内閣総理大臣だった鳩山一郎氏が建てた私邸が、文京区音羽の高台に「鳩山会館」として公開されています。
大正時代の豪華な洋館は、芸術的価値が高い館内の装飾を含めて見どころが多いです。また鳩山一郎氏が総理大臣に就任していた時代には、政治の舞台として活躍した歴史を持つ場所でもある。
綺麗に手入れされた英国風の庭園はバラの名所として知られており、90種160株もの色とりどりのバラが楽しめます。
そんな鳩山会館の見どころを紹介。立ち寄った洋食ランチのお店の紹介もありますよ。
目次
「鳩山会館」音羽の丘の上に建つ大正時代の洋館
音羽御殿と呼ばれた元内閣総理大臣 鳩山一郎氏の邸宅

鳩山会館は、昭和29年から昭和31年にかけて内閣総理大臣を務めた鳩山一郎氏が、大正13年(1924年)に建てた旧鳩山邸(私邸)を一般公開しているものです。
大規模な修復工事を経て、平成8年(1996年)より公開されています。
鳩山一郎(1883-1959年)
昭和期の政治家で、第52・53・54代内閣総理大臣を務めた。
東京帝国大学卒業後、法学者・政治家として活躍し、自由党・日本民主党を経て自由民主党の初代総裁となる。戦後の占領期には公職追放を受けたが、復帰後は「自主外交」と「日ソ国交回復」を掲げ、昭和31年(1956年)に日ソ共同宣言を実現させた。
温厚な性格と折衝力で知られ、戦後日本の独立と国際社会復帰に大きく寄与した政治家。

守衛もいないオープンな入口から中へ(大丈夫なのか?)。緑に囲まれた緩やかな坂道を上がってゆきます。
鳩山邸は文京区北部に位置する音羽(おとわ)にあり、地名をとって通称・音羽御殿なんて呼ばれ方もしたそうだ。
音羽は、徳川5代将軍綱吉の母・桂昌院(けいしょういん)の発願で建立された、護国寺があることでも知られます。地名も、桂昌院の信任が厚かった「奥女中の音羽」という人物に、この地の領地を与えたことが起源だとか。
ちなみに護国寺は、大隈重信・山縣有朋・三条実美などの著名人が眠る場所でもあります。
日本建築の第一人者 岡田信一郎による設計

100m程上がると落ち着いた雰囲気の洋館が現れ、こちらがエントランスとなります。なんともゴージャスな雰囲気ですね!

見上げた壁面には、鳩山家のシンボルである鳩の彫刻が。鳩は邸内のアクセントとなっており、この後も度々出会うことになります。

鳩山邸を設計したのは、近代の日本建築を代表する建築家の一人である岡田信一郎氏。
岡田氏は一郎氏の友人でもあり、二人は旧制中学時代からの竹馬の友の間柄だったそうですよ。
鳩山邸は当時はまだ珍しかった鉄筋コンクリート造りで、新しい技術が駆使されました。明治生命館や歌舞伎座などとともに、岡田氏の代表建築の一つとされています。
岡田信一郎(1883-1932年)
大正から昭和初期にかけて活躍した建築家。西洋建築様式を取り入れつつ、日本的美意識を融合させた作品で知られる。
東京帝国大学卒業後、辰野金吾に師事したのちに独立。代表作に「大阪市中央公会堂」「明治生命館」「歌舞伎座(第3期)」などがあり、重厚で格調高いデザインが特徴。近代建築の黎明期において、日本建築界の発展に大きく貢献した人物。
NHK連続テレビ小説「虎に翼」のロケ地

鳩山会館は有料施設なので、建物に入った場所にある券売機でぽちっとチケットを購入。一般大人は600円でした。
ここで、入口に貼られていたNHK連続テレビ小説「虎に翼」のポスターが目に付いた。鳩山会館はこのドラマのロケ地として使われているんですって。
ドラマは、昭和初期を舞台に、日本で初めて女性として法曹界で活躍した人の話です。
鳩山一郎時代は政治の舞台にもなった応接室

