埼玉県日高市にある「高麗神社」は、入口に立つ魔除けの塔からしてなにやら異国情緒漂う景観。
それもそのはずで、高麗神社は朝鮮半島からの渡来人を祀っているという、少し変わった由緒を持つ神社なんですね。
そしてこの高麗神社は出世明神としても良く知られており、知る人ぞ知るパワースポットでもあります。
そんな高麗神社の持つ特異な歴史を紐解きながら、神社の見どころを紹介します。
目次
「高麗神社」高麗の郷の首長を守護神として祀る
これは何!? 異国情緒漂う将軍標がお出迎え
おっと!駐車場で車から降りると、奇妙な顔が掘られたトーテムポールのようなものがお出迎えだ。
「天下大将軍」「地下女将軍」と彫られており一見不気味で、でも良く見るとユーモラスな感じもありますねえ。
これは朝鮮半島の農村に見られる風習で、将軍標(しょうぐんひょう)と呼ばれる魔除けなんですって。
対で立てられた石柱は、邪気侵入を防ぐ境界線の役割とのこと。日本の神社の鳥居みたいな存在ですかね。
ちなみに将軍標はJR高麗川駅の前にもあり、この地は異国である朝鮮半島のとの関わりを持っている地なんだな、と感じながらの参拝スタートとなりました。
将軍標について
朝鮮半島の農村において、高麗時代から朝鮮時代にかけて盛んに作られました。
農耕社会における土地神・境界神信仰と結びつき、村落共同体を守護する「将軍」として崇拝されたもの。
大きな石を削って人の顔を彫ったもの、簡素に柱状の石に目・鼻・口を刻んだものなど多様。表情は厳しく、歯をむき出しにしたり目を大きく見開いたりして、邪悪なものを威嚇する意匠が多い。
近代以降は減少しましたが、韓国の一部農村では文化財として保存されています。
大宮大明神は神仏習合時代の名残
駐車場の隣には日本式の一の鳥居もあり、その先に参道が続いていました。
鳥居の扁額には「大宮大明神」とあります。
高麗神社は江戸時代までは、高麗大宮大明神・大宮社などと称されたとのこと。大宮とは地域の重要な神社に許された称号で、高麗地域の大きな宮という意味合いです。
明治時代の神仏分離令により現在の高麗神社に改名されましたが、扁額は神仏習合時代の名残りなのでしょうね。
朝鮮からの渡来人が住む高麗郡があった地
境内の入口には二の鳥居がありますが、こちらには高麗神社の扁額が掛かっていました。
境内入口の脇にあったのは「高麗郡建郡1300年高麗王若光記念」の碑。
碑にもある通り、かつてこの地には「高麗の郷」とも呼ばれた高麗郡が存在しました。
高句麗からの渡来人と高麗郡について
紀元前37年頃から668年頃にかけて、中国東北部から朝鮮半島にかけて高句麗(こうくり)という大国がありました。
高句麗は約700年間栄えましたが、唐・新羅との戦いに敗れて国は滅びます。
その時、難を避けて多くの王族や家臣が海を渡って日本に渡来し、各地に散在して高麗人と呼ばれていました。
大和朝廷は霊亀2年(716年)に、駿河(現、静岡県)、甲斐(現、山梨県)、相模(現、神奈川)、上総・下総(現、千葉県)、常陸(現、茨城県)、下野(現、栃木県)の7国にいた高句麗人1,799人を、武蔵国に移して創設したのが「高麗郡」です。
この高麗郡がかつてあった地が現在の日高市、ということになります。
高麗郡の呼び名は約1200年間残りましたが、明治29年(1896年)の郡の改変により廃止されました。
境内には異国情緒が漂う民族衣装の陳列もありました。
高麗の郷の首長・高麗王若光を祀る神社
御神門
高麗人のための郡を創設した、といっても当時の当地はまだ未開の地。
そこで郡民を指揮して開拓を進めたのが、郡長だった渡来人・高麗王若光です。
その高麗王若光の功績を称え、郡の守護神として祀ったのが高麗神社となります。
なるほど。日本の普通の神社とは少し様子が違うのも、創設の背景に他民族の歴史があったということで納得です。
ちなみにこの神社の宮司は、代々高麗王若光の子孫の方がを務めているとのこと。現在の宮司さんはその60代目なんですって。
社殿エリア入口の「御神門」に掛かる扁額は、明治33年(1900年)に参拝した朝鮮王朝の貴族、趙重応(ちょうじゅうおう)の筆によるものとのこと。
この扁額の社名、良く見ると高句麗神社とあるんですね。
趙重応は始めに高麗神社と墨書したのち、「これが本当だ」とつぶやきつつ、高と麗の間に小さく句の字を入れたという逸話が残っています。
凄い出世明神!参拝者から総理大臣が多数出現!?
