世田谷にある古刹・豪徳寺は、世田谷を領地として所有した彦根藩藩主・井伊家の菩提寺でした。
その井伊家と豪徳寺を結び付けたのは一匹の猫。
その縁にちなみ境内で多くの可愛い招き猫に出会える豪徳寺は、招き猫発祥地ともいわれれています。
境内には井伊家との強いつながりが感じられる江戸時代の建築物が残り、また歴代藩主が眠る墓所は、当時の大名墓所の様子が伺えます。
そんな豪徳寺の見どころを紹介。
目次
「豪徳寺」大名墓所が残る彦根藩井伊家の菩提寺
豪徳寺駅では招き猫が出迎え

豪徳寺(ごうとくじ)の最寄り駅は小田急線の豪徳寺駅ですが、改札を出ると招き猫がお出迎え。
豪徳寺は招き猫発祥の地としても良く知られているんですよ。
世田谷城城主・吉良政忠による寺院創設に始まる

駅から抜けて来た商店街でも多くの招き猫のイラストなどが見られ、招き猫の街って感じがしますね。
住宅街を抜けて進むと、やがて豪徳寺の参道が現れます。

松が並ぶ閑寂な参道の先に立つ山門。
豪徳寺は山号を大谿山(だいけいざん)と称する、曹洞宗の寺院です。
扁額にある碧雲関(へきうんかん)とは、外界と境内を隔てる門という意味とのこと。

戦国時代のこのエリアには世田谷城と呼ばれる城があり、その城の中心部は現在豪徳寺のある場所だったそうだ。
世田谷城の城主だった吉良政忠が、亡くなった伯母の菩提寺として文明12年(1480年)に建立した弘徳院(こうとくいん)が、豪徳寺の前身だったといわれています。
吉良政忠(きらまさただ)
戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、三河国吉良氏の一族。
吉良氏は足利将軍家の流れを汲む名門で、室町期には三河の守護職を務めた。
政忠は吉良義昭の子とされ、今川氏や徳川家康とも関わりを持ちました。家康の台頭期にはその影響下に入り領地の保持を図りましたが、戦国の混乱の中で吉良氏の勢力は衰退しました。
\ 世田谷城跡の詳細についてはこちら!/
豪徳寺の寺名は藩主井伊直孝の法号にちなむ

江戸時代に入り寛永10年(1633年)になると、世田谷は彦根藩・井伊家の領地となり、弘徳院は江戸における井伊家の菩提寺となります。
藩主・井伊直孝の法号にちなみ豪徳寺と改称され、その後は井伊家による堂舎の建立・寄進による庇護を受け発展しました。

山門をくぐり真っすぐ参道を進むと、獅子がのった大きな香炉が現れます。
香炉に献香させて頂き境内へ。
「仏殿」豪徳寺の中心的な建築物

香炉の先にあるのが、豪徳寺の中心的な建物である「仏殿」です。風格を感じさせる建物ですよね!
井伊家による伽藍整備は、寛文から延宝年間(1661~1680年)にかけておこなわれましたが、その一つである仏殿は世田谷区内の現存最古の建造物となります。

見上た屋根の上で金色に輝いている井伊家の家紋。
家紋に使われている橘(たちばな)という木は、ミカン科の常緑小高木。冬枯れしない性質から、永遠性や継続性を象徴するデザインとのこと。

仏殿の中には釈迦三尊像が見えます。
区内最古の梵鐘、竜頭の吊手が恰好良い!

仏殿手前の右手にある鐘楼に架かる梵鐘も、延宝7年(1679年)に造られた古いもの。
こちらも区内最古の梵鐘とのことで、江戸初期の鐘がいまだに現役で時を鳴らしているのは素敵ですよね!

鋳造は幕府御用も務め、釜屋六右衛門という俗称でも知られる鋳物師である、藤原正次(ふじわらのまさつぐ)よるもの。
竜の形になっている吊手が恰好良いですよね!この梵鐘はデザイン的にも優れたものとされています。
「猫登る三重塔」豪徳寺の猫とねずみは仲良し!?

本堂手前の左手には立派な三重塔があります。
高さ22.5mの木造の塔は風格を感じさせますが、意外にも平成に造られた比較的新しい塔でした。
内部には釈迦如来像・迦葉尊者像・阿難尊者像・招福猫児観音像が安置されています。

塔の壁面には方角を表す十二支の動物に加え、招き猫の彫刻が彫られています。
猫が堂々の主役の位置に配されており、「猫登る三重塔」とも呼ばれているとのこと。

こちらの猫はネズミに囲まれてますね。どうやら豪徳寺の猫とネズミは仲が良さそうです。
三重塔には他も招き猫がいるので、探しながら見上げているとずーっと見ていられる感じ。

訪問は春まだ遠い1月初旬でしたが、桜の季節には三重塔を中心に絵なる情景が楽しめそうですね。
豪徳寺と彦根藩主を結び付けた一匹の猫

ここまででも猫とゆかりが深い寺院であることが伝わってきますが、かつて豪德寺には福を招いた猫がおり、これを招福猫児(まねきねこ)と呼んでいます。
こちらには、その招福猫児をお祀りするために建てられた「招福殿」があります。

