関宿城、関所があった水運の要衝で関東の河川の歴史を知る【千葉・野田市】

かつて関東平野の中心にあった関宿城は河川交通の要衝であったことから、戦国時代には熾烈な争奪戦が繰り広げられた場所でした。

江戸時代になっても城主は幕府から信頼される譜代大名が務め、また、河川には関所が設けられるなど、江戸近郊の重要拠点とされました。

そんな関宿城跡にある御三階櫓を再現した関宿城博物館では、関宿城や関東における河川工事の歴史について知ることができます。

「関宿城博物館」関宿城と関東の河川整備の歴史を知る

関宿城博物館は御三階櫓を再現した博物館施設

到着するとすぐ視界に入ってきたのが、天守閣風の関宿城博物館の建物。
これは歴史好きの心をくすぐる立派な建物ですなあ。

千葉県の北端に所在する「関宿(せきやど)城博物館」は、利根川と江戸川の分流点にあるスーパー堤防（高規格堤防）上にある千葉県県立の博物館です。

博物館の建物は、かつて関宿城の天守の役割をしていた櫓を鉄骨鉄筋コンクリート造りで再現したもの。
当時の御三階櫓は江戸城の富士見櫓をモデルにして、寛文11年(1671年)に再建されたものだったとのこと。

ちなみに櫓が建っていた本丸跡はここではなく、博物館よりも南側にありますので後ほど立ち寄ります。

関宿城は簗田氏が築城、江戸時代には譜代大名を配置

博物館の周囲には堀が設けられています。
入口に架かる木橋風の橋の先には高麗門があり、お城の雰囲気がたっぷり！気分が盛り上がりますね。

ここで関宿城の歴史概要を振り返っておきましょう。

関宿城の歴史
■元々の築城の起源は不詳ですが、簗田(やなだ)氏が長禄元年(1457年)にこの地に城を築城すると、その支配が100年程続きました。
関東平野中心部に位置する河川交通の要衝であったことから、戦国時代にはたびたび争奪戦が繰り広げられます。
■天正2年(1574年)には、小田原北条氏（後北条氏）の支配下となる。
■そして天正18年(1590年)の豊臣秀吉による小田原征伐においては、前田利家・上杉景勝・宇喜多秀家らの大軍包囲に屈し開城します。
徳川家康の関東移封に際し、家康の実弟・松平康元(やすもと)が2万石の領地を与えられ、関宿藩主として入封しました。

江戸時代の関宿城は佐倉城（千葉県）・忍城（埼玉県）などとともに、江戸近郊を守る重要拠点の一つとなります。
松平氏以後も牧野氏・板倉氏・久世(くぜ)氏など、老中ほか江戸幕府要職に就く譜代大名が藩主として配置されました。

なるほど、今まであまり知識を持っていませんでしたが、幕府から重要視された城だったわけですね。

「関宿城博物館」関宿城や関東の河川の歴史を紹介

関宿城博物館は「河川とそれにかかわる産業」をテーマとして、平成7年(1995年)に開館された博物館。
関東近郊の河川改修や水運の歴史を中心に、関宿城や関宿藩の歴史についても展示・紹介がされています。

入口に置かれていたのは、蛇籠(じゃかご)と呼ばれる河川工事に使用される器具。
水害復旧や河川改修の際、これに石などを詰め込み川底に入れて、流れを調整するものとのこと。

昔は竹で編まれましたが、現在も素材を変えつつ使用されている手法なんですって。

見学料の300円を払って館内へ。中は思ったより広いですね。
4階建ての館内はエレベーターも完備されており、各所バリアフリー対応されています。

1階は常設展示室で、第一展示室・第二展示室では近現代や近世における、房総の河川や利根川・江戸川整備の歴史などが紹介されています。

利根川東遷をおこなった伊奈忠次･忠治の功績

伊奈忠次(ただつぐ)･忠治がおこなった河川整備が紹介されていました。

江戸時代初期、徳川家康は江戸の治水と利便性向上を目的に、大規模な河川改修事業をおこないます
その中核を担ったのが利根川東遷(とうせん)事業で、幕府代官だった伊奈忠次を中心に進められました。

伊奈氏による利根川東遷事業
当時、利根川は現在の東京湾（江戸湾）へと流れており、度重なる川の氾濫が江戸の発展を阻害していました。写真の赤い線が当初の利根川の本流です。

そこで、忠次は利根川の流路を東へ変え、最終的に銚子から太平洋へ注ぐようにします。工事には利根川・荒川の分流、さらに小貝川や渡良瀬川の改修も含まれました。
この事業は忠次の死後も子の忠治に引き継がれて続き、17世紀中頃までに現在の流路がほぼ完成しました。

利根川東遷によって江戸の洪水被害が軽減されたとともに、関東平野の新田開発が進み、物流の要となる水運網の整備に繋がりました。
特に江戸と東北・関東各地を結ぶ舟運の活性化は、経済効果につながったようですよ。

\ 伊奈氏の功績の詳細についてはこちら！/

「関宿関所」関宿藩が利根川と江戸川の通行を監視

利根川と江戸川の合流地点にあった関宿は、江戸と地方間を往来する船が必ず通る場所です。
そのため江戸川に突き出た「棒出し」と呼ばれる堤防の上に、江戸幕府による関所が設置されました。

