都心からでも1時間程度でアクセスできる栃木県栃木市は小江戸と称され、「蔵の街」が並ぶ古い街並みが楽しめます。
街を流れる巴波川沿いを散策すると、かつて舟運で栄えた歴史も見えてきます。
そして、博物館や山車会館では、派手に、時には地味に駆使されているハイテクで結構楽しめたりしますよ。
街の歴史を振り返りながら、情緒あるレトロな街の見どころを紹介。
目次
『蔵の街・小江戸とちぎを散策』
栃木県南部に位置する栃木市は、東京から電車でも車でも約1時間でアクセスでき、都心からも案外近い場所です。
市の中央には太平山県立自然公園が広がり、また、多くの河川が流れ自然豊かエリアですね。
そして、古い蔵が残る「小江戸とちぎ」とも称される街です。
そんな、とちぎの街歩きに出かけたので見どころを紹介します。
「日光山への例幣使街道と巴波川で発展」
駐車場に車を停めて蔵の街大通りに出ると、結構古い建物が建ち並んいるんですね!
パンフなどで見かける街の様子は、いつも同じような巴波川沿いの街並み。
なんで、古い建物はそんなに無いのかと思ってましたが、さすが蔵の街。失礼しやした。
ところで栃木市が宿場町・商人町として発展した由緒ですが、それには日光の存在が深く関わった様です。
江戸時代の元和3年(1617年)、徳川家康の霊柩が日光山に改葬された後、朝廷の使者が東照宮に毎年参向するようになります。
ともない、栃木は朝廷の使者が通る「例幣使(れいへいし)街道」の宿場町として発展してゆきます。
さらに、街を流れる巴波川(うずまがわ)を利用した、江戸との舟運交易が盛んになります。
それにより、江戸時代末期には大いに栄えたそうです。
そして、当時の商人達が建てた土蔵(どぞう)が、今でも多く街中に残っているということです。
車で訪問しましたが、「蔵の街第一駐車場」の利用が便利でした。
有料ですが、提携施設の利用や買い物で駐車場料金が無料になります。
ちなみにすぐ脇の栃木市アンテナショップ「コエド市場」も対象店。
地元のお土産が並び、土産購入にオススメ。
コエド市場の隣の「観光総合案内所」で、街歩きマップを入手。
本日はそれを頼りに、巴波川沿いをそぞろ歩いてみます。
コエド市場
公式ページ
住所: 栃木県栃木市倭町13-2(GoogleMapで開く)
営業時間:9時〜18時(L.O.17:30)
アクセス:
電車)JR・東武「栃木駅」から徒歩約15分
車)蔵の街第1駐車場隣
蔵の街第一駐車場
住所:栃木市倭町13-1(GoogleMapで開く)
営業時間:9時~18時
収容台数:普通車 30台、バス 5台(中型、大型含む)
料金:有料
「神明宮」 県名発祥の地!?
そんな感じで散策開始。
観光案内所の並びに”栃木のお伊勢さま”の参道入口を発見。
まずはこちらの神社に立ち寄ってみます。
「神明宮(しんめいぐう)」は、室町時代に伊勢神宮より分霊された古社だそう。
主祭神は天照皇大神(あまてらすおおみかみ) 。
ところで、神社の説明板に気になる記載を発見。
”この地が県名発祥の地といわれている”とあるじゃないですか!
「当社の御本殿にはその昔、天高くそびえる十本の千木(ちぎ)があり十千木と呼ばれるようになった。」とのこと。
十千木 =とちぎなんですね。う~む、語呂合わせからきてるんか?
ちなみに、県名発祥説は諸説あるみたいですよ。
「近龍寺」 山本有三の墓所
神明宮の直ぐ近くの 「近龍寺(きんりゅうじ)」にも立ち寄ってみました。
元々は室町時代に称念寺として創建し、後の天正16年(1588年)に現在地に移り改名したそうです。
こちらには地元出身の山本有三(1887年~1974年)氏の墓があります。
大正から昭和にかけて活躍した文豪ですね。
墓石には作品「無事の人」の冒頭の一節が刻まれています。
~ 動くもの砕けるものの中に 動かないもの 砕けないものが 大きくからだに伝わってくる ~
含蓄がある一節ですな。
大通り沿いには「山本有三ふるさと記念館」もあります。
山本有三の作品は素晴らしいですよね!で締められないのがチト寂しい。
多分読んでないので、スマン。。。
「巴波川沿いの横山郷土館」
舟運により栃木市に繁栄をもたらした巴波川が、今も街中を流れます。
橋もレトロな雰囲気がありますねえ。
川沿いの道は石畳で綺麗に整備されていて、歩くのが気持ち良い。
カモがくつろぐ浅瀬の川は、水がとっても綺麗だ。
川沿いに、建屋の両脇に蔵を携えた古い建物「横山郷土館」が現れました。
横山家は明治の豪商で、店舗の右半分で麻問屋、左半分で銀行を営んだそうだ。
いやはや、多角経営ですな~!
