徳川家康を祀る東照宮といえば、豪華絢爛な建築物が並ぶ日光東照宮が思い浮かびます。
その日光まで参拝に行けない人々が江戸でも豪華な社殿に参拝できるように、ということで徳川3代将軍・家光が造営替えしたのが上野東照宮の社殿です。
戦災をまのがれた上野東照宮では、現在でも社殿を中心とした当時の煌びやかな建物を見ることができ、徳川幕府の栄華を感じられるスポットとなっています。
目次
「上野東照宮」徳川家光造営の豪華絢爛な建築物が残る
上野東照宮は寛永寺の一部として創設された

東照宮は徳川家康を東照大権現として祀る神社で、「上野東照宮」もその一社です。
ですが、上野東照宮は神社単独で創設されたものではなく、巨大な寺院「東叡山寛永寺(とうえいざんかんえいじ)」深く関わっています。
東叡山寛永寺について
寛永2年(1625年)、徳川3代将軍・家光の命により、天海僧正が上野に寛永寺を開山しました。
江戸の鬼門を守る役割を担う巨大な寺院で、京都の比叡山延暦寺に倣って東叡山(とうえいざん)の山名が付けられました。
上野東照宮もその寺院の一部として、藤堂高虎が寺地として提供した屋敷地の一部に建立されました。
寛永寺は増上寺とともに徳川将軍家の菩提寺となり、歴代将軍の霊廟が築かれました。
しかし幕末の戊辰戦争(上野戦争)で多くの伽藍が焼失し、往時の壮大な姿は失われています。
本日はそんな寛永寺の歴史の一部として残る、上野東照宮を参拝します。
\ 久能山東照宮・日光東照宮の記事はこちら!/
「大石鳥居」大老・酒井忠世が奉納した堅牢な鳥居

参道入口で参拝者を出迎えるのが、こちらの大石鳥居。これは徳川幕府の老中・大老だった酒井忠世(ただよ)が、寛永10年(1633年)に奉納したもの。
高品質の花崗岩をわざわざ備前国(現、岡山県)より運び込んで造られました。
大石鳥居は地下4mの深さまで埋められていて、関東大震災を受けても傾かなかったという頑丈な造りのもの。約400年にわたり参拝者を見守ってきた鳥居となります。
圧巻!諸大名が奉納した200基の石灯籠

鳥居をくぐり境内に入ると目に入ってくるのが、社殿に向かって参道両側にズラっと石灯籠が並ぶ景観。
これらは諸大名が奉納したもので、200基以上におよぶその数には徳川家の威厳を感じさせます。
「五重塔」日光東照宮も手掛けた甲良宗広が再建

参道を進むと、石灯籠越しの右手に立派な五重塔が見えてきます。
元々の五重塔は、寛永8年(1631年)に幕府側近だった土井利勝(としかつ)が寄進したものでした。
しかしこれは寛永16年(1639年)の火災で焼失しており、同年、日光東照宮の寛永の大造替も手掛けた大工棟梁・甲良宗広(こうら むねひろ)らにより再建されたものが現在の五重塔です。
ところでちょっと不思議なのが、五重塔が建っている柵の向こう側は上野動物園の敷地であるということ。これには時代背景的な事情がありました。
明治時代の神仏分離により五重塔は仏教施設とみなされ、神社にあった多くの五重塔が破壊の憂き目に遭いました。
これに対して上野東照宮は塔の所有を寛永寺に変更。それにより貴重な五重塔を残すことができました。
昭和33年(1958年)に寛永寺は塔を東京都に寄付したため、現在は都立の動物園の管理下にある、といった経緯になります。
苦渋の選択が、現在の美しい塔の現存につながったわけですね。
「銅灯籠」徳川家の威厳を示す48基の奉納品

そして石灯籠の先には、銅灯籠も所狭しと並んでいました。こちらもなかなか圧倒される数です。多くが創建時に諸国の大名が奉納したもので、全部で48基あるそうだ。

灯籠は人の背丈より少し大きい程度の大きさなので、家臣たちがずらっと並んでいる姿に見えてきたりもしました。
灯籠には寄進者の姓名も刻字されているので、奉納者の名前を追って見て廻るのも面白そうですね。

