江戸時代、武蔵野台地の突端にあたる王子に流れていた石神井川(当時は音無川)沿いには、滝や淵が連続する荒々しい景観が広がっていたといいます。この様子は歌川広重の浮世絵にも描かれているんですよ。
音無川は両岸にある飛鳥山や王子大権現とともに、江戸に近い景勝地として賑わいを見せました。
そんな音無川の渓谷の景観をモチーフに整備されたのが、情緒のある公園「音無親水公園」です。その音無親水公園を春に訪問したので、満開の桜模様と共に紹介します。
目次
「音無親水公園」渓谷風の公園で桜を楽しむ
音無親水公園は隠れた桜の名所
北区周辺の桜の花見スポットといえば、やはり飛鳥山公園が有名。
ですがもう一か所、飛鳥山公園からも程近い「音無親水(おとなししんすい)公園」の桜も良いよ、と聞いたので開花の季節に訪問してみました。
最寄り駅であるJR王子駅の親水公園口を出ると、公園へと繋がる小道が続いています。とても風情のある道で、なんだか温泉地に来たみたい、そんな気分で進んでゆきます。
ほどなく公園入口に到着。音無親水公園は北区区立の公園です。
音無川は歌川広重も描いた景勝地
最初に公園があるこの辺りの歴史を少し振り返ります。
写真は公園の上を通る音無橋のたもとにあった、歌川広重がかつてこの地を描いた名所江戸百景の浮世絵の一枚「王子音無川堰棣(えんたい)」です。
王子は武蔵野台地の突端に位置しますが その中を流れる音無川(現、石神井川)の両岸には浸食で谷が形成され、谷沿いの湧水が流れ落ちて滝となっていました。
王子の辺りを歩くとけっこう起伏のある街だなあ、とは感じていましたが、江戸時代には滝があったとはねえ。
それらの滝は「王子七滝」と称され、近くの王子大権現(現、王子神社)や、桜の名所として民衆に開放放されていた飛鳥山などとともに、江戸近郊の行楽地として人気を集めたそうです。
\ 飛鳥山公園の詳細についてはこちら!/
かつての音無川は現在は石神井川と呼ばれますが、その川筋は昭和30年代の工事でコンクリート下を流れる暗渠となりルートも迂回されました。
残った旧流路を、昭和63年(1988年)に公園化したのが音無親水公園です。その際、かつてあった自然の美しい景観を後世に伝えるために、渓谷がモチーフとなりました。
夏には深さ10~20cm程の水を流すこともあり、子供の水遊び場として人気のようですよ。街中にいながらにして、沢遊び気分が味わえそうですね。
音無親水公園は、平成元年に設定された「日本の都市公園百選」に選ばれています。
これは優れた景観・独創性・個性的という観点から選ばれたもので、都内では音無親水公園のほか、昭和記念公園・日比谷公園・上野公園・日比谷公園・水元公園などが選ばれています。
渓谷風の公園で起伏のある桜模様を楽しむ
音無親水公園の桜は満開でちょうど見頃でした!
植えられている桜の本数は実はそれほど多くなく、ソメイヨシノやヤマザクラほかで約20本程度です。
約600本の桜がある飛鳥山公園には規模的にはおよびませんが、でも、ここの桜の景観はとても良い感じです。川沿いに密集して植えられているので、とても映えるんですね。
渓谷風の起伏のある奥行きのある景観が、飛鳥山公園にも負けじと印象的な風景を見せてくれて、なかなかですよ。
桜模様に風情を添える木橋
川跡沿いでは、花を近くから見ることができます。
こちらの「舟串橋(ふなくしばし)」は、昭和33年(1958年)の狩野川台風で流された橋を復元したものとのこと。枯れた感じで復元されており、桜との相性もバッチリ!
狩野川台風
昭和33年(1958年)9月に日本を襲った大型台風で、特に静岡県狩野川流域に甚大な被害をもたらしました。
豪雨により狩野川が氾濫し、堤防決壊や土砂災害が発生。死者・行方不明者は約1,200人に上った、戦後最大級の自然災害の一つです。
関東地方でも豪雨と強風をもたらし、多摩川や荒川などで河川の氾濫や土砂災害が発生。交通網やインフラが大きく被害を受けるなど、生活・経済活動に大きな影響を与えました。
「音無橋」渋沢栄一が建設を支援したアーチ橋
公園の南側には美しい3連型アーチ状の大きな橋、「音無橋」が公園を横断しています。
遠景で見ると、奥多摩にでもありそうな渓谷美あふれる風景じゃないですか?北区でこんな趣のある景観が見れるなんて、知らなかったなあ。
昭和6年(1931年)に竣工された音無橋は、鉄筋コンクリート造の橋。
渓谷で分断されていた王子町と滝野川町を結び、交通の利便を高めるために造られたものです。
こんな装飾性のある手が込んだ橋が造られた背景に居た人物は、かの渋沢栄一。
渋沢栄一は王子製紙工場を創設し飛鳥山に別邸を構えるなど、この地域の発展に尽力しました。音無橋の建設資金を支援することにより、橋の建設実現も後押ししています。
音無橋から見下ろす公園の桜もなかなか良いです。
新緑とのコントラストもグッド。
立体感があって奥行きのある景観が楽しめる点が、音無親水公園のおすすめポイントです。
「王子神社」江戸時代は徳川家の勅願所だった
こちらは「王子神社」が鎮座する、公園北側の高台からの景観。
音無親水公園訪問の際は、隣接した場所に鎮座する王子神社に立ち寄って参拝したい。
王子神社の創建は、鎌倉時代後期に領主・豊島氏が紀州の熊野三社の王子大神をお迎えしたのに始まると伝わります。
江戸時代には幕府から朱印地二百石が寄進され、将軍家祈願所と定められます。「王子大権現」の名称で呼ばれ、音無川とともに江戸名所の1つとなりました。
明治時代になると、明治天皇により准勅祭神社の一社にも選定されています。現在は元准勅祭神社として、東京十社に数えられます。
境内には樹齢600年と伝わる大イチョウが残っていますよ。
\ 東京十社めぐりについての詳しい記事はこちら!/
江戸時代に歌川広重が描いた名所江戸百景を、現在の写真や地図と対比して解説したガイドブック。
東京歩きが楽しくなる1冊!
音無親水公園の詳細情報・アクセス
音無親水公園
住所:東京都北区王子本町1丁目(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR京浜東北線・東京メトロ南北線「王子駅」下車、徒歩1分
・都電荒川線「王子駅前」停留場下車、徒歩2分
車)
・園内に駐車場無し
王子のランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
音無親水公園へ出かけてみませんか?
かつての景勝地の風景に想いを馳せながら、風情のある花見が楽しめました。
公園や周囲に起伏があるローケーションなので、見る場所によって印象が変わるのも良かったです。
飛鳥山公園の影に隠れた桜の穴場スポット音無親水公園へ、桜の季節に訪ねてみませんか?
記事の訪問日:2021/3/23

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