日本を代表する世界的な建築家であった丹下健三氏。
その代表的な建物の一つである「東京都庁舎」を中心に、新宿近辺にある丹下氏が設計した建築物をめぐります。
東京都庁舎は現在は新宿を代表するランドマークですが、改めて不思議な形状をしたその建物を、外から中からと色々眺めて歩きます。
あわせて紹介する丹下氏が設計した教会も、なかなか驚愕のデザインですよ。
目次
東京オリンピック・万国博覧会で世界に評価された丹下健三
建築界の巨匠であった丹下健三氏の設計した建築物は、都内でもいくつか見ることができます。
今回はその代表作の一つである東京都庁舎ビルを中心に、新宿近辺の建築物を見に出かけてみました。
まずは丹下健三氏の横顔を紹介。
丹下健三(たんげけんぞう)(1913-2005年)
丹下健三氏は日本を代表する建築家です。
戦後の復興を象徴する昭和39年(1964年)の東京オリンピックの開催のために建設した、「国立代々木競技場」で世界的な賞賛を浴びます。
また、昭和45年(1970年)に開催された日本の高度経済成長期を象徴する大阪万国博覧会で、会場の設計を任されます。
会場の建築物は岡本太郎氏の個性的な太陽の塔と共に、日本の建築技術の高さを世界にアピールしました。
その後も日本のみならず20ヶ国以上で建築や都市計画を手掛け、「世界のタンゲ」と呼ばれた20世紀を代表する建築家の一人といえます。
昭和55年(1980年)には文化勲章を受章し、昭和62年(1987年)には日本人として初となるプリツカー建築賞を受賞しています。
日本で最初に世界的な活躍をした建築家です。
\ 代々木競技場ほか、新宿以外の丹下健三の建築物紹介はこちら! /
『東京都庁舎』 丹下健三が設計した副都心の巨大ランドマーク
「第一・第二本庁舎」 ノートルダム寺院!?高層ツインタワー
新宿の「東京都庁舎ビル」は副都心を象徴する、ランドマークタワー的な存在の建築物です。
平成2年(1990年)のバブル期に建てられた、現在でも新宿一の高さを誇ります。
当時丸の内の旧庁舎から業務が移されて以来、東京都政の中枢を担っている場所です。
ここでは1万人以上の職員の方が働いているんですよ。
東京都庁舎は第一本庁舎・第二本庁舎・都議会議事堂の3棟の建築物と、約300m2の都民広場から構成されています。
東京都庁舎ビルは、1970年代以降おもに海外の建築設計をおこなってきた丹下氏が、久々に日本の大型案件に着手した集大成的な建築物といえます。
第一本庁舎のシルエットはパリのノートルダム寺院の大聖堂のようだ、といわれるように、海外の建築物の影響が見られます。
しかし改めて見る都庁舎の建物は、今もって物凄い規模の建築群ですね。
高層タワーは遠目では2つのビルが並ぶ比較的シンプルな造りに見えましたが、近くで見るとビルの形状も素直な四角い形ではなく何だか複雑ですわ。
第一本庁舎の正面入口付近の窓部周囲は、格子戸のようにも見えます。
よくよく見てみると神社の鳥居っぽい形が見えたりして、実は和風の味付けも隠されている気がしました。
「都議会議事堂」 サン・ピエトロ広場から着想した都民広場
中央の都庁通りを挟んで、東側には「都議会議事堂」と都民広場があります。
都議会議事堂は都議会本会議などが開催される、地上7階・地下1階の造りの建物。
6階・7階は議場として吹き抜けになっています。
半円形の外観の建物が、都民広場を取り囲むレイアウトです。
円形広場は、バチカンのサン・ピエトロ広場からヒントを得て設計されたそうです。
無料展望室から国立競技場やスカイツリーを望む
展望台は無料で開放されており、地上202mある新宿一高いビルからの絶景が楽しめます。
訪問の際には是非上がってみたいスポットです。
展望台からは建物側面が見えます。
建物の複雑な形状は、ベースとなる四角い柱状の建物に、三角の出っ張りを付け足して創り出しているんですね。なるほど。
折角なので外の景色にも目を向けてみましょう。
東側の景色は、昭和の高度成長期を象徴する西新宿の老舗高層ビル群。
東京都庁舎ができるまでは、西新宿の顔だった面々ですね。
左の白いビルは通称・三角ビルこと住友ビル。
黒いビルが新宿三井ビルで、その右手の茶色っぽいのが新宿センタービルです。
北東方向の中央奥にはスカイツリーが見えます。
こちらは代々木方面。
左手の背の高いビルは通称・新宿のエンパイアステートビルこと、NTTドコモ代々木ビル。
その足元に見える円盤形の建築物が、新しい国立競技場ですね。
中央右手奥には東京タワーがあり、その先には東京湾の辺りまで見えます。
四方が見渡せる展望室は、新旧東京の景色が見渡せるなかなかの絶景スポットでした!