豪徳寺は招き猫発祥のお寺ともいわれていますが、豪徳寺が猫を大切にしているのは次のような出来事によるものと伝わります。
ある日、この地を通りがかった鷹狩り帰りのお殿様が、門前にいた猫に手招きされてお寺に立ち寄ります。寺で過ごしていると、突然雷が鳴り雨が降り始めました。
お殿様は雷雨が避けられ、また和尚との話も楽しめたことにいたく感動したということです。
そのお殿様というのが、彦根藩の2代目藩主・井伊直孝でした。
一匹の猫が豪徳寺と彦根藩井伊家との縁を取り持ち、井伊家の菩提寺へと発展させたというわけです。
「招福殿」圧巻!無数の招き猫が並ぶ

お堂は昭和に建てられ令和に改修されたもので、堂内には招福観音菩薩立像を安置します。
こちらでは家内安全・商売繁盛・開運招福の御利益が頂けるとされ、多くの参詣者が訪れていますよ。

招福殿の左手に回ると。。。おおっ!所狭しと大小の招き猫が並んでおり、これは凄い!
噂には聞いていましたが、実際に見るとこの数は圧巻ですね!

ここは願いが成就した後、招き猫を返納する奉納所とのこと。
ということは、これだけの数の願いが成就されている、という御利益の証ということですね。

ちなみに招き猫というと、小判を持っているイメージもありますよね。ですが、豪徳寺の招き猫は小判を持っていないスタイルなのも特徴。
人を招いて「縁」をもたらせますが、それを生かせるかどうかはその人次第。
ということで、豪徳寺の招き猫は右手を挙げているだけのシンプルなものなんだそうだ。

柔和な表情の仏像の周囲にも招き猫が置かれ、ほんわかした雰囲気。
それぞれの招き猫は大きさが違うだけで同じデザインですが、置く向きにより違う表情に見えたりるのが不思議。眺めていて飽きないですねえ。
「赤門」井伊家が上屋敷より寄贈

招福殿の東側には「赤門」があります。
これは井伊家上屋敷の長屋門が寄進されたもので、井伊家との繋がりを示す貴重なものです。

一番奥まった場所には本堂(法堂)があります。建物は昭和42年(1967年)に造営されたもの。
堂内には観世音菩薩立像・文殊菩薩坐像・普賢菩薩座像・地蔵菩薩立像が安置され、また「井伊直弼肖像画」が飾られています。
井伊直弼肖像画は、直弼の4男の井伊直安作のものとのことです。
「井伊家墓所」大名墓所の面影を今に残す

そして境内西側にあるのは、井伊家歴代藩主や正室たちの墓が並ぶ「彦根藩主井伊家墓所」。
徳川将軍家側近であった井伊家の墓所は、幕藩体制と大名文化に関する貴重な遺産として国史跡に指定されています。

こちらは猫と出会い豪徳寺中興に寄与した、彦根藩第2代藩主・井伊直孝の墓所です。合掌。

奥まった場所にあるのが、彦根藩第13代藩主である井伊直弼の墓所。
江戸幕府の大老職に就いていた井伊直弼は、「桜田門外の変」で良く知られます。
安政7年(1860年)3月3日、強硬な政策に異を唱えた水戸浪士らの襲撃をうけ、桜田門外で暗殺されました。享年46歳でした。合掌。
井伊直弼(1815–1860年)
彦根藩主で幕末の大老として活躍した武士・政治家。
日米修好通商条約を勅許前に調印し、開国を推し進めたことで大きな政治的対立を招いた。
安政の大獄では反対勢力を厳しく処罰し、幕政の安定を図ったが、強権的姿勢への反発も強まり、桜田門外の変で暗殺された。幕末政治の転換点を象徴する人物だった。
御朱印と招き猫を頂く

授与品を頂きに寺務所へ。
行列を見ると授与品に人気があるのが分かりますね。

そして購入した授与品は、招き猫の可愛らしい御朱印帳と招き猫。
招き猫はサイズ違いで7種類用意されていました。2番目に小さいものを購入。可愛いなあ。

こちらが頂いた御朱印です。
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豪徳寺の詳細情報・アクセス
豪徳寺
公式ページ
住所:東京都世田谷区豪徳寺2-24-7(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)
・東急世田谷線「宮の坂駅」から徒歩5分
・小田急線「豪徳寺駅」から徒歩15分
車)
・無料駐車場あり
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松陰神社
幕末の思想家であり教育者であった吉田松陰を祀る神社です。
~休憩処~
RARASAND ララサンド

豪徳寺駅に向かう商店街にある、招き猫の人形焼きがあるカフェ。

可愛いでしょ?
つぶあんの他に、ミルクカスタード・レアチーズ・チョコレート・栗などの餡があり、選ぶのも楽しいですよ。
RARASAND ララサンド(豪徳寺本店)
公式ページ
住所:東京都世田谷区豪徳寺1‐8‐5 1F(GoogleMapで開く)
営業時間:11時~18時
*緊急事態及び、諸事情により営業時間の短縮や臨時休憩時間を行う場合があり
豪徳寺へ出かけてみませんか?
彦根藩とのつながりを持つその歴史と、愛らしい沢山の招き猫も出会えて、楽しい一時が過ごせました。
ちなみに、ご当地“ゆるキャラ” の代表格として人気の滋賀県彦根市の「ひこにゃん」も、豪徳寺に招き入れた猫がモデルになっているみたいですよ。
豪徳寺に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2024/1/14




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