東北自動車道上りの羽生パーキングエリアには、池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」の舞台となった江戸の町並みが、驚くほどリアルに再現されています。
鬼平犯科帳に登場する大店が建ち並ぶのをはじめ、フードコートには鬼平が通った店が並び、作中に登場する料理まで再現されているという凝りようだ。
立ち寄りどころか目的地にしたくなるような、テーマパークみたいなパーキングアエリア「鬼平江戸処」を紹介します。
目次
「鬼平江戸処」江戸下町を再現した東北道のパーキングエリア
現代の日光街道(東北自動車道)に関所が出現!?
東北自動車道の羽生パーキングエリア(上り)はテーマパークのようで面白いよ、と聞きつけたので、なになに?とばかりに、興味深々で足を運んでみました。
羽生パーキングエリア(以下、羽生PAと省略)は栃木県を抜けた後、埼玉県に入って最初にあるパーキングエリア。東京までは丁度100kmを切った距離のあたりです。
羽生PAに到着する。。。、なるほど、ここはまるで江戸の町のようだ!雰囲気たっぷりの木造の門が出迎えてくれました。
こちらの施設は「鬼平江戸処」と名付けられており、江戸の時代の町並みを模した、他のパーキングエリアとはひと味違った造りとなっています。
でもやはり、なんで埼玉県の羽生に江戸の町なの?っていう素朴な疑問が湧きます。
鬼平江戸処のコンセプトを確認すると。。。、
- 「東北自動車道は、江戸時代の日光街道~奥羽街道の現代版にあたる。」 なるほど。
- 「羽生のそばには、日光街道唯一の関所である栗橋関所があった。」 ふむふむ。
- 「それらになぞって、ここを江戸の入口に見立てた。」 なるほどね。
東北自動車と日光街道を重ね、江戸の手前の関所に見立てている設定は道温故知新で面白い。
居眠りしそうなドライバーがいたら江戸に入れねぇぞ!みたいな感じですかね(笑)。
\ 栗橋にあった関所についての詳細記事はこちら!/
池波正太郎の鬼平犯科帳の世界を再現
そして、その江戸の町のテーマに据えられて景観に華を添えているのが、小説家・池波正太郎氏の代表作「鬼平犯科帳」の世界観です。
人情味あふれグルメな主人公・鬼平が活躍した江戸の下町にちなみ、人情の世界(=おもてなし)と美味なる江戸が再現されています。
鬼平犯科帳とは?
池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」は、江戸時代後期を舞台に火付盗賊改方長官・長谷川平蔵宣以(のぶため)(通称「鬼平」)が盗賊を取り締まる姿を描いた時代小説です。昭和42年(1967年)に「オール讀物」で連載開始され、池波正太郎の死去まで20年以上続き、全24巻に及びました。
冷徹な裁きで恐れられる一方、人情味ある性格で人々から慕われた鬼平の人物像が魅力で、密偵や同心との絆、盗賊との攻防を通じて義理と人情が交錯する江戸の社会を活写しました。
発表当初から高い人気を誇り、ドラマ化や舞台化も重ねられ、時代小説の金字塔とされています。
時代設定としては、鬼平が生まれた延享2年(1745年)から江戸庶民が華やいだ文化文政時代(1829年頃まで)までの江戸の風景が創り出されています。
池波正太郎(1923-1990年)
東京浅草生まれの小説家・時代小説作家。
戦後、映画会社でシナリオ修行を経て作家活動に入り、昭和31年(1956年)に直木賞を受賞して注目を集める。
代表作に「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」などがあり、いずれも江戸の庶民や武士、盗賊の世界を緻密な時代考証と人情味あふれる筆致で描き、現代まで愛読されています。
食や旅への造詣も深く、随筆や紀行文も多い。
日本橋大店の並ぶ町並みが出現
駐車場エリア側には、当時華やかだった日本橋大店(おおだな)と呼ばれる大店舗が並ぶ雰囲気を再現。
大店のモデルは、鬼平犯科帳の中で盗賊に押し入られた店がわざわざチョイスされています。このこだわり振りは鬼平ファンにはたまらないでしょうなぁ。
こちらの「大野屋」は、現存する足袋の老舗。
特にこの看板は大野屋の協力のもとに、なんと本物の看板を掛けているとのこと!いや~、細部までこだわってますなあ。
和漢筆墨所「竜淵堂」前に掛けられた筆、でかっ!
興味深いものが色々あるので、見ているとドライブ疲れの眠気も忘れてしまいますね。
文化文政時代(1804~1830年頃)はどんな時代?
江戸時代後期の安定期で、「化政文化」と呼ばれる町人中心の華やかな文化が栄えた時代。
商業や流通などの経済面も発達し、江戸・大坂・京都を中心に都市文化が成熟。浮世絵では葛飾北斎や歌川広重、文学では十返舎一九の東海道中膝栗毛が人気を博しました。庶民の娯楽として芝居や寄席も盛んになり、ファッションやグルメも流行。
一方で幕府財政は悪化し、農村では飢饉や打ちこわしも発生、繁栄と不安が共存する時代でした。
鬼平は実在した人物だったのか?
鬼平犯科帳の主人公・鬼平こと長谷川平蔵は、”火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)”という役職でした。これは江戸の重罪にあたる放火・盗賊・賭博を取り締まるものです。
「火事と喧嘩は江戸の花」なんて言葉を良く聞きますが、なかでも火事に関しては放火が多かったようです。
そんな役職についていた鬼平こと長谷川平蔵ですが、実際に居た人物なのでしょうか?
