)乾物店」の建物が見えると、この辺りが旧越ヶ谷宿の一番北側の端となります。
米長乾物店の建物は明治32年(1899年)以前からあったので、築120年近くとなります。
「はかり屋」 古民家複合施設でランチ!
米長乾物店から少し戻った場所には「秤屋(はかりや)」があります。
明治38年(1905年)に築造された約120年前の屋敷である秤屋が、リノベーションして使用されています。
古民家複合施設として、平成30年(2018年)よりレストラン・ショップが営業されています。
正面の主屋と敷地内の土蔵の2件が、「旧大野家住宅」として国の有形文化財に登録されています。
この一角が小さな昔の町みたいでノスタルジックです。
油長内蔵の活動にもあったように、越谷ではリノベーションされて古い建物が積極的に活用されています。
はかり屋は、その集大成的な存在といって良さそうです。
レストラン「modest」
こちらは本格的なフレンチ料理のお店。
和の古民家とフレンチの組み合わせも、なかなか洒落た感じがしますね。
本日は残念ながら予算的にスルーになりますが。
建屋内をのぞかせて頂いたが、内蔵の扉が残っており迫力のある造り。
各建物内はつながっており、トイレなどは共用になっていました。
越谷旬野菜「遊佐農場」
「遊佐(ゆさ)農場」は、地産地消を目指す無農薬野菜を扱う直販所です。
店内には加工品もあり、のぞいてみると色々楽しいです。
「ミネット」キッシュとフレンチ惣菜(閉店)
※ミネットは2021年4月30日をもって閉店となっています。
こちらは国登録有形文化財の土蔵内で営業されている、「ミネット」という店。
キッシュとフレンチ惣菜を提供しているので、こちらでランチにしました。
店内が一杯なのでテラス席にて。
キッシュとドリンクの他に総菜が2種とサラダとスープ、バケットのセット。
見た目の可愛らしさに反して、キッシュはズシっと食べ応えがありけっこう満たされましたわ。
はかり屋
公式ページ
住所:埼玉県越谷市越ヶ谷本町8-8(GoogleMapで開く)
営業時間・休業日:店鋪によって異なります
アクセス:
電車)東武「越谷駅」より徒歩8分
車)近隣のコインパーキングは駐車できる数に制限があります。
「越ヶ谷御殿」徳川将軍の御殿跡
米長乾物店を通り過ぎて進むと元荒川が現れます。
越ヶ谷宿は日光街道と元荒川舟運の交点だったことにより、米穀類の集散地として栄えたんですね。
大沢橋を渡ると旧大沢宿エリアですが、その前に、元荒川沿いを東に500mほど歩いた「越ヶ谷御殿跡碑」がある場所に来ました。
実は江戸時代初期の越ヶ谷には、徳川将軍家の御殿があったのです。
「越ヶ谷御殿」は、徳川家康により慶長9年(1604年)に建てられた御殿です。
現在でもこの地は御殿町の住所がついており、広さはその御殿町ほぼ全域とされます。
御殿には家康・秀忠がしばしば訪れて泊まり、鷹狩をした記録が残ります。
江戸大火で江戸城が消失した際、御殿だった建物は将軍の仮殿として江戸城二の丸に移されました。
2代将軍秀忠・3代将軍家光は鷹狩の際に、近隣の「久伊豆神社」にも立ち寄ったと伝わります。
越ヶ谷御殿跡碑の近くには、「建長元年板碑」があります。
鎌倉時代初期である建長元年(1249年)の年号が刻まれた板碑で、市内最古の板碑となります。
越ヶ谷御殿
住所:埼玉県越谷市御殿町2(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・東武「越谷駅」もしくは、「北越谷駅」より徒歩約18分(1約.3Km)
車)
・駐車場なし
「香取神社」旧大沢宿の鎮守、彫刻が凄い!
旧大沢宿を歩いてみましたが、こちらには古い建物はほとんど残っていませんでした。
越谷駅隣駅の北越谷駅まで歩いたのち、駅からも程近い「香取神社」に立ち寄ってみました。
落ち着いた雰囲気の参道が続いていました。
神社の創立は室町時代の応永年間とされ、古くから地元の鎮守神として信仰されてきました。
香取神社は武勇の神様として知られますが、当社は場所柄、旅の安全祈願の参詣が多かったようです。
慶応2年(1866年)に再建されたという本殿は、重厚で見事な建築物でした。
そして板壁に施されている彫刻の細やかさは凄い!
大黒天や龍などの彫刻のほか、紺屋の作業を表現した彫刻もあり民俗資料としても貴重なんだそうだ。
日光街道や奥州街道を歩いてみませんか?
持ちやすさや見やすさを考慮した、ハンディサイズがありがたいガイドブック。
越谷へのアクセス
越谷へのアクセス
電車)*最寄り駅は東武「越谷駅」
・東武スカイツリー線「北千住」から「越谷駅」まで急行で約17分
・東武アーバンパークライン「大宮駅」から「春日部駅」まで急行で約21分、東武スカイツリーラインに乗換で「越谷駅」まで急行で約10分
車)
・東京外環道「草加IC」から約5km、東北道「浦和IC」から約7km、常磐道「三郷IC」から約10km
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周辺おすすめスポット(久伊豆神社ほか)
越谷久伊豆神社
江戸時代初期に越谷には徳川将軍の御殿があり、近隣にあった当社には徳川秀忠や家光が参拝に立ち寄ったと伝わります。
緑豊かな境内を参拝すると癒されます。
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久伊豆神社
住所:埼玉県越谷市越ヶ谷1700(GoogleMapで開く)
※東武「越谷駅」から徒歩約25分(約2km)、車で約15分。※東武「北越谷駅」から徒歩約20分(約1.5km)、車で約10分)
花田苑
季節の草花の楽しめる日本庭園です。
日本庭園内には、全国でも数少ない屋外能舞台である「こしがや能楽堂」があります。
花田苑
住所:埼玉県越谷市花田6丁目6(GoogleMapで開く)
※東武「越谷駅」から朝日バスで約10分乗車、「花田苑入口」下車、徒歩約3分
日光街道 旧草加宿歩き
綾瀬川沿いに続く草加松原の並木道は、「おくのほそ道」の旅で草加宿に歩みを残している、松尾芭蕉をテーマに公園整備がされています。
風光明媚な風景が楽しめ、散策におすすめです。
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旧越ヶ谷宿を歩いてみませんか?
旧越ヶ谷宿探訪を紹介しましたが、いかがでしたか?
歴史を辿りながら、街道の古い街並みを探してのんびり歩くのは楽しかったですよ。
はかり屋のように、古民家をリノベーションして住まいや商業施設として活用することは、歴史ある建物を保存する点でも、街の活性化の観点でも好ましく感じました。
古い街道沿いの風情を残す、旧越ヶ谷宿に歩きに出かけませんか?
記事の訪問日:2021/3/14
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