昔より交通の要所にあった品川。そこに海上交通の安全を祈願して、源頼朝が創建したのが品川神社の始まりとされます。
江戸時代になると品川には東海道の第一宿・品川宿が設立され、品川神社は北品川宿の総鎮守として信仰を集めました。
徳川家康が関ヶ原の戦いの際に戦勝祈願をおこなったのをはじめ、徳川将軍家の篤い崇敬を受けた歴史などを辿りながら、都内最大級の富士塚もある境内の見どころを紹介します。
目次
「品川神社」 東海道・品川宿の発展と品川神社
品川は東海道 品川宿と品川湊で発展した交通の要所

「品川の駅海上」 初代 歌川広重作
(出典:国立国会図書館)
徳川家康は天下統一後に街道整備をおこないますが、とりわけ重要視したのが江戸・日本橋から京都・三条大橋まで通じる東海道でした。
慶長6年(1601年)には他の街道に先駆けて伝馬制が敷かれ、日本橋からの第一宿となる品川宿が設置されます。
江戸時代以前から品川湊(しながわみなと)と呼ばれる港があった品川ですが、江戸時代になると海上と陸路による交通の要所としてさらに発展しました。
また、品川宿は江戸に最も近い宿場だったため、大名や旅人の休息地としてのみならず、茶屋や遊郭などが多く軒を連ねた観光地的な一面もあったようですよ。
宿場は北品川と南品川の2つのエリアに分かれ、北品川には商人や職人が多く住み、南品川には寺社や武家屋敷が点在していました。品川神社は北品川宿の総鎮守でした。
珍しい昇龍・降龍の双龍鳥居が入口に立つ

品川神社の最寄り駅は、品川駅から京浜急行で2駅目の新馬場(しんばんば)駅です。
駅の西口を出ると京浜急行の線路と並行して第一京浜(国道15号線)が走っていますが、それを越えた先に品川神社の入口があります。
ちなみにこの第一京浜は、かつての東海道を引き継ぐ形で整備された道路です。

入口の鳥居の脇では、狛犬と七福神の一人である大黒天の大きな石像が出迎えてくれます。
品川周辺の旧東海道沿いには「東海七福神巡り」が設定されており、品川神社には大黒天が祀られています。かなり力のこもった表情が印象的でした。

そして大正14年(1925年)に建造された石鳥居は、両側の柱に龍が彫られた双龍鳥居でした。これは珍しいですね!左側に彫られているのは昇龍です。
日光東照宮の唐門の木造柱にも昇龍・降龍が描かれていましたが、石鳥居のものは初めて見ました。

こちらは右側の降龍。
結構おどろおどろしい雰囲気がありますが、龍は古来より豊作をもたらす水神様とされるなど、縁起の良い生き物とされています。
ちなみに都内では杉並区の馬橋稲荷神社(阿佐ヶ谷)と高円寺内の稲荷社にも双龍鳥居があり、品川神社とあわせて東京三鳥居と呼ばれているそうですよ。

鳥居を堪能した後、境内に続く段を登ります。品川神社の境内は、ボコっと突き出た台地の上にあるのが特徴的です。
境内は狛犬の宝庫!珍しい備前焼の狛犬も

登った先の境内入口にも狛犬がいます。寛政4年(1789年)奉納の結構古いもので、ツノを生やしているのが特徴的です。
平安時代に始まったといわれる日本の狛犬文化ですが、当時はツノ付きが正統派スタイルだったようですよ。

その先には文政13年(1830年)年に奉納された狛犬もいましたが、備前焼というのは関東では結構珍しいのではないでしょうか。
焼かれた備前(現、岡山県)の窯元の名前も彫られており、わざわざ遠方から取り寄せていることから、こだわりの奉納品であることが感じられます。
ここまで既に3ヶ所の狛犬が登場していますが、品川神社では7か所で狛犬に出会えるという、狛犬好きにはたまらない神社なんですよ!ちなみに1か所は社殿内となります。

庖丁塚
境内入口付近には「包丁塚」なる石碑があります。これは使い古された庖丁と鳥獣魚介慰霊のために、品川区の鮨商環衛組合連合会が立てたもの。
かつて品川宿があった品川には、現在も多くの飲食関係の店が集まっています。

東海七福神めぐり発祥の碑
「東海七福神めぐり」は昭和7年(1932年)に定められたもので、旧品川宿周辺の社寺をめぐる約4.5Kmのコースです。
品川神社のホームページ にはマップ(おめぐり図)もあるので、品川神社参拝と併せてめぐってみてはいかが?特に元旦から1月15日までの期間には、宝船と七福神像の授与があります。