見学は館に入って右手にある「第1応接室」から。
こちらでは会館の紹介ビデオが流れていますが、ソファーに座って見れるので、なんだか凄くくつろいだ雰囲気の絵ですね(苦笑)。
紹介ビデオのホスト役は、平成21年(2009~2010年)に第93代内閣総理大臣を務めた鳩山由紀夫氏。鳩山一郎氏が祖父にあたる由紀夫氏は、現在の鳩山会館の館長です。
現在の邸宅の土地の資産評価額は約50億円ほどあるらしいが、一方、施設維持費が年間約1億円掛かるらしい。なんだか庶民にはピンとこない額ですが(苦笑)。

第1応接室の奥にあるには「第2応接室」。
鳩山一郎氏が首相だった当時は、この応接室が重要な政治の舞台として活躍したそうですよ。
第1応接室もそうでしたが、館内で新鮮に感じたのが応接室のソファーに座れること。歴史的な建造物の見学には大抵、「座らないで下さい」のプレートがつきものじゃないですか?
ここは違って、ソファーでくつろいだ鳩山ファミリー目線で部屋を見ることができます。見学者的には有難いですが、ここらが維持費が掛かっている部分かもしれないですね。。。
一部の資料室を除いて、館内の写真撮影がOKなのもありがたかった。

庭園に面した壁側は、アーチ型のすりガラスが印象的だ。
カーテンを開ければ庭園のパノラマが広がる、開放的な造りです。

館長・鳩山由紀夫氏の像。鳩山家は政治界の中でも、華麗なる一族といわれています。
元内閣総理大臣だった由紀夫氏の祖父・一郎氏をはじめ、元外務大臣の父・威一郎(いいちろう)氏、元法務大臣他歴任の弟・邦夫氏と、家系には政治家経験者がずらっと並ぶ。
ちなみに鳩山由紀夫氏は、現在は政界を引退しています。
小川三知作のステンドグラスが室内を彩る

館内で印象的な装飾の一つがステンドグラス。これらは、日本初のステンドグラス作家ともいわれる小川三知(さんち)氏の作品です。
大正から昭和初めに活躍した工芸家ですが、現存作品が少なく、鳩山会館にあるものも貴重な作品群となります。
小川三知(1867-1928年)
日本のステンドグラス工芸の先駆者だった美術工芸家。
東京美術学校(現・東京藝術大学)で日本画を学んだ後、アメリカに渡りステンドグラス技術を習得。帰国後は洋風建築に調和する装飾としてのステンドグラスを独自に発展させた。
代表作は「鳩山一郎邸」「旧前田侯爵邸」のステンドグラスが挙げられ、繊細な色彩と日本画的な構図が特徴。和と洋を融合させた芸術性で高く評価されています。

食堂のステンドグラスは食がテーマの図柄だった。描かれている果物はライチ。

階段の吹抜けにある巨大なステンドグラス。洋風の技法と和がマッチして、独特の世界観が味わえる作品です。

法隆寺五重塔を模したとされる図柄は、とても立体的な仕上がり。私的に館内の装飾では、これが一番印象的でした。
2階には大広間と資料室

階段手前の電燈が作り出す影もこれまたアート。唐草模様のような影を映す演出はユニークだ。

庭園全景が望める2階中央の大広間。元々3つあった寝室を、一般公開時の改装に際して大広間に改造したそうだ。
フロアーは加湿器による湿度管理が必要な、特殊な木組みの床らしい。繊細な造りなんですねえ。
2階の書斎と和室は一郎氏のゆかり品の展示室に、客間は一郎氏の奥様のゆかり品の展示室になっています。こちらの展示室は写真撮影は不可でした。
ナチュラルな雰囲気の英国風庭園

館内を一通り見学した後は、楽しみにしていた庭園へ。
1階の応接の扉を抜けると、すぐ庭園に出られるオープンな造りです。

庭園側からの邸宅外観。
屋根には愛らしいミミズクの彫刻が載っています(白く飛んでおり、見えづらくてスミマセン)。ミミズクやフクロウは、ヨーロッパでは英知や知恵の象徴とされています。

鳩山一郎氏の両親である鳩山和夫・春子夫妻の像が建つベンチ。その傍らにはさり気無く鳩のブジェが。。。

その先に邸宅創設者である鳩山一郎氏の銅像があります。

像の傍らには、一郎氏が理念とした「友愛」の名が付いた赤いバラが植えられていました。
やはり洋館とバラはベストマッチ!

