関東に約280社ある氷川神社の総社である「武蔵一宮氷川神社」は、二千年以上の歴史を持つ古社です。
日本一の長さを誇る参道をのんびりと抜け、氷川神社の生い立ちを紐解きながら歴史散歩します。
帰りに立ち寄った、さいたま市初のクラフトビール醸造所「氷川の杜」の紹介もありますので、ぜひ最後までご覧下さい。
目次
『武蔵一宮 氷川神社』 二千年の歴史を持つ氷川神社総社
「一の鳥居」日本一長いといわれる氷川参道
こちらは氷川神社の「一の鳥居」です。
氷川神社の最寄り駅はJR大宮駅か、東武鉄道の大宮公園駅。
なんですが。。。、一の鳥居の最寄り駅はというと、大宮駅からさらに南に2kmほど離れたJR埼玉県新都心駅となります。
氷川神社は参道が長いことで知られており、この一の鳥居から境内までおよそ2㎞にわたり真っ直ぐ伸びる参道の長さは日本一と言われています。
「中山道と氷川参道」 伊奈忠治は大宮の町の祖!?
歴史をさかのぼると実はこの参道、江戸時代初期までは中山道としても使用されていました。
これを「参道を街道とすることは恐れ多い!」とし、寛永5年(1628年)、関東代官だった伊奈忠治が氷川参道の西側に新たに道を開削。そちらに中山道を付け替えました。
参道沿いにあった宿や家屋も付け替え先に移転され、そこに宿場町・大宮宿がつくられます。これが現在の大宮の町の基盤にもなっており、伊奈忠治は大宮の町の祖とも言われています。
大宮駅東口の大宮高島屋がある場所に本陣があり、かつては宿場町の中心部だったようです。
約2km続く参道は明治時代までは鬱蒼とした杉並木だったそうですが、現在はケヤキを中心とした並木道となっています。
全部で約30種・680本の樹木があり、そのうちの23本が市指定の天然記念物です。
「武蔵一宮 氷川神社」 280社ある氷川神社の総社
参道に続き、あらためて「武蔵一宮 氷川神社」の紹介ですが、毎年初詣には200万人以上が訪れるという、関東屈指の参拝者数を誇る神社です。
また、氷川神社は埼玉県や東京都を中心に約280社ありますが、こちらが総本社となります。
地元では所在地の”大宮”を付けて大宮氷川神社と呼ばれますが、そもそもこの”大宮”の地名も、大いなる信仰を集める宮である氷川神社があったことに由来してるんですよ。
大宮は門前町だったんだな、と改めて認識しつつ参道を進みます。
「二の鳥居」 明治神宮の大鳥居を移設したもの
一の鳥居から続く参道の約半分過ぎた辺りにあるのが、両脇を狛犬が固める大きな朱色の「二の鳥居」。
大宮駅から歩いてくるとここが入口にあたるので、これが一の鳥居で参道入口、と思う方が多数派なんじゃないかなあ。初詣やお祭りの際の出店も、ここから並ぶしね。
木造の二の鳥居は存在感ありますが、実はこれ、元々は明治神宮の大鳥居だったもの。
樹齢1200年以上といわれる檜(ひのき)を材木として、大正9年(1920年)につくられました。
氷川神社には昭和51年(1976年)に移設されています。
参道沿いの風情ある「氷川だんご」は、名物の氷川だんごのほか、きしめんなどの軽食も頼めるお店。
7月中旬の暑いさなかでの訪問日でしたが、本日の人気の中心は圧倒的にカキ氷のようですね。
皆さんベンチに腰かけて涼をとられていました。
老舗のせんべい屋さんも良い雰囲気です。
氷川参道の二の鳥居以降は、正月やお祭りや花見の季節に並ぶ屋台をのぞくと、飲食店は少なめですね。
キッチンカーなどの出店などが増えると楽しいかな。
「君は神社に何しに来てるんだ?」とツッコまれるかもしれませんが(苦笑)、ホンネです。
三の鳥居の先に「戦艦武蔵の碑」
三の鳥居をぬけて境内に入ります。
氷川神社は初詣や隣接する大宮公園への花見の際の参拝などが多く、夏場の参拝は初めて。
参拝者も少なく、落ち着いて参拝できそうですね。
三の鳥居を入った左手には、平成27年に作られた「戦艦武蔵の碑」がありました。
戦艦武蔵は、大日本帝国海軍が建造した最後の戦艦です。
艦名は武蔵国からとられ、艦内には氷川神社を分祀した武蔵神社を祀りました。
昭和17年(1942年)8月5日に広島県呉で竣工式がおこなわれた際は、氷川神社より6名の神職が出向したそうです。
沈没した際に亡くなられた方の御冥福をお祈り致します。
氷川神社の名は出雲の斐伊川にちなむ
境内を進むと神池架かる朱色の太鼓橋があり、その先に社殿エリア入口の楼門が見え隠れしています。
