東京都心の赤坂にありながら、緑に囲まれた静かな高台の地にある「赤坂氷川神社」。
江戸時代の赤坂には紀州藩の中屋敷があったことから、紀州藩藩主・徳川吉宗が8代将軍に就いた際には現在の鎮座地が社領として寄進され、吉宗命により築造された社殿が今も残っています。
そんな神社の歴史を辿りつつ、現在も江戸時代の奉納品が多く残る境内をめぐります。
目次
「赤坂氷川神社」 徳川吉宗をはじめ代々将軍家より崇敬を受けた神社
赤坂は紀州徳川家をはじめ大名屋敷が多かった地

赤坂氷川神社へは、東京メトロの赤坂駅から向かいました。
住宅街を抜けて神社に続く「本氷川坂」を登り始めると、都会らしい景観から一変して閑寂なエリアに入ります。
起伏に富んだ地形が特徴の赤坂は、武蔵野台地の東端に位置しています。
江戸時代、高台は紀州徳川家の中屋敷をはじめ、彦根藩井伊家や福岡藩黒田家など、多くの大名屋敷がある格式の高いエリアでした。
一方、町人地や商業地がある谷地や低地には花街が形成され、武家地とは対照的な賑わいを見せました。
そして台地と谷地の間には、このような雰囲気の良い坂道が今でも多く残っているんですよ。

やがて一の鳥居の立つ坂の上に到着。その鳥居の先には緑豊かで閑寂な境内が続いています。
このあたりは赤坂の中でもかなりの一等地にあたることが、ひしひしと伝わってきますね。
赤坂氷川神社の創建は平安時代の天暦5年(951年)といわれ、近江の僧侶・蓮林僧正が東国修行をしていた際、夢中のお告げにより氷川明神の社殿を建てたのに始まる、といわれます。
元々の鎮座地は現在の赤坂4丁目付近でした。
戦災や震災を免れた境内に残る数々の奉納品

境内は幸運なことに戦災や震災を免れているので、社殿をはじめ境内に残る江戸時代の奉納品を見てまわるのも楽しみの一つです。

大銀杏
こちらは港区の天然記念物にも指定されている「大銀杏」。推定樹齢は450年で、幹の周囲は約7.5mある巨木です。
昭和20年の東京大空襲で損傷を受けましたが、それでも秋には色鮮やかな黄葉を見せます。凄い生命力ですね!赤坂氷川神社を見守ってきた、シンボルとなる御神木です。

大銀杏の裏手にあった「包丁塚」なるものは、昭和49年に赤坂青山料飲組合により建立されたもの。
包丁塚は料理人の使い古した包丁を納めて感謝をおこなうもので、毎年10月上旬には包丁塚祭もおこなわれるとのことです。飲食店の多い赤坂において、地元とのつながりを感じさせますね。
赤坂に中屋敷があった紀州藩と繋がりが深い

二の鳥居
江戸時代、現在の迎賓館のあたりに、徳川御三家の一つである紀州藩の広大な中屋敷がありました。その近隣の一ツ木村が、元々の赤坂氷川神社の鎮座地だったんですね。
後に徳川8代将軍となる徳川吉宗は藩主就任以来この屋敷に住んでおり、赤坂氷川神社はゆかりの深い神社でした。
享保元年(1716年)に将軍職を継ぐにあたり赤坂氷川神社に対し社領200石を寄進し、老中・水野忠之(ただゆき)に命じて現在の鎮座地に社殿を造営させ、享保15年(1730年)に現在地への遷座をおこなわせました。
遷座の際は、吉宗公も直々に参拝されたようですよ。
吉宗以後も徳川14代将軍・家茂(いえもち)の代まで、歴代将軍の朱印状が与えられました。
徳川御三家とは?
江戸幕府を開いた徳川家康が、将軍家を補佐し万が一の際には将軍を輩出できるように設けた、三つの有力な分家のことです。尾張(名古屋)・紀州(和歌山)・水戸(茨城)の三家が該当します。
家康の10男・頼宣(よりのぶ)を祖とする紀州徳川家からは、8代将軍・徳川吉宗が輩出されています。

社殿エリア入口手前のこちらの石灯籠は、遷座を担当した老中・水野忠之が社殿完成を記念して奉納したものとのこと。港区登録有形文化財に指定されています。
ちなみに赤坂氷川神社が遷座する前のこの地には、広島藩の支藩である三次藩(みよしはん)浅野家の下屋敷がありました。
都内神社で最古の狛犬をはじめ多くの狛犬がいる

江戸時代の狛犬
参拝を楽しくしてくれるのが、境内で出会える狛犬。全部で7対もの狛犬がいますよ!その内のいくつかをご紹介します。
社殿エリア入口の両側にあるこちらは、延宝3年(1675年)に建立されたもの。

江戸時代初期の物とはなかなか古いなあ、と思っていたら、実は都内の神社では現存最古の石造の狛犬なんだそうだ!約350年前のものですが、なかなか綺麗な状態で残っていますね。

