西新宿には広々として緑に囲まれてた新宿中央公園がありますが、実は江戸時代のこの一帯には大きな池があり、さらには滝が流れる景勝地だったことはあまり知られていないのでは?
かの歌川広重の浮世絵にも描かれているんですよ。
そんな西新宿の歴史に出会える新宿の総鎮守「新宿十二社 熊野神社」を紹介。ビルを背景に新宿らしい佇まいを持つ神社を参拝します。
目次
新宿の総鎮守「新宿熊野神社」参拝
西新宿のランドマークである東京都庁舎の道路を隔てた西側には、緑に囲まれて広々として新宿中央公園があります。
ビル街に隣接する新宿中央公園は都会のオアシスともいえる公園で、新宿区の緑地としては新宿御苑・明治神宮外苑・戸山公園に次ぐ面積を持っています。
その新宿中央公園の北西の一角にひっそりと鎮座するのが、今回ご紹介する「新宿十二社 熊野神社」です。
新宿中央公園には行ったことあるけど、神社もあったの?なんて方も多いかもしれませんね。
ですが熊野神社は、かつての西新宿の意外な歴史を知ることができるスポットでもあるんですよ。
中野長者が熊野十二所権現を祀り創始
熊野神社の氏子の範囲は西新宿を中心に新宿駅周辺、さらに歌舞伎町地域にまで及ぶとのことで、新宿駅東口側にある花園神社と共に新宿の総鎮守とされます。
神社の創建は室町時代の応永年間で、紀伊国(現、和歌山県)から来た鈴木九郎という人物が、郷土の熊野三山の十二所権現の分霊を祀ったのが起源とされます。
熊野三山は、熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の3社の総称で、日本全国に約3千社ある熊野神社の総本社です。「紀伊山地の霊場と参詣道」として、世界遺産に登録されたことでも知られています。
熊野三山にはそれぞれの主祭神がいるのですが、それに加えて縁の深い神々が十二所権現として祀られていました。
新宿の熊野神社もそれにならい十二所権現を祀ったことから、「十二社」と呼ばれました。
神社を起こした鈴木九郎は「中野長者」とも呼ばれており、地域を開拓して財を成した人物とのこと。紀州では代々熊野神社の祭祀を務めた家柄だったらしいですよ。
江戸時代には熊野十二所権現社と呼ばれましたが、明治時代に熊野神社へと改称されています。
徳川吉宗も立寄った池や滝があった景勝地
左:十二社の碑
境内入口の嘉永4年(1851年)に立てられた「十二社の碑」(左)には、江戸時代のこの地が十二社の池や滝を擁する景勝地だったことが記されています。西新宿に滝がありましたか。。。
池というのは、慶長11年(1606年)に伊丹播磨守が十二社の地に造った、大小二つの人工の池のこと。田畑の用水溜の目的で整備されたものでした。
さらに寛文7年(1667年)になると、玉川上水の水を神田上水に分けるための堀が設けられ、これにより熊野神社東端の崖から水が落ちるところに滝ができた、ということらしいですよ。
副産物的にできた景勝地だったわけですね。
伊丹播磨守
名は伊丹康勝(やすかつ)。江戸時代前期の武士で徳川家康・秀忠に家臣として仕えました。
慶長11年に十二社池を整備した後、勘定奉行や佐渡奉行などの要職を歴任。寛永10年(1633年)には甲斐徳美藩藩主となる。佐渡金山の運営なども携わりました。
「四谷角筈十二そうの池熊のゝ社」 初代 歌川広重作
(出典:国立国会図書館)
こちらが江戸の景勝地として歌川広重により描かれた、名所江戸百景における十二社の池の浮世絵です。う~む、現在の新宿からはちょっと想像できない景観ですなあ。
享保年間(1716~1735年)には、徳川8代将軍・吉宗が鷹狩の際に参拝に立ち寄っています。
当時は池を囲んで料亭が立ち並んでいましたが、昭和30年代まではそれらがまだ残っていたらしいです。
当時の熊野神社の敷地は広範囲にわたっており、現在の新宿中央公園も元々はその一部でした。
ビルを背景にした西新宿らしい佇まいの社殿
高層ビルをバックに据えた熊野神社の社殿は、新宿西口のビル街にあって実に都会の神社らしい佇まいを見せます。