氷川神社には出雲の神が祀られていますが、社名の”氷川”も出雲の国の斐伊川(ひいかわ)に由来すると伝わります。
氷川神社の分布は荒川流域に多く見られる特徴があり、この流域は古来より農業用水としての恩恵を受ける一方、水害にも悩まされたらしいんですね。一長一短。
その荒川を出雲の簸川に見立て、畏敬の念で氷川の神として信仰したのが氷川信仰だったようです。
埼玉県には多くの氷川神社があるので、全国区にある神社だと思ってましたよ。埼玉県民の私は(笑)。
地域性をもった神社だったんですね。
「神池」古代見沼の名残り
太鼓橋から見た神池。
現在のさいたま市南部の一帯には、江戸時代初期まで巨大な沼「見沼」がありました。これは古代の海の名残りといわれています。
見沼は江戸時代中期より干拓されて田んぼに変わりますが、神池はその見沼の名残だと伝わります。
ここは古代から続く水辺だったと考えると、これは歴史ロマンを感じますね。
ところでこの神池、あまり良い水質に見えませんが、戦前はホタルの名所だったんですよ!ホタルは皇室への献上もされたそうです。現在からはちょっと想像できませんが。。。
ちなみに、平成30年にテレ東で放映された「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」の中で、ホタルを再びの取り組みとして”かい掘り”がおこなわれたので、観た方もいるかもしれませんね。
「楼門」 氷川神社のシンボル
太鼓橋を渡ると、朱色が鮮やかな、氷川神社のシンボルともいえる「楼門」がお出迎えです。
昭和15年(1940年)の紀元二千六百年を記念して、この楼門をはじめ社殿及び建築物の多くが建て替えられ、現在の境内の景観が創られました。
氷川神社の記念写真スポットの人気No.1は、こちらの門前ですね。
七五三の記念写真は、お子様に千歳飴を持たせ楼門をバックに撮影すればバッチリ!
国づくりに関わる出雲の神々を祀る
氷川神社の創立は第五代孝昭天皇3年とされ、およそ二千年の歴史を持つ神社。
その拝殿・本殿は華やかな楼門や太鼓橋とは対照的に、落ち着いた雰囲気です。
御祭神は、須佐之男命(すさのおのみこと)・稲田姫命(いなだひめのみこと)・大己貴命(おおなむちのみこと)の三神で、夫婦神と御子神が祀られています。三神はいずれも国づくりに関わる出雲の神々です。
御神徳としては、国家安泰・開運招福・厄除け・商売繁盛・交通安全・縁結び・安産など、幅広いご神徳が頂けます。
徳川家康ほか、武将・皇室が篤く崇敬
氷川神社は、古来より朝廷や武将より崇敬を受けてきました。
武蔵一宮 氷川神社の歴史概略
■奈良時代:聖武天皇の時代(724~749年)に武蔵国一の宮と定められる。
■平安時代:延長5年(927年)、延喜式神名帳にて名神大社に列される。
■鎌倉時代:治承4年(1180年)、源頼朝の命により家臣の土肥実平が社殿再建と社領3千貫を寄進。
■江戸時代:
・文禄5年(1596年)には徳川家康の命により、伊奈忠次を奉行として社殿及び施設一式造営。慶長9年(1604年)には社領3百石を寄進。
・寛文7年(1667年)には徳川4代将軍家綱の命により、阿部忠秋豊後守を奉行として社殿を建立。
■明治時代:明治元年(1868年)、東京遷都に際し武蔵国の総鎮守「勅祭の社」と定められ、明治天皇自ら親拝。明治4年(1872年)、官幣大社となる。
■昭和時代:昭和15年(1940年)、本殿・拝殿・回廊を改築、現在の景観となる。
特に徳川将軍家からは、篤い保護を受けていたようですね。
「ふくろ絵馬」時代のニーズと可愛いさを両立!
社殿脇にあったのは、江戸時代に力自慢の若者たちが担いだ「力石」。
石を担ぎ本殿の回りを見事一周できたら、名前を刻んで御神前に奉納する習慣だったそうだ。
一見、埼玉銘菓・十万石饅頭みたいに可愛らしい形をしてるが(県民ネタですまんっす、笑)、手前の六拾貫っていうのは約225kgくらい、重っ!
ごっつい力石とは対照的に、こちらは可愛らしい「ふくろ絵馬」というもの。
絵馬に願い事を書いたのち、色とりどりの袋に入れて願掛けします。袋は十色あるうちから選べるというもの。
これは大宮氷川神社オリジナルで企画されたもので、個人情報保護観点の現代的なニーズと、SNS映えしそうな見た目の可愛らしさがあるという、一挙両得のナイスアイディアですよね!
「蛇の池」 ここが氷川神社発祥の地だった!?
