久伊豆神社は江戸時代、江戸城北方の要衝として重要な拠点だった岩槻城城内にあった神社です。岩槻城の総鎮守として崇敬され、歴代城主からの深い庇護を受けました。
県のふるさとの森にも指定されている社叢に包まれた境内には、歴史を感じさせる奉納品が多くありますが、なかでも異色なのが孔雀。運が良ければ羽根を広げた、その美しい姿に出会えますよ。
境内の開運スポットも楽しい、久伊豆神社の歴史と見どころを紹介します。
目次
「久伊豆神社」 江戸城の鬼門除け、岩槻城の総鎮守
久伊豆神社は岩槻城城内にあった神社

岩槻城址公園の案内板の絵図より
かつて岩槻にあった岩槻城は本丸などの主郭は水堀(沼)に囲まれ、その外側には城下町がありました。
さらに城下町を囲んで約8kmにわたる土塁と堀が築かれており、城と町が一体化した「大構(おおがまえ)」と呼ばれる造りでした。
江戸時代の絵図内に位置を示しましたが、久伊豆(ひさいず)神社もかつて大構内にあった城内の神社でした。

神社入口の向かいには「新正寺曲輪」の跡碑が立っています。
元荒川沿いに広がる城郭の北側に位置する曲輪内に、久伊豆神社は岩槻城総鎮守として鎮座していました。ちなみに曲輪名にある新正寺は現在はありません。
\ 岩槻城に関する詳しい記事はこちらへ! /
太田道灌も城内の総鎮守として崇敬

東武鉄道の岩槻駅から1km程度の場所にある久伊豆神社。岩槻区の中心部からも程近いですが、広々とした境内は緑に囲まれてとても静かです。
久伊豆神社は欽明天皇の時代(539~571年)の創建と伝わる神社で、1500年の歴史を持つ古社といわれます。
古くから武将からの崇敬を厚く集めた神社で、平安時代には武蔵野に勢力を持つ武士団「武蔵七党」の野与党・私市党より崇敬を受けます。
戦国時代になり太田道灌が岩槻城を治めた時代にも、城内の総鎮守とされました。
「久伊豆神社社叢」 埼玉県のふるさとの森に指定

入口から入ると、多くの木々に囲まれた厳かな雰囲気の参道が真っすぐ続きます。
埼玉県の「久伊豆神社社叢(しゃそう)ふるさとの森」にも指定されている社叢は、スダジイ・スギ・クスノキ・ケヤキなどによって構成されているとのこと。
自然を感じられるスポットとしても貴重なエリアですね。
徳川将軍の日光社参時には祈祷を開催

江戸時代になると、岩槻城は江戸城北方の要衝として重要な拠点となります。
江戸の鬼門にあたるとして、徳川家康も久伊豆神社で鬼門除けの祈願をおこなったともいわれています。

氏子から奉納された石碑
家康の死後に日光東照宮ができて日光社参が始まると、日光御成道沿いにあった岩槻城は徳川将軍の宿泊地としての重要な役割を担いました。
将軍の日光社参時には、岩槻城主の主催による祈祷が久伊豆神社にておこなわれたそうですよ。
日光社参と日光御成道について
日光社参は徳川家康公を祀る日光東照宮を将軍家が参拝する巡礼行事で、江戸時代を通じて合計19回実施されました。
6名の徳川将軍が社参をしており、2代将軍秀忠が4回、3代将軍家光が10回、4代将軍家綱が2回、8代将軍吉宗が1回、10代将軍家治が1回、12代将軍家慶が1回となります。
将軍の日光への行程は、主に中山道の本郷追分(現東京都文京区)から日光御成道に入り、幸手(現埼玉県幸手市)で日光街道に入って日光に至るルートが一般的でした。
参道には江戸時代の石灯籠

参道にある古今さまざまの奉納品からは、氏子からの崇敬の厚さが伝わってきます。
こちらは安政4年(1858年)奉納の「石灯籠」。
獅子の背中に大きな灯籠が載せられた立派なもので、「ちょっと重いわぁ」の獅子の声が聞こえてきそうな一品(笑)。

こちらは安永6年(1777年)の常夜燈で、獅子の石灯籠よりもさらに古い年代の物ですね。

石・砂によって山水を表現する「枯山水(かれさんすい)」の庭園もありました。こちらは昭和に地元岩槻の名士の方が奉納したもの。
「ひさいずさんの孔雀」 美しい奉納品!