祀られている櫛御気野大神(くしみけぬのおおかみ)・伊耶那美大神(いざなみのおおかみ)の2祭神は、
商売繁盛祈願・安全祈願などの御神徳を持ちです。
新宿という場所柄、会社関係の参拝も多いようですね。
拝殿は昭和9年(1934年)に、明治神宮が改築された際の古材を譲り受けて造営されたものです。
そして提燈に描かれているのは、熊野神社では祭神を導いた神様の使いとされる八咫烏(やたがらす)。
八咫烏は日本サッカー協会のシンボルにもなっていますよね。ボールをゴールに導くように、との願いが込められているのでしょう。
拝殿前の狛犬は文化元年(1804年)の奉納品でした。頭にツノを持つタイプの狛犬ですね。
本殿
祭神を祀る本殿です。
神楽殿
神楽殿では祭礼の際に、里神楽や演芸の催しがおこなわれます。
大鳥神社では酉の市を開催
大鳥神社(境内社)
社殿向かって右側にある境内社「大鳥神社」では、毎年11月の酉の日に商売繁昌を祈念しての「酉の市」がおこなわれます。
末社大鳥三社の狛犬
こちらは大鳥神社の狛犬ですが、腹の下がくり抜かれていない狛犬は珍しいらしいです。確かに言われてみればあまり見ないような気が。。。享保12年(1727年)の奉納品でした。
胡桃下稲荷社
大鳥神社の隣の「胡桃下稲荷社(くるみがしたいなり)」では、かなり強面のお狐様が睨みを利かせていました。
大田南畝の水鉢などの文化財が残る
大田南畝の水鉢
社殿の向かって右手には、文政3年(1820年)に狂歌師・大田南畝(おおたなんぼ)により奉納された「大田南畝の水鉢 (みずばち)」が、新宿区有形指定文化財として保存されています。
大田南畝
寛延2年(1749年)生まれの文人・狂歌師・御家人で、本名は覃(ふかし)。狂歌・狂詩・漢詩・戯作・随筆など多岐にわたる文筆活動をおこない、天明期の狂歌ブームを牽引しました。
下級武士の出身ながら学問に秀いでて、幕府の官僚としても支配勘定にまで出世した人物。
延命陀羅尼二千一百萬遍読誦碑
「延命陀羅尼二千一百萬遍読誦碑(えんめいだらににせんいっぴゃくまんべんどくじゅひ)」は、延命陀羅尼経を唱えたことを記念して建てられた記念碑。江戸時代の神仏習合だった時代を物語る碑として貴重とのこと。
2100万回お経を読んだってことですかね?凄いですね。
島川玄丈人壽兆碑
「島川玄丈人壽兆碑(しまかわげんじょうじんじゅちょうひ)」は、紀州徳川家の侍医で鍼術の大家島川草玄の長寿を祝って江戸時代に造られたもの。
「御朱印」八咫烏をあしらったもの
御朱印は可愛らしい八咫烏のイラストがあしらわれたものでした。
神社に参拝に行くと、神々についてや神社施設の呼び名・役割について知りたいけど、聞ける相手もいない!
ってことありません?そんな時、網羅範囲が広い本書は結構頼もしいですよ!
新宿熊野神社の詳細・アクセス情報
新宿十二社 熊野神社
公式ページ
住所:東京都新宿区西新宿2-11-2 (GoogleMapで開く)
アクセス:
電車・バス)
・都営大江戸線「西新宿五丁目駅」A1出口より徒歩4分
・都営大江戸線「都庁前駅」A5出口より徒歩5分
・東京メトロ丸ノ内線「西新宿駅」E4出口より徒歩13分
・JR新宿駅新宿西口バスターミナル(16番,17番)より永福町行き・佼成会聖堂前行き・渋谷行きいずれか乗車で「十二社池の下」で下車(約5分)
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新宿熊野神社を参拝しませんか?
西新宿にある熊野神社を紹介しましたが、いかがでしたか?
ビル街をバックにした都会ならではの景観のなか、静かに参拝ができました。
新宿の街を長年見守ってきた新宿熊野神社を知ると、今まで知らなかった新宿の歴史に触れることもできました。
近くに来たら、参拝に立ち寄ってみませんか?
記事の訪問日:2021/4/5(御朱印は2021/8/5に頂きました)

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