フロアー内に目を向けると、おおっ!斬新なデザインのピアノがありますね!
これちらは「都庁おもいでピアノ」。
芸術家の草間彌生(やよい)さん監修のもとに設置されたピアノで、5分以内で誰でも演奏できます。
展望台には飲み物や軽食、そして東京土産なども販売されていました。
東京都庁展望室
南展望室
入室可能時間:9:30~21:30
休室日:毎月第1及び第3火曜日(祝日の場合は翌平日)
※都庁おもいでピアノは南展望室に設置(北展望室には設置無し)
北展望室
入室可能時間:9:30~17:00
休室日:毎月第2及び第4月曜日(祝日の場合は翌平日)
※南展望室の休室日は21:30まで入室可能。
※年末年始(12月29日~31日、1月2日及び3日)及び都庁舎点検日は両展望室とも休室。
案外知られていない都庁舎内の見学スポット
都庁舎内には職員以外でも立ち寄れるスポットが、結構多いですよ。
案外知られていなさそうな場所を、いくつかピックアップしておきます。
都議会議事堂の議場及び第15(予算特別)委員会室
実は議会を行う議場などの見学ができます。
場所:都議会議事堂(南側エレベータ) 議場:7階 / 第15(予算特別)委員会室:6階
見学時間:9時~17時 *土日祝、年末年始(12月29日~1月3日)は休み
※都議会本会議中は、議場内の見学はできません。
東京観光情報センター 東京都庁
東京の魅力を再認識できる施設です。
場所:第一本庁舎 1階北側
利用時間:9:30~18:30
職員食堂(セルフサービス)
職員の食堂で食事をすることができます。
場所:第一本庁舎32階
営業時間:都庁開庁日、昼食:11時~14時、カフェ:8時~17時
※職員以外でも利用できますが、利用時は庁舎1階又は2階で入庁手続きが必要。
専門食堂(レストラン街)
レストラン街もあります。
場所:都民広場 地下1階
東京都庁舎の建築物概要
東京都庁舎の建築物概要
竣工: 1990年12月 / 建築設計者:丹下健三 / 施工:大成建設・清水建設ほか
敷地面積:42,941m2 / 延床面積:380,504m2 / 建築面積:27,487m2
階数・高さ:【第一本庁舎】地上48階地下3階・243m、【第二本庁舎】地上34階地下3階・163m、【都議会議事堂】地上7階地下1階塔屋1・41m
東京都庁舎の詳細情報・アクセス
東京都庁舎
見学案内ページ
住所:東京都新宿区西新宿2-8-1(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR「新宿駅」、西開札から徒歩約10分
・都営地下鉄大江戸線「都庁前駅」
・「新宿駅」西口(地下バスのりば)から都営バス又は京王バス(都庁循環)「都庁第一本庁舎」「都庁第二本庁舎」「都議会議事堂」下車
・JR「新宿駅」西開札、新宿駅西口:バス停から西新宿・都庁本庁舎方面行きの新宿WEバス乗車、「都庁本庁舎」下車
『新宿パークタワー』 都庁舎に似た雰囲気の高層ビル
実は東京都庁舎の直ぐ近隣にも、丹下氏設計の建築物があります。
それがこちらの「新宿パークタワー」で、都庁舎施工と比較的近い時期の建築物です。
都庁舎に近い立地で建物の雰囲気も似ていることから、都庁舎の一部と間違われることもあるらしいです。
確かに兄弟みたいな風貌ですねえ。
52階の高さがあるこちらのビルも、都庁同様、単純な直方体になっていないのが特徴です。
ビルの主要部分は賃貸オフィスで、高層部にはホテル・パークハイアット東京が入っています。
ホテルの位置も高いが、宿泊費も高いんでしょうなあ、きっと。。。
新宿パークタワーの建築物概要
竣工:1994年 / 建築設計者:丹下健三・都市・建築設計研究所 / 施工:鹿島建設、清水建設、大成建設など
敷地面積:26,536m2 / 建築面積:9,553m2 / 延床面積:264,141m2 / 構造形式:鉄骨構造
階数:地上52階地下5階、高さ:235m
新宿パークタワー
公式ページ
住所:東京都新宿区西新宿三丁目7番1号(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・新宿駅南口から徒歩約12分、京王新線 初台駅から徒歩約6分、都営大江戸線都庁前駅A4又はA5出口から徒歩約8分、小田急線 参宮橋駅から徒歩約10分
*新宿駅西口「エルタワー」1階三菱UFJ銀行前から、無料の直通シャトルバス便有(10:10〜19:20にて10~15分間隔)
『東京カテドラル聖マリア大聖堂』 丹下氏の葬儀がおこなわれた場所
場所が変わってもう一件、丹下氏が設計した「東京カテドラル聖マリア大聖堂」を紹介。