そして特筆すべき奉納品の一つには、生き物もありましたよ!
美しいこの孔雀は「ひさいずさんの孔雀」と呼ばれ、久伊豆神社のシンボルとなっています。
これは昭和13年(1938年)に旧皇族の朝香宮鳩彦殿下より贈られた3羽の孔雀の末裔で、現在まで大切に育成されているものです。
まばゆい模様がついた羽を広げた神々しい姿が見られて、これはラッキーでした。

朝香宮鳩彦王殿下(1887-1981年)
旧皇族・旧陸軍軍人。明治39年(1906年)に朝香宮家を創設。
フランス留学中の交通事故を機に軍事研究に精進され、皇族として初めて陸軍大将まで昇進。
戦後は皇籍を離脱し、朝香鳩彦として新日本野球連盟名誉総裁などを務め、「ゴルフの宮様」とも呼ばれました。旧朝香宮邸は現在の東京都庭園美術館として、そのアール・デコの美を今に伝えています。
大黒様の徳を持つ御祭神はクイズの神様とも!?

社殿エリア手前の狛犬は、なんとなく愛嬌のある表情ですね。

拝殿
社殿は緑に包まれた小高い場所にありました。
久伊豆神社の御祭神は大国主命(おおくにぬしのみこと)で、“だいこくさま”の別名でも親しまれています。
縁結びや除災招福、商売繁盛をはじめ幅広い御神徳をお持ちの神様です。
ちなみに久伊豆は「クイズ」とも読めることから、クイズ関係者からはパワースポットとも呼ばれているらしいですよ。
昭和62年に日本テレビのクイズ番組「史上最大!第11回アメリカ横断ウルトラクイズ」の国内第2次予選会場として使用されたことは、良く知られたトピックスです。
かつて社殿の維持・管理は歴代岩槻城主がおこなった

本殿
現在の本殿は明治15年(1882年)に再建されたもので、以前の本殿は明治8年(1875年)に残念ながら焼失しています。
ちなみに江戸時代においては、久伊豆神社の維持・管理は岩槻城主によっておこなわれました。
城主による社殿修理の記録は、慶長14年(1609年)に岩槻藩2代藩主・高力忠房が、寛永18年(1641年)には幕府老中にも任ぜられた阿部重次がおこなった他、元禄元年(1688年)には松平忠周、宝永3年(1706年)には小笠原長重、享保16年(1731年)には永井直陳などがあります。
また、高力忠房の子・高長が奉納した太刀なども宝物として残っています。
「夫婦モッコク」 不思議な縁結びの木

参拝後、社殿周辺をめぐってみます。
こちらは「夫婦モッコク」と呼ばれている木。2株の根元が癒着した珍しいもので、”縁結びの木”として人気を集めています。なるほど、不思議な感じの木ですなあ。
縁結びって、恋愛のみならず人生すべてにおいて大事なものですからね。ご利益を頂いてゆきましょう。
「伏見稲荷社」 願掛け稲荷が可愛い!

社殿を取り囲む形で境内社があります。
最初にあったのは、お稲荷さんの通称で親しまれている「伏見稲荷社」。
祭神の宇迦之御魂神(うかたのみたまのかみ)は五穀豊穣をはじめ、食物・蚕・商売繁盛をつかさどる神様です。こちらへは企業や飲食業の方々、そして農家の方の参拝も多いようですよ。

おっ、可愛い願掛けおきつね様が並んでいますね!

おきつね様の人形は、伏見稲荷社の祠で購入できます。願い事あらば、願掛けてみてはいかが?
「厄割り石」でストレス発散!

厄割り石
こちらにある不思議な感じの石は「厄(やく)割り石」なるもので、「厄」を逆に彫った、つるんとした丸石が立っています。
これは厄が逆さまに落ち、さらに厄の反意の「福」を呼び込むというものなんだそうだ。
何やら駄洒落チックだなぁと思いつつも、物は試しでやってみることに。
200円で玉を購入し、説明書きの通り息を吹き掛け悩みを念じ、えいやっ!と声をかけて石に投げた。
厄除け効果についてはしばし様子見ですが、ストレス発散効果はありそうだ。これは楽しいです。

こちらは「叶い戌(かないいぬ)」。
犬はお産が軽く一度に沢山の子を産むことから、安産の守り神とされているそうだ。ご利益にあやかりたい方は、自分の干支がある場所から撫でてみて下さい。
「北野天満宮」 菅原道真公から学問成就のご利益を!

