埼玉県秩父市の山深く、標高約1,100mの場所に鎮座する三峯神社。秩父三社の一つとして知られ、三ツ鳥居や色鮮やかな拝殿、そして狼を神様のお使いとする独特の信仰が魅力の古社です。
日本武尊の創建伝承に始まり、山岳修験の霊場として発展し、江戸時代には狼信仰が広く知られるようになりました。
境内を歩けば、歴史を伝える社殿や御神木、山々を望む奥宮遥拝殿など、見どころが次々と現れます。
今回は、実際に訪れた際の写真とともに、三峯神社の歴史や境内の見どころ、参拝時に知っておきたいアクセス情報をご紹介します。山の自然と長い信仰の歴史を感じながら、三峯神社を巡ってみましょう。
目次
三峯神社。日本武尊伝承と狼信仰の歴史をたどる
三峯神社とは?標高1,100mの山中に鎮座する秩父の古社
秩父神社・宝登山神社とともに秩父三社の一つに数えられる三峯神社は、埼玉県秩父市の山深く、標高約1,100mの三峰山に鎮座する古社です。

秩父市街地から離れた山中に位置し、周囲を険しい山々や豊かな森林に囲まれています。
雲海や霧が発生することもあり、山岳信仰の霊場にふさわしい神秘的な雰囲気が漂う場所。市街地の神社とは異なる自然環境も、三峯神社を訪ねる大きな魅力の一つです。
ちなみに社名にもなっている三峰山は単独の山の名称ではなく、周囲に連なる雲取山・白岩山・妙法ヶ岳の三つの峰の総称となります。
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三峯神社の歴史|日本武尊の伝承、中世には山岳修験の霊場として発展

境内にある日本武尊像
三峯神社の起源は、日本武尊(やまとたけるのみこと) が東国平定の途中に山へ登り、東国の平安を願い伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉册尊(いざなみのみこと)の二神をお祀りされたのに始まる、と伝わります。
日本武尊とは
日本武尊は、古事記・日本書紀に登場する皇族で、第12代景行天皇の皇子とされる。父の命を受けて九州や東国へ遠征し、各地の勢力を平定した英雄として描かれています。
東国遠征では、草薙剣を用いて危機を脱した伝説などが知られている。

境内に並ぶ石灯籠
三峰神社は、中世になると修験道の霊場として発展し、鎌倉時代には畠山重忠ら東国武士の信仰を集めた。
しかし南北朝時代の戦乱により社領を失い、山主も途絶えて約140年にわたり衰退します。
文亀2年(1502年)に修験者の月観道満が復興に着手し、27年をかけて社殿や堂宇を再建。
その後、天文2年(1533年)に山主の龍栄が京都の聖護院から「大権現」の称号を授かり、関東における天台修験の重要な拠点として再興を遂げました。
三峯神社をめぐる。三ツ鳥居から随身門へ
三ツ鳥居と狼の像|江戸時代に全国的に広まった御眷属信仰

三峯神社 三ツ鳥居
三峯神社を象徴する建造物の一つが、参道入口に立つ、三つの鳥居を組み合わせた珍しい形の「三ツ鳥居」です。これは他ではなかなか見ない形ですよね!
さらに普通は狛犬がいる鳥居の両脇には狼の像が置かれており、独特の雰囲気を醸し出しています。
日本武尊が三峯山を訪れた際に道案内をしたのが狼だとされ、その勇猛・忠実さから使い神に定められたとのこと。三峯神社の境内では、各所で狼の像に会うことができますよ。

その狼を神様のお使いとする御眷属信仰(ごけんぞくしんこう)は、三峯神社の特徴を語るうえで欠かせません。
「お犬様」と呼ばれた三峰神社の狼信仰は、江戸時代中期になると日光法印という僧によってして全国的に広められ、遠方からも参拝者が訪れたといます。
狼は農作物を荒らす獣を追い払い、火難や盗難などから人々を守る存在と考えられました。

三ツ鳥居の先に、杉並木に囲まれた静かな参道が続きます。

雨が上がった後のモヤッとした天候が、周囲の森に独特の雰囲気を作り出していた。
随身門|江戸時代の面影を残す荘厳な門

やがて印象的な巨大な門「随身門」が現れます。
最初の門は元禄4年(1691年)に建立されたと伝わりますが、現在の門は寛政4年(1792年)に再建されたもの。
江戸時代までの三峰神社では、神道と仏教が混じり合った神仏習合が形成されており、門は仁王像を納めた仁王門でした。
しかし明治時代の神仏分離にともない、仁王像が撤去され随身門となっています。

