中山神社は「見沼田んぼ」と呼ばれる、さいたま市の原風景を残す静かなエリアに鎮座する神社です。
氷川神社といえば、氷川神社総社として良く知られているのが同市の「武蔵一宮 氷川神社」(大宮氷川神社)。
実はこの武蔵一宮 氷川神社と、同じく同市の氷川女体神社、そしてこの中山神社は深い繋がりを持っており、かつてはこの三社で武蔵一宮の大社を構成していたともいわれています。
そんな三社の繋がりについても想いをめぐらせながら、中山神社を参拝します。
目次
「中山神社」武蔵一宮氷川神社と深い繋がりをもつ神社
中山神社は見沼田んぼと結びつきの深い神社

中山神社がある地の南側には芝川が流れますが、その川沿いには「見沼田んぼ」と呼ばれる大規模な緑地空間が広がっており、さいたま市の原風景が残っています。
かつてこの一帯にあったのは、古代の海の名残とされる「見沼(みぬま)」と呼ばれる広大な沼地。見沼は江戸時代に干拓されて、「見沼田んぼ」へと変わってゆきました。
そんな見沼や見沼田んぼとの深い関わりを持つ中山神社は、古くから地域の農耕の神として崇敬を集めてきた神社です。

本日は車での訪問でした。近隣に首都高速の「さいたま見沼IC」もあるので、車でのアクセスは比較的便利。
第二産業道路(県道)沿いに参道入口がありますが、手前の看板を見落とさないようにちょっと注意が必要かも。ポッカと空いた、社叢に包まれた参道を進みます。
ちなみに交通機関を利用して訪問する場合、最寄り駅はJRの大宮駅・さいたま新都心駅・北浦和駅あたりですが、いずれも3.5~4kmほど離れているのでそこからバスなどの利用が一般的です。
明治時代までは中氷川神社と呼ばれていた

参道を進むと、周囲の騒音から離れた静かな境内が現れます。入口脇にあった駐車場に車を駐車。
境内入口には素木の鳥居が立ちますが、これは二の鳥居でした。
通ってきた参道の途中に鳥居はなかったですが、実は一の鳥居は走ってきた県道を跨いだ西側にあります。参道を分断する形で、後から道路ができたようですね。。。
一の鳥居には帰りに立ち寄らせて頂こう。順序が逆になりますが、けっこう中山神社あるあるなんじゃないかな(苦笑)。

鳥居に掛かる扁額を見上げると、そこに書かれている社名は中山神社ではなく「氷川神社」でした。
明治時代までの中山神社の社名は「氷川神社」で、中川村の鎮守として「中氷川神社」と呼ばれていました。
明治40年(1907年)になると、周辺の神社と合祀(ごうし)されます。その際に、中川村の”中”と、隣の上山口新田の”山”の字をとった中山神社に社名変更されました。
以前は氷川神社であったことは、この神社の歴史的を語る上では非常に重要になってきます。
徳川家康より社領15石の御朱印を賜る

中山神社の創建は崇神(すじん)天皇の御代2年(西暦前95年)と伝わるので、相当の古社ということになりますね。

天正19年(1591年)に徳川家康から社領15石の御朱印を賜わった、という由緒を持ちます。
参道脇の狛犬さんは、明治時代に奉納されたものだった。
武蔵一宮氷川神社・氷川女体神社との三社で大社を形成!?

参道の先に、朱色の柱が印象的な拝殿が現れる。
御祭神は大己貴命(おおむちのみこと)を筆頭に、須佐之男命(すさのおのみこと)・稲田姫命(いなだひめのみこと)の三神が祀られています。
大己貴命は大国主神(おおくにぬしのかみ)の別名も持ち、大黒さまとも呼ばれる神様ですね。
御祭神からは、縁結び・夫婦和合・子授け・金運招福・商売繁昌・災難除去・疫病除け・病気平癒・無病息災・厄除開運・衣食住守護・五穀豊穣など、実に幅広い御神徳を頂けるとのことですよ。

ところで、さいたま市内には氷川神社の総社として知られる「武蔵一宮 氷川神社」(通称・大宮氷川神社)があります。また市内には「氷川女体神社」という神社もあります。
中山神社がかつて中氷川神社と呼ばれていたのは前述の通りですが、武蔵一宮 氷川神社・氷川女体神社・中氷川神社の三社でかつて武蔵一宮としての大社を形成していた、という説が実はあるんですね。

各社の筆頭祭神は以下の通りです。
■武蔵一宮 氷川神社の主祭神は須佐之男命(すさのおのみこと)を祀る男体社
■氷川女体神社は稲田姫命(いなだひめのみこと)を祀る女体社
■中氷川社(現中山神社)はその二神の息子にあたる大己貴命(おおなむちのみこと)を祀る王子社
この三社で家族構成の関係を持っていたといわれます。
中山神社は三社の真ん中に位置することから中氷川社と呼ばれた、という説もあるそうだ。また、簸王子(ひおうじ)社という呼ばれ方もあったとのこと。

現在の本殿は大正時代の建物
さらにこの三社の鎮座地を地図上で結ぶと、不思議なくらい綺麗に一直線上に並んでいるんですよ!
中山神社を中心に置いたその並びは、夏至には武蔵一宮 氷川神社に日が沈み、冬至には氷川女体神社から日が昇る配置となっているといいます。
これは稲作などに必要な、暦を把握するための目的だったのではないでしょうか。
このように、かつて見沼を囲むように配置された氷川三社は、稲作や水神信仰面での強い結びつきを持っていたと考えられます。
旧本殿は貴重な安土桃山期の建築物

