東京都小金井市にある「江戸東京たてもの園」は、貴重な古い建物を野外展示している博物館です。
江戸時代から昭和までのレトロな建物が並ぶ園内に入ると、思わず昔の時代にタイムスリップした感じが味わえますよ!
さらに、江戸東京たてもの園はアニメ映画「千と千尋の神隠し」の参考にもされたといい、それを意識して園内を歩くとさらに楽しさ倍増!
秋の特別イベント「紅葉とたてもののライトアップ」の模様も交えながら、園内の見どころを紹介します。
目次
「江戸東京たてもの園」スタジオジブリとも関連性のある博物館

東京都小金井市にある「江戸東京たてもの園」は、現地保存が困難な都内の歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示をする野外博物館です。
貴重な文化財の継承を目的として、平成5年(1993年)に都立小金井公園内に設置されました。
写真左上のイモムシ君は、園内各所で出会えるマスコットキャラクターの「えどまる」。実はこれ、映画監督の宮崎駿氏が制作したものです。
それからもわかるように、江戸東京たてもの園はスタジオジブリとも関係が深い施設なんですよ。
「東ゾーン」レトロな下町の景観をめぐる

園内は、センター・東・西の3つのゾーンから構成されています。
東ゾーンには昔の商家をはじめ、銭湯や居酒屋などが並ぶ下町の街並みを再現。
建物の中には当時の暮らしや、商売の道具・商品などが展示されています。

スタジオジブリはアニメ映画「千と千尋の神隠し」の製作に際し、この江戸東京たてもの園を”大いに参考にした場所”として挙げています。
これ、風の噂とかじゃなくて、スタジオジブリ公式ページ・Q&Aで参考にした場所として紹介されているんですね。
ということで、「この建物は、千と千尋のあの場面の建物に似てるよな」な~んて感じに、映画の場面と重ね合わせて歩けばさらに楽しいですよ。
「武居三省堂」昭和初期に流行した看板建築

「武居三省堂」は、元々は千代田区神田にあった明治初期開業の文具店です。
神田神保町には現在も老舗の三省堂書店がありますが、そちらとは場所も違い関係の無い建物のようですよ。
昭和2年(1927年)に築造された建物は前面がタイル貼りなのが特徴で、当時流行った看板建築といわれる様式のもの。
看板建築とは
昭和初期に都市の商店街などで流行した建築様式で、主に関東大震災後の復興期に発展しました。
木造二階建ての店舗に、モルタルや銅板などで洋風・モダンな装飾を施した正面壁(看板)を設けたもの。外観は石造や鉄筋建築を模しており、アール・デコ風や和洋折衷のデザインも多く見られました。
耐火性と見栄えを兼ね備え、都市の近代的景観を象徴する存在となりました。

店内も印象的な内装で、壁には200本近くの筆が収納できるという桐箱がずらっと並びます。
実はこの店舗は、千と千尋の神隠しのボイラー室の場面の参考になったといわれているんですよ!
映画内では釜爺が壁一杯の引き出しから、6本の手で(!)器用に薬草を取り出していましたよね。

なんとも貫録のある店内の佇まいです。
「子宝湯」まるで寺院!?立派な東京型銭湯

「子宝湯」は足立区千住で営業していた、昭和4年(1929年)に開業の銭湯です。
入口に唐破風の屋根までついており、まるでお寺のような佇まいですね!
当時、外観が寺院建築の宮づくりで、更に内部に吹き抜けを持つ様式の銭湯が流行ったそうなんです。
宮大工の技術を生かしたこれらの銭湯は、”東京型銭湯”と呼ばれました。この子宝湯はその時代の代表的な建物とのこと。
ちなみにこちらの子宝湯も、千と千尋の神隠しの湯屋の参考になったといわれます。
油屋のモデルは他にも愛媛の道後温泉であるとか、台湾の九份(きゅうふん)であるとかの諸説を耳にします。最終的にはそれらがミックスされたものではないでしょうか。

子宝湯は建物の中も見学できるのが楽しい。
湯船はけっこう深さがあるので、思わず中に入って確かめたくなるんですよ。皆さん、そうみたいですね(笑)。
ちなみに女湯・男湯の仕切りが随分低いので、大丈夫かいな?これ?と、気になりました。
「鍵屋」内田百閒も通ったという居酒屋

こちらの「鍵屋」は、台東区下谷の言問通りにあった居酒屋です。
安政3年(1856年)に酒問屋として創業し、昭和24年(1949年)から居酒屋としての営業が始まったとのこと。
震災や戦火をまぬがれて、江戸時代末期の風情をとどめる建築物が残っているのは貴重ですよね。
2階の切り子格子が印象的です。