関宿藩による管理のもと、通行する際には通行手形が必要となり、舟の積み荷も厳しく改められました。

もともと棒出しは利根川・逆川・江戸川への水量調節の目的で造られたもので、昭和の水閘門が完成するまでは残っていたとのことです。

築造の様子を再現した模型では、入口にあった蛇籠が大量に使われていますね！

蔵の街並みや高瀬船を再現した展示室

第三展示室には水運の町が再現されており、なかなか雰囲気があります。

江戸時代に活躍した高瀬船の大型模型の両脇に、問屋と蔵の街並みを再現。
建物の中では、近世以降の河川交通や伝統産業の歴史資料が展示されています。

江戸近郊の河川図に関宿のある場所を丸囲みしてみましたが、こうして見ると江戸湾に続く重要地点にあったことが良くわかります。

2階の企画展示室では「地図は世につれ人につれ」という企画展を開催。
江戸時代を中心とした地図の変遷が紹介されていました。

3階は多目的室で、関宿藩士が所用していた江戸時代の甲冑などが展示されていました。

天守閣の最上階にあたる4階は展望室となっており、周囲の眺望が望めます。

全般的に館内の展示物は河川がテーマのものがメインで、城や合戦に関する展示物は少なめでした。

「本丸跡地」100年に及んだ簗田氏・北条氏の関宿合戦

博物館から江戸川の河川敷を南に700m程歩いた所に、元々の本丸の跡地「関宿城跡」があります。

江戸時代には御三階櫓が置かれた本丸を中心に二の丸・三の丸があり、侍屋敷などの多くの建物が建ち並んだといわれます。
敷地の広さは本丸・二の丸・三の丸部分だけでも、約6千坪もあったそうですよ！

戦国時代の関宿城は激戦の地でした。

永禄8年(1565年)、上杉謙信についた簗田晴助を城主とする関宿城に、小田原北条氏が攻め込みます。
これは「関宿合戦」と呼ばれ、以降、天正2年(1574年)までの約10年間にわたり3回の戦いがおこなわれました。

最終的には簗田氏が屈し、関宿城は小田原北条氏の支配下となります。

明治時代になると関宿城は廃城となり、明治8年(1875年)末には全て破却されます。
さらに城の約3分の2は明治以後の河川改修により、堤防の下に埋もれてしまいました。

江戸時代に重要視された城の痕跡がほぼ残っていないのは、非常に残念。

関宿城博物館休憩所、御城印の販売も

博物館の敷地内にある「関宿にこにこ水辺公園」にはいくつか遊具も置かれており、子供連れの憩いの場となっていました。
そのほか、動物のオブジェがあるアートな空間や、無料見学できる日本庭園もあったりと色々と見るものがありました。

また、北側を流れる江戸川沿いの「中之島公園」からは昭和2年竣工の「関宿水閘門」が見れるなど、河川敷ならではの風景にも出会えますよ。
河川敷はサイクリングの人気エリアでもあります。

こちらは無料の休憩所兼みやげ物屋さん。
営業時間は9:30～16:00で、博物館の休館日は定休日です。

休憩所で御城印が発売されていたので記念に購入。
関宿城博物館と富士山をあしらったデザインで、1枚300円。

関宿城博物館はじつは「関東の富士見百景」の一つで、特に冬の晴れた日には天守閣越しに富士山が見えるんですって。それは素敵ですね！

周辺の立ち寄り情報 ～関宿関所跡ほか～

関宿関所跡

帰り際に、江戸川堤防のたもとにある「関宿関所跡」の碑に立ち寄りました。
この辺りに、かつて「棒出し」と呼ばれる堤防と関所があったわけですね。

近隣の休憩スポット

関宿城の遺構について

明治時代に移設された遺構が、他所にて一部残っています。併せて訪ねてみるのも良いかもしれません。

■本丸の客間
住所：千葉県野田市関宿台町2140(実相寺内)（GoogleMapで開く）
実相寺(じっそうじ)は、簗田氏が関宿城に入ったときに水海村(茨城県総和町)から移したと伝えられる寺院。
境内には関宿城本丸から移築した客殿が残っています。

■関宿城埋門(うずめもん)
住所：千葉県野田市東高野94（GoogleMapで開く）
関宿城の三の丸に設置されていた城門のひとつが、移築されて残っています。

■関宿城薬医門
住所：茨城県坂東市逆井1262番地(逆井城跡公園内)（GoogleMapで開く）
関宿城にあった城門と言い伝えられる門が、移築されて逆井城跡公園内に残っています。

関宿城博物館の詳細情報・アクセス

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関宿城博物館に出かけてみよう！

関宿城博物館は思っていたよりも立派な施設で、かつて要衝として重要視された関宿城の歴史を知る良い機会になりました。
また、現在の関東の暮らしにもつながる、利根川を中心とした河川整備の歴史も学べる好スポットだと思います。

一方、純粋に城跡の見学を目的とした場合は、遺構が少なくその点は正直少し残念でしたね。

関宿城博物館に出かけてみませんか？

記事の訪問日：2023/11/4

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