門の築造において棟梁を務めたのは、妻沼(埼玉県熊谷市)の宮大工・林兵庫正信。
日光東照宮の修理にも関わっている林兵庫正信は、妻沼にあり国宝指定されている「歓喜院聖天堂」の造営にも従事した人物です。
随身門ではその規模に圧倒されるだけではなく、関東各地で活躍した経験を持つ宮大工の技に注目しつつ、細部までじっくりと見てみたいところ。
額の文字は江戸時代の大名で文人として知られる、増山雪斎(ましやませっさい)筆によるもの。
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社殿を彩る彫刻と伝承に触れる
青銅鳥居と八棟灯籠|奉納品に見る江戸時代の記憶

社殿エリアの入口に立つのは、弘化2年(1845年)に建立された「青銅鳥居」。
これは江戸深川の竪川講中からの奉納品で、荒川を使いわざわざ筏で運ばれてきたと伝わるもの。
当時、江戸へは「三峯神社の狼信仰は火難や盗難から家を守るもの」として伝わっており、この鳥居は、三峯神社が江戸の人々と信仰で結ばれていたことを示す、貴重な奉納品といえます。

その鳥居に向かって右側にあるのは、安政4年(1857年)に建立された「八棟灯籠」。
唐破風まで付いた珍しい木製の灯籠で、非常に意匠性が高い美しいもので一見の価値があります。
社殿|名工による極彩色の彫刻を楽しむ

拝殿
そして拝殿へ。
祭神として祀られている伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉册尊(いざなみのみこと)は、日本神話において国土や多くの神々を生み出した、日本最初の夫婦神とされる神。
神話に由来し、夫婦円満や縁結び、子孫繁栄などの御神徳があるといわれています。
さらに三峯神社では、家内安全や火防、盗難除け、諸難除けなども信仰されており、古くから人々の暮らしを守る神様として崇敬されてきました。
拝殿の正面に掲げた大額は、幕末・明治期の皇族で書の達人でもあった、有栖川宮幟仁親王(ありすがわのみやたかひとしんのう)によるもの。

拝殿は寛政12年(1800年)に建立されたもので、色鮮やかな装飾や精巧な彫刻が見どころ。立体的かつ緻密な透かし彫りの技術が生かされており、非常に見応えがあります。
拝殿の欄間や蟇股(かえるまた)には、龍・鳳凰・唐獅子といった聖獣や、中国の故事などをモチーフにした細密な浮き彫りが施されている。

漆塗りの朱に映える、鮮やかな塗色が幾重にも重ねられた極彩色の装飾は、山深い神域の厳かな空気の中で、重厚な華やかさと圧倒的な造形美を見せてくれます。
彫刻師として関わったとされるのが、現、群馬県桐生市出身の彫刻家で、関東各地の社寺に作品を残している関口文治郎。
関口文次郎も随身門を造営した林兵庫正信と同様に、熊谷の歓喜院聖天堂の造営にも関わっています。
龍の床|これは不思議!龍の顔が浮かび上がる床

拝殿の傍には「龍の床」と呼ばれる石製の床があった。
水をかけると龍の顔が浮かび上がるそうなので、柄杓で床に水を掛けてみると。。。おお~、確かに何やら顔らしき物が浮かんできた!これは不思議ですねえ。
龍は古来より縁起の良い生き物とされるので、何か良いことがあるかも。
御神木|鎌倉時代の武将・畠山重忠が奉納した樹齢800年の杉

拝殿前にそびえる樹齢約800年とされる「大杉の御神木」は、鎌倉時代の武将・畠山重忠が奉納したと伝わるもの。
武蔵国の武将であった畠山重忠は、鎌倉幕府の有力御家人のひとり。現、埼玉県深谷市畠山周辺を本拠とする秩父氏の一族で、秩父地方とも深いつながりを持ちました。
武勇と誠実な人柄で知られ、三峯神社をはじめ、秩父地域の寺社にも信仰を寄せたと伝えられます。
氣が頂けると評判のこの御神木は、ツルツルになった木の肌が、多くの参拝者が触れていったことを物語っていました。
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奥宮遥拝殿|妙法ヶ岳の奥宮と山々を望む

境内に一角に、妙法ヶ岳に鎮座する奥宮を遠くから拝むための高台、「奥宮遥拝殿」があるので立ち寄ってみた。
階段の先の遥拝殿に向かっていますが、天候のせいで何やら神秘的な雰囲気ですねえ。
ちなみに三峰神社奥宮そのものは山中にあり、徒歩だと40~50分(約2.4km程)程、車だと2~3分(約700m)の離れた場所にあります。