御岳神社
石碑が並ぶ裏手にあるちょっとした高台には、御嶽神社が祀られています。山岳信仰で知られる神社ですね。
境内にはもっと凄いお山がありますが、そちらは後程ご紹介。
都内で2番目に古い堀田正盛奉納の石鳥居

参道の半ば過ぎにある石鳥居は、慶安元年(1648年)に徳川3代将軍・家光の側近だった堀田正盛が奉納したものです。
都内では上野東照宮の鳥居に次いで、2番目に古い鳥居とのこと。これは貴重ですね!品川区の指定有形文化財に指定されてます。
堀田正盛(1609-1651年)
江戸時代前期の譜代大名で、徳川家光の側近として老中や大老格の要職を歴任し、幕政の中枢で活躍。
特に寛永期の幕府体制確立に貢献しました。家光の死に際して殉死したことでも知られています。

江戸時代の徳川将軍家との繋がりは、寛永14年(1637年)に品川神社に隣接した場所に徳川家光命で大規模寺院である東海寺が建立されますが、品川神社がその鎮守に定められたことによります。
そのため神社は建物の再建・修復を全て幕府が賄う「御修覆所」となり、以後、歴代将軍の庇護を厚く受けました。
明治時代になると東海寺の寺領は新政府に接収され衰退し、現在はその一部が残るのみとなります。
源頼朝が創建、徳川家康は関ヶ原の戦勝祈願をした

品川神社の創建は平安時代末期の文治3年(1187年)に、源頼朝が安房国の洲崎明神(現、千葉県館山市鎮座)の天比理乃咩命を迎えて海上交通安全・祈願成就祈願したのに始まると伝わります。
その後の鎌倉時代には幕府御家人の二階堂道蘊(どううん)が宇賀之売命を、室町時代には武将・太田道灌(どうかん)が素盞嗚尊をお祀りしたといわれます。
そして慶長5年(1600年)には徳川家康が関ヶ原の戦いの出陣の際にこちらで戦勝祈願をするなど、特に武将からの篤い崇敬を受けました。
明治元年(1868年)には明治天皇により、東京の鎮護を祈る「准勅祭神社」の一つに定められています。

社殿は元禄7年(1694年)に焼失した際には5代将軍・綱吉の命より再建され、嘉永3年(1850年)に焼失した際には12代将軍・家慶の命により再建されました。
現在の社殿は、老朽化に伴い昭和39年(1964年)に新築されたものです。
「天下一嘗の面」「葵神輿」 徳川家康が戦勝成就で奉納

関ヶ原の戦いの戦勝を当地で祈念した徳川家康は、見事勝利をおさめ天下統一を果たしました。その祈願成就の御礼として、家康は天下一嘗の面と神輿(葵神輿)を品川神社に奉納しています。
手水舎に架かった額には、例大祭の神輿の屋根に付けられた「天下一嘗の面」が描かれています。(現在は神輿にはレプリカが付けられます。)
天下一嘗の面は室町時代中期に作られた物とされ、舞楽の演目で使用される赤面さまと呼ばれる、ちょっと微笑ましい雰囲気の面です。天下一嘗の面と葵神輿は「宝物殿」で見学することができますよ。
宝物殿
開館時間:9:30~16:30
開館日:正月期間、6月の例大祭期間中、11月中の土・日・祝日
※上記以外の日は必ず事前に予約が必要。神社行事等により予約を受けられない場合もあり。
「阿那稲荷社」 御神水には一粒萬倍の秘めたる力が!

社殿の右手には境内社の「阿那稲荷社」の小さな鳥居が並びます。

鳥居の先の社には阿那稲荷社の「天の恵みの霊」が祀られており、上社と呼ばれています。

ピンときた方もいるかと思いますが、そう、阿那稲荷社には下社もあるんですね。上社・下社の2社で構成されています。
その名の通り下社は下った場所にあり、谷に向かって続く小さな鳥居に吸い込まれるように進みます。

提灯が掛かり秘めやかな雰囲気を持つ下社が現れました。扁額には「一粒萬倍」とありますね。

境内にあるこちらの湧き水は、「一粒萬倍(いちりゅうまんばい)の御神水」と呼ばれるもの。下社では「地の恵みの霊」と「御神水」がお祀りされています。
で、この御神水からは一粒の米が萬倍の稲穂となるような、大きな御利益が頂けるそうですよ!
柄杓と小さなザルが置いてあったので、参拝後に小銭とお札を洗わせて頂きました。どうぞ、萬倍になりますように。。。
「浅間神社」 三遊亭円丈が奉納した狛犬