三の鳥居脇の狛犬も、弘化3年(1846年)に奉納された江戸時代のもの。

明治時代の狛犬
二の鳥居の脇の狛犬は、獅子山に乗ったタイプの明治時代のもの。なかなか凝った造りですねえ。
といった感じに、様々な時代の狛犬に出会えてなかなか楽しかった。
徳川吉宗命による権現造りの社殿

三の鳥居の先の中門を抜けると社殿エリアに入ります。

境内の一番奥まった場所に社殿があります。
赤坂氷川神社には、素盞嗚尊(すさのおのみこと)・奇稲田姫命(くしいなだひめのみこと)・大己貴命(おおなむちのみこと)の3神が御祭神として祀られています。

社殿は徳川吉宗命により建造されたもので、江戸時代の建物が今も残っているのは貴重。東京都の文化財に指定されています。
社殿様式は本殿・幣殿・拝殿の3つの建物が一体化した権現造りです。
将軍命による建造物にしては派手な彫刻などもなく、正直、わりと質素な感じがしますねえ。
徳川吉宗の時代はというと享保の改革などの財政改革が思い浮かぶので、幕府が財政難だった時代を反映している気がします。

徳川将軍家の庇護を受けた赤坂氷川神社ですが、明治時代に入っても東京における重要な神社とされ、明治天皇により皇城を守護するための「准勅祭社(じゅんちょくさいしゃ)」の一社に定められました。
現在は准勅祭社という制度はないですが、元准勅祭社として「東京十社」の一社に数えられています。
厄除けと縁結びの御神徳を頂ける神社

社殿エリアの樹には、可愛らしい縁結びみくじが結ばれていました。
御祭神の素盞嗚尊と奇稲田姫命は夫婦神であり、その子孫である大己貴命はあらゆる縁を結ぶ神とされています。そのため縁結びの御利益がある神社として、多くの参拝者が訪れています。

干支のおみくじが並ぶ様子も、これまた可愛い!
赤坂氷川祭りの貴重な江戸型山車を展示

境内の一角には山車展示場があり、例祭である「赤坂氷川祭」に使われる山車が展示公開されていました。
江戸一番の祭といえば天下祭といわれた山王祭(日枝神社)と神田祭(神田神社)でしたが、最盛期の赤坂氷川祭はそれに次ぐ規模のものでした。

高さ約7mもある巨大な江戸型山車が間近で見られるようになっており、なかなかの迫力です。
江戸型山車は江戸城城内に入れるように工夫されたもので、門をくぐすために最上部の人形が上下するカラクリを備えているのが最大の特徴。江戸っ子の知恵を感じますねえ。
なかでもこちらは三層型と呼ばれる物で、全国的にも珍しいらしい。

こちらは御神輿です。
かつては「江戸の祭の華」と呼ばれた山車ですが、震災などの影響もあり時代とともに廃れ、祭りの主役は御神輿に移ってゆきました。現在では残っている山車も少ないらしい。
赤坂氷川神社の御朱印

御朱印を直書きで頂きました。
赤茜まつりに赤坂氷川神社の山車が出張中!

参拝を終えて赤坂サカス近隣でお茶でも、と思ったら、思いがけなくこちらでも赤坂氷川神社の山車が展示されていました。

展示されていた山車は比較的小振りのものでしたが、人形が乗る高欄の形が六角形なのは珍しいそうだ。

本日は赤坂サカスでは港区後援の「茜まつり」が開催されており、TBS本社ビル前には特設ステージと出店が設けられており賑わっていました。
街中で赤坂氷川神社と地元の結びつきに出会えた一コマでした。
江戸時代に歌川広重が描いた名所江戸百景を、現在の写真や地図と対比して解説したガイドブック。
東京歩きが楽しくなる1冊!
赤坂氷川神社の詳細情報・アクセス
赤坂氷川神社
公式ページ
住所:東京都港区赤坂6-10-12(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・東京メトロ千代田線「赤坂駅」(6番出口)から、徒歩約15分
・東京メトロ日比谷線・都営大江戸線「六本木駅」(7番出口)から、徒歩約15分
・南北線「六本木一丁目駅」(1番出口)から、徒歩約10分
・銀座線「溜池山王駅」(12番出口)から、徒歩約10分
車)
・境内に9台の駐車スペース有
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赤坂氷川神社へ出かけてみませんか?
都会のイメージのある赤坂にある閑寂なエリアと、そこにある赤坂氷川神社は新鮮でした。
境内の様子は江戸時代とほとんど変わっていないんだろうな、と思いつつ、歴史を感じながら参拝できました。
赤坂サカスや東京ミッドタウンのような都会ならではの施設も近くにあり、様々な顔を持つという点で赤坂の魅力が増しましたね。
赤坂氷川神社の参拝に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2022/6/4



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