灯籠近くに立つこちらのムキムキな感じの狛犬は、大正時代の狛犬。
”井亀泉”の名で知られる、この地の名石工である酒井八右衛門によるものとのこと。

その酒井八右衛門が寄進したといわれるのが、こちらの大鈴。
唐門・社殿・透塀は徳川家光が造営替えしたもの

そして参道の先に光り輝く「唐門」が見えてきます。これはゴージャスな門ですね!
後方の拝殿の屋根も見えているように、唐門は透塀に囲まれた社殿エリアの入口にあたります。
唐門前が参拝所になっているので、まずは参拝の列に加わりました。

こちらが唐門の正面。唐破風が付いた門の扉は、金箔の装飾で見ごとに光り輝いていますね。唐門は国の重要文化財に指定されています。
この唐門をはじめ社殿や透塀などの現在残っている建造物は、慶安4年(1651年)に徳川3代将軍・家光により造営替えされたものです。
日光まで参拝に行けない江戸の人々が、江戸でも豪華な社殿に参拝できるように、という配慮によって建てられたといわれます。
日光に行かなくても徳川家の偉大さが伝わるように、という目的も多分にあると思われますが。。。

木造建築物ですが、金属でできたような質感の門ですね。
扉の両側には「昇り龍(右)」と「降り龍(左)」の彫刻が施されていますが、これは名工・左甚五郎(ひだりじんごろう)作といわれています。門の内側両側にも一対あるので、都合4枚あります。
左甚五郎は日光東照宮の”眠り猫”の作者としても、良く知られていますよね。

右側が「昇り龍」ですが、体は上を向いていますが頭は下向き。これは偉大な人ほど頭を垂れる、という謙虚さが表現されているとのこと。なかなか深い表現ですね。
ちなみにこの龍には、夜な夜な彫刻から抜け出して不忍の池に水を飲みに行った、という伝承が残っています。怖っ!
この手の逸話は左甚五郎作の彫刻では良く聞く話で、出来ばえが見事なので魂が宿ってしまう、ということなんでしょうね。
「御三家灯籠」透塀の前に紀伊・水戸・尾張徳川の奉納品

唐門両側の透塀前に並んでる銅灯籠は、徳川御三家により奉納されたもの。門の両側に3基ずつ並んでおり、都合6基あります。
これらは家康の36回忌にあたる慶安4年(1651年) 4月17日に奉納されたもので、奉納者は門に近い方から、紀伊徳川家・初代藩主の徳川頼宣、続いて水戸徳川家・初代藩主の徳川頼房、次に尾張徳川家・2代目藩主の徳川光義によるものです。
御三家の序列は一般的に尾張・紀伊・水戸の順ですが、家督を継いだばかりの徳川光義(家康の孫、家康の9男義直の子)の灯籠が一番門から遠い位置に置かれています。
当時の力関係が現れており興味深いでですね。
徳川御三家とは
将軍家に次ぐ家格を持った、徳川家康の子を祖とする徳川氏の3つの分家のこと。
9男・徳川義直を祖とする尾張徳川家、10男・徳川頼宣を祖とする紀州徳川家、11男・徳川頼房を祖とする水戸徳川家の三家のこと。
将軍家に嗣子がない場合に将軍を出す役割を担い、幕府を支える重要な存在でした。
社殿を囲む透塀の彫刻は200枚!

では拝観料を払って社殿エリアの拝観です。現在は唐門からは入れず、脇にある拝観入口からの入場となります。
中に入ってまず目に入ってくるのが、こちらの巨大な御神木。樹齢600年以上の古木で、上野の祖木ともいわれているんだそうだ。
幹の太さは8m以上で、多数の木々がある上野公園の中でも一番の大木だといわれています。でかくてカメラに収まりません(苦笑)。

透塀沿いに続く奥参道を進んでゆきます。この透塀も国重要文化財に指定されているんですよ。

透塀の上部には水や山の生き物や植物などをテーマとした、200枚以上の彫刻が施されています。
中には想像上の珍しい動物もいたりして、見ていて飽きません。

日光東照宮や久能山東照宮でもそうでしたが、彫刻は天下泰平の世を現す穏やかな雰囲気のテーマのものが多いですね。
光輝く権現造りの金色殿(社殿)