「北野天満宮」は、京都の北野天満宮を祀った末社。
学問成就・諸芸上達などの御神徳で知られる、ご存じ菅原道真公を祀ります。クイズ運のある神社とは相性の良さそうな神様ですよね!

撫で牛もおりました。天満宮では、牛は菅原道真公のお使いとして大切にされています。
ご利益が欲しい部分を撫でる風習ですが、顔から頭にかけては撫でられて既にピッカピッカ。私も菅原道真公のご利益で知恵深くなれるよう、頭を撫でさせて頂きました。
さすが人形の街!社務所に立派な兜と鎧

訪問時は子供の日の節句が近く、社務所には立派な兜と鎧が飾られていました。人形の街として知られる岩槻だけあって、さすが本格的で立派なものですね。

庭には趣があるベンチが。ところどころ咲いているツツジの花が綺麗でした。
「御朱印」 孔雀の限定御朱印も美しい

御朱印は別の訪問日に頂いたものです。
コロナ感染症対策の一環で書置きのみの対応でしたが、”青海波(せいがいは)”と呼ばれる吉祥紋(=おめでたい紋様)が入った特別な黄和紙にて頂けました。

期間限定御朱印
美しい孔雀の絵柄に惹かれて、七夕の限定御朱印も頂いちゃいました。
神社に参拝に行くと、神々についてや神社施設の呼び名・役割について知りたいけど、聞ける相手もいない!
ってことありません?そんな時、網羅範囲が広い本書は結構頼もしいですよ!
久伊豆神社の詳細情報・アクセス
久伊豆神社
公式ページ
住所:埼玉県さいたま市岩槻区宮町2丁目6番55号 (GoogleMapで開く)
電車)
・東武アーバンパークライン(東武野田線)「大宮駅」から 普通 11分・急行 7分、「岩槻駅」下車、
・東武アーバンパークライン(東武野田線)「春日部駅」から 普通 11分・急行 7分、「岩槻駅」下車
・岩槻駅西口より徒歩15分
車)
・東北自動車道「岩槻IC」より約10分 ・駐車場:約100台(5~18時まで利用可)
岩槻のランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
\ さいたま市の返礼品は、結構グルメが充実してますよ!/
周辺おすすめスポット(岩槻人形博物館ほか)
~近隣スポット~
岩槻人形博物館
さいたま市の岩槻は昔より人形の町として知られ、その人形産業の歴史に触れることができる日本初の人形専門の公立博物館。
岩槻藩遷喬館や時の鐘までは、それぞれ5分程度で行ける場所にあります。
岩槻城址公園からは1.5km程離れた場所になります。
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岩槻人形博物館
住所: 埼玉県さいたま市岩槻区本町6丁目1-1 (GoogleMapで開く)
※久伊豆神社から徒歩約20分(約2km)、車で約5分。
にぎわい交流館 いわつき
岩槻人形博物館に併設されている施設で、コミュニティセンターが入っています。
岩槻城城下町歩きに出かける際は、こちらで「岩槻散策マップ2(城下町を歩く)」のパンフレットを入手すると便利です。
人形博物館と共用の無料駐車場もあります。
にぎわい交流館 いわつき
住所:埼玉県さいたま市岩槻区本町6丁目1-2(GoogleMapで開く)
※岩槻人形博物館と同じ敷地内にあり
岩槻城址公園
旧岩槻城の一部が岩槻城址公園として整備されています。
春には桜の花見スポットとなるなど、自然が多い憩いのスポットとして人気。
そして、公園内にはかつての岩槻城の面影を残す遺構も残っています。
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岩槻城址公園
住所:埼玉県さいたま市岩槻区太田3-4 (GoogleMapで開く)
※住所・Mapは岩槻城城門に近い第一駐車場のもの
※久伊豆神社から徒歩約15分(約1km)、車で約3分。
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岩槻久伊豆神社へ参拝にでかけませんか?
さいたま市岩槻にある久伊豆神社を紹介しましたが、いかがでしたか?
ご利益がありそうな様々なスポットがありました。
お参りすると何だか前向きな気持ちになるような、そんな明るい感じの気持ちの良い神社でしたよ。
元気をもらいに久伊豆神社の参拝に出かけませんか?
記事の訪問日:2021/4/24




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