庭園西側では、洋館を背景に映えるアーチ仕立てのツルバラが楽しめました。やはり洋館にはバラが良く似合いますね!

小道に架かるアーチのツルバラは優雅ですねぇ。

アーチをメインで飾るのは黄色のフリル咲きのバラ。
庭園では90種160株のバラが楽しめる

庭園には90種もの多種多様なバラが、160株植えられています。
印象的だったバラをいくつかご紹介。

「ドフト ゴールド」は、ドイツ語で”香る金”の意味だという。その名の通り、かぐわしい香りにうっとり。

鳩山一郎が好んだというフランス原産の「ピース」。
ふんわりとしたレース咲きの花弁に、ピンクの縁取られた繊細な色合い。エレガントで魅力的なバラです。

ドイツ原産の「スーパースター」。別名トッロピカーナとも呼ばれ、トロピカルフルーツのような良い香りが楽しめます。

変わった模様が印象的。

可憐な雰囲気の「ジョン・F・ケネディ」は、かつての大統領にちなんだ米国産のバラ。

ドイツの「ブルームーン」は、強香で知られます。

南側にある小山の上からは立体感のある景観が望めます。庭園内は歩いてみると、見た目以上に奥行きがありました。
鳩山会館の詳細情報・アクセス
鳩山会館
公式ページ
住所:東京都文京区音羽1-7-1(GoogleMapで開く)
開館時間:10~16時 ※入館は15:30まで
休館日:月曜日 ※祝日の月曜は開館し、翌日は休館。資料整理・修繕のため1~2月と8月は休館。
入館料:大人 600円、シルバー 500円(65歳以上)、障がい者 400円(同伴者1名)、学生 400円(高校生以上)、小中学生 300円、団体20名以は各料金100円引き
アクセス:
電車)
・東京メトロ有楽町線「護国寺駅」から500m、徒歩約8分
・東京メトロ有楽町線「江戸川橋駅」から450m、徒歩約7分
・都営バス(上野松阪屋~早稲田)、音羽一丁目バス停下車
車)
・駐車場:乗用車2台(無料)、大型バス1台(無料/先着順) ※台数に限りがあるので、電車・バス利用を推奨。
庭園デザイナーが東京の名庭園を解説。
庭園鑑賞の視野を広げてくれるとともに、新たな東京の魅力も発見できます。
「ビストロ・ソレイユ」 美味しい洋食ランチを!

鳩山会館訪問時に、フレンチを頂けるこちらの「ビストロ・ソレイユ」でランチをしました。郊外の森の中にあるような佇まいですが、これが幹線道路に面した場所なんですね。
開店前にも関わらず、10人程度の待ちがあった人気店です。

それほど広くはない店内は家庭的な雰囲気で、妙に落ち着きますねえ。この雰囲気が人気の理由の一つなんでしょう。
ランチメニューのビーフシチューソレイユ風(1300円)を頂きました。トロトロに煮込まれた肉を深みのあるソースで頂けば、昼から幸せな気分に。
冷製のポタージュスープとサラダ、さらにフランスパン(お代わりもできた)も付いており満腹だわ。この値段でこの味・内容はかなりオススメ!ご馳走様でした。
東京メトロの江戸川橋駅から鳩山会館に向かう手前のグッドポジションにあるので、是非行ってみてください。
ビストロ・ソレイユ
住所:東京都文京区音羽1-3-3 サカエ音羽マンション101(GoogleMapで開く)
営業時間:
11:45〜14:30(L.O. 14:00)、18:00〜 20:00
定休日:月曜日 *営業時間・定休日は変更となる場合があり。来店前に店舗にご確認ください。電話:03-3943-1440
アクセス:
電車)
・東京メトロ「江戸川橋駅」下車、1a出口より徒歩3分
・東京メトロ「護国寺駅」下車、5出口より徒歩10分
車
・駐車場無し
鳩山会館周辺ランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
鳩山会館へ出かけませんか?
鳩山会館はアクセスしやすい場所にありながら、高台の静かな場所にあります。洋館や庭園のバラを楽しんでいると、思わず都内にいることを忘れてしまいそう。
バラを見ながら優雅な午後を過ごしに、鳩山会館へ出かけてみませんか?
記事の訪問日:2024/5/12



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