埼玉県越生町にある「黒山三滝」は都心からも比較的近い場所にありながら、自然に囲まれた山間部にあります。
古代の地層が生み出した独特の地形を流れる黒山三滝は、かつて山岳宗教の修験道の場所としても使われたという、ちょっと神秘的な雰囲気を持った場所でもあります。
そんな涼しげで少し秘めやかな雰囲気を持った都心近隣の秘境スポット、黒山三滝を紹介します。
目次
「黒山三滝」 黒山自然公園にある秘境の雰囲気をもつ滝
日本観光地百選にも選ばれたかつての鉱泉地

本日は車での訪問。
越生町(おごせまち)の中心部から、越辺川(おっぺがわ)と並行する県道を上流に向かって走ること約15分。
山間部に差し掛かったかな、と思った辺りに黒山三滝入口が現れます。その先にあった町営の無料駐車場に駐車しました。
黒山三滝は越生町・ときがわ町・毛呂山町にまたがる9,420.2haに及ぶ、県立黒山自然公園内にあります。
この辺りは秩父の山並みと丘陵地帯の境目にあたる地形が特色で、史跡や名所に富む場所。黒山三滝のほかには鎌北湖(毛呂山町)などがハイキングスポットとして良く知られています。
\ 黒山三滝にも近い太田道灌ゆかりの地の記事はこちら!/

車から降りて進むと、ちょっと観光地っぽい景観が見えてきました。

洒落た感じの建物はカフェ・飲食店「文学館」。
かつては黒山鉱泉館という天然鉱泉館として営業されていましたが、平成26年(2014年)に鉱泉館としては廃業されてます。
黒山三滝の観光地としての盛り上がりは、江戸時代に始まります。
越生出身の尾張屋三平という人物が江戸の新吉原に暖簾をあげ、そこで故郷の黒山三滝を宣伝。それにより江戸から多くの観光客が訪れるようになりました。
明治時代に鉱泉も発見された黒山三滝は、県内有数の観光地として知られるようになります。

文学館の前に映えスポットらしき公園がありますが、ちょっと唐突感を感じます(苦笑)。
昭和に入り、昭和25年(1950年)に毎日新聞社が日本観光地百選を選定しましたが、黒山三滝はその瀑布の部で入選。翌年には黒山三滝を中心として、黒山自然公園が認定されました。
現在は鉱泉宿も既にすべて廃業され、鉱泉地自体が消滅しています。
大正時代に田山花袋も訪れた場所

公園の近くに「田山花袋紀行の地」の看板があるように、小説家の田山花袋も大正7年(1918年)に黒山鉱泉の宿を訪れています。
田山花袋(1872-1930年)
自然主義文学の先駆者で、代表作「蒲団」「田舎教師」などで私小説を確立。身辺な現実を赤裸々に描く作風で注目されました。
旅好きとしても知られ、全国を巡り多くの紀行文を執筆。「温泉めぐり」などの作品には風景や人々の生活が写実的に描かれ、明治・大正期の日本の姿を今に伝える貴重な記録となっています。
かつては著名人も訪れた名勝だったことが伺えます。
森林浴を楽しみながら山間部の道をゆく

山間に続く緑に囲まれた道を、森林浴を楽しみながら滝に向かいます。この辺の道は舗装されており歩きやすい。

滝から流れ落ちた水が作る渓流が、道と並行して涼し気に流れます。

のぞいてみると、水は澄んでとても綺麗です。

やがて現れた老舗食堂の「根っこ食堂」。入口にあったくろやま文学館とは対照的な、激シブの飲食店ですね(苦笑)。
営業時間は終わっているのかな?訪問時は閉まってました。
根っ子食堂
住所:埼玉県入間郡越生町黒山991(GoogleMapで開く)
営業時間:11~15時(不定時)
定休日:金曜日(祝日の場合は営業)
源義経伝説がある顔振峠など、散策路も多い

「関東ふれあいの道」と呼ばれる、東京都八王子を起終点に関東の1都6県をぐるりと1周できる、総延長は約1,800kmの首都圏自然歩道があるそうなんですね。これは歩き応えがありそうだ。
「関東ふれあいの道」のうち、この越生エリアでは「義経伝説と滝のあるみち」として散策路が設定されています。
黒山三滝を抜け、さらに傘杉峠と顔振峠(かあぶり)峠を抜ける8kmのコースです。
顔振峠はかつて奥州へ逃れる源義経が歩いた際、景色の良さに顔を振りながら登った、という伝承から峠名が付いたといわれます。
源義経(1159-1189年)
平安時代末期の武将で、源頼朝の異母弟として知られる。源平合戦では、一ノ谷や屋島、壇ノ浦の戦いなどで数々の武功を立てた。
頼朝との対立により追われ、奥州藤原氏を頼るも裏切られて最期を迎えました。
華々しい戦歴と悲劇的な最期で、多くの伝説や物語に取り上げられ、今も人気の高い歴史上の人物です。

進んで行くと、徐々に山間部の雰囲気が深まります。
マスつり場では、釣らずしてニジマス・イワナの塩焼きを食べれることもできるようです。帰りに寄ってこうかな。

滝の入口付近には昔から続いていそうな土産屋が並び、レトロな雰囲気を醸し出していました。
「男滝・女滝」 熊野三山に見立てた修行の地

黒山三滝は一つの滝の名称ではなくその名の通り3つの滝の総称で、上流側から「男滝」「女滝」の2つの滝と下流側の「天狗滝」からなります。
下流の天狗滝を一旦通り越して、上流側の2滝を先に見学します。ちなみに滝の見学は無料です。
手前左側が落差4.5mの女滝、右手奥が落差11.2mの男滝です。
男滝は女滝よりも落差と水量があり、その名の通り男らしく荒々しい感じがします。
黒山三滝は、かつて山岳宗教修験道の拠点として信仰を集めた場所です。室町時代の応永5年(1398年)、栄円という修験者が関東に修験道を広める拠点として山本坊を開きました。
その際、熊野三山(現、和歌山県)にならい、熊野神社を本宮、男滝を那智社、天狗滝を新宮に見立てられました。
熊野神社は黒山三滝入口近くにありました。山本坊は江戸時代、隣町の毛呂山町に移ったそうです。
熊野三山とは
熊野三山は和歌山県の熊野地方にある,熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の三つの神社の総称です。古くから山岳信仰と神仏習合の聖地とされ、平安時代以降は多くの参詣者を集めました。
自然と一体化した神秘的な風景と信仰の歴史は、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されています。日本人の心に深く根ざした霊地のひとつです。

