徳川家康の墓所があり、その家康を東照大権現として祀っているのが日光東照宮。
「日光の社寺」は世界遺産に登録されていますが、日光東照宮はその中心的スポットです。
そんな世界的にもメジャーなスポットである一方、日光東照宮にまだ多くの知られざる謎が隠されており、行くたびに新鮮な発見に出会えます。
創立に関わった徳川家康側近の天海僧正、そして江戸初期を代表する絵師の狩野探幽らによって生みだされたミステリアスな魅力に迫りながら、日光東照宮の見どころを紹介します。
目次
『日光東照宮拝観』 エキセントリックな世界ヘ!
世界遺産 日光の社寺について
平成11年(1999年)、「日光の社寺」がユネスコの世界遺産として認定されました。
世界遺産は栃木県日光市にある二荒山神社・東照宮・輪王寺の二社一寺と、それをとりまく遺跡から構成されています。
建造物としては、国宝9棟・重要文化財94棟の計103棟が対象です。
東照宮は二社一寺のなかでも特に人気の高い観光地ですが、まだまだ知られざる魅力が詰まっているスポットなんですよ。
今回はガイドブックにはあまり書かれてないような謎を紐解きながら、境内をめぐってみます。
「東照宮」は徳川家康公を大権現として祀る
まずは、日光東照宮の起源をふり返ってみましょう。
日光東照宮の起源
■元和2年(1616年)4月17日:徳川初代将軍家康公は、駿府城(現静岡県)で75歳の生涯を終える。直ちに久能山に神葬された。
■元和3年(1617年)4月15日:御遺言にもとづき、棺が久能山より日光山の地に移された。
4月17日には正遷宮が徳川2代将軍秀忠公によりおこなわれ、東照社として鎮座した。
■正保2年(1645年):朝廷より宮号が授与され、東照社から東照宮に改称される。
徳川初代将軍家康公を神格化し、東照大権現としてお祀りしているのが日光東照宮です。
棺がわざわざ日光に移されたのが最大の謎になりますが、その点は後々に考察。
参道にある「東照宮」と書かれた石碑がありますが、実は石碑の文字は渋沢栄一によるもの。
石碑は大正2年(1913年)の徳川家康没後300年祭にて建てられました。
\ 久能山東照宮についてはこちら! /
黒田長政奉納「石鳥居」と酒井忠勝奉納「五重塔」
参道入口では九州筑前藩主・黒田長政の奉納品である、重厚な「石鳥居」が参拝者を出迎えます。
黒田長政は天下分け目の「関ケ原の合戦」において、徳川家康率いる東軍の勝利の一番の功労者でした。
家康より筑前国名島に52万3千余石の封を受け、福岡藩の初代藩主となります。
鳥居は15個の花崗岩が組み合わされたもので、石材は海路・陸路を駆使して九州からはるばる運ばれてきたんですって。凄いですね~。
東照宮の鎮座地は634mとけっこう標高があるので、ここまで引き上げるのも大変だったかと。
余談ですが、東京スカイツリーは東照宮の高さ634mにあわせて造られています。
鳥居を抜けると、続いて五重塔が現れる。
こちらは若狭の国(福井県) 小浜藩主・酒井忠勝による奉納品で、同藩主・酒井忠進公により再建されています。
キンキラとした派手さはなく、落ち着いて凛とした佇まいが美しいですね。
塔の高さは36m。中心部には頑丈な柱がどん!と一本。。。いえいえ。
実は心柱は上から鎖で吊り下がっており、最下部は数センチ浮き固定されてないんですって!
