日本一の足袋のまち行田で、足袋蔵をめぐってレトロ散歩【埼玉・行田市】

埼玉県行田市は足袋のまちとして知られ、最盛期には全国の足袋生産の8割のシェアを誇りました。
そんな行田の市内にはかつて足袋を保管した足袋蔵が今も70棟ほど残っており、県内では川越に次ぐ蔵の町となっています。

さらに、近年ではドラマ「陸王」の舞台となり再び注目されるようになった、古くて新しいまちなんですよ。

そんな行田で足袋の製造見学をし足袋蔵をめぐり、陸王のロケ地にも出会える散策に出かけました。

「足袋のまち行田」の伝統が再び注目されている

日本一の足袋のまちとドラマ「陸王」

埼玉県行田市は、昔より”足袋のまち”と呼ばれています。
最盛期だった昭和13年(1938年)頃には、年間約8,500万足もの足袋が生産されたとのこと。
その量は全国シェアの約8割にあたった、と聞くと改めて驚かされます。

とはいえ、その栄光も過去の話。。。と思っていましたが、近年再び行田の足袋が注目を浴びました。
それは平成28年(2017年)に発表された池井戸潤氏の小説「陸王」と、そのテレビドラマ化によるものでした。

「陸王」は行田にある老舗の足袋工場が、会社存続を賭けてランニングシューズ開発に挑む物語。
ドラマは主演の役所広司氏ほかの熱演で人気を博し、行田の足袋の技術と伝統を再び全国に広めました。

「足袋蔵のまち行田」県内初の日本遺産認定

行田市商工センターに車を駐車させて頂いた後、最初にそこから程近い「足袋蔵まちづくりミュージアム」を訪問してみました。

行田市は「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」というストーリーで、平成29年(2017年)に県内では初の”日本遺産”に認定されています。
こちらはNPO法人にて運営されている、その日本遺産のガイダンスセンター施設です。入場は無料。

日本遺産とは？
地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の文化・伝統を語る「ストーリー」を文化庁が認定するもので、平成27年(2015年)に創設された文化財制度です。
地域に点在する有形・無形の文化財群をストーリーとしてまとめ、一体的に整備・活用し、国内外に発信することで、地域の活性化や観光振興を図ることが目的です。
現在104件のストーリーが認定されています。（2021年9月現在）

施設に利用されている「栗代(くりだい)蔵」は、明治39年(1906年)に造られた足袋商店の蔵とのこと。

建物の間口（=正面幅）は5間、奥行きは3間の2階建ての土蔵(どぞう)です。
土蔵は木骨の骨組みに土壁を塗り、漆喰で仕上げられた建物のことで、防火に優れているという特徴を持ちます。

1間は約181.8cmなので、幅約9.1m・奥行き約5.5m位ですね。
”間”という単位は街中にある建物の説明板でも使われているので、軽くサイズ感を押させておくと良いかもしれません。

1階はマップなどが置かれた観光案内所で、2階は蔵の歴史を紹介するギャラリーとなります。

行田の足袋づくりが始まった時期は正確には分かりませんが、享保年間（1716~1736年）の「行田町絵図」には既に3軒の足袋屋が書かれていたそうだ。

その後、明和2年(1765年)に出版された中山道の案内本「東海木曽両道中懐宝図鑑」内には”忍のさし足袋名産なり”と書かれており、天保年間（1830~1844年）の町の絵図には27軒もの足袋屋が記されていたとのことです。

「足袋とくらしの博物館」全盛期の足袋工場を再現

次に足袋のまちの象徴ともいえる「足袋とくらしの博物館」を見学します。場所は商工センターの東側の裏手。

「足袋とくらしの博物館」は全盛期の行田の足袋工場を再現した施設で、大正13年(1924年)頃に建てられた「牧野本店」の建物が元となっています。
店舗兼住宅だった建物は蔵造りと木造が組み合わさっているため、”半蔵造り”と呼ばれるそうです。