鬼平は実在した人物だったのか?
鬼平犯科帳の主人公・長谷川平蔵宣以(通称「鬼平」)は、実在した江戸幕府の火付盗賊改方長官です。
実在の平蔵は延享2年(1745年)生まれの盗賊取締りの凄腕。厳しい取り締まりをおこなうと同時に、更生の道を与える温情も併せ持った人物と伝わります。
池波正太郎の小説ではこの史実を基にしつつも、多くの事件や登場人物は創作です。
鬼平は実在人物の人格と業績を土台にしながら、史実を大幅に脚色して生まれたキャラクターということになります。
下町グルメ満載!鬼平行きつけの軍鶏鍋の五鉄も
では建物の中に入り、江戸の美味なる食の世界をのぞいてみますね。
食事処はフードコートとなっており、こちは江戸下町「本所深川」の屋台の雰囲気が再現されています。
下町にはやはり夕暮れ時が似合う、ということでしょうか。まだ昼時ですが、随分とムーディーな町並みが現れました(笑)。
鬼平犯科帳では、食事が物語に欠かせない一部となってます。
そしてこちらのフードコートも、作中に登場する店名で出店がされているというこだわりよう。軍鶏鍋屋「五鉄」・蕎麦屋「さなだや」・鰻屋「忠八」などなど。
料理もそのイメージに合ったものを提供しています。これまたファンにはたまらない設定ですよね。
オリジナリティーあふれる店が並び料理選びに迷いますが、鬼平も軍鶏鍋(しゃもなべ)をつついたという、こちらの「五鉄」で注文。
ここの名物料理は鬼平犯科帳の小説にも出てくる「一本うどん」。商品開発には3年もの期間が費やされたという力作だそうだ!メディアにもよく取り上げられています。
で、最初にスミマセン。注文したのは一本うどんではなく親子丼でした。一本うどん、ちょっと食べづらそうな感じだったもので。。。
親子丼は卵トロトロで旨かったです。ご馳走様。
食事する席も温もりが感じされる、落ち着いた雰囲気でした。
「両国広小路」 屋台風のみやげ処
お土産処は、江戸で賑わっていた「両国広小路」の屋台の雰囲気を再現したとのことです。
広小路とは?
江戸の町に広小路が設けられるきっかけとなったのは、明暦3年(1657年)に江戸の町に発生した明暦の大火です。この大火は江戸の町の大半を焼き尽くし多くの死者を出した、江戸時代最大の大火でした。
大火後、幕府は延焼を防ぐための防火対策の一環として、火除地や広小路を江戸の各地に設けました。両国橋西詰に設けられた両国広小路も、その火除地として設けられたものの一つです。
当初は空き地でしたが、やがて露店や見世物小屋などが並ぶようになり賑わいの場となりました。
江戸下町っぽいお土産といえば佃煮ですが、定番から変わり種まで種類が揃っており選ぶのが楽しいです。
鬼平江戸処のオリジナルお菓子もあります。
可愛らしい足袋の形に魅かれ、足袋せんべいのカレー味をお土産に購入。
最近のパーキングエリアの土産物屋って、洗練された品揃えをしているところも多く進化を感じますわ。
「屋台連」 鬼メンチやくず餅で小腹を満たす
建物の外には、ちょっとした軽食が買える立ち食い処「屋台連」もあります。
小腹を満たすのに丁度良いな串ものや、アイスクリームなどが販売されています。
なんだかすごいトゲトゲ感を案じる「鬼メンチ」。「実際はこんなに大きくありません」との注意書きがあり、ちょっと笑ってしまった。
こちらの人形焼きの「文楽焼本舗」では、人形焼きと鯛焼きを販売。アンコ入りのみならずチョコクリームやカスタードはもちろん、期間限定でイチゴレアチーズなるものも。
甘いのが苦手な人向けにはお好み鯛焼きなどもあり、実に懐の広いラインアップを提供。
購入したら「植木屋の植半」のベンチで頂きましょう。
元祖くず餅の名店「船橋屋」の串くず餅を購入。櫛に刺さったくず餅って、ありそうだが見たことなかった気も。
上はあんこの餡、下はアンズの餡がのったもの。あんこはもちろんのこと、アンズ餡もさっぱりしておいしゅうございました。
植木屋の植半の前にはちょっとした広場があり、大道芸や夕市などの催しもおこなわれるそうですよ。
なんだか楽しすぎて江戸に帰るのを忘れちゃいそうな(笑)、そんな充実したパーキングエリアでした。
一般道からも入場可能
そしてこのパーキングエリア、実は高速道路を利用しなくても施設内に入れます。
裏手にある駐車場に停めて、こちらの弥勒寺門入口より通行手形なしで、もとい、高速料金なしで入場できますよ。
一般道の来客用の駐車場です。本日もこちらに駐車しての訪問でした。
東北自動車道 羽生PA(上り)・ 鬼平江戸処の詳細情報
鬼平犯科帳の世界を、ドラマや映画で楽しもう!
「地球の歩き方」の国内ガイドに「埼玉」登場!
約500ページあり情報量が凄い!これで隠れた面白スポットを探すぞ~。
鬼平江戸処に出かけてみませんか?
江戸の町を再現したユニークなパーキングエリアでした。
今回は土曜の午後に「どこかでランチを」と思いたってふらっと訪問したのですが、思いがけなく楽しい一日が過ごせました。
皆さんも東北自動車道の上りに乗った際は是非こちらに立ち寄って、リフレッシュしてから江戸・東京に向かって下さい。
記事の訪問日:2021/5/5

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