新宿御苑は都心にありながら、自然が楽しめるオアシスとして人気のスポットです。また、桜の名所としても良く知られていますよね。
そんな新宿御苑は東京ドーム約13個分にあたる広大な敷地を持っていますが、元々は何があった場所でどんな歴史を持っているのでしょうか?
新宿御苑の成り立ちを紐解きつつ、また満開のカンザクラを楽しみながら苑内の見どころを紹介します。
目次
「新宿御苑」江戸時代は大名屋敷、明治時代は皇室の庭園だった地
新宿御苑は新宿駅からも程近い立地

新宿御苑の最寄りには地下鉄・新宿御苑駅もありますが、本日は天気も良いので新宿駅からのんびり歩いてみました。
新宿駅南口から新宿門までの所要時間は10分程度で、程近い距離でしたよ。
新宿御苑は有料施設ですので、入園料一般大人500円を払っての入苑です。
新宿御苑は数少ない国民公園

新宿苑内は主要となる4つの庭園を中心に構成された、自然が楽しめる施設となっています。
苑内の敷地面積は58.3ヘクタール(約18万坪)で、これは東京ドーム約13個分にあたる広大なもの。
周囲は3.5kmに及び大半は新宿区ですが、一部は渋谷区となっています。
最初に新宿御苑の歴史概要を振り返っておきましょう。
新宿御苑の歴史
江戸時代
・現在新宿御苑がある場所は信濃高遠藩主・内藤家の江戸屋敷があった地で、大名庭園として武家文化を背景とした空間でした。ちなみに、内藤家の屋敷地は一部幕府に返上されており、そこに甲州街道の宿場町「内藤新宿」が成立しています。
明治時代
・明治5年(1872年):明治政府により内藤家の屋敷地は接収され、農業振興を目的とする「内藤新宿試験場」が設置されます。
・明治12年(1879年):宮内省の管轄となり「新宿植物御苑」と改称。皇室の農園および庭園としての整備が進みます。
・明治39(1906年):皇室の庭園「新宿御苑」として整備され、福羽逸人(ふくばはやと)らの指導により西洋庭園と日本庭園が融合した近代庭園が完成。
昭和時代
・昭和24年(1949年):太平洋戦争での空襲被害を経て復興し、「国民公園」として一般に開放されました。
上記のように新宿御苑は旧皇室苑地としての歴史を持つため、「国民公園」と呼ばれる国の管理下(環境省管轄)の公園となっています。
国民公園は新宿御苑以外では皇居外苑と京都御苑しかないので、非常に希少な公園なんですね。
福羽逸人(1856~1921年)
明治期を代表する園芸学者・官僚で、日本近代園芸・造園の基礎を築いた人物。
明治政府のもとで農商務省に出仕。フランスに留学して果樹・園芸学を学び、ヴェルサイユ国立園芸学校で最先端の園芸・造園理論を修得。
帰国後は内藤新宿試験場や新宿御苑の整備に深く関わり、西洋庭園技法を日本に導入するとともに、日本の風土に適応した近代庭園を実現しました。
その功績により、日本の公園・庭園行政や皇室庭園の近代化に大きな影響を与えた人物です。
北エリアは新宿門と大木戸門がある玄関口

新宿門がある北エリアの東側には大木戸門もあり、玄関口的なエリアとなっています。
とりわけ新宿門は付近にインフォメーションセンターがあるなど、最も利用されるメインの入口です。
新宿御苑といえば桜の名所として有名ですが、訪問したのは3月中旬で関東ではまだソメイヨシノの開花前。桜には早いとしても、いくつか花が咲いていると良いなあ~、という淡い期待での見学スタートでした。

園内入ってすぐの広場に咲いていたのは、こちらのハクモクレン。
モクレン自体は珍しくないですが、目を引くのはこのサイズ!これだけ高木のモクレンは初めて見たかもな。

巨樹の森
その先の「母と子の森」と呼ばれる森林風景の中を歩くと、新宿に居ることを思わず忘れてしまいそうになりました。
西エリア:回遊式日本庭園が広がる
フランス人庭師アンリ・マルチネー設計による皇室庭園

視界が開けて西エリアに入ると、「上の池」を中心とした日本庭園が広がっていました。
上の池からは南東にかけて中の池・下の池と連なっており、これらの池周囲には回遊式庭園が造られています。

日本初の皇室庭園となる新宿御苑の庭園を設計したのは意外にもフランス人で、アンリ・マルチネーという庭師でした。
苑内の庭園は風景式・整形式・日本庭園が巧みに組み合わされており、世界的に見ても珍しい和洋折衷の様式なんですって。
アンリ・マルチネー(1867~1936年)
19世紀末から20世紀初頭に活躍したフランスの造園家・園芸学者で、ヴェルサイユ国立園芸学校(国立高等園芸学校)の教授を務めた人物。
幾何学的構成を基調とするフランス式庭園と、自然景観を重視する風景式庭園の双方に通じ、近代造園教育の体系化に尽力。
日本との関わりも深く、明治期に日本人技術者を指導し、福羽逸人らを通じて西洋造園技術を日本に伝えたことで知られます。その理論と技法は新宿御苑をはじめとする近代日本庭園の形成に大きな影響を与え、日本近代造園史において重要な役割を果たしました。
カンザクラとドコモタワーによる新宿らしい景観