足袋製造工程が見れて、手作り体験もできる

入場料・大人200円を払って入館します。
中は博物館というより足袋工場そのもので、ミシンのカタカタという音が館内に心地よく響いていました。

足袋の手作り体験もできる施設で、毎月第2日曜の13時～15時に「My足袋作り体験」が開催されています（有料・予約定員制）。

製造工程が黒板に書かれているのは、なかなか味がありますね。
最初に係員の方がこれを見ながら工程を説明してくれ、その後は自由に見学することができます。

黒板にもある通り、完成までにはなんと15もの作業工程があるんですよ！
中でも11番の「つまぬい」と呼ばれる、爪先部分を縫う箇所が一番難しい工程なんだとか。

棚に入っているのはサイズ毎の裁断用の型。
足の形をした刃物で、布に当て加重を掛けるとバチンとカットされるというもの。

館内では職人さんが実際に製造工程の作業をされています。
こちらは「押さえ掛止」の様子。フックみたいな金具はコハゼ（甲馳）と呼ばれます。

「展示室」味のあるレトロな看板など

2階は展示室となっており、昔のレトロな看板や歴代商品の紹介などがあります。
展示台となっている長い台は、当時は長い布を広げるのに使われていたもの。

足袋とくらしの博物館の基本情報・アクセス

「行田 足袋蔵歩き」様々な種類の蔵があるのが特徴

「武蔵野銀行 行田支店店舗」戦前の本格的銀行建築

足袋作りの流れが理解できたところで（なんとなくだが。。。）、足袋蔵をめぐりつつ街を歩いてみます。

目に入ってきたのはこちらの重厚な洋風建築の「武蔵野銀行 行田支店店舗」。
建物は昭和9年(1934年)に忍貯金銀行の店舗として竣工されたもので、戦前の鉄筋コンクリート造の本格的銀行建築として貴重なもの。国登録有形文化財に指定されています。

忍貯金銀行は足袋作りの資金の貸付けをおこなうことにより、足袋産業に貢献しました。

銀行前には高札場跡の石碑が立っており、行田がかつて忍城(おしじょう)の城下町だったことを思い起こさせます。
城の要所だった各所にこのような石碑が立っているので、足袋蔵とともに追ってみるのも楽しいですよ。

\ 忍城についての詳細記事はこちら！/

「十万石ふくさや 本店」埼玉銘菓の本店も蔵造りだった！

「うまい、うますぎる」 のテレビCMで、埼玉県民にはお馴染みの銘菓「十万石まんじゅう」。発祥地・行田にある「ふくさや本店」も蔵造りの店舗でした。

建物は明治16年(1833年)に建てられたもので、元は江戸時代から続く呉服商の建物だったとのこと。
昭和44年(1969年)よりふくさやの店舗として利用されており、後にナマコ壁（格子状の部分）が設けられました。

こちらは行田を代表する店蔵として、国登録有形文化財に指定されています。

折角なんで十万石まんじゅうを一個購入してパクリ。う～む、美味すぎます！（お約束ですが、笑)
可愛らしいサイズにアンコがぎっしり。そして薄皮なのが旨さの秘訣なんだろうな。

十万石まんじゅうは、戦後に旧忍藩十万石地の自慢の米の形をしたまんじゅうとして誕生。
ずいぶん昔からありそうなイメージですが、戦後のお菓子だったんですね。

「小川源右衛門蔵」大谷石組で独特の風合い

行田八幡神社へと続く八幡通りに入ってみました。

「小川源右衛門蔵」は昭和7年(1932年)築の大谷石組による積造2階建ての倉庫。
足袋蔵ではないそうですが、昭和初期を代表する大型の石蔵です。

大谷石は独特の風合いを持ってますよね。

営業されている店舗も含めて、街中の古い建物の多くに解説板が掛けられています。
街ぐるみで観光地としての整備に取り組んでる感じが良いですね。

行田の蔵の特徴は様々なタイプの蔵があること。
明治の終わり頃から洋風建築の土蔵や石蔵が取り入れられ、大正になるとレンガ造りの蔵が、昭和になると鉄筋コンリートやモルタル、木造の蔵も造られました。