蔵に鹿沼産の深岩石(ふかいわいし)が使用されており、風合いのある外観が特徴。
建物群は国登録有形文化財です。
こちらは建物内も一般公開されています(有料)。
街中には他にも内部見学できる建物があるので、気になったら中ものぞいてみると楽しいですね!
横山郷土館
住所:栃木県栃木市入舟町2-16(GoogleMapで開く)
入館料:一般(高校生以上) 300円、中学生以下無料
営業時間:9時~17時(最終入館16:30まで)
定休日:毎週月曜日(ただし祝日の場合はその翌日)、年末年始
アクセス:
電車)JR・東武「栃木駅」から徒歩約18分
車)蔵の街第1駐車場から徒歩約4分
「旧栃木町役場」 最初の県庁所在地
横山郷土館の先で、川沿いから道を折れてみます。
運河みたいな堀が巴波川から続いてますね。
横山家の脇手には荷揚場跡もあり、どうやら舟運のための人工的な堀っぽいですね。
やがて蔵の街とは毛色の違う、大正レトロな綺麗な洋館出現!
こちらは「旧栃木町役場」でした。
この場所、明治6年(1873年)に栃木県最初の県庁が置かれた場所なんですって。
んっ?元々は宇都宮市が県庁所在地だったわけじゃなのね?知らんかったわ。
明治17年(1884年)に県庁は宇都宮市に移転。
その後の大正10年(1921年)に、こちらの栃木町役場庁舎が建立されました。
以来、平成26年(2014年)までの約90年間に渡り、町役場・市役所として使用されたそうですよ。
おー、最近まで現役で使われていたんですね!
市の文化財でもある建物は、県内初の「公立文学館」として公開予定。
市ゆかりの作家や芸術作品、書籍などが紹介されるそうです。
*訪問時は準備中で、その後の2022年5月に開館しました。
栃木市立文学館(旧栃木町役場)
公式ページ
住所:栃木県栃木市入舟町7−31(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)JR・東武「栃木駅」から徒歩約18分
車)蔵の街第1駐車場から徒歩約20分
「とちぎ山車会館」 祭りをリアルに再現!
方向を折り返して、今度は「とちぎ山車(だし)会館」を訪問。
コンクリート製の、ひときわガッチリ感のある建物ですな。
こちらは2年に一度開催の「とちぎ秋まつり」で使用される、地元自慢の山車の保存・展示施設です。
メインの山車展示室には、ドド~ンと8m超の巨大な3台の山車が展示されています。
これがね、なんと動くんですよ!
上演開始とともに、背後の巨大スクリーンにコンピューターグラフィックを駆使した迫力ある映像が映し出されます。ハイテクなんですよね~。
お囃子などの音響が加わり、展示室は秋まつりの会場と化します!
巨大な山車は移動したり転回したりで、結構動く動く。
なかなかの迫力でしたよ。
地元・栃木南中学校の生徒さん作成の、市内全ての山車の模型の展示がありました。
素晴らしい出来だ!パチパチ(拍手)。
栃木に山車が誕生したのは明治7年(1874年)で、倭町(やまとちょう)3丁目と泉町が購入した山車を参加させたのが始まり。
以降、各町とも大工や人形師に山車を作らせる動きが活発化したそうです。
華やかな山車は、県庁が置かれ栃木市が潤ってイケイケだった時代の象徴といえそうですな。
近年のとちぎ秋祭りは、残念ながら新型コロナの影響で2020年・2021年と開催が中止。
2022年の秋には無事開催できると良いですね!
とちぎ山車会館
住所:栃木県栃木市万町3-23(GoogleMapで開く)
入場料:大人500円、中学生以下無料
営業時間:9時~17時(入館は16:30まで)
定休日:1・2・3・7・8・12月の月曜日(月曜日が祝日の場合翌日)、年末年始、展示替えによる臨時休館有
アクセス:
電車)JR・東武「栃木駅」から徒歩約15分
車)蔵の街第1駐車場から徒歩約2~3分
「善野家土蔵」 豪華3連蔵!
こちらの3連の見事な蔵は、山車会館の脇にあります。
栃木を代表する豪商の蔵「善野家土蔵」です。
築年代は各棟若干マチマチですが、江戸時代の文化年間~天保年間(1804~1840年頃)のもの。
栃木市現存の蔵の中でも、最古の土蔵群だそうですよ。貴重ですね!
江戸時代に困窮人救済のための銭や米を放出したことに由来して、”おたすけ蔵”って別名があるそうです。
地元ゆかりの作家を中心に、美術品の収蔵・展示がされる美術館として使用されています。
「5連蔵」 アド街紹介の店!?
今度は蔵の街大通りを、南の方へ散策。
こちらは「5連蔵」と呼ばれるスポットで、街の見どころの一つですね。
それぞれの蔵は独立しており、お店を営業している建物もあります。
「三桝屋本店」は、江戸時代の嘉永元年(1848年)創業の老舗人形店。
「冨士屋本店」は和菓子屋で、メディアでも取り上げられる人気のお店。
名物は小倉ソフトだー。
アド街ック天国で紹介されてるんですかね。当時のポスターっぽいのが貼られてました。
「塚田歴史伝説館」 巴波川による繁栄
巴波川沿いに、商家であった「塚田家」の蔵群が映える、美しい景観スポット。
こちらは訪問前に観光パンフで良く見かけており、「The 蔵の街とちぎ」のイメージでした。
生で見る景色もなかかな情緒があり良いですね! 一度生で見たかったスポットなのよ。ええ。
この場所から遊覧船が出ており、船上からの川景色が楽しめるのですが。。。、強風のため本日運行は休止。
楽しみにしていたのに、ちょっと残念でした!
