箭弓稲荷神社は奈良時代創建とされる歴史を持ち、古くから多くの武将の崇敬を集めてきました神社です。
その箭弓稲荷神社の江戸時代に建築された社殿が、国重要文化財に指定されることがこのほど決まりました。
社殿を飾る素晴らしい彫刻をはじめ、市川團十郎寄進の稲荷社や、野球の神様としての話題などなど、旬の話題を持つ箭弓稲荷神社の見どころを紹介します。
目次
「箭弓稲荷神社」武運の神として崇敬されてきた神社
箭弓稲荷神社の社殿が国重要文化財指定へ

箭弓(やきゅう)稲荷神社の鎮座地は東武東上線の東松山駅から程近く、アクセスがしやすい場所にあります。
車の便も良く、近隣には関越自動車道の東松山ICがあり、国道254号や国道407号線などが走ります。
この地域には古くから川越街道などの幹線道路が通り、さらに市野川・都幾川・越辺川などにおける河川交通が発達したエリアとして、交通の要衝となっていました。
その立地から戦国時代には武州松山城が築城されるなど、人々の往来が多い地にあった箭弓稲荷神社には古くから多くの参拝者が集まりました。
入口に立つ朱色の大きな一の鳥居を抜けて参道へ入ります。
\ 武蔵松山城の詳細についてはこちら!/

二の鳥居にあたる石鳥居
現在の箭弓稲荷神社には、とても旬な話題があります。
それは令和5年(2023年)11月、文部科学大臣に「箭弓稲荷神社本殿・幣殿・拝殿」の国重要文化財指定が答申がされたことです。
これにより後日の告示を経て、箭弓稲荷神社の社殿が国重要文化財に指定されます。
本日もその社殿を拝見するのを、とても楽しみにしての訪問です。
野球神社!? 西武ライオンズの球団関係者も勝利祈願に

社殿エリア入口の三の鳥居
箭弓稲荷神社は社名の”やきゅう”の読みにちなみ、野球の神様ともいわれているんですね。
所沢が本拠地の西武ライオンズの球団関係者の参拝をはじめ、多くの野球関係者が勝利祈願に訪れています。

今年の野球界における話題といえば、やはりWBCにおける侍ジャパンの優勝ですよね!
なかでも日本代表として出場した日系人、ラーズ・ヌートバー選手の攻守にわたる活躍は印象的でした。
ヌートバー選手は、父親がアメリカ人で母親が日本人。その母親が東松山市出身で、ヌートバー選手も子供の頃、母親の実家を訪れたことがあるんだそうだ。
その繋がりで、WBC開催期間中には多くの野球ファンが箭弓稲荷神社に訪れ、ヌートバー選手ゆかりの地で勝利祈願をしたとのことだ。テレビでも報道されていましたよ。

三の鳥居手前にある、お清めのための手水舎。

手水舎の格天井には、20枚の花鳥図の板絵がありました。これは美しいですね!
訪問時の見逃しにご注意下さい。
平安時代に源頼信が箭弓稲荷と命名

社殿
当社は奈良時代の和銅5年(712年)に、野久稲荷神社として建立されたと伝わります。
その後、以下のきっかけにより、箭弓稲荷神社に改名されたといわれます。
箭弓稲荷神社の名の由緒
平安時代の中期、下総の国(現千葉県・茨城県の一部)の城主である平忠常が謀反を起こし、近隣諸国を従えた大群で武蔵国の川越まで押し寄せました。
武将・源頼信は、朝廷より忠常追討の命を受け当地に本陣を構えます。
そして当社で戦勝祈願をしたところ、空に箭の形をした白雲があらわれ、敵を射るように飛んでいったといいます。
神のご加護を確信した頼信はみごとに戦いに勝利し、神社の建替えにより謝意を示したとともに、社名を箭弓稲荷と改名したとのことです。
その後も戦国時代から江戸時代にかけては、松山城城主・上田氏や川越城城主・松平氏などの武将からの崇敬を篤く受けました。
江戸時代になると庶民の参拝でもにぎわい、享保年間に最盛期を迎えました。

箭弓稲荷神社には保食神(うけもちのかみ)(宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)・豊受比賣神(とようけひめのかみ))が御祭神として祀られており、五穀豊穣・商売繁昌・家内安全の守り神としての御神徳を持ちます。
現在ではそのほか、交通安全・厄除・火難除・開運・学業成就・芸能向上など、はば広い信仰を集めているとのことです。あと、特に野球向上を付け加えておきましょう。