この構造技術は地震・強風による振動抑制の効果があることがわかっており、なんと東京スカイツリーの耐震システムにも応用されているそうです。
う~む、まさに温故知新ですなあ。
境内建築物は3代将軍家光公によるもの
スケールの大きい奉納物を見つつ進むと、境内入口に到着。
両側に仁王像が納められている「表門」は、異空間である境内への入口です。
境内は有料の見学エリアにつき、拝観チケットを購入して中へ。
宝物館入館券とのお得なセット券もあるので、見学予定に合わせてチョイスしましょう。
奇妙な象!?狩野探幽の独創的な彫刻
表門をくぐり拝観区域に入ると、さっそくきらびやかな装飾に彩られた建築物群が現れます。
境内に残る社殿および建築物のほとんどが、3代将軍徳川家光公により建て替えられたものです。
入場してすぐ正面にあるのは、上神庫(かみじんこ)・中神庫(なかじんこ)・下神庫(しもじんこ)の3つからなる、「三神庫(さんじんこ)」と総される建物群です。
こちらは馬具や装束類を収めるための倉庫です。
それでもって、特に目を惹くのが上神庫の屋根下部の彫刻。
右側は象ですが、我々の知っている象と比較するとなにかちょっと違和感を感じます。
実はこれ、当時は実物が見れなかったため、想像で書かれた象なんですって。
彫刻の下絵は、江戸時代の絵画の基調を築いた幕府の御用絵師・狩野探幽(かのうたんゆう)によるもの。
リアルでないことが逆手になり、エキセントリックな魅力を持って仕上がっています。
狩野探幽は高い技術を駆使して日光東照宮のデザイン全般に関わっており、独特の世界観の創造に貢献しています。
「三猿」16匹の猿が人生を表現
三神庫の向かいには神馬をつなぐ「神厩舎(しんきゅうしゃ)」があり、その壁面にかの有名な「見ざる 聞かざる 言わざる」の「三猿」の彫刻があります。
猿は馬を守るという伝承をもとに、厩の壁面に猿の彫刻が彫られているものです。
猿の彫刻は8枚に分かれており、全部で16匹の猿の姿により人の一生が描かれています。
はい、こちらがかの有名な三猿ですね。
学生時代の修学旅行以来で、久しぶりに見ましたわ。
当時は「こちらが三猿で~す」的に流された気もしますが、ここは8面セットでじくり眺めるとさらに感慨深いですよ。
私が気に入ったのは、「夫婦で人生の荒波に揉まれる」の場面かな。
江戸時代にもこんなわかりやすい比喩表現があったと思うと、親しみが湧きますね。
「国宝 陽明門」が平成の大修理で蘇った
青銅の鳥居が現れると、その先の石段の上に「陽明門」が見えてきます。
中央の奥まった場所にあるのが陽明門で、右手手前は「神楽殿」、左手手前は「神輿舎(しんよしゃ)」です。
実はこの配置にも秘密が隠されており、青銅の鳥居と陽明門を結んだ中心上空に北極星が来るように設計されています。
自然界のパワーとのつながりが緻密に考慮されています。
国宝指定の「陽明門」は、日光東照宮髄一の豪華絢爛を誇るシンボル的な建造物。
2017年3月には、4年の歳月を掛けた44年ぶりの平成の大修理を終えています。
鮮やかさを取り戻し、その名の通り陽の光を浴びて煌びやかに輝きます。
門の装飾には、中国神話上の霊獣の彫り物が所狭しと配置されています。
食って掛かってきそうな強面が並びますが、実は彼らは本当に平和な時にしか現れないといわれます。
見かけによらず、縁起の良い生き物らしいんですよ!
同じ種類でも口の開け方が違っていたりと、個々別の表情になっているんですね。
細部にこだわった造りに魅了されます。
人物の彫刻は中国故事の逸話や、子供の遊び、聖人・賢人などが題材です。
平和で穏やかな世の中が描かれていることが伝わってきます。
門内部の天井には、狩野探幽作の龍の絵が描かれています。
何だか人の顔にも見えるような、ちょっとユーモラスな顔立ちだ。
こちらは門を通り抜ける時にしか見れないので、見逃しに注意!