御社殿
高麗王若光とともに、日本の神である猿田彦命(さるたひこのみこと)・武内宿袮命(たけのうちのすくねのみこと)も祭神として祀られています。
建物は、現在見えている外拝殿は平成27年(2015年)に増築されたもの。
内拝殿・幣殿・御本殿覆屋は昭和初期の境内整備の一環で造営されたもので、設計者は東京帝国大学教授の伊藤忠太氏。
そして参拝者側からは見えませんが、本殿は安土・桃山時代の建立とされる一間社流れ造りのもので、埼玉県文化財に指定されています。
伊東忠太(1867-1954年)
明治から昭和にかけて活躍した建築家・建築史家。
東京帝国大学で学び日本建築史学を創始。また、中国やインドやトルコなどへの長期にわたる調査旅行を通じて、東洋建築史の体系を確立します。
設計者としても知られ、平安神宮・築地本願寺・明治神宮などの独特な様式の建築を手がけて、建築界で初の文化勲章を受章しています。
それでもって実はこの神社、知る人ぞ知る、凄い力を持つパワースポットなんですよ!高麗王若光が持つ開拓精神に惹かれて、多くの著名人が参拝に訪れています。
なかでもその御利益に驚くのが政治家に関してで、参拝後に内閣総理大臣に就任された方を多数輩出しています。
またまた~って思っちゃいますが、これが実名も公表されているんですよ。
鳩山一郎(第52・53・54代)、小磯国昭(第41代)、平沼騏一郎(第35代)、斎藤實(第30代)、浜口雄幸(第27代)、若槻禮次郎(第25・28代)など。
6名の輩出って凄くないですか?これはパワースポットと呼ばれるのも頷けますなあ。
文化人では坂口安吾・太宰治・壺井栄などの参拝記録が残ります。また、平成の天皇・皇后両陛下も参拝されています。
「高麗家住宅」慶長年間建築の貴重な民家
社殿の裏手には、高麗王若光の末裔として代々神職を務めてきた、高麗氏の旧住居が保存・公開されています。
慶長年間(1596~1614年)の建築と伝わるもので、東日本に残る民家の中でも有数の古い形を遺すものとして貴重。国の指定重要文化財に指定されています。
建物は茅葺きの入母屋造りで、5部屋と土間で間取りが構成されます。
大黒柱と呼ばれる太い柱がなく、細い柱で梁を支えているのが構図的な特徴とのこと。桁や柱には杉、梁ににはケヤキや松が用いられています。
社殿の裏手にありますが、是非忘れにずに立ち寄りたいスポットです。
足元注意!高台の「水天宮」を登拝
境内の西側に小高い山が見えますが、頂上には江戸時代に分霊を勧請した「水天宮」が、末社としてお祀りりされています。
結構高い所にありそうですが、折角なので登ってみますか。
水天宮の参道入口には、上まで登れない方向けの遥拝所が設けられていました。これは親切ですね。
で、歩きはじめると。。。思ったより結構急だわ(苦笑)。
階段は設けられていますが、一部ちょっと滑りそうな箇所や木の根が出ている部分もあるので、歩きやすい靴での登頂がおすすめです。
10分程度掛けて登り、頂上へ。
祭神として祀られている安徳天皇は、安産・子育て・無病息災・水難除けなどの御神徳をお持ちです。
周囲は緑豊かな森林に囲まれていますが、頂上は綺麗に整備されていました。祠以外は何もありませんが。。。
ここはマイナスイオンを感じられる場所ですね。思いがけなく良い運動にもなりましたし。
「巫女舞と奉納の儀式」秋分の日の催し
本日はたまたまの偶然なのですが、秋分の日の催しが開催されている日でした。
「神楽殿」で披露された巫女舞(みこまい)と奉納の儀を見ることができ、実にラッキー。
一糸乱れぬ美しい舞にうっとりします。
祭事予定を見ると通年、四季折々のさまざまな公開行事が行われており、地元密着型の神社であることが伝わってきました。
