埼玉県飯能市は都心から1時間程度でアクセスできる場所ながら、自然豊かでハイキングに人気のエリアです。そんな飯能の街歩きに出掛けました。
街中には古い建物が残り、かつて織物の街として栄えた面影を残しています。
さらに歩き進むと、飯能戦争の舞台となった寺院や人気アニメの聖地、そして世界で唯一つの鉄腕アトム像まで!?
バリエーション豊かな意外な発見に出会える、飯能の街歩きを紹介します。
目次
飯能縄市時代の名残を残す大通りの古い建物

埼玉県飯能市は都心からも比較的近い割には豊かな自然に出会えるエリアで、ハイキングを始めアウトドアのメッカと称されます。
西武線・飯能駅の改札を出たすぐ先に、さっそくアウトドア用品店があるのはさすがですね。

本日はハイキングというよりは街中散策といった感じで、飯能市の歴史などにも触れながら、ハイキングスポットとして人気の「天覧山(てんらんざん)」辺りまでのんびり歩いてみます。
「旧飯能織物協同組合事務所」 織物産業で栄えた面影

駅前から続く県道を北に進んでゆくと、おおっ、写真屋のシャッターアートがかなり不気味だわ。。。
東町交差点を左に曲がり、中央通りを天覧山方面に歩いてゆきます。

旧飯能織物協同組合事務所
少し進むと特徴的なレトロな洋館が現れます。
大正11年(1922年)築のこちらの建物は「旧飯能織物協同組合事務所」で、特産品である養蚕や織物産業で飯能市が栄えた時代の面影を残すものです。国の有形文化財に指定されています。
ぱっと見、全体的な造りは洋風なのですが、よく見ると屋根にシャチホコが乗っていたり、はたまた日本瓦が使用されていたりと和洋折衷のユニークな建物なんですよね。
織協と呼ばれた飯能織物協同組合は昭和24年(1949年)の設立ですが、その前身は明治時代の武蔵織物同業組合に遡ります。組合は平成30年に解散されました。
江戸時代の名残りを残す建物、店蔵絹甚ほか
大通りには見世蔵などの歴史的建造物が残る

山間地域が多かった飯能は、田の少ない地域でした。
そのため江戸時代は年貢を米ではなく貨幣で納めるために、地元の産物を換金する目的で「飯能縄市」と呼ばれる定期市が開催されました。大通りにはその頃栄えた名残となる、歴史的建造物が残っています。
写真の新井家住宅は、江戸中期以来米穀商を営んできた飯能を代表する大店です。
大野家住宅(銀河堂)は明治時代の店蔵

カフェ「銀河堂」
こちらは明治30年代後半に織物買継商の店を出した、大野家の店蔵です。店蔵は保管目的の蔵ではなく、店舗目的の蔵様式のこと。
建物自体は出店前からあったもので、更に古い時代もののようです。
現在はノスタルジックな雰囲気な時間が過ごせる、カフェ「銀河堂」の店舗として使用されています。
「店蔵絹甚」 絹産業関連の店蔵(飯能市指定文化財)

「店蔵絹甚(みせぐらきぬじん)」は明治30年代後半に建てられた土蔵造りの店舗で、飯能市を代表する産業である絹の買継商を営んでいた建物です。
建築当初の様子を良く残しており、飯能市の指定有形文化財となっています。

土蔵造りの2階建で、30cm以上の厚い土壁による強力な防火建造物です。
2階部屋根の両脇に付いている袖壁は「うだつ」と呼ばれるもので、これは隣家への延焼を防ぐための防火壁の役割のもの。
余談ですが「うだつが上がらない」という言葉は、これからきているらしいですよ。
建物にうだつを上げるにはそれなりに費用が掛かることから、生活力や地位が無い状態を差すような言い回しに派生したんですって。

季節柄、建物内では雛人形が展示されていました。
歴史ある建築物が整備されて、気軽に見学できる施設として公開されているのは良いですね。
「横川家(旧畑屋)」 飯能の町が賑やいだ時代の象徴

畑屋は明治33~34年頃より営業していた料理屋。
裏手にある木造3階建ての建物の座敷は、かつて絹織物や材木商の旦那衆により商談や接待で利用された場所とのこと。

蔵カフェ 草風庵
こちらの「蔵カフェ 草風庵」は、築100年以上の蔵を改装して作られたカフェ&骨董屋さん。雰囲気あるお店ですよね。
「観音寺から諏訪八幡神社へ」 アニメの聖地も登場
「飯能河原」 人気のBBQスポット

