
埼玉県吉見町にある、平地の山の上に造られた「松山城」の城跡歩きを紹介します。
丘陵地帯を含んだこの辺り比企地域には、自然の地形を生かした中世の城郭跡が沢山あります。松山城跡はその中でも堀や土塁などが良く残っており、国指定の史跡にもなっています。
そんな自然と歴史を楽しめる山城歩きに出かけましょう!
『比企城館跡群と松山城』
「比企城館跡群」について

松山城がある地域は丘陵地帯を含む比企(ひき)地域と呼ばれています。
戦国時代の関東は、公方(くぼう)足利氏・山内上杉氏(やまのうちうえすぎし)・扇谷上杉氏(おうぎがやつうえすぎし)らの争乱が激化・長期化していました。その三つの勢力が交差する比企地域には、69か所もの城館跡が確認されています。
その中の代表的な4城館、吉見町「松山城跡」、嵐山町「菅谷館跡」「杉山城跡」、ときがわ町・嵐山町・小川町にまたがる「小倉城跡」が国指定の史跡になっています。これらは合わせて「比企城館跡群」と呼ばれます。
4城それぞれ国史跡への指定理由がありますが、松山城跡に関しては「絶えず戦場となった城であること」が指定の理由となっています。
「松山城」について

松山城は荒川水系の支流・市野川(いちのかわ)を天然の堀として利用し、比企丘陵地帯のヘリに造られた平山城(ひらやまじろ)です。平山城は平地にある山に造った城のことですね。
市野川は下流では荒川本流に合流するので、河川を使った交通や物流にも適した場所と想像できます。
松山城に関する記述ですが、鎌倉時代の天文年間(1532~1555年)以降の資料は豊富である一方それ以前の資料が無く、いつ築城されたかは明らかではないそうです。
戦国時代の関東の動乱の中、扇谷上杉氏側の拠点の城として15世紀後半に築城されたと推定されます。
城を巡り後北条氏(小田原北条氏)と越後上杉氏・甲斐武田氏による合戦が繰り広げられ、北武蔵地域の要所であったことが伺えます。城は主に北条氏勢力下の上田氏による支配が長く続きました。
徳川氏の関東入国後、松平家広が城主となり、その弟の松平忠頼の時の1601年に廃城となりました。
なお、松山城という城名は愛媛県松山市に同名のもっとメジャーな(笑)城があるので、区別して武州松山城・武蔵松山城などとも呼ばれます。
『松山城跡を歩く』 土の城郭を探索
正面入口から入城

松山城跡は史跡面積52,283m2、東京ドームの外周面積より少し大きいくらいのサイズですかね。
史跡はこんもりとした小山になっていて、周囲各所に出入りできる口があります。

西に面した正面入口。縄張図を記載した看板があり、入口の階段も整備されています。
では入城しましょう!

登り箇所の最初は階段があり整備されてますが、すぐ傾斜のある土の山道に変わります。

まー、自然の山道を感じるのは山城の醍醐味ではありますが。。。、根っこの張ってる辺りは少し整備されると良いですね。
気を付けて登りましょう。

平地の山城は敷地に入るなり、非日常感を味わえて楽しい!
「本曲輪」 城の説明板アリ

傾斜を登り切った辺りで石の階段が見えてきます。

開けた空間が現れ、松山城の案内看板と本曲輪の標識が現れました。あっけなく本曲輪に攻め込んでしまいましたね(苦笑)。
外側の曲輪から徐々に攻め込む感を味わいたければ、北東の曲輪四の方から入ってくると良さそうです。次回はそうしてみようっと!

案内板には松山城の歴史と縄張図による解説が結構詳細に記載されていました。
情報量が多いのでリーフレットとかが置いてあると、よりありがたい。

要所毎に縄張図入りの立派な標柱があります。この標識を探して歩くと各曲輪を探せて、現在位置も確認出来ます!
本曲輪は東西45m、南北45mほどの広さだそうです。

以前はここに神社があったそうで、社殿等の基礎が残ってます。
いつのどんな神社だったのか?ネット等でも検索しましたが、情報は見当たらなかったなあ。

周囲は木々が茂っている為眺望はイマイチ。木々の隙間から上記の写真程度の眺めでした。
「兵糧倉」 本曲輪脇の曲輪

二ノ曲輪へ進む前に、本曲輪の北西部にある「兵糧倉」と称される曲輪に立ち寄り。

城郭内には主要の曲輪以外にも大小の曲輪があり、こちらもその一つ。本曲輪を防御する為の曲輪とされます。
東西20m、南北45mほどの規模とありますが。。。草木に覆われていて少し全貌が分かり辛いな。

兵糧倉側から見た本曲輪へつながる道。
左右は空堀で、土橋として兵糧倉と本曲輪をつなげる役割になってます。
「ニノ曲輪」 曲輪の構成について

本曲輪に戻り、ニノ曲輪・三ノ曲輪方面へ進みます。ニノ曲輪へ繋がる峠みたいな感じの道はハイキング気分で楽しい。
左手は本曲輪とニノ曲輪を隔てる深い空堀。この辺は草が茂っていてちょっと状況が分かり辛い。

