令和5年11月、埼玉県東松山市の箭弓稲荷神社の社殿が、国重要文化財に指定されることになりました。
そんな旬の話題を持つ、箭弓稲荷神社の見どころや歴史を紹介。
素晴らしい社殿の彫刻の紹介をはじめ、野球の神様としても信仰される話題や、市川團十郎寄進にはじまる團十郎稲荷などなど盛り沢山!
とにかく見どころが多い神社ですよ!
目次
『箭弓稲荷神社』 武運の神として崇敬された神社
国指定重要文化財に指定される社殿
箭弓(やきゅう)稲荷神社の鎮座地は、東武東上線東松山駅から歩いてすぐの好立地。
参道入口に、朱色の大きな一の鳥居が建ちます。
この地域は中世や戦国時代などには、幹線道路が通り河川交通もあった交通の要衝でした。
その立地から、武州松山城も築城されました。
古くから人々の往来が多い地にあった箭弓稲荷神社には、昔から多くの参拝者が集まりました。
そんな箭弓稲荷神社には、今とても旬な話題があるんですよ!
令和5年11月24日、文部科学大臣に「箭弓稲荷神社本殿・幣殿・拝殿」の国重要文化財への指定が答申がされました。
これにより、後日の告示を経て国重要文化財に指定されます。
本日の参拝でも、その社殿の拝見が楽しみの一つとなります。
やきゅう神社!?ヌートバー選手ゆかりの地
ところで箭弓稲荷神社は、社名の「やきゅう」の読みにちなみ、野球の神様ともいわれているんですね。
所沢が本拠地の西武ライオンズの球団関係者の参拝をはじめ、多くの野球関係者が勝利祈願に訪れます。
ところで今年の野球界の話題といえば、やはりWBCでの侍ジャパンの優勝ですよね!
その日本代表として出場した、ラーズ・ヌートバー選手の攻守にわたる活躍は印象的でした。
ヌートバー選手は、アメリカ出身のメジャーリーガーで、父親がアメリカ人で母親が日本人の日系人選手なんですね。
母親の久美子さんは東松山市出身で、ヌートバー選手も子供の頃、母親の実家を訪れたことがあるんだとか。
ヌートバー選手ゆかり地にある箭弓稲荷神社には、WBC期間中に多くの野球ファンが訪問。
必勝祈願の絵馬を奉納する様子が、テレビで報道され話題となってましたよ!
石鳥居をぬけた三の鳥居手前には、お清めのための手水舎。
手水舎の格天井には、20枚の美しい花鳥図の板絵がありました。
訪問時はお見逃しなく!
源頼信が戦勝により箭弓稲荷と命名
神社は旧名の野久稲荷神社として、奈良時代の和銅5年(712年)に建立。
その後、箭弓稲荷神社に改名された伝承を以下に紹介。
平安時代中期、下総の国(現、千葉県・茨城県の一部)の城主・平忠常の謀反がおこります。
近隣諸国を従えた大群をもち、武蔵国の川越まで押し寄せました。
朝廷より忠常追討の命をうけた武将・源頼信は、当地に本陣を構えました。
当社で戦勝祈願をしたところ、空に箭の形をした白雲があらわれ、敵を射るように飛んでいったといいます。
神のご加護を確信した頼信は、みごと戦いに勝利。
神社の建替えにより謝意を示し、社名を箭弓稲荷と改名しました。
その後も松山城城主・上田氏、川越城城主・松平氏などの武将から、武運の神として篤い崇敬を受けました。
江戸時代には庶民の参拝でもにぎわい、享保年間に参拝者の最盛期をむかえたそだ。
箭弓稲荷神社のご祭神は、保食神(うけもちのかみ)(宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)、豊受比賣神(とようけひめのかみ))。
五穀豊穣、商売繁昌、家内安全の守り神としての御神徳をもちます。
現在では、交通安全・厄除・火難除・開運・学業成就・芸能向上など、はば広い信仰を集めているとのこと。
拝殿正面を見上げると、大きく湾曲した梁に目がゆきます。
これ、一本の木から彫り出したものだろうか?だとしたら凄いですね。
拝殿正面の唐破風の下には、素木(しらき)の彫刻が施されています。
正面中央のこちらは「目貫龍(めぬきりゅう)」。
龍の両目がくり貫かれている彫刻。
目貫は中心の意の”目抜き”にも通じ、中央で守護する龍の役割も表しているようだ。
古来中国で四霊の一つ、霊鳥である鳳凰(ほうおう)。
すべての鳥を誕生させた、という伝承を持つ生き物なんですよ。
こちらは「名刀小狐丸誕生伝承」という話が題材の彫刻。
平安時代の刀工・三条小鍛冶宗近が、一条天皇より作刀を命ぜられた。
作刀では職人2人が交互に槌(つち)を打ち合いますが、宗近には勅使に見合う技量の弟子がいなかった。
そんな宗近の前に、稲荷明神が童子に化身して出現。
みごとに相槌をふるい名刀小狐丸を誕生させた、というお話なんだそうです。
江戸時代の精巧な彫刻群に圧倒!