中央通りを進み、入間川にぶつかった場所にあるのが「飯能河原」。こちらは飯能市の人気観光スポットです。
緑に囲まれた自然豊かな景色の中、川遊びやバーベキューを楽しむ多くの人々で行楽シーズンは賑わいます。
「観音寺」 アニメ・ヤマノススメの聖地

その飯能河原を見下ろすような場所にある「観音寺」は、武蔵野三十三観音霊場の第24番の霊場に数えられています。
武蔵野三十三観音霊場
昭和15年(1940年)に開創された霊場です。歴史学者・郷土史家の柴田常恵氏の発願によるもので、各寺院は西武鉄道の沿線の東京都・埼玉県の各市町村にあります。
武蔵野三十三観音霊場の公式ページ

福寿殿
また、埼玉県の飯能市・所沢市・入間市の六つの寺院からなる「武蔵野七福神」の一つにも数えられており、こちらには寿老人が安置されています。

そして本来鐘が吊られている鐘楼堂に、まるで包帯を巻いたような白い象の像があり一瞬ぎょっとした!これは??
元々ここは鐘撞き堂なのですが、鐘は戦時中に金属として持って行かれてしまった。
その後の昭和40年頃、飯能銀座のせんべい店「亀屋」の店主が張り子の象を制作して、ここに収められ今に至るとのことだ。不思議な光景ですねえ。

絵馬掛けには、楽し気な漫画の絵柄の絵馬が架かってた。そう、このお寺はアニメ「ヤマノススメ」の聖地として知られる寺院なんですよ。
ヤマノススメは女子高生によるアウトドア・登山がテーマのアニメで、飯能市が主な舞台。
飯能に実在する建物や風景が多く登場し、学校帰りに主人たちが寄り道する観音寺は聖地のなかでも特に有名なスポットです。白い象はアニメにも登場します。
「諏訪八幡神社」 武蔵野七福神の恵比寿神を祀る

観音寺の脇の道に入ると、谷に続く道が急に現れます。急な地形の変化にちょっとビックリです。

谷を進んで行くと石の鳥居が出現。神社がある様ですね、立ち寄ってみます。

諏訪八幡神社
永正13年(1516年)の創建と伝わる「諏訪八幡神社」は、地元では「おすわさま」の愛称で親しまれています。緑に囲まれて自然を感じられる、清々しい境内です。

恵比寿大神 (諏訪八幡神社内神社)
境内の恵比寿神社には、武蔵野七福神の一つ「恵比寿大神」が祀られていました。七福めぐりを兼ねて歩くのも楽しそうですね。
武蔵野七福神めぐりについて
昭和6年に発足された七福神霊場で、武蔵野地区の7つの寺院をめぐるというもの。
布袋尊:山口観音(所沢市)・大黒天:長泉寺(入間市)・弁財天:円照寺(入間市)・毘沙門天:浄心寺(飯能市)・寿老人:観音寺(飯能市)・恵比寿神:飯能恵比寿神社(飯能市)・福禄寿:円泉寺(飯能市)
御朱印用の色紙や記念品の頒布も用意されています。詳しくは円泉寺の武蔵野七福神札所めぐりの紹介ページ を参照下さい。
「能仁寺から天覧山まで」 世界で唯一のアトム像も!
谷筋から上がった所には市民会館や中央公園

谷筋から上がった先には、飯能市立博物館・飯能市市民会館などの公共施設がありました。
隣接した中央公園は市民の憩いの場であるとともに、公園の無料駐車場は天覧山などへのハイキングに向かう際にも利用されているみたいですね。
飯能市立市民会館
住所:埼玉県飯能市飯能226-2(GoogleMapで開く)
開館時間:9:00~21:30
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日である場合はその翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)、 必要に応じて臨時館あり
飯能市立博物館
公式ページ
住所:埼玉県飯能市飯能258-1(GoogleMapで開く)
開館時間:9時~17時、入館料:無料
休館日:月曜日、祝日の翌日(ただしこの日が休日の場合は開館)、年末年始(12月28日~1月4日)
手塚治虫公認の世界で唯一のアトム像

そして中央公園の北側には、「鉄腕アトムの銅像」があります。
と、さらっと紹介しましたが、実はこちらは手塚治虫氏が公認した世界で唯一のアトムの像なんですよ!えっ?ホント?って感じですよね。

