休日になると多くの人々で賑わうお台場エリアですが、ショッピングエリアからは少し離れた、沖合に突き出した出島のような形状をした「台場公園」があるのをご存じですか?
この公園、実は江戸時代末期にペリー艦隊の襲来に備えて造られた、「第三台場」と呼ばれる砲台施設の跡なんですね。
公園として気軽に立ち寄れるスポットながら、江戸時代の遺構と現在の都会的な景観が交錯する不思議な空間、台場公園を紹介します。
目次
お台場に残る江戸時代の砲台跡「第三台場」を歴史散策!
「第三台場跡」 幕末に築造された品川台場の一つ

レインボーブリッジから望む台場公園
お台場にあり、ショッピングモールが建ち並ぶエリアからは少し離れた、出島のような場所にある「台場公園」。ここはレインボーブリッジから望むと、四角形に近い形をした人工的な島なのが分かります。
この不思議な出島の存在に気付いていない訪問者も多いかもしれませんが、実はこの台場公園、江時代末期に造られた「第三台場」と呼ばれた台場(砲台)の跡なんですね。
江戸幕府は黒船と呼ばれたペリー艦隊の来航に備えて、品川沖に「品川台場」と呼ばれる6つの砲台施設を築きましたが第三台場もその一つ。ちなみに現在の台場の地名も、この品川台場から付いたものです。
現在はこの第三台場跡と台場公園に程近い海上に第六台場跡が残りますが、それ以外は破壊されて残っていません。
第三台場跡は国指定史跡であるとともに、続日本100名城の一つにも数えられます。
レインボーブリッジからは第三台場跡全体を見ることができる!
老中・阿部正弘が品川台場築造を主導

当時は海に囲まれていた第三台場ですが、現在は陸続きとなっており気軽に散策できる緑地公園です。
品川台場の築造の発端となったのは、嘉永6年(1853年)6月の浦賀へのペリー艦隊の来航。
同年8月には当時の老中だった阿部正弘主導のもと、早くも江戸湾防衛強化の目的で台場11基の建設が着工されます。(実際に完成したのは6基)
そして翌年の嘉永7年7月には第一・第二・第三台場が一気に竣工されているので、これは物凄い勢いで工事が進められたことになりますね!
阿部正弘(1819~1857年)
広島藩主・阿部家の出身。徳川12代将軍家慶・13代将軍家定の時に、江戸幕府の老中首座として幕政を統括。
黒船来航時には開国路線を採り、諸大名や朝廷にも意見を求めるなどの合議制を進めた。幕府の近代化を試みたが、在職中に病没しました。
伊豆韮山代官の江川英龍が工事を指揮

島の外周は約800mで、周囲が石垣で囲められているのが特徴です。
突貫工事だったはずですが、形が整った石が海面から5~7mの高さで整然と布積みされており、丁寧な仕上がりに見えますね。
品川台場の工事概要
■工事は幕府直轄の普請方(ふしんかた)が監督し、伊豆韮山代官の江川英龍(ひでたつ)が指揮して進められた。
築造の労働力を薩摩藩が提供支援し、佐賀藩が砲台の大砲鋳造を担当。さらに各藩より人夫や職人が投入された。
■埋立て用土砂は品川の御殿山などの高台を崩して調達され、石材は伊豆や相模から海上輸送された。
■工事は昼夜にわたり進められ、資材を運搬する船は1日2千隻、土木人夫は5千人にも及んだとのこと。
これはもの凄い規模の工事だわ。
築造総経費は75万両で、現代の貨幣価値で約700億円といわれます。幕府の財政が厳しかった幕末において、これは大出費でしたね。

入口から上がって行くと、周囲を土塁で囲まれた広々とした平地が広がっていた。東京湾上にこのような不思議な空間があったなんて驚きだ。
苦労して進められた台場築造だったが、日米和親条約締結により工事は途中で中止。開国も決まり、完成した6基も結局使い終いだった。

まずは散策路として整備されている、土塁上を歩いてみます。
ここは日陰が少ないので、日差しの強い日はちょっと要注意ですね。あと、トイレや販売機などはありませんのでご承知おきを。
「砲台跡」 幕末期の要塞の姿を再現

土塁を南側に進むと砲台跡が現れます。リアルな遺跡の雰囲気ですが、砲台自体は後世に造られたレプリカとのこと。
かつて第三台場には、46挺程の大砲が設置されたそうだ。

こうやって眺めていると、どこかの島の戦争の痕跡を訪ねているような気分になります。でもここ、東京都心なんですよ!