儒教の色濃い「唐門」
陽明門を抜けると次に現れるのが、こちらも国宝の建造物の「唐門(からもん)」です。
本堂正面に構える重要な役割の門で、江戸時代には位の高い家臣や大名のみが通過を許可されました。
陽明門の装飾との比較で大人しい印象にも映りますが、凝った彫刻が施された美しい門です。
唐門の彫刻は人物が中心なのが特徴になります。
写真の彫刻は、中国神話に登場する名君である舜帝(しゅんてい)に臣下が拝謁している場面です。
彫刻には儒教の影響がみられます。
儒教は中国古代の思想家・孔子によって体系化された思想です。
礼を重んじて仁義を実践し、上下の秩序を守ることが唱えられています。
国学とされたこの儒教の思想は、江戸時代が約260年間も続いた拠りどころの一つともいえます。
ちなみにこの舜帝の顔は家康に似せて作られている、といわれています。
実は寝たふり!?左甚五郎作「眠り猫」
唐門の東側に奥宮に通じる出入り口がありますが、その門に国宝指定の「眠り猫」が彫られています。
江戸初期の名彫刻師である左甚五郎作とされ、日光東照宮の代名詞の一つでもありますが、案外さりげない場所にあったりします。
ところでこの彫刻、眠り猫と呼ばれるので眠っている猫のはずですが、実はうっすらと目を開けている説があるんですねえ。
何かあれば飛び掛かれる態勢で家康公を守っている、ともいわれています。
ふ~む、言われてみれば、確かにそのようにも見えてくるから不思議ですなあ。
皆さんも行かれたら、どう見えるか?是非確かめてみて下さい。
さらにあまり注目されない、門の反対側の彫刻にも注目してみましょう。
雀達が楽し気に遊んでいますが、天敵の猫がうたた寝して襲ってこない様子を通して、その平和な世の中を表現しているんだそうだ。深いわあ。。。
こんな状況設定を知ると、見学時の見どころも増えますよね。
家康公墓所「奥宮」は長らく聖域だった
眠り猫を後にして門を抜けると、207段の石段が現れます。
この石段の先には、家康公の墓所「奥宮(おくやみ)」があります。
階段を登り切って奥宮エリアに入ると、ここはピーンと張りつめた独特の空気感があり、思わず背筋が伸びます。
青銅鋳物の正面の門には金の装飾も施されていますが、本社周辺の煌びやかさとは対照的に、厳かで厳粛な雰囲気のデザインです。
青銅の御宝塔の下に、家康公の遺骨が眠るとされています。
宮が一般公開されたのは昭和40年(1965年)からで、それまでほとんど人が立ち入らない聖域でした。
御宝塔も一度も開けられたことはなく、それ故、家康公の遺骨が収まっているのか?否か?他に何が収まっているのか?
いずれも確認されておらず、謎に包まれた場所となっています。
家康公墓所はなぜ久能山から日光に?
そもそも、なぜ家康公の棺は久能山からわざわざ日光に移されたのでしょう?
その理由の一つは、日光東照宮の地図上の配置に秘密が隠されているとされます。
■葬儀の行われた久能山と日光東照宮を結ぶと、直線上に富士山が重なる
■日光東照宮は、ほぼ正確に江戸の真北に位置する
ということがわかっています。
家康公の生前の遺言にもとづき、日光東照宮の創建に大きく関与したのは天海僧正でした。
天海僧正は徳川家康の側近として、朝廷政策や宗教政策に深く関与した人物です。
陰陽道に精通したことから、自然界の陰陽を造営に取り入れ緻密に配置設計をおこないました。
江戸幕府の背後には不死の神として生き続ける家康公がいるぞ!と、そんなメッセージが日光東照宮には込められているようです。
「本地堂の鳴き龍」で不思議体験
最後に不思議スポットとして見逃せない、本堂傍の本地堂(薬師堂)を紹介。
こちらの天井には、「鳴き龍」と呼ばれる龍の絵が描かれています。
お堂で拍子木を叩くとカーンという音がしますが、巨大な龍の顔下だけは残響音を伴う独特のキーンという音になります。
それが龍の鳴き声のようだ、と称されているんですね。
修学旅行できた時も驚いた記憶があるが、再訪してもやはり摩訶不思議なスポットでした。
ちなみに内部撮影はNGでした。
日光東照宮の詳細とアクセス方法
日光東照宮
公式ページ
住所:栃木県日光市山内2301(GoogleMapで開く)
拝観料:
[日光東照宮単独拝観券]大人・高校生:1,300円、小・中学生:450円/[セット料金(東照宮拝観券+宝物館入館券)]大人・高校生:2,100円、小・中学生:770円/[宝物館入館料]大人・高校生:1,000円、小・中学生:400円/[美術館入館料]大人:800円、高校生:600円、小・中学生:400円
アクセス:
電車)
・浅草~東武日光(特急けごん):所要時間 約1時間50分
・浅草~下今市~東武日光(特急きぬ+各駅停車):所要時間 約1時間50分
・浅草~東武日光(東武鉄道快速):所要時間 約2時間5分
・新宿~東武日光(JR特急日光):所要時間 約2時間
・宇都宮~日光(JR日光線):所要時間 約45分
車)
・東北自動車道宇都宮ICから日光宇都宮道路を経て、日光ICで下りる。日光ICから約2km。
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日光東照宮へ出かけてみよう!
特に関東の方なら、学生時代に日光東照宮を見学したことがある方も多いのでは?
でも大人になってからの久々の見学では、さらに趣きを感じることが出来て良かったです。
様々な見どころを持つ日光東照宮は、何度でも出かけてみたくなる魅力を持つスポットですよ。
出かけてみませんか?
\ 返礼品にホテルのギフト券が多いのも日光らしい!/
記事の訪問日:2020/11/13
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