「浅間神社」は入口の石段を登ってすぐの場所にある境内社。この隣にある富士塚と対の存在となる、富士山信仰に関連する神社です。

社殿の前には勇ましくカッコ良い狛犬がいました。彩色された富士山が描かれた台座も凝った感じですよね。
実はこれ、平成16年(2004年)に落語家の故・三遊亭円丈(さんゆうてい えんじょう)氏が奉納した狛犬で、「くも狛犬」と命名されています。そういわれれば、狛犬は雲に乗っていますね。
三遊亭円丈氏は、日本参道狛犬研究会なる会を発足する程の狛犬好きだったのですよ。
三遊亭圓丈(1944-2021年)
古典を現代に合わせた新しい視点で演じ、新作落語の創作にも力を入れた落語家。既存の枠にとらわれない実験的な高座で知られ、「実験落語」を提唱。独特の世界観と表現で、落語に新たな可能性を切り開きました。
従来の落語ファンだけでなく、若い世代からも支持を集め、落語界に新風を吹き込んだ異端の天才と称されました。

境内の傍には交通旅行安全守護「ぶじかえる」の蛙の石像。富士+蛙で「無事(ふじ)帰る(蛙)」ですよね、きっと。。。
「品川富士」 都内最大級の富士塚がそびえる

最後に入口の坂の途中に登山口がある、「品川富士」と呼ばれる富士塚を紹介します。この品川富士登山は、本日の楽しみの一つだったんですよ。
江戸時代、江戸では富士山信仰が爆発的に流行りましたが、しかし誰でも簡単に富士登山ができる時代ではありませんでした。
そこで富士信仰の集団(=富士講)が、実際に富士登山ができない講員向けに造った代用の山が富士塚というもの。
その一つである品川富士は高さは約15mあり、都内でも最大級といわれる富士塚です。
元々は明治2年(1869年)から明治5年(1872年)にかけて築造されましたが、大正11年(1922年)に国道第一京浜建設に伴い現在の場所に移築されています。

高さにより1合目から9合目までの標石が配置されており、まさに本格的なミニチュア富士山です。
特筆すべきは毎年7月上旬、品川丸嘉講社によりに山開きの神事が現在でもおこなわれていること。神事が継続されている富士塚は、今では珍しいようですよ。

ちょっと怖そうな面々に見送られながら登山開始。

山肌に溶岩が施されており、なかなかリアルな仕上がりだ。7合目から少し険しくなりますが、頂上はすぐそこ!

そして石段を登り切ると、眺めの良い山頂に到着。
高架を走る京急の電車をも見下ろせる眺めは、なかなかの眺望ですよ!昔はビルもなく、もっと遠くまで見通せたのでしょうね。
これにて本日の参拝を終了します。
御朱印

江戸時代に歌川広重が描いた名所江戸百景を、現在の写真や地図と対比して解説したガイドブック。
東京歩きが楽しくなる1冊!
品川神社の詳細情報・アクセス
品川神社
公式ページ
住所:東京都品川区北品川3丁目7-15(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・京浜急行「新馬場駅」北口から徒歩1分
・JR「品川駅」から徒歩15分(800m)
・JR・東急「大井町駅」から東急バス(品94・渋41)で、「新馬場駅」下車徒歩3分
車)
・駐車場あり(国道15号側から入場)
品川ランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
東京十社めぐりの紹介
明治時代、明治天皇は東京の鎮護を祈るための神社として、准勅祭神社を定めました。品川神社もそのうちの一社です。
准勅祭神社の制度は後に廃止されましたが、昭和天皇の御即位50年の際、元准勅祭神社による「東京十社めぐり」が設定されました。
専用御朱印帳・ミニ絵馬(各社オリジナル)・大絵馬などが用意されており、楽しく参拝できますのでぜひめぐってみて下さい。
\ 東京十社めぐりの詳細はこちらへ!/
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品川神社へでかけてみませんか?
江戸時代に栄えた歴史や徳川将軍敬との繋がりなどの歴史が感じられました。
また、境内では様々な時代の奉納品にも出会え、興味深く参拝ができる境内でした。それと品川富士登山は楽しかった。
そんな、品川神社の参拝に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2022/7/10



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