砲台をARでバーチャルに再現できるサービスなんかもあったり。
上記のQRコードが上手く読めれば、この画面からスマホでもAR砲台が表示できますよ。ぜひ試してみて下さい!
もう一つの現存台場跡「第六台場跡」

砲台跡がある場所から西側を望むと、もう一つの現存台場跡「第六台場跡」が割と近くに見えます。
規模は第三台場よりも小さく、3分の1程度の大きさだ。
第六台場は立ち入り禁止区域に指定されており、上陸できません。そのため手付かずの自然が残っており、植物や野鳥の宝庫として学術的にも貴重な場所なんだそうだ。
歴史ファンとしては、遺構などは何か残っているのか?という点に興味が湧きます。
「陣屋跡」 かつての兵舎の礎石が残る

土塁上の様子を見たところで、平地に下りてみます。
公園内は歩道をはじめ階段なども整備されているので、昼間歩くなら足場の悪い所はなさそうですよ。

石垣に挟まれたこの先に桟橋があり、当時はここが海上からの入口だったようだ。現在は柵があるため、この先には入れません。

レインボーブリッジから望む
再びレンボーブリッジの上から見た桟橋部分の写真。
島内の右手に「史蹟・品川臺場 参番」の石碑がありますが、一般人が入れないこんな場所になぜ史跡碑が?というのがちょっと謎だ。

広場に出ると見えてくるのがずらっと並ぶ石。これは、かつての兵舎の建物の礎石が残っているものです。

台場の完成後は、幕府の命を受けた各藩が湾岸警備にあたりました。
その担当は、第一台場は川越藩、第二台場は会津藩、第五台場は庄内藩、第六台場は松代藩、御殿山下砲台場は鳥取藩、そしてこの第三台場の担当は忍(おし)藩(現、埼玉県行田市)でした。
「かまど跡・弾薬庫跡」 当時の弾薬庫跡が残る

さらに西側の一角には、小さな石の塔が立っていました。

近づいてみると、これは石でできたカマドの跡でした。

台場に駐屯していた兵が使用した、炊事施設とのこと。石やレンガを組み合わせて作られたものだったようだ。

中には入れませんが、土塁に埋まってカモフラージュされたような造りの「弾薬庫」がいくつか残っています。

こちらは、別の場所の弾薬庫。
火災や被弾の危険に備えて、弾薬は数か所に分散して格納されていたとのことだ。

陣屋跡からの全景。
江戸時代の遺構が現代の高層マンションともあいまって、なんとも不思議な景観を見せる空間でした。
お台場でレインボーブリッジが最も近くで見えるスポット

ここって歴史マニアしか来ない場所でしょ?って思うかもしれませんが。。。
砲台跡周辺にはレジャーシートでくつろぐ家族連れや、レインボーブリッジをバックに記念写真を撮るカップルなどもチラホラ。
実はお台場でレンボーブリッジが最も近く見える場所が、この台場公園だったりするんですね。知る人ぞ知る穴場デートスポットだったりします。

南側に見えるフジテレビ本社ビルは、いつ見ても斬新。
建築界の巨匠・丹下健三氏が設計したこのビルの縦横比は、当時放送が始まったハイビジョン画面のアスペクト比(16:9)と同じ比率なんですって。
品川台場の続日本100名城スタンプ設置場所

台場公園の散策は以上ですが、「品川台場」の続日本100名城スタンプ設置場所を紹介。
設置場所はお台場海浜公園側にある「お台場海浜公園内マリンハウス」の、1階インフォメーションセンターです。
以前はその西にある潮風公園公園センターにも設置されてましたが、現在は扱ってないようです。
古い情報だとこちらもスタンプ設置場所として記載があったりするので、ご注意を。
明治時代の初めにはまだこれだけ様々な城が残されていたんですね。
貴重な写真の数々に思わず釘付け!
台場公園の詳細情報・アクセス
台場公園(第三台場跡)
住所:東京都港区台場1丁目10−10番1号(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・ゆりかもめ線「お台場海浜公園駅」又は「台場駅」下車、徒歩約3分
・りんかい線「東京テレポート駅」下車、徒歩約10分
車)
・高速道路最寄りは、首都高速道路「台場IC」「臨海副都心IC」「有明IC」
・専用駐車場なし、最寄りの有料駐車場を利用
*お台場海浜公園中央駐車場、お台場海浜公園北口駐車場の2ヶ所有り
\ お台場ランチは、事前予約やクーポン利用で快適でお得に!/
台場公園を歩いてみませんか?
人気のショッピング・観光エリアのお台場にひっそり佇む、案外知られていないと思われる歴史スポット・第三台場跡を紹介しましたが、いかがでしたか?
東京湾海上にこんな江戸時代の巨大な遺構が残っており、気軽に見学できるというのが新鮮。ちょっと離島のような不思議な空間で、冒険心もそそられるスポットでもあった。
そんな台場公園を歩きに出かけてみませんか?
記事の訪問日:2023/5/4



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