境内社をまわってみますが、その前にこちらへ。
社殿エリアの西側裏手に位置しており、参拝時に見逃がしやすい場所なのですが。。。
氷川神社では重要なスポットである、「蛇の池」と呼ばれる神秘的な場所。
古来より地中深くからコンコンと水が湧き続けており、かつての見沼の源泉の一つと伝わります。
この湧き水の存在が鎮座地として選ばれた理由ともいわれ、「氷川神社発祥の地」とされています。
へえ~、こちらも歴史ロマンですねえ。
「松尾神社・宗像神社・稲荷神社」 境内社をめぐる
神池周辺には境内社が集まっています。
神池の正面に鎮座するのは、京都の松尾大社を総本社とする「松尾神社」。
お祀りされている大山咋命(おおやまくいのみこと)は、水の神ともお酒の神様ともいわれています。
いつも大変お世話になっております。
神池の中に、出島みたいに突きでた場所にある「宗像神社」。
福岡の宗像大社を総社とする「宗像神社」の祭神は、多起理比売命(たぎりひめのみこと)・市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)・田寸津比売命(たぎつひめのみこと)の三女神。
氷川神社の祭神である須佐之男命の御子神で、やはり水にまつわる場所を中心に祀られる神様とのこと。
朱色の小さな鳥居が続くのは「稲荷神社」。
やはり須佐之男命の御子神である倉稲魂命(うかのみたまのみこと)を祀ります。
食物の神とされています。
小さいお狐様が可愛らしい!
武蔵一宮氷川神社の御朱印帳と御朱印
氷川神社で御朱印帳を購入。
朱色の楼門と太鼓橋の柄の刺繍が素敵で、とても気に入っています。
こちらは通常の御朱印。
こちらは、茅の輪くぐりの季節限定御朱印です。
関東の強力なパワーを持った神社を、その位置関係から紐解くなど読み応えのある本。
関東周辺に沢山の素晴らしい神社があることに改めて驚きますね。写真も綺麗!
武蔵一宮氷川神社の詳細情報・アクセス
武蔵一宮氷川神社
公式ページ
住所:埼玉県さいたま市大宮区高鼻町1-407(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR「大宮駅」東口から徒歩約15分
・東武アーバンパークライン(東武野田線)「北大宮駅」から西駐車場まで徒歩約10分
車)
・首都高速道路「さいたま新都心西IC」から約15分、東北自動車道「岩槻IC」から約20分
氷川神社周辺ランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
『氷川ブリュワリー・氷川の杜』 さいたま市初のクラフトビール
参拝後にちょっと立ち寄りです。
こちらは二の鳥居から近い場所にある、さいたま市では初のクラフトビールの醸造所である「氷川ブリュワリー」。中には醸造所直結のビアパブがあり、こちらを訪問。
醸造所というと工場みたいな建物をイメージしますが、こんなコンパクトな空間からでも、ビールって生みだせるのですね!
カウンターがメインのこじんまりとした店内。
入口付近にある銀色のタンクみたいのが、醸造器具ですね。
カウンターにはビールの原料となる麦芽が置かれているのが、洒落ている。
スタンダードっぽい、「晶(AKIRA)」というアメリカンペールエールという種類を頂いた。
あ~、クセがなくフルーティーで飲みやすいですねぇ。美味いわ。
「この時期しか食べれないホップの天ぷらがありますが、いかがですか?」と、店員さんのオススメ。
ん?ホップって食べれるんだ。限定という言葉にも弱く(苦笑)、「それ一つ」と 。
お味はというと。。。独特の苦みがあり、いや、けっこう苦いな。大人の味でしたわ。
氷川ブリュワリーのビール造りは、「地域の誇れる名産品づくり」の思いから始まったという。
その志の応援を兼ねて、また立ち寄らせてもらいます!
氷川ブリュワリー
公式ページ
住所:埼玉県さいたま市大宮区高鼻町1-36-1(GoogleMapで開く)
営業時間:水曜日から金曜日 17:00~22:30、土曜日 12:00~22:30、日曜日 12:00~20:00 *LOは閉店30分前
定休日:月曜日・火曜日
アクセス:
電車)JR「大宮駅」より徒歩7分、氷川参道二の鳥居から徒歩2分
武蔵一宮氷川神社参拝にでかけませんか?
大宮氷川神社は、初詣や花見のシーズンに立ち寄ることが多かった神社。
空いている参道をぶらぶら歩くと、今まで目に入っていなかった発見もあり色々と新鮮でした。
今度は長い参道の一の鳥居から、ぶらっと歩いてみたいですね。
武蔵一宮氷川神社の参拝にでかけてみまませんか?
記事の訪問日:2021/7/23
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周辺おすすめスポット(大宮公園ほか)
大宮公園
氷川神社に隣接する公園です。関東屈指の桜の名所として知られており、開花の季節には千本の桜が咲き誇ります。
小動物園・児童遊園、博物館の他、野球場・サッカー場などのスポーツ施設が多くあります。
大宮盆栽美術館
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さいたま市立漫画会館
住所:埼玉県さいたま市北区盆栽町150番地(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・東武野田線(東武アーバンパークライン)「大宮公園駅}から徒歩5分
・JR宇都宮線「土呂駅」東口から徒歩15分
車)駐車場無し
さいたま氷川三社巡り
さいたま市には、中山神社(旧中氷川神社)・氷川女体神社という神社があります。
武蔵一宮氷川神社を中心にしたその三社は、実は家族関係にあるといわれています。
そんな三社の関係や、見どころを紹介しています。
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