時代ごとの建築技法を取り込みつつ、行田の足袋蔵は昭和30年代前半まで建てられ続けたそうですよ。

「行田八幡神社」花手水で知られる忍城城下町の総鎮守

八幡通りの由来である、忍城城下町の総鎮守とされた「行田八幡神社」。
封じ祈祷で知られ、虫封じの他、癌封じ、諸病・難病封じ、悪癖封じなど、幅広い祈祷がおこなわれているんですよ。

境内には美しい花手水が飾られますが、毎月1日～14日には行田八幡神社を中心に、市内の商店や民家の軒先にも花手水を飾る「花手水week」が開催されます。
各所で花が楽しめるこの週を狙って街歩きをするものもオススメ！

\ 行田八幡神社と花手水weekの詳細はこちら！/

「イサミ スクール工場」陸王のロケは行田の活性化に繋がった

行田八幡神社の裏手にある「イサミ スクール工場」は行田に現存する最も古い大規模足袋工場で、現在も被服工場として使用されています。

ドラマ「陸王」の舞台の中心の一つとなったのが、100年以上続く老舗足袋業者「こはぜ屋」でしたが、そのロケ地となったのがこちらの工場なんですよ。

一般公開されていないので、外側から覗かせて頂いた。

敷地内には大正時代の木造洋風工場や旧事務所、昭和初期のコンクリート製の足袋蔵などが残り、戦前の大規模足袋工場の面影が今でも良く残っているとのことだ。

工場の前に立つ、足袋の形が可愛い”ロケ地めぐり”の案内板。

ドラマの撮影においては、行田市内で4カ月に及ぶ長期ロケが敢行されました。
放映後は、ロケ地めぐりを目当てにした多くの観光客が行田に訪れました。

これを契機に行田市には”観光地として町づくりをしてゆこう！”という一体感が生まれたんだそうだ。
陸王のロケ受け入れは、行田市にとってはターニングポイントとなったようですね。

「大澤蔵」行田唯一の鉄筋コンクリートの足袋蔵

八幡通りの一本東側にある、史跡・埼玉古墳群に通じる古墳通りへ。

「大澤家住宅旧文庫蔵(大澤蔵)」は、行田唯一の鉄筋コンクリート組レンガ造の2階建て足袋蔵。
大正時代に起きた関東大震災の教訓を踏まえた構造のもので、国有形文化財に登録されています。

行田の足袋商店は、店ごとに独自ブランドで展開してるのが特徴。
大澤商店の商標は”花形足袋”という、粋でカッコいいネーミングでした！

店舗やオフィスとして現役使用の蔵も多い

こちらは古い建物が集まっており、複合施設みたいな感じでちょっと面白い場所だった。

右手の蔵は大正5年(1916年)に建てられたもので、”ほうらい足袋” ”栄冠足袋”の商標で知られた「奥貫忠吉商店」の足袋蔵。

左手の木造建築のカフェ「閑居(かんきょ)」は、初代行田市長が暮らしていた昭和初期の高級住宅だった建物。
庭園を見ながら、落ち着いた雰囲気で食事や喫茶が楽しめる人気のお店です。

奥まった場所にあるこちらは、行田唯一の3階建ての土蔵。窓周辺の赤茶の配色が印象的な、かなり大きな建物だった。
現在は建築設計事務所として使用されています。

右手の土蔵は手前がパン屋、奥がギャラリーです。
市内の蔵は、現在も店舗やオフィスとして使用されているものも多そうですね。

カフェ閑居の先にった大きめの蔵は、白壁が美しい2階建ての土蔵「奥貫蔵」。
大正時代～昭和初期頃の足袋蔵で、現在は蕎麦屋「あんど」の店舗として使用されています。

良い雰囲気のお店ですね、よし！ここで昼食！って意気込んだのですが。。。、”蕎麦終了しました”の札が。グスン、残念。

「忠次郎蔵」大正期の蔵で蕎麦と名物ゼリーフライを頂く

今度は商工センターの北側に足を延ばしてみました。

こちらの「牧禎舎(まきていしゃ) 」は、昭和初期の旧足袋工場と事務所兼住宅を改装した施設とのこと。
レンタルスペースやアーティストシェア工房があり、藍染体験工房が併設されています。