おおっ~、雲海なのか?霧なのかな?本日は真っ白で何も見えません!
しかし神秘的な雰囲気を味わえましたので、これも山岳神社の魅力としておきましょう(苦笑)。
晴れた日には、眼下に広がる山並みが楽しめるスポットとなっています。
くるみ蕎麦やわらじカツなど、秩父の名物を頂く

敷地内には食事処も2軒ほどあるので、参拝後に立ち寄って秩父名物を頂きましょう。
今回はこちらの古風な雰囲気のある、「三峰お犬茶屋 山麓亭」で昼食をとりました。

頂いたのは地元名物の「くるみ蕎麦」。
秩父産のクルミをすって溶かした、あっさりしたつけ汁で食べるもの。クルミはビタミンやミネラルが豊富で、ヘルシーなんですよ。
さっぱりしており美味しかった。ごちそう様。
他にも、秩父名物「わらじカツ」「中津川いもでんがく」「三峯だんご」などがあり、ご当地グルメに目移りしました。
氣守り|三峰神社のお守りが、浅田真央さんで有名に!?

御守りを購入してきましたが、「氣」の文字が入っているため「氣守り」と呼ばれ、裏面には狼の刺繍のがある、なんともカッコいいデザインのものでした。
以前は月初めの朔日(ついたち)限定で、特別な「白い氣守り」が頒布されていた。
スケート選手の浅田真央さんの姉・舞さんがその白い氣守りを買われ、オリンピック前の浅田選手に手渡したとことで、一気に有名に。
それにより白い氣守りの人気が沸騰!以降、発売日の周辺道路における渋滞問題が発生して、残念ながら白い氣守りの販売は現在中止となっています。
また御守りには、御眷属様(狼様)を御神札として一年間お借りするという「御眷属拝借」というものもあるとのこと。こちらも強力な「氣」が頂けそうですね。
関東の強力なパワーを持った神社を、その位置関係から紐解くなど読み応えのある本。
関東周辺に沢山の素晴らしい神社があることに改めて驚きますね。写真も綺麗!
タモリさんならではの視点で、秩父の歴史が解き明かされてゆきます。
読めば出かけてみたくなるはず!
三峯神社へのアクセス
三峯神社
公式サイト
住所:埼玉県秩父市三峰298-1(GoogleMapで開く)
駐車料金:大型・貨物4t以上 1,540円、マイクロバス・貨物2~4t 1,020円、普通・軽510円、自動二輪・バイク 200円(開門時間:8時~18時)
アクセス:
電車)
・池袋駅から:西武鉄道・特急ラビューで西武秩父駅まで1時間17分。
・八王子駅から:JR八高線で東飯能駅へ、東飯能駅から西武鉄道に乗り換え西武秩父駅へ。
・西武秩父駅から:三峯神社行き急行バスで約1時間30分、あるいは御花畑から秩父鉄道に乗り換え終点の三峰口駅へ、そこから西武バスで三峯神社へ。
・上野駅から: JR高崎線で熊谷駅へ。熊谷駅から秩父鉄道に乗り換え終点の三峰口駅へ。そこから西武バスに乗り換え終点の三峯神社へ。 参考:西武観光バス(秩父エリア) / 西武観光バス(三峯神社線)
車)
・東京方面から:関越自動車道・花園ICより国道140号線、皆野寄居バイパス経由で約2時間。
・山梨方面から:中央自動車道・甲府昭和ICより国道140号線、雁坂トンネル経由で約2時間半
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三ツ鳥居から始まる、三峯神社の歴史散策
三峯神社を訪れて印象に残るのは、霧に包まれた山の景色だけではありません。三ツ鳥居や随身門、色鮮やかな拝殿、そして境内の各所に見られる狼の像には、この地で長く受け継がれてきた信仰の歴史が息づいています。
日本武尊の創建伝承から、修験道の霊場としての歩み、江戸時代に広まった狼信仰まで。背景を知ってから境内を歩くと、一つひとつの景色がより興味深く感じられるはずです。
三峯神社は秩父市街地から距離があるため、移動時間や天候を考慮して、ゆとりのある計画を立てるのがおすすめです。秩父の山々に抱かれた古社を訪ね、自然と歴史を味わう一日を楽しんでみてはいかがでしょうか。
記事の訪問日:2019/8/14




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