写真をご覧頂ければ、「これはなんだ!?どういう形になっているんだ!」が第一印象だった私に共感頂けるのではないでしょうか(笑)。
聖マリア大聖堂がある関口教会は、昭和39年(1964年)に建造された教会です。
場所は文京区で、ホテル椿山荘の真向かいに位置しています。
建物の表面が独特のメタリックな質感です。
大聖堂は鉄筋コンクリート造で、地下1階の地上3階建てです。
シェル構造と呼ばれる造りで、壁から屋根が一体化しているコンクリートの壁を垂直に立てた構造。外装にはステンレスが使われています。
初めて聞く、何やら凄い構造です。
入って正面を左手に進みクルッと振り返えると、こちらが聖堂の正面になります。
謎めいた建築物のこの形状ですが、なんと!空から見下ろした時に建物上部が十字架の形になっているデザインなんですって。
う~む、どうりて凡人が地上から見上げても、理解しづらい形状のはずだわ。
聖堂内も見学可ですが撮影はNGでした。
内部はコンクリートが剥き出しになった壁を持つ、独特の雰囲気を持つ空間でした。
ちなみに丹下健三氏は、生前にカトリックの洗礼を受けています。
平成17年(2005年)、91歳で死去された際には、自ら設計したこの教会で葬儀がおこなわれました。
東京カテドラル聖マリア大聖堂の建築物概要
竣工:1964年12月 / 建築設計者: 丹下健三・都市・建築設計研究所 / 施工:大成建設
敷地面積:15,098m2 / 延床面積:3,650m2 / 建築面積:2,541m2 / 構造形式:鉄筋コンクリート造
階数:地上1階地下1階 / 高さ:39m
関口教会 東京カテドラル聖マリア大聖堂
公式ページ
住所:東京都文京区関口3-16-15 (GoogleMapで開く)
電車・バス)
・東京メトロ有楽町線「江戸川橋駅」(出口1a)より徒歩15分
・JR山手線「目白駅」より、都営バス 白61系統 “新宿駅西口行き”
・JR山手線「新宿駅」より、都営バス 白61系統 “練馬車庫前行き”
どちらも「ホテル椿山荘東京前」下車徒歩1分
『モード学院コクーンタワー』 丹下健三氏のDNAを引き継ぐ建物
最後に丹下氏関連の建築物、新宿の「東京モード学院コクーンタワー」を紹介。
新宿において変わったビルといえば、これでしょう。
コクーンタワーは、丹下健三氏の息子である丹下憲孝(のりたか)氏が代表取締役社長を務める、丹下都市建築設計により設計された建物です。
東京モード学院側からの「見たことがない建物」を、というオーダーに対して造られたのがこちらの建物とのこと。
オーダーのしかたも、なかなか凄いですね。
インナーコアと呼ばれる中央部分と外周3面に施されたフレームにより、コクーン(繭)をイメージして形どられています。
こちらは丹下健三氏の設計ではありませんが先進的なDNAを継ぐ建物として、新宿駅のすぐ近くにそそり立っています。
モード学院コクーンタワーの建築物概要
竣工:2008年 / 建築設計者:丹下都市建築設計 / 施工:清水建設
敷地面積:5,172m2 / 延床面積:80,865m2 / 建築面積:3,542m2 / 構造形式:鉄骨造
階数:地上50階地下4階 / 高さ:204m
モード学園コクーンタワー
住所:東京都新宿区西新宿1-7-3 (GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
新宿(西口)駅前・徒歩3分。JR・小田急・京王・地下鉄から地下街が直結。駅前から歩道橋が直結。
新宿ランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
東京には素敵な名建築が沢山ありますが、そこでお茶できたり食事できたりすると素敵ですよね。
テレビ大阪,BSテレ東の真夜中の人気ドラマ「名建築で昼食を」の原案本!
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丹下健三氏設計の建築物を見に出かけませんか?
東京都庁舎を中心に、丹下健三氏が設計した建築物を見て周りましたが、いかがでしたか?
丹下氏の設計した建築物には、独創性な視点を徹底的につき詰めた強烈な個性を感じますね。
そして、丹下健三氏の建築物に限らず、テーマを決めて建築物を見て歩くのは、街歩きの楽しみ方の一つとして面白いと感じました。
建築物探訪に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2020/10/16~10/28
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