昭和58年(1983年)に作られた像で、お披露目の当日には手塚治虫先生自らが除幕されたそうです。これは凄いじゃないですか!
でも、なんでそんな貴重な像が飯能にあるのか、不思議ですよね。
1980年頃、手塚氏は自宅と仕事場を兼ねた建物が建てられる広い土地を探しており、飯能でも物件候補が挙がった。しかし他で土地が見つかったため、飯能に住む予定は叶わなかった。
その代わりに「飯能にアトム像を」、という飯能青年会議所の願いが叶い像を作るに至ったそうです。
その後、手塚氏の元には他からもアトム像建立の打診が何度もあったそうですが、その都度「アトム像なら飯能にありますから、あれだけで充分です」と言って断ったそうです。律儀ですねえ。
それで今でも、飯能に世界で唯一のアトム像がここに立っているという訳です。
手塚治虫(1928-1989年)
大阪府生まれ。医学博士の学位を持つが、漫画家・アニメ監督として活躍し、「漫画の神様」と称される。1946年「マアチャンの日記帳」でデビューし、翌年「新宝島」がベストセラーに。その後、「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「火の鳥」「ブラック・ジャック」など数々のヒット作を生み出し、日本の漫画・アニメ表現に多大な影響を与えた。
「能仁寺」 飯能戦争の本陣となった歴史の舞台

山門・仁王像
中央公園の向かいには「能仁寺(のうにんじ)」という寺院があります。創建は室町時代で、500年以上の歴史を持つ寺院です。
こちらは明治維新において、飯能戦争の舞台となった場所として知られています。

本堂
飯能戦争は慶応4年(1868年)5月23日に武蔵国飯能村(現、飯能市)で勃発した、戊辰戦争の局地戦です。
旧幕府軍である振武軍(渋沢成一郎・尾高惇忠・渋沢平九郎らが参加)は能仁寺に陣を敷き、対する新政府軍(大村藩・佐土原藩など)がその本陣に攻め込みました。
結果はわずか半日で新政府軍が勝利。飯能市内の約200軒の民家と4つの寺が焼失するなど、大きな被害がでました。
この飯能戦争が地元に与えた被害は大きく、街の立て直しには長い年月が掛かったようです。
~ 訪問後の追加情報 ~
訪問後の2021年2月~12月に、渋沢栄一を主人公にしたNHK大河ドラマ「青天を衝け」が放送されました。
その中で、渋沢栄一の見立て養子で、若くして命を落とした兵士・渋沢平九郎が旧幕府軍として飯能戦争に参加していた話が語られています。
能仁寺は、平九郎ゆかりの地としても注目のスポットです。
\ 渋沢平九郎についての詳しい記事はこちら!/
「天覧山」 飯能を代表するハイキングスポット

この能仁寺は 飯能を代表するハイキングスポットである「天覧山」の登り口の直ぐ近くにあります。
天覧山は特別な装備が無くても気軽に登れる低山なので、ここまで来たら是非登ってみて下さい。

標高は195mしかありませんが、この山頂の景観はどうです?なかなかでしょ。
天覧山の登山については別の記事をまとめていますので、ぜひそちらもご覧下さい。
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天覧山
住所:埼玉県飯能市大字飯能(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・西武「池袋駅」から西武池袋線特急で約40分、最寄り駅「飯能駅」下車
・「飯能駅」北口から徒歩約15分
・「飯能駅」からバスの場合、飯07/飯30:西武飯能日高ゆき乗車約5分、「OH!!!・天覧山下」下車。徒歩0分。又は、飯01:湯の沢/飯02:名栗車庫/飯03:名郷/飯04:中沢/飯05:中藤(清石橋)/飯06:上赤沢/飯11:間野黒指ゆき乗車約7分、「市民会館・博物館」下車、徒歩約3分。
車)
・圏央道「狭山日高IC」から約15分、「青梅IC」から約20分
今回のルートマップ・飯能へのアクセス
マップに今回歩いたスポットをマーキングしましたので、参考にしてみて下さい。

飯能観光協会発行の発行の「駅からマップシリーズ3」より抜粋・マーキング
「駅からマップ」シリーズのマップは、飯能市のホームページ からダウンロードできます。
飯能駅までのアクセス
電車)西武「池袋駅」から西武池袋線特急で約40分
圏央道「狭山日高IC」又は「青梅IC」より、約15分で市街地に到着
飯能のランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
\ グランピング施設もあるよ /
飯能の街を歩いてみませんか?
飯能の街を歩いてみると歴史的な古い建物のほか、アニメの聖地や世界に一つしかないアトム像などにも思いがけなく出会えたりもして、色々出てくる玉手箱のようで楽しかったですね。
街からちょっと外れると、急に川やら谷やら山などが現れ、ホント、自然を身近に感じられるエリアなんだな、と体感できました。
そんな飯能の街を歩きに出かけてみませんか?
記事の訪問日:2021/2/21
\ 限定のムーミングッズもあるよ!/




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