カンザクラ
本日は桜の花には出会えないと思っていましたが、日本庭園内に咲いているカンザクラが見事に見頃を迎えていました!これは嬉しい。
色合いはソメイヨシノよりもピンク色が強く、華やかな感じですね。

高層タワーと桜の組み合わせも、新宿御苑らしい都会的な景観といえます。
苑内各所から見えるこちらのドコモタワー(NTTドコモのビル)は、都内で4番目の高さを誇るタワー。
”新宿のエンパイアステートビル”、な~んて呼ばれ方もしていますが、実は所在地は渋谷区だったりします。
「楽羽亭」白梅と紅梅が共演

上の池の畔にある茶室「楽羽亭」の脇には、紅白の梅が植えられていました。
紅梅の方は開き切っているものが多く、一方、白梅の方はまだ咲き始めのようでした。白梅の方が遅咲きなのかな。
楽羽亭では伝統的な茶室で抹茶が頂けます。
和菓子付で700円也、開亭時間は10時~16時。

楽羽亭の近くにあった満開のモクレンは、入口広場にあったものよりもさらに巨大で見事でした。
「旧御凉亭」日本では珍しい本格中国式建築

もう一つの茶屋「翔天亭」の近くにも、見事に満開のカンザクラがありました。
こちらは人の背丈近くまで垂れてくれているという、実にフレンドリーな(笑)枝ぶりのもの。
絶好の背景となり記念写真の人気スポットとなっていました。

池の周囲に植えられている松は、どれも形が良いですね。

日本庭園の東側へ進んでゆくと水辺越しに、エキゾチックな雰囲気の「旧御凉亭(きゅうごりょうてい)」が見えてきました。
これは昭和2年(1927年)に、皇太子(後の昭和天皇)の御成婚記念として献上された建物とのこと。

このような本格的な中国建築様式の建築物は、日本では数少ないんだそうだ。
屋根の端の反り返り箇所がチャームポイントですね。
建設は日本統治時代の台湾で活躍した建築家である、森山松之助氏によるもの。建築資材の多くを台湾から持ち込んだという、こだわりの建物です。
森山松之助(1869~1949年)
明治から大正期にかけて活躍した建築家。
辰野金吾に師事し、台湾総督府の営繕課技師として、現在の台湾総統府や台北州庁など数多くの官庁建築を手がけました。
日本では片倉館(長野県諏訪市)・ヨネイビルディング(旧米井商店本社ビル)(東京都中央区)などを手掛けており、日本における官庁・教育建築の基礎を築いた建築家として評価されています。

柱を額縁に見立てて庭園を眺めてみるのも、なかなか良いですね。

旧御凉亭から、少し見下ろした視点で日本庭園側を望む。
手前と遠方の木々に高低差があることにより、より苑内の奥行が感じられている気がします。
南エリア: 高遠小彼岸桜やシダレ桜を楽しむ
内藤家の領地にある信州の名木・高遠小彼岸桜

南エリアに入ると、こちらでも早桜が咲いていました。
「高遠小彼岸(たかとおこひがん)桜」という品種で、信州の高遠城址公園に咲く固有種とのこと。
江戸時代のこの地は、徳川家康の家臣であった内藤家2代目・清成が家康より与えられた屋敷地でした。
7代目の清枚の時には領地を信濃に移され、3万3千石の高遠城主となっています。以後、こちらの領地は江戸の下屋敷となりました。
いつの時代にか、信濃の領地の桜が江戸の屋敷にも移植された、ということなんでしょうね。

高遠小彼岸桜
ところで内藤清成がこの広い屋敷地を賜ったことについて、良く知られる逸話が残っています。
徳川家康は長年尽くした内藤清成に、”馬を走らせて回れた分だけの土地を全て授ける”と言いました。
それに従い清成が走った結果、東は四谷・西は代々木・南は千駄ヶ谷・北は大久保に及ぶ広大な土地を賜ったと伝えられています。
ちなみに乗っていた馬は、駆け戻った直後に息絶えたといいます。いや~、清成も馬も頑張りましたねえ。
内藤清成(1555~1608年)
戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将で、徳川家康の側近。
三河国出身で、家康の父・松平広忠の代から仕え、家康幼少期より近侍した譜代家臣の一人です。
桶狭間合戦後の家康自立期以降、各地の合戦や領国経営に尽力し、武功と忠節によって信任を得た。
徳川政権草創期を支えた宿老的存在として評価されています。
鮮やかに咲く下の池淵のシダレザクラ