高麗神社の御朱印
日を改めて頂いた御朱印。季節の花のスタンプが押されているのが素敵でした。
「高麗山聖天院勝楽寺」高麗王若光の墓所
高麗神社の参拝は以上ですが、高麗神社から1kmほど離れた場所にある「高麗山聖天院勝楽寺」に少し立ち寄りました。山門はなかなかの迫力でですね。
こちらは奈良時代の751年に高麗王若光を弔うために建設された寺で、高麗王若光のお墓があります。
今回は時間の関係で内部の見学はできませんでしたが、境内は高台にあるため眺望が良く、周囲を一望できるそうですよ。
はい、勝楽寺に前にも穏やかな表情で佇む、女将軍の将軍標がありました。
聖天院
公式ページ
住所:埼玉県日高市新堀990-1(GoogleMapで開く)
拝観時間: 8~17時(最終受付16時30分)
拝観料:大人300円、小人(小学生)150円、未就学児 無料
アクセス:
電車)JR「高麗川駅」より徒歩30分、又は西武線「高麗駅」より徒歩40分
車)圏央道「狭山日高IC」より約15分、又は「関越道鶴ヶ島IC」より20分
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高麗神社の詳細情報・アクセス
高麗神社
公式ページ
住所:埼玉県日高市新堀833(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・JR「高麗川駅」から徒歩で約20分(タクシーだと5分) ※西武線「高麗駅」からだと徒歩で約45分かかるので注意
車)
圏央道「狭山日高IC」より約20分、又は「関越道鶴ヶ島IC」より25分
日高市へのアクセス
・JR「八王子駅」から「高麗川駅」までのアクセスは、JR八高線乗車で約40分
・JR「新宿駅」から「高麗川駅」までのアクセスは、埼京線で「川越駅」へ、川越線に乗換て「高麗川駅」下車、乗車時間約1時間15分。
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住所:埼玉県日高市高麗本郷301(GoogleMapで開く) *住所は登山口最寄りの駐車場住所
※高麗神社より車で約5分、徒歩で登山口まで約30分(約2km)。
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※高麗神社より車で約5分、徒歩で約40分(約3km)。
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住所:埼玉県飯能市大字飯能(GoogleMapで開く)
※高麗神社より車で約20分、徒歩約60分(約8km)。
電車ではJR高麗川駅から約5分乗車で、東飯能駅へ。西武池袋線に乗換て約2分乗車、飯能駅下車。駅から西武飯能日高ゆきバス乗車で約5分。
※または、高麗川駅より国際興業バス・高麗駅経由飯能駅ゆきに乗車で約19分、「天覧山入口」下車。
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住所:埼玉県飯能市大字宮沢 327-6 メッツァ(GoogleMapで開く)
※高麗神社より車で約15分。電車ではJR高麗川駅から約5分乗車で、東飯能駅へ。西武池袋線に乗換乗車で約2分、飯能駅下車。メッツァゆきバス乗車にて約13分。
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記事の訪問日:2020/9/22

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