塚田家の建物は国指定有形文化財ですが、「塚田歴史伝説館」として一般公開されています。
塚田家は、江戸時代後期から木材回漕問屋を営んだ豪商です。
その屋敷は巴波川を物流網として利用して栄えた、栃木の歴史を象徴する建物の一つといえます。
当時の江戸までの木材の回漕は、木材を筏に組んで、三日三晩掛かって深川の木場まで運ばれてたそうですよ。
三日三晩の船旅は、決して穏やかな道中ばかりでは無かったんでしょうなあ。
入場は有料ですが、折角なので館内も見学。
入口から入場入ると、まずは「三味線ばあさんロボット展示」コーナーです。
”日本初、三味線都々逸をひく語り部ロボット”とあります。
で、おばあさんロボットの表情も動きも、これがなかなかリアル!
近くにいる猫ちゃんロボットの動きも、リアルだなあ。
畳に腰かけ、随分近くで熱心に聞いているおじさんが居るなー、と思ってたら。。。なんとこちらもロボット!
人だと思ってましたよ、マジで。
演目が終わると「蔵芝居が始まるので、移動して下さ~い。」と施設の方の声が。
そそくさと別の建屋へ移動。
こちらの蔵芝居「うずま川悲話」の鑑賞に入ります。
絵とロボットによる全自動の紙芝居だ(正確には紙ではないが。。。)。
こちらも動きがあり、地味ながら全自動対応。
この施設は飽きさせない工夫があり、まずまず面白い。
話は、巴波川の神の怒りを沈めるために、美しい少女が犠牲になり橋の下に生き埋めにされる悲話。
水害を鎮める伝承話って、なぜか若い娘が人柱になるパターンって多い気がするなあ。
敷地の奥には、それほど広くは無いですが庭園がありました。
数寄屋造りの離れには、やはりリアルな当主夫婦の人形が。。。
当家の家宝や写真などの展示がある資料館。
当館がロケ地として使われた映画、平成4年(1992年)の映画・遠き落日のスチール写真がありました。
主演の三上博史氏と牧瀬里穂さんの、初々しい当時の写真がありました。
塚田歴史伝説館は、手作り感とハイテクがミックスした案外楽しめる博物館でしたわ。
ホームページには入場割引券があったので、訪問の際はチェックしてみて下さい。
塚田歴史伝説館
住所:栃木県栃木市倭町2-16(GoogleMapで開く)
入館料:大人 700円、小人 350円
営業時間:9:30~17:00(入館受付は16:30まで)
定休日:月曜日(祝日の場合開館:振替無し)、年末年始
アクセス:
電車)JR・東武「栃木駅」から徒歩約10分
車)蔵の街第1駐車場から徒歩5分
蔵の街遊覧船
公式ページ
住所:栃木県栃木市倭町2-6(GoogleMapで開く) *塚田歴史伝説館隣
運行日:毎日
休日:年末年始、荒天時
営業時間:3月~11月:10時~16時(最終受付 15:50)、12月~2月:10時0~15時(最終受付 14:50)
料金:大人(中学生以上) 1,000円、小人(小学生) 700円、幼児 無料、ペット(1匹) 300円
「とちぎ蔵の街観光館」 手打そばを頂く
神明宮の参道脇にある「とちぎ蔵の街観光館」に、昼食で立ち寄りました。
観光館の施設は、元々は麻苧(あさお)問屋の店舗だった土蔵群。
麻苧は麻を原料として作った糸のことだそう。
「手打そば・太郎庵ふく田」。
ちょっと隠れ家的な、奥まった場所にあった。
天ざるを注文。
蕎麦は細めで、少し平たい感じの麺でした。
喉越しも良く美味しく頂きましたよ!
手打そば「太郎庵 ふく田」
住所:栃木県栃木市万町4-1(とちぎ蔵の街観光館内)(GoogleMapで開く)
営業時間:昼 11:30~15:00、夜 18:00~21:00
定休日:月曜日(祝日の場合は火曜日)
アクセス:
電車)JR・東武「栃木駅」から徒歩約15分
車)蔵の街第1駐車場から徒歩1分
「蔵の街とちぎ」散歩マップ
本日紹介したスポットマップです。参考にしてみて下さい。
蔵の街へ出かけてみませんか?
小江戸とちぎののんびり散策を紹介しましたが、いかがでしたか?
蔵の建物ばかりでなく、思いがけなく栃木県のルーツに触れるスポットに出会えたりもしました。
やはり行ったことがない街を歩いてみると、色々知らなかった発見に出会えますね!
蔵の街・栃木市に、ちょっ蔵出かけてみませんか?
記事の訪問日:2022/2/27
古い街並みスポットをさらにチェック!
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