「下の池」の淵に咲いていたシダレザクラも、華やかな佇まいで素敵でした。
まだ開花していない枝もあって6~7分咲きかなあ。満開時はさらに見事なことでしょう。
本日は、ソメイヨシノの開花前でも楽しめる早咲きの桜って結構あるんだな、って知ることができたのが嬉しい誤算でした。
東エリア:洋風の整形式庭園と風景式庭園が楽しめる
「整形式洋風庭園」春には110種類・約500株のバラが咲き誇る

洋風庭園が楽しめるのが東エリア。
見どころの中心はフランス式「整形式洋風庭園」で、バラの季節には110種類・約500株が咲き誇ります。
新宿御苑では和洋様々な花が入れ替わり、季節毎に色々な花木が楽しめるのがいいですねえ。

洋風庭園両側には160本のプラタナスが植えられており、紅葉の季節にはヨーロッパの並木道を思わせる美しい景色が見られるそうですよ。
立ち枯れしたような、シーズンオフの景観も印象的でした。
「風景式庭園」 春を待つ芝庭園

整形式洋風庭園の向かいにあるのは、広々としたイギリス式「風景式庭園」。
青々としたとした芝が一面に見られるのも、もう少し先ですね。
「玉藻池」 大名屋敷の面影を残す

苑内の北東に位置する「玉藻池(たまもいけ)」は苑内でも特に古くからある池で、内藤家時代の屋敷の面影をとどめる庭園となっています。
温室と旧洋館御休所
明治の内藤新宿試験場は近代農業の発展に貢献

天気が良い日だと見学を忘れてしまいそうになる「温室」。本日も閉室間際に滑り込みでの見学でした(苦笑)。
普段なかなか見られない熱帯・亜熱帯の珍しい植物が多く、結構オススメですよ。
ちなみに温室は新宿御苑の閉園30分前には入場終了となるので、ご注意を。

一歩入ると滝もあって、まるでジャングル!
温室のルーツは、明治5年(1872年)に開設された「内藤新宿試験場」です。
内藤新宿試験場
「広く内外の植物を集めて、その効用、栽培の良否適否、害虫駆除の方法などを研究し、良種子を輸入し、各府県に分って試験させ、民間にも希望があれば分ける」を目的とした施設でした。
明治8年頃には試作した外国果樹が結実し、選抜した優良品種が各地に送られるようになります。明治10年頃になると栽培植物数は3千種を超え、110平方メートルの西洋式温室が完成します。
内藤新宿試験場は海外品種の導入や栽培技術の実験を通じて、近代日本農業の基礎研究拠点や農業技術者の育成に寄与しました。
無加温室によるブドウやメロンの栽培方法や、現在のイチゴのルーツとなる福羽苺が作出されるなど、現在食卓でお世話になっている農産物につながっているものも多くあるようですよ。
「旧洋館御休所」皇室関係の貴重な遺構

温室の隣には「旧洋館御休所」と呼ばれる、エレガントな雰囲気の建物があります。これは天皇や皇族が温室を鑑賞する際の休憩所として、明治29年(1896年)に創建されたもの。
大正時代になって、現在の規模に拡張されたとのこと。
明治・大正期の皇室関係の庭園休憩施設としては唯一の遺構となる貴重な物で、重要文化財に指定されています。
建物内部も土日・休日限定で見学することができます。
タイトル通り、いまいちばん美しい日本の絶景写真が楽しめます!
その場所・その季節・その時間帯などの組合わせが創り出す絶景。
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歴史好きならば、東京の街歩きが楽しくなる一冊!
新宿御苑の詳細情報・アクセス
新宿御苑
公式ページ
住所: 東京都新宿区内藤町11番地(GoogleMapで開く)
開園時間:9時、閉館時間:時期により変動(ホームページでご確認下さい。)
休館日:毎週月曜日(月曜日が休日の場合は翌平日)、年末年始(12月29日~1月3日) ※特別開園期間(期間中無休)中は無休:春3月25日~4月24日、秋11月1日~15日
入園料:一般 500円、65歳以上 250円、学生(高校生以上) 250円、小人(中学生以下) 無料
アクセス:
電車)*新宿門まで
・JR・京王・小田急線「新宿駅」南口より、徒歩10分
・西武新宿線「西武新宿駅」より 徒歩15分
・東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑前駅」、出口1より徒歩5分
・東京メトロ副都心線「新宿三丁目駅」、E5出口より徒歩5分
・都営新宿線「新宿三丁目駅」、C1・C5出口より徒歩5分
車)
・有料駐車場あり(200台分)、新宿御苑入場者割引あり
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新宿御苑に出かけてみませんか?
花見には少し早い中途半端な時期での訪問でしたが、満開のカンザクラをはじめ、思ったよりも花や緑が楽しめました。
庭園も和風・洋風と様々あるので、四季折々、幅広い世代で自然が楽しめそうですよ。次回はバラの季節に訪れてみたいですね。
歴史スポットとしてもなかなか興味深い、新宿御苑へ出かけてみませんか?

記事の訪問日:2022/3/17




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