本殿の裏手には、「旧本殿」が木造の格子に保護された状態で残されていました。
築年は明確ではありませんが、木材の測定調査によると15世紀後半~16世紀前半ものとのことで、県の有形文化財に指定されています。

この旧社殿は、神社建築様式の過渡期における特徴を持っている点で貴重らしい。
簡素だった板葺きの「見世棚造り」が軒先の長い二間社となり、階段などを装飾して「流造り」に発展していく過程が見られ、建築学上も貴重なんだそうだ。
桃山時代のものと考えられ、市内では最古、県内現存の社殿のなかでも古い型式に入るものとのこと。
すでに神様は祀られていませんが、厳かな雰囲気が感じられます。
「鎮火祭」無病息災・火伏祈願の荒々しい神事

境内に入った時に気になっていたのが、秘めやかな雰囲気を持つこちらの祭事場らしきもの。中央の碑には「御火塚」とありますが、これは!?

ここは「鎮火祭」という特殊神事がおこなわれる場所とのこと。
鎮火祭は焚き終った炭火の上を素足で渡り、無病息災と火難がないように祈願するもので毎年12月8日に行われる神事です。
この祭礼は一時期しばらく中断されてましたが、平成19年(2007年)より再開されています。
なんとも荒々しい神事ですね!一度、立ち会ってみたいものです。
江戸時代に奉納された灯籠

時代を感じさせる灯籠は、安政3年(1855年)の奉納品でした。

台座には唐獅子と牡丹が描かれている様ですね。

灯籠と台座の間に、何やら怖い顔もめっけ!神社に残る江戸時代の彫り物を見るのは楽しい。
先住の神を祀る荒脛神社

荒脛神社
境内社の「荒脛(あらはばき)神社」。
荒脛の神は氷川神社の主祭神以前の先住の神だった、といわれています。

八社合祀殿
「八社合祀殿」には、神明社・飯成社・淡嶋社・疱瘡守護社・磐社・石上社・竈神社・稲田宮主社の八社が祀られています。

稲荷神社
二の鳥居の近くに祀られている稲荷神社。
一の鳥居は少し離れた場所にあった!

忘れてはいけない、二の鳥居から300m程離れた「一の鳥居」に立ち寄り。
見逃がされそうな、ちょっと寂しい場所にありました。
凄いぞ!なんと御朱印100種類以上!?

参拝を終えたので御朱印を頂きます。
社務所は無いのですが、拝殿にいらっしゃる神職の方から御朱印が頂けました。
「どれにします?158種類ありますが。」「えっ?(絶句)。。。」
確かに拝殿脇には沢山の御朱印の見本がありましたが、ここから選べるのか。これは凄いな、びっくりです。初回なもので、まずは一番オーソドックスなものをお願いしました。

左は中山神社名の御朱印、右は氷川簸王子社の御朱印。迫力ある書体で素晴らしいですね!
それでもって「全種類の御朱印をお持ちの方、いらっしゃるんでしょうか?」と、つい下世話な質問をしてしまった(苦笑)。
「御一人だけコンプリートされた方がいらっしゃいました。御朱印帳4~5冊になりましたよ。」
と、ご親切に教えて頂いた。おお~、凄いですねえ。(再度、絶句)
神社に参拝に行くと、神々についてや神社施設の呼び名・役割について知りたいけど、聞ける相手もいない!
ってことありません?そんな時、網羅範囲が広い本書は結構頼もしいですよ!
中山神社の詳細情報とアクセス
中山神社
住所:埼玉県さいたま市見沼区中川145-65(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR「大宮駅」から国際興業バス・西浦ゆき(大12-3) 乗車、「中山神社前」下車
・JR「北浦和駅」から東武バス(岩槻駅・宮下・東新井団地行き)乗車にて、「富士見ヶ丘」下車
・JR「さいたま新都心駅」東口から東武バス(東新井団地行き)乗車にて「富士見ヶ丘」下車
車)
・首都高速「さいたま見沼IC」より約700m(約2分)
中山神社周辺のランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
周辺おすすめスポット(武蔵一宮氷川神社ほか)
氷川女体神社
かつてさいたま市にあった見沼と呼ばれる巨大な沼の主である、竜神様が祀られている神社。
ちょっと神秘的な雰囲気をもった神社ですよ。
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氷川女体神社
住所:埼玉県さいたま市緑区宮本2-17-1 (GoogleMapで開く)
※中山神社より車で約15分(約6km)。
旧坂東家住宅 見沼くらしっく館
見沼たんぼ地域にあった江戸時代の農家家屋を復原し、博物館として公開。
囲炉裏体験など、普段味わえない体験もできますよ。
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旧坂東家住宅 見沼くらしっく館
住所:埼玉県さいたま市見沼区片柳1266-2(GoogleMapで開く)
※中山神社より車で約10分(約4km)。
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中山神社へ参拝に出かけませんか?
中山神社はこじんまりとした神社でしたが、歴史を感じさせる古社でした。
静かな境内で一直線に並ぶ氷川三社をイメージしながら、興味深く参拝させて頂いた。
100種類以上もある御朱印にも驚きです。初めてで少々面食らいましたが、ゆっくり選びたいなあ。
そんな古くて新しい魅力がある、中山神社に参拝に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2021/8/8




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