女滝は比較的小さな滝ですが、ちゃんと滝壺があるのが可愛らしい感じです。
滝業ではやはり女滝で徐々に慣れてから、男滝に移行していったのですかね。

毎年7月の第1日曜日におこなわれる滝開きの式典では、山伏や巫女・修験者・天狗の格好をした人たちにより、滝清めの儀や滝打たれの儀がおこなわれるそうです。
これは越生町の初夏の風物詩だそうですよ。
「天狗滝」 古代の地層が造る荒々しい空間!

少し戻って下流側の「天狗滝」を見に来ました。お~、こちらは結構ワイルドな感じのロケーションですね!

天狗滝は手前に見えている小さな滝ではなく、一番奥にチラっと見えている流れがそれです。

この辺のゴツゴツとした地質は、秩父中・古生層(ちちぶちゅうこせいそう)と呼ばれる古い時代にできた岩盤とのこと。1~2億年前の古い地質らしいですよ。へぇ~、って感じですよね。
足元が滑りやすい場所もあるので、歩きやすい靴で来た方が良さそうです。
そしてこちらが天狗滝。周囲の地形がワイルドな割には、流れは繊細な感じ。

滝を落ちた水が、川向かって涼し気に流れていました。
1万歩から2万歩で歩けるって条件がはっきりしているのがグッド!歩きたい場所満載。
黒山三滝の詳細情報・アクセス
黒山三滝の詳細情報
黒山三滝
住所:埼玉県入間郡越生町黒山(GoogleMapで開く)
アクセス)
電車)
・東武・JR「越生駅」下車、川越観光バス黒山行き乗車で25分、終点「黒山」下車で徒歩15分
車)
・関越道「鶴ケ島IC」から、国道407号経由で約40分(約18km)。
・関越道「坂戸西スマートIC」から35分。
アクセスについて
バス
川越観光自動車の路線バスがあります。バスは基本1時に一本ですが、運行のない時間帯もあるので注意。
川越観光自動車の公式ページ
レンタサイクル
サイクリングを兼ねてのレンタサイクルというのも一考かと思います。
越生町観光協会で、電動アシスト自転車のレンタサイクルをおこなっています。
利用料金:4時間以内 1,000円 / 4時間超 1,500円
利用時間:8:30~16:00
貸出自転車:電動アシスト自転車26型
貸出・返却:越生町観光協会事務所(越生駅西口)
その他:
・貸出しには、本人確認書類(免許証・保険証・学生証等)が必要です。
・小学生以下の方への貸し出しには、保護者の同伴が必要です。
・希望に応じてヘルメットノ貸出しあり。
問い合わせ先:越生町観光協会 TEL 049₋292₋1451
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渋沢平九郎自決の地
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龍穏寺
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龍穏寺
住所:埼玉県入間郡越生町龍ヶ谷452-1(GoogleMapで開く)
※黒山三滝から龍穏寺までは車で約15分(約6km)。徒歩だと約1時間。
バスの場合は「黒山」から最寄りの「上大満」まで約2分、下車後徒歩25分。
山吹の里公園
太田道灌にまつわる「山吹の里伝説」の故地といわれる場所。
約3千本植えられている山吹が例年4月から5月にかけて咲き乱れ、黄金色に輝きます。
山吹の里歴史公園
住所:埼玉県入間郡越生町如意(GoogleMapで開く)
※越生駅から徒歩7~8分の場所にあります。車だと2~3分。
越生梅林
越生を代表するスポットで「関東三大梅林」の一つ。
毎年2月中旬~3月中旬にかけて「越生梅林梅まつり」が開催されます。
越生梅林
住所:埼玉県入間郡越生町堂山113(GoogleMapで開く)
※黒山三滝からは車で約10分(約6km)。バスの場合は「黒山」から最寄りの「梅林入口」まで約7分、
~観光案内所・お土産処~
越生町インフォメーションセンター
越生町の観光案内所。
お土産の販売や、コーヒーや軽食の販売もあり。
レンタサイクルについて
電動アシスト自転車のレンタサイクルサービスがあります。
貸出しに必要なもの:本人確認書類(免許証・保険証・学生証等)
利用料金:4時間以内 1,000円、4時間超 1,500円
利用時間:8:30~16:00
貸出自転車:電動アシスト自転車 26型
貸出・返却場所:越生町観光協会事務所(越生駅西口)
その他:
・小学生以下の方への貸出しには、保護者の同伴が必要。
・ご希望に応じてヘルメットの貸出しあり。
問い合わせ:越生町観光協会(TEL.049₋292₋1451)




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黒山三滝にでかけてみませんか?
黒山三滝は、比較的手軽に行ける割にちょっと秘境のような雰囲気があり、自然に囲まれ涼を感じられるスポットでした。
周辺の散策路や歴史スポットとあわせて訪問すると良いと思います。春であれば、越生町の名所・越生梅林への花見とあわせての訪問も良いですよ。
黒山三滝に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2021/10/10
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