建物と店内は、昭和45年(1970年)頃の姿に復元されています。
手頃な値段で静かに飲める鍵屋は、地元の人々を中心に人気の店だったとのこと。
多くの著名人にも愛され、小説家の内田百閒(うちだ ひゃっけん)も通ったらしいですよ。
確かにこじんまりとして居心地が良さそうな店ですねえ。

カラフルな和傘が展示されているこちらは、和傘問屋の「川野商店」。
大正15年(1926年)に江戸川区小岩に建てられた建築物で、昭和5年(1930年)頃の店内の様子が再現されています。
「万世橋交番・都電車両」昭和のレトロな風景

万世橋交番
園内を進むとともに、展示物の時代も徐々に新しくなってゆきます。
こちらは神田の万世橋のたもとにあった、明治末期に建てられた交番です。レンガ調でなんとも味がありますよね。
当時付近には万世橋駅があり、中央線の起点としてにぎわったそうです。
関東大震災以降に路線が東京駅に乗り入れると、駅の利用者が減少。
昭和18年(1943年)に万世橋駅が廃止されると、万世橋交番も役目を終えて廃止となりました。

都電7500型
こちらの懐かしい雰囲気の路面電車は、昭和37年(1962年)製の車両。
渋谷駅前を起終点とし、新橋・浜町中ノ橋・神田須田町まで走っていたそうです。

車内の床が木製なのが、レトロな雰囲気を感じさせます。
そういえば、千と千尋の神隠しでも電車に乗るシーンがありますが、この車両もイメージづくりの参考にされたのかもなあ。
かつては都内の足として活躍した路面電車(都電)ですが 現在は都電荒川線のみが唯一運行されています。
\ 都営荒川線についての詳細はこちら!/
「西ゾーン」洋風モダンな建築物や農村の家屋
「山の手通り」カルピス社創業者の元邸宅

デ・ラランデ邸
西ゾーンに移ると先ほどの下町風情とはガラッと雰囲気が変わり、山の手をテーマに明治時代~昭和初期にモダンとされた建物が並びます。
単に建物を並べるだけでなく、当時の町並みの雰囲気を再現しているのが、たてもの園のユニークなところです。
明治43年(1910年)頃の建築とされる「デ・ラランデ邸」は、平成11年(1999年)まではまだ新宿区信濃町に建っていたそうですよ。
建物の最後の持ち主は、カルピス社の創業者である三島海雲氏だったとのこと。

前川國男邸
こちらは一転して和風モダンな建物ですね。
日本の近代建築の発展に貢献した建築家である前川國男氏の自邸として、昭和17年(1942年)に品川区上大崎に建てられたもの。
外観は切妻屋根の和風の佇まいで、内部は広々とした吹抜けを持つ居間などがあります。
建物内の見学もできますよ。
前川國男(1905-1986年)
日本の近代建築を代表する建築家の一人。東京大学で建築を学び、卒業後はフランスに留学してル・コルビュジエに師事し、モダニズム建築の理念を学ぶ。
帰国後、前川國男建築設計事務所を設立し、合理的構造と日本的感性を融合した建築を追求した。
代表作には東京都美術館・東京文化会館・国立国会図書館などがあり、公共建築の分野で大きな足跡を残しました。
「茅葺きの民家」囲炉裏端の実演を見学

綱島家(農家)
西ゾーンを進んでゆくとまた雰囲気が変わり、茅葺き屋根の民家や農家の家屋が現れます。
こちらの「綱島家」は江戸時代中期に建てられた農家の屋敷で、世田谷区から移設されたもの。

家屋内ではボランティアの方により、囲炉裏が実演されていました。囲炉裏って案外見る機会ないですよね。
囲炉裏の使用目的は、調理だったり、灯りの役割だったり、暖をとったりですが、煙で燻すことは茅葺き屋根の耐久性向上にもつながるそうですよ。
「高橋是清邸」二・二六事件の現場がここにある!?

センターゾーンには、港区赤坂にあった高橋是清氏の住居の主屋部分が保存されています。
高橋是清は大正~昭和にかけて、当時の日本の政治を担った人物です。
建物は明治35年(1902年)のもので、内部の見学もできるようになっています。

繊細な感じの窓枠が印象的ですね。
高橋是清邸庭園の一部も復元されており、秋には窓越しの紅葉が楽しめます。

高橋是清は総理大臣を1回、大蔵大臣を7回を務めるなどの活躍をした大物政治家ですが、昭和11年(1936年)に発生したクーデーター未遂事件「二・二六事件」により暗殺されました。
当時書斎や寝室として使われていた2階のこの部屋こそ、「二・二六事件」の事件現場そのものだった、というのにはびっくり!
そう考えると邸宅の見学も重みを増しますね。というか生々しいなあ。
高橋是清(1854~1936年)
明治から昭和初期にかけて活躍した政治家・財政家。
日露戦争時には大蔵次官として外債募集を成功させ、日本の財政基盤を支えた。後に大蔵大臣や総理大臣を務め、特に昭和恐慌期には積極財政政策の実施で景気回復に導いた。
庶民的な人柄で「ダルマ宰相」と呼ばれたが、二・二六事件において暗殺されました。
レトロな建物内には食事スポットも