今回、国重要文化財に指定される社殿は、江戸時代後期の天保6年(1835年)の築造物です。
社殿の様式は、本殿・幣殿・拝殿が一体化した権現造り(ごんげんづくり)。
久能山や日光の東照宮に代表される、複合社殿ですね。
社殿の規模は関東地方でも有数の大きさなんだそう。
本殿は三間社流造(さんげんしゃながれづくり)で、屋根は銅板段葺(どうばんだんぶき)。
本殿には精緻な彫刻群がビッシリと施されており、圧倒される!
社殿の建築は熊谷を拠点とする、大工棟梁の飯田和泉藤原金軌(いいだいずみふじわらのきんき)と、彫物大工・飯田仙之助(いいだせんのすけ)が手がけた。
熊谷市の河原明戸村は、建築・彫刻の名工を多く輩出。
飯田家は久能山東照宮の改修に関わって名をはせ、家名は代々宮大工棟梁として引き継がれました。
江戸時代後期から明治時代にかけて、多くの作品が各地に残されています。
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拝殿同様、素木で作られているのが特徴。
質素倹約が求められた天保期において、彩色ではなく、立体感で造形美を出そうという時代背景によるものだそうだ。
ちなみに本殿内部は、極彩色の装飾がされているらしい。
外観は、もしやカモフラージュだったりして。。。
木鼻周辺に霊獣が並ぶ姿は迫力がある!
彫刻群は透塀越しに見学できます。
主だった彫刻には、解説板も用意されておりありがたい。
印象に残った彫刻をいくつかご紹介。
北側から向かうと、まず目に入る「二龍」の大羽目彫刻。
二龍は本殿両脇に施されていて、本殿守護の役割を持つそうだ。
龍には、人民救済・雨乞い・魔除け・鎮火などのご利益があるといいます。
こちらは「仙人の烏鷺(うろ)」という題名の大羽目彫刻。
烏鷺とは烏(カラス)と鷺(サギ)を黒石・白石に見立てて、囲碁のことを指す。
仙人の対局を、木こりが見て楽しんでいる様子とのこと。
龍は元々は水に住む霊獣で、縁の下の四隅に大きな彫刻が施されている。
水に関わる動物は地面に近い位置に飾られ、火伏の願いが込められています。
軒下にも霊獣たちがズラッと並ぶ。
「水犀(すいさい)」は、日本の霊獣というのが珍しい。
体形は鹿で、背中には亀の甲羅。
頭に角を持ち、足には蹄がついている。
ふ~む、奇妙な動物ですなあ。
波が施されているので、やはり火伏の念が込められていそうだ。
こちらには波間に亀が見え隠れしますが、波や亀などの全体で一つの霊獣を構成しているんだそう。
この霊獣は、人の悪夢を喰らうとされる「獏(ばく)」なんだそうです。
いつまでもつぶさに眺めていたくなる、精巧な彫刻の数々。
惜しむらくは、彫刻まではちょっと距離がある点。
文化財としてもう少し近くで見れる工夫がされるとありがたいなぁ、とちょっと思った次第。
「元宮」 江戸時代中期に造られた社
本殿の裏手にある「元宮」。
高さ2m強の社ですが、こちらも細かい彫刻が施されている歴史ある建築物。
一間社流造(いっけんしゃながれづくり)の造りで、屋根はこけら葺き。
江戸時代中期のものとされます。
手前に鎮座の、凛々しい顔つきのお狐さまが鎮座。
鍵を咥える意味は諸説ありますが、一般的には米倉の鍵だといわれます。
元宮のそばには、お狐さまが沢山いる一角が!