開けた「ニノ曲輪」に出ました!
曲輪の最大幅は東西60m・南北65mほどで、本曲輪より1mほど低く築かれています。

標柱のあるここは、ニノ曲輪の東のヘリ。標識の後ろ側は落差のある窪地です。
松山城の曲輪構成は、南西から北東に向かって本曲輪・二ノ曲輪・三ノ曲輪・曲輪四が一直線に並んでいるのが特徴です。
その他に先ほどの兵糧倉跡の様な大小の曲輪が多数配されています。

二ノ曲輪もそうだし松山城跡全体に通じますが。。。、草木が茂っていて曲輪や堀の形状が確認し辛い部分が多々あるのは正直残念。
維持管理は大変なんでしょうが、貴重な国指定の文化財という事もあり、もう少し整備して縄張が分かり易く歩き易いハイキングコースになるといいなあーと思います。

左手の藪が本曲輪とニノ曲輪の空堀。 ニノ曲輪は、これに沿って湾曲して細長く北に延びています。

本曲輪とニノ曲輪の間の深い空堀が見渡せるポイントに移動。松山城で最も深い空堀で、高低差は最大9mだそうです。堀っていうか、谷って感じですよね!
左手が本曲輪側になりますが、この辺りには本曲輪から突き出した「物見櫓跡」になっています。ここからは良く見えんけど。。。
「三ノ曲輪」 細長い曲輪

こちらもニノ曲輪と三ノ曲輪の間の空堀に、通路として土橋が残っています。

ニノ曲輪と三ノ曲輪の間の堀切。

「三ノ曲輪」は開けており比較的曲輪の形状が確認しやすい。
東西18m・南北60mほどの細長い形状の曲輪です。
「曲輪4」 堀切体感ポイント

松山城の曲輪は本曲輪から外側の曲輪へ移る程低地になって行きますが、曲輪四はひと際下った場所にあります。山裾の方ってことですね。
城郭歩きとして一番面白かったのは、実は三ノ曲輪から一番外側の曲輪四へ続くこのエリアだったかもしれない。
城外との虎口(=入口)がある部分なので特徴的でした。

三ノ曲輪と曲輪四の間にある堀切(左手が三ノ曲輪側)。
堀切の下を歩けるこの辺りは、山城歩きの楽しい体感ポイントの一つでした!
窪地を真っすぐ進むと虎口があり、敵が侵入した場合ここが最初の防衛ポイントとなりそうですね。

堀切の手前側には「曲輪四」と呼ばれる曲輪があります。
「搦手門」 別の入口から攻める
「搦手門(からめてもん)」は通常裏門にあたる門で、松山城の搦手門跡は北西にあり正面入口とは反対側になります。
場所的には近隣の史跡・吉見百穴の駐車場側に近いので、一旦城外に出て違う入口からアプローチしてみます。

ジャジャーン!という感じで、こちら、松山城の城郭のある山肌にへばりついた様に建っている「岩室観音堂」という仏堂。
こちらの裏手が丁度搦手門の辺りになるので、こちらからちょっとのぞいてみます。
「岩室観音堂」に興味があればこちらもどうぞ!

おお、ちょっとインディ・ジョーンズな感じですが。。。通行止めがありますがちょっとだけ。

ちょっと登るとこんな感じ。
登り切った所は突き当たりで二手に道が分かれるだけなので、この辺が搦手門だった辺りではないか、とさせて頂きます。

振り返るとこんな感じ。
この崖の上の地点は正面入口からも周ってこれる場所です。足場が悪いのでここからの入城はオススメしません(苦笑)。
以上で、本日の松山城城郭歩きを終了します。
「城カード」 記念にもらおう!

松山城跡の城カードが無料配布されています。裏面には城の概要紹介も記載されているので記念に頂きましょう。
(配布場所)
配布場所:吉見百穴入口
住所:埼玉県比企郡吉見町北吉見324(GoogleMapで開く)
配布時間:8:30~17:00
休館日:無し
アクセス
住所:埼玉県比企郡吉見町北吉見298(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・東武東上線「東松山駅」下車、川越観光バス「免許センター行」約5分、「百穴入口」下車徒歩約5分
・JR高崎線「鴻巣駅」下車、川越観光バス「東松山駅行」約25分、「百穴入口」下車徒歩約5分
車)
・関越自動車道「東松山IC」から鴻巣方面へ約5km
・圏央道「川島IC」から東松山方面へ約8km
・国道17号より鴻巣天神2丁目交差点から東松山方面へ約10km

車の場合は、近隣にある吉見百穴の無料駐車場が利用可。
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でかけてみませんか?

松山城跡の散策、いかがでしたか?
近世の城郭は石垣や天守閣・櫓など、比較的分かり形の遺構が残っていたりします。
比較して、中世の土の城郭は草木の伸び加減や光線具合もあったりで(苦笑)、イマイチ微妙な形状とその魅力を伝えきれない部分があります。
でも縄張をイメージしつつ、何が出て来くるかな?と探しながら歩く楽しさは、近世の城歩きとはまた違った楽しさがあるんですよねー。
モノは試しで、一度山城をハイキングがてら歩いてみませんか?

たまには、少しリッチなお取り寄せを楽しみませんか?
【記事の訪問日:2021/10/24】