拝殿正面の唐破風の下には、多くの素木(しらき)の彫刻が施されています。

正面中央の彫刻は、龍の両目がくり貫かれている「目貫龍(めぬきりゅう)」と呼ばれもの。
目貫は”目抜き”にも通じており、中央を守護する役割の龍でもあるとのことだ。

古来中国では四霊の一つに数えられる霊鳥・鳳凰(ほうおう)。すべての鳥を誕生させた生き物といわれています。

こちらの彫刻は「名刀小狐丸誕生伝承」という故事が題材になっています。
その話はというと。。。
平安時代の刀工である三条小鍛冶宗近が、一条天皇より作刀を命ぜられました。
作刀では職人2人が交互に槌(つち)を打ち合いますが、宗近には勅使に見合う技量の弟子がいませんでした。
そんな宗近の前に稲荷明神が童子に化身して出現。みごとに相槌をふるい名刀小狐丸を誕生させた、という逸話になります。
社殿築造は久能山東照宮の改修で名を馳せた飯田家

今回、国重要文化財に指定される社殿は、江戸時代の天保6年(1835年)に築造された建築物です。
社殿様式は本殿・幣殿・拝殿が一体化した権現造り(ごんげんづくり)で、久能山や日光の東照宮に代表される複合社殿。
本殿は三間社流造(さんげんしゃながれづくり)で、屋根は銅板段葺(どうばんだんぶき)です。
建物の規模としては、関東地方の神社の中でも有数の大きさを誇るとのことですよ。

透塀越しに見える本殿の壁面には、ビッシリと精緻な彫刻群が施されており圧倒されます!
社殿の建築を手掛けたのは、熊谷を拠点とする大工棟梁の飯田和泉藤原金軌(いいだいずみふじわらのきんき)と、彫物大工・飯田仙之助(いいだせんのすけ)。
飯田家は久能山東照宮の改修に関わって名を馳せ、家名は宮大工棟梁として代々引き継がれました。
江戸時代末期から明治時代にかけて飯田家が手掛けた建物は、各地に多く残されています。
\ 熊谷の名工たちの建築技術の結晶が、国宝建築物のこちら!/
彫刻は素木による立体感のある造形美

本殿の彫刻は拝殿同様、素木で作られているのが特徴です。
彩色ではなく立体感で造形美を出そうという手法には、当時の天保期においては質素倹約が求められていた、という時代背景があったようです。
一方、本殿内部には極彩色の装飾がされているらしいです。外観はカモフラージュだったのかな。。。
天保の改革とは
江戸幕府が財政再建と社会秩序の立て直しを目的に、老中・水野忠邦の主導で天保12年(1841年)からおこなった政治改革。
主な施策としては、贅沢の禁止や倹約の奨励、遊里・芝居町の統制、株仲間の解散、上知令による幕府直轄地の拡大など。
理想は高かったものの商業や庶民生活を抑圧したため反発が強く、短期間で挫折しました。

印象に残った彫刻をいくつかご紹介してゆきます。
木鼻周辺に霊獣が並ぶ姿は迫力がありました。

二龍
北側から向かうとまず目に入るのが「二龍」の大羽目彫刻です。
龍には人民救済・雨乞い・魔除け・鎮火などの御利益があるといい、本殿両脇に施されている二龍は本殿守護の役割を担っているとのこと。

仙人の烏鷺(うろ)
こちらは「仙人の烏鷺(うろ)」という題名の大羽目彫刻。
烏鷺とは烏(カラス)と鷺(サギ)を黒石・白石に見立てた表現で、囲碁のことを指すそうだ。
仙人の対局を木こりが見て楽しんでいる場面とのこと。

龍
天空を飛び回っているイメージがある龍ですが、元々は水に住む生き物なんですね。
大きな龍の彫刻が建物四隅の縁の下にありますが、水に関わる動物には火伏の願いが込められ、地面に近い位置に飾られています。

軒下にも霊獣たちがズラッと並びます。

水犀
「水犀(すいさい)」は日本の霊獣だというのが珍しい。
体形は鹿で、背中には亀の甲羅。頭に角を持ち、足には蹄がついています。う~む、奇妙な動物ですなあ。
波が施されているので、やはり火伏の念が込められているようですね。

これは人の悪夢を喰らうとされる生き物、「獏(ばく)」とのこと。
波間に亀が見え隠れしていますが、これは波や亀などの全体で一つの霊獣が構成されているそうだ。
珍しい生き物の彫刻も多く、見ていて飽きませんねえ。
「元宮」江戸時代中期に造られた社

本殿の裏手には、「元宮」と呼ばれる小さな社殿がありました。
その呼び名からすると、以前の本殿なのでしょうかね?