そしてこちらが社殿となります。
唐門に負けじと全面に金箔が使われて輝いている、金色殿の名が付くのに相応しい豪華な建築物です。
まだ幕府に資金が潤沢にあった江戸時代初期ならではの、贅を尽くした建物ともいえます。
社殿の様式は、拝殿と本殿を石の間と呼ばれる幣殿を介して一体化した「権現造り」です。権現造りの様式は、東照宮が原型となって他の神社にも徐々に広まってゆきました。

上野東照宮では徳川家康を東照大権現として祀るとともに、8代将軍・徳川吉宗、15代将軍・徳川慶喜も祭神として祀られています。
当社には出世・勝利・健康長寿の御利益があるといわれます。
徳川家康が出世・勝利の徳を持つのは当然ですが、75歳まで生き、当時としてはかなりの長寿だったことを考えると健康長寿の御利益があるのも納得です。
ちなみに創建当時より祀られていたのは、徳川家康・天海僧正・藤堂高虎の三者だったそうだ。それが明治時代の神仏分離により現在の御祭神に変わっています。

屋根下にも鮮やかな色彩の彫刻が施されています。

本殿側の方が金箔部分が多い感じで、西日を浴びてピカピカに輝いています。
金箔の上から彩色をおこなう生彩色

内側から唐門を見ると、内側に奥行きのある四脚門であることが分かります。

近付いてみると、門の柱の間に施されている羽目板彫刻に目がゆきます。

金色殿・唐門・透塀の彫刻は、一度金箔で覆った上から彩色が施される「生彩色(いけざいしき)」という手法が採られています。これは実に贅沢ですねえ。
また、膠(にかわ)と胡粉(ごふん)を混ぜて盛り上げた部分に彩色を施すという、「置上彩色(おきあげざいしき)」という手法により立体感が生み出されています。
青系でまとまった色合いからは、派手さの中にも落ち着きのある上品さを感じました。
「お化け灯籠」 日本三大灯籠の一つ

最後に上野東照宮の入口付近にある「お化け灯籠」を紹介。
こちらの灯籠は寛永8年(1631年)に、信濃長沼藩の初代藩主だった佐久間勝之が寄進したもの。高さ6.06m・笠石の周囲3.63mと、その大きさから「お化け灯籠」と呼ばれています。
これは京都南禅寺・名古屋熱田神宮の大灯籠とともに、日本三大灯籠に数えらているものの一つ。
ちなみに他の二つの灯籠も、同じく佐久間勝之が寄進したものとのこと。巨大灯籠とゆかりのある大名だったようですね。
上野東照宮の御朱印

書置きの御朱印を頂きました。
上野東照宮内にはぼたん苑があり、訪問時には春のぼたん祭が開催中で、ぼたんの花のイラストがあしらわれていました。
江戸時代に歌川広重が描いた名所江戸百景を、現在の写真や地図と対比して解説したガイドブック。
東京歩きが楽しくなる1冊!
上野東照宮の詳細情報とアクセス
上野東照宮
公式ページ
住所:東京都台東区上野公園9-88(GoogleMapで開く)
参拝)
参拝時間:冬季(10月~2月) 9:00~16:30、夏季( 3月~9月) 9:00~17:30
参拝料:無料
社殿拝観)
拝観時間:冬季(10月~2月) 9:30~16:00、夏季( 3月~9月) 9:30~17:00
拝観料:大人(中学生以上) ¥500、小学生 ¥200
アクセス:
電車)
・JR「上野駅」公園口から徒歩10分
・京成「上野駅」から徒歩12分
・東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」から徒歩10分
車)
・駐車場無し
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地震や戦火がありながら奇跡的に残った上野東照宮。豪華絢爛な建築物や奉納された多くの灯籠からは、かつての江戸幕府の力の大きさが感じられました。
上野公園内には寛永寺の面影を残すスポットも色々と残っているので、東照宮と併せて歴史散歩をするのもおすすめです。
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記事の訪問日:2023/2/5
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