奉納されたものですかね?
「神楽殿」では、巫女舞などの神楽奉納がおこなわれます。
「團十郎稲荷」 七代目市川團十郎寄進の石祠
境内の東側には末社「團十郎稲荷社」があります。通称・穴宮。
専用の鳥居と参道があるので、通りから入り直してみました。
小さな朱色の鳥居が続く参道は、幻想的です。
團十郎稲荷社は、宇迦之御魂神を祀る稲荷社。
文政4年(1821年)、七代目・市川團十郎による、石造りの祠の奉納に始まります。
以来「芸道向上の神様」として、芸に関わる多くの方々から信仰を受けているそうだ。
七代目市川團十郎は、当社にて芸道精進・大願成就を祈願。
その後、江戸の新春歌舞伎興行で「狐忠信」等の芸題を披露。
すると毎日札止めの大盛況を得たとのこと。
團十郎はこれを霊験あらたかなることと喜び、祠を建立した。
社殿右手の祠が、市川團十郎奉納のものです。
七代目・市川團十郎は10歳で襲名し、強烈な個性で人気を博しました。
しかしその後は、天保の改革に触れ江戸を追放されるなど、波乱万丈の人生だった方のようです。
5月と10月には、團十郎稲荷祭がおこなわれます。
「牡丹園」 春に1,300株の牡丹が咲き誇る
境内には3,500m2の敷地の「牡丹園」があり、春には1,300株の牡丹が咲きます。
4月中旬頃からはつつじや藤との競演が楽しめ、参拝者を喜ばせます。
大正12年(1923年)に、東武東上線の坂戸・東松山間の延線が竣功された。
それを祝し東武鉄道初代社長・根津嘉一郎氏が、牡丹などを奉納したのに始まるそうです。
牡丹は、東松山市の花にも指定されています。
牡丹園のそばには「やっくん」と「きゅうちゃん」なる、お狐さまのキャラクター石像がありました。
ギネス認定!巨大御朱印スタンプ
参拝済んで、御朱印を頂きに参集殿へ。
おっ!野球みくじにベース型絵馬、そしてバット型絵馬までありますね!
さすがの野球必勝祈願の対応!
参集殿の裏手には、巨大な御朱印が!
御鎮座1300年を祝し作成されたもので、印面のサイズはなんと縦横130cm!
平成28年(2016年)には、「最も大きな木製スタンプ」としてギネス世界記録に認定されています。
材料には、埼玉県産のケヤキを使用。
箭弓稲荷神社の御朱印
お狐さまのスタンプが可愛らしい御朱印でした。
神社に参拝に行くと、神々についてや神社施設の呼び名・役割について知りたいけど、聞ける相手もいない!
ってことありません?そんな時、網羅範囲が広い本書は結構頼もしいですよ!
箭弓稲荷神社の詳細情報・アクセス
箭弓稲荷神社
公式ページ
住所:埼玉県東松山市箭弓町2-5-14(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・東武東上線「東松山駅」西口から徒歩3分
車)
・関越自動車道「東松山IC」から川越・川島方面へ5分
・駐車場 50台
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箭弓稲荷神社に参拝に出かけませんか?
旬の話題で注目の箭弓稲荷神社を紹介しましたが、いかがでしたか?
初めての参拝でしたが、実はこれほど見どころの多い神社だとは思ってませんでした。
その点、嬉しい誤算でした。
さらに境内は良く手入れされており綺麗。
社務所の対応も親切で、気持ち良く参拝出来ましたよ!
今度は、春の牡丹の花が咲き誇る季節に訪れてみたいです。
箭弓稲荷神社の参拝に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2023/12/10
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