こちらでは有料で藍染体験ができますよ！一日に染められる量は限られるとのことなので、事前予約がオススメ。

しかし街中には色んな施設があって、歩いていて飽きませんねえ。

その先に蔵造りの風情のある蕎麦屋を発見。食いっぱぐれていた昼ごはんをここで頂きましょう。

こちらの「旧小川忠次郎商店舖及び主屋（忠次郎蔵）」は、大正14年(1925年)に造られた2階建ての土蔵で、国の有形文化財に登録されています。
建物全体はL字形をしており、右半分の奥まった部分に住居があります。

このお店は足袋蔵再活用のモデルとして整備されたもので、NPO法人によって運営されています。
管理は大変でしょうが、文化財を観光資源として活用する取り組みは素敵だと思いますね。

店内では、人が入れそうなくらいの大きな金庫に目がゆきます。

メニューに行田名物のゼリーフライがあったので頼んでみた。
ちゃんとお店で食べるのは初めてだな。素朴な味ですが、揚げ立ては美味しいですねえ。

「ゼリーフライ」の起源は、足袋工場で働く女工さんの間で流行った、おからをコロッケにしておやつとして手軽に食べられるようにしたもの。
これが地域の食文化として定着したものなんだそうだ。

銭（=小判）に形が似ているから、というのがその名の由来とされます。

手打ちの二八のもりそばが650円はお値打ちもの。味も本格的で美味しいお蕎麦でしたよ！
こちらでは蕎麦打ち教室も開催されています。

最後は美味しい食事で締められて良かったです。

 行田市ランチは、事前予約やクーポン利用で快適でお得に！

行田「足袋蔵巡り」マップ

行田「足袋蔵巡り」マップ

案内板にあった「蔵めぐりモデルコース」マップより抜粋。
本日歩いた辺りが網羅されています。

行田市内の移動情報

バスによる移動について
公共交通機関で訪問する場合は,、バスを上手く利用すると移動が便利です。市内循環バスには「観光拠点循環コース」も設定されています。
  行田市の市内循環バスのページ
  朝日自動車のページ

観光レンタサイクルについて
市内4カ所で観光レンタサイクルの貸出がおこなわれています。4カ所間での乗り捨て返却も可なので、利用してみてはいかが？

■レンタル場所：忍城バスターミナル観光案内所、JR行田駅前観光案内所、観光物産館ぶらっとぎょうだ、はにわの館(埼玉古墳群内)
■料金：シティサイクル(2人乗り含む):500円/1日、クロスバイク:800円/1日、電動アシスト:1,000円/1日
■貸出・返却施設の営業時間：9:30～16:30(冬期は10:00～16:00)　※ぶらっとぎょうだとはにわの館は9:30～17:00で年間一律
■定休：なし　※12月29日～1月3日は休館
■予約用ページ：行田市公式観光サイト内

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行田の足袋蔵めぐりにでかけませんか？

足袋の生産地をめぐるって、結構地味な散策になるのかな？な～んて考えが行く前にはちらっと頭をよぎりましたが、いやいや、実際歩いてみると。。。陸王ロケ地に出会え、美味いまんじゅうも食べられ、蔵を利用した洒落た店も多くありと、見どころ満載でした！

行田市には古墳や城跡など、その他の歴史スポットも多くあるので、併せての訪問もオススメしたいですね。
蔵のまち、行田を歩いてみませんか？

記事の訪問日：2021/5/2

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