高さ2m強の小さな社ですが、こちらも細かい彫刻が施されており歴史を感じさせます。
江戸時代中期のものとされ、一間社流造(いっけんしゃながれづくり)で屋根はこけら葺き。

元宮のそばにはお狐さまが沢山いました。

神楽殿
「神楽殿」では巫女舞などの神楽奉納がおこなわれます。
「團十郎稲荷」七代目・市川團十郎寄進の石祠が残る

境内の東側には通称・穴宮と呼ばれる末社、「團十郎稲荷社」があります。
こちらには専用の鳥居と参道があるので、そちらから入り直しました。

小さな朱色の鳥居が続く幻想的な参道。

團十郎稲荷社は、文政4年(1821年)に江戸の歌舞伎役者である7代目・市川團十郎が、石造りの祠を奉納したことにより始まります。
以来「芸道向上の神様」として、芸に関わる多くの方々からの信仰を受けているとのこと。

7代目・市川團十郎は、当社にて芸道精進・大願成就を祈願。するとその後、江戸の新春歌舞伎興行で披露した芸題「狐忠信」が、毎日札止めの大盛況を得たとのこと。
團十郎はこれを霊験あらたかなることと喜び、祠を建立しましました。

7代目・市川團十郎は10歳で襲名し、強烈な個性で人気を博しました。
しかしその後は天保の改革に触れ江戸を追放されるなど、波乱万丈の人生を送ったようです。
こちらでは、例年5月と10月には團十郎稲荷祭がおこなわれています。
「牡丹園」春に1,300株の牡丹が咲き誇る

境内には3,500m2の敷地を持つ「牡丹園」があり、春には1,300株の牡丹が咲き参拝者を喜ばせます。
4月中旬頃からは、つつじや藤との競演も楽しめるそうですよ!
大正12年(1923年)に東武鉄道初代社長・根津嘉一郎氏が、牡丹などを奉納したのが牡丹園の始まりとのこと。牡丹は東松山市の花にも指定されています。

牡丹園のそばにあったのは、「やっくん」と「きゅうちゃん」のキャラクター石像。可愛らしいな。
ギネス認定!巨大御朱印スタンプ

参拝が済んだ後、参集殿で御朱印を頂きました。

おっ!野球みくじにベース型絵馬、そしてバット型絵馬までありますね。さすが野球神社!

参集殿の裏手には、びっくりするような巨大御朱印が!
御鎮座1300年を祝し作成されたもので、印面のサイズはなんと縦横130cmとのこと。これ、どうやって押すんだろう(笑)。
この御朱印は、平成28年(2016年)に「最も大きな木製スタンプ」としてギネス世界記録にも認定されました。材料には埼玉県産のケヤキが使用されています。
箭弓稲荷神社の御朱印

お狐さまのスタンプが可愛らしい御朱印でした。
関東の強力なパワーを持った神社を、その位置関係から紐解くなど読み応えのある本。
関東周辺に沢山の素晴らしい神社があることに改めて驚きますね。写真も綺麗!
箭弓稲荷神社の詳細情報・アクセス
箭弓稲荷神社
公式ページ
住所:埼玉県東松山市箭弓町2-5-14(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・東武東上線「東松山駅」西口から徒歩3分
車)
・関越自動車道「東松山IC」から川越・川島方面へ5分
・駐車場 50台
東松山のランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
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箭弓稲荷神社に参拝に出かけませんか?
箭弓稲荷神社は初めての参拝でしたが、本殿に装飾された数々の精細な彫刻には本当に圧倒されました。その他にも境内の見どころは多く、楽しく参拝できましたよ。
次回は春の牡丹の花が咲き誇る季節に訪れてみたいですね。
箭弓稲荷神社の参拝に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2023/12/10




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