たべもの処「蔵」
園内には食事処もあります。
庶民的な下町の雰囲気のなかで食事を頂くなら、東ゾーンにある「たべもの処 蔵」へどうぞ。
蔵造りの建物で手打ちうどんや日替わり弁当が頂けますよ。
1階は無料の休憩所になっています。

デ・ラランデ邸
山の手気分で食事を楽しみたい方は、西ゾーンの「デ・ラランデ邸」へ。
明治時代の洋館で食事や喫茶ができるほか、ドイツビールも楽しめるという本格派な茶房です。
天気の良い日はテラス席も気持ち良さそうですよ。
「紅葉とたてもののライトアップ」秋の特別イベントを紹介
夜間特別開園「紅葉とたてもののライトアップ(2020年)」

訪問当日は「紅葉とたてもののライトアップ」の特別イベントの開催日でした(11月22・23日の2日間)。
通常は16:30が閉園時間ですが、この日は16:30~20:00までライトアップによって夜間開園されます。
ライトアップイベントは通常、夏と秋の2回開催されています。
昼間の入場者は、そのまま夜まで滞在できるのはラッキーでした。夜間開園からの入場者は結構並んでいたようなので。

建物に明かりが灯り夕暮れ時の街並みが現れ始めると、なんだかグッと哀愁をおびた雰囲気に包まれてきます。
高橋是清邸庭園の紅葉がライトアップ!

ライトアップされた高橋是清庭園の紅葉がとても綺麗です。
多くの方々がこれを目当てに来られているようで、「今年も良かったね!」なんて、楽しげな会話が聞こえてきました。
幻想的なランタンとキャンドルナイト

切り絵のランタン展示
道沿いに並ぶ各国の絵柄のランタンが、エキゾチックな雰囲気を醸し出します。

広場でおこなわれた、美しく幻想的なキャンドルナイト。

ライトアップは季節限定イベントなので、日程を確認して狙って見に行く感じですね。
一方、ビジターセンターにある展示スペースでは、通年企画展示が開催されています。ちなみに本日開催されていた「大銭湯展」も、なかなか興味深い内容でした。
面白そうな展示企画にあわせての訪問も良さそうですよ!
東京には素敵な名建築が沢山ありますが、そこでお茶できたり食事できたりすると素敵ですよね。
テレビ大阪,BSテレ東の真夜中の人気ドラマ「名建築で昼食を」の原案本!
江戸東京たてもの園の基本情報・アクセス
江戸東京たてもの園
公式ページ
住所:東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)(GoogleMapで開く)
観覧料:一般:400円、65歳以上:200円、大学生(専修・各種含む):320円、高校生・中学生(都外):200円、中学生(都内在学または在住)・小学生・未就学児童:無料
休園日:毎週月曜日(月曜日が祝日または振替休日の場合は、その翌日)、年末年始
アクセス:
電車)
・JR中央線武蔵小金井駅、北口から西武バスで5分、「小金井公園西口」下車で徒歩5分。
※東久留米駅行(御成橋経由又は錦城高校経由)、又は清瀬駅南口行き又は滝山営業所行き
・ JR中央線武蔵小金井駅、北口から関東バスの 三鷹駅・武蔵野営業所行きで「江戸東京たてもの園前」下車で徒歩3分。(本数が少ないので注意)
・JR中央線東小金井駅北口からCoCoバス(小金井市コミュニティバス)で 6分、北東部循環「たてもの園入口」下車で徒歩10分。
・西武新宿線 西武新宿線花小金井駅南口から武蔵小金井駅行き西武バスで5分、「小金井公園西口」 下車で徒歩5分。
西武バス / 関東バスナビ / CoCoバス ホームページ
車)
・有料駐車場有
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江戸東京たてもの園へ出かけてみませんか?
江戸東京たてもの園、行く前はシブすぎるテーマパークなのかな?と思ったりもしていたのですが(苦笑)。
そんなことは無く、貴重な建築物が多く並び、大人から子供まで楽しめる大変見応えのある博物館でした。
都心からも気軽に行けるちょっと穴場な楽しいスポット、江戸東京たてもの園へでかけてみませんか?
記事の訪問日:2020/11/23



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