新一万円札のデザインに採用されて話題の、日本資本主義の父と称される渋沢栄一。
その生誕地である埼玉県深谷市には旧渋沢邸・中の家や渋沢栄一記念館などがあり、その人物像を知ることができます。
それらの施設訪問の際に立ち寄り先として是非加えたいのが、今回紹介する「誠之堂」です。
渋沢栄一の喜寿の記念に造られた建物で、国重要文化財にも指定されているんですよ。
そんな貴重な建物である誠之堂の見どころを紹介します。
目次
「誠之堂」渋沢栄一の喜寿を記念して建てた洋風建物
「渋沢栄一」日本資本主義の父と称された実業家

清風亭内にある沈沢栄一像
2024年7月に発行開始の、新1万円札のデザインに使われることで話題の渋沢栄一。
「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一は生涯に多様な企業の設立・育成に関わりましが、その数はなんと約500社に上るといわれます。
その実業家としての足掛かりとなったのが、渋沢栄一が明治6年(1873年)に日本最初の銀行として創設した第一国立銀行。
この第一国立銀行は後に第一銀行に移行し、栄一は初代頭取を務めました。
渋沢栄一(1840~1931年)
埼玉県深谷の豪農に生まれる。
幕末は幕臣として徳川慶喜に仕え、欧州使節団への随行で西欧の近代社会を視察しました。
明治維新後は大蔵省での官僚生活を経て実業界へ転身。第一国立銀行をはじめ、生涯に約500もの企業の設立・運営に関わりました。
また、社会公共事業や教育支援(約600件)にも心血を注ぎ、女子教育の普及や社会福祉の基礎を築きました。
「誠之堂」栄一が第一銀行辞職時に贈られた建物

今回紹介する渋沢栄一ゆかりの建築物「誠之堂(せいしどう)」がある場所は、深谷駅から北へ4km程離れた、渋沢栄一の生誕地・血洗島の少し手前にあたる起会(おきあい)です。
小山川の川岸にあたるこの辺りには、のどかな水田風景が広がっていますよ。

誠之堂は地元の大寄公民館の敷地内にあり、見学したい旨を告げれば無料で見学ができます。
10名未満の少人数ならば事前の予約も不要です。

受付を抜けて中庭に出ると、煉瓦造りの洋風建築「誠之堂」が見えてきました。
渋沢栄一は大正5年(1916年)に第一銀行を創設し初代頭取を務めていましたが、喜寿(77才)を迎えるのを機に辞任しました。
その際、同行の行員たちが渋沢栄一の喜寿のお祝い記念として、都内世田谷区の銀行保養施設・清和園内に建てたのが誠之堂でした。
行員たちに慕われていたんですねえ。
ところで、その建物がなぜ深谷に?という疑問が湧きますが、世田谷で取壊しの危機に瀕した際、深谷市が譲り受けて移築・復元したということなんですね。
その甲斐あって、現在誠之堂は国重要文化財に指定されています。
第一国立銀行(後の第一銀行)について
第一銀行は渋沢栄一が設立した第一国立銀行(後の第一銀行、現・みずほ銀行)として始まります。
明治6年(1873年)、日本初の銀行とし設立され、広く民間から出資を募る日本初の株式会社形式の会社でした。当時、大蔵省を辞した渋沢栄一が総監役に就任。
国庫金の取り扱いや紙幣の発行を通じて、日本の近代産業の育成と金融インフラの整備に多大な貢献をしました。
英国農家風の可愛らしい煉瓦造り

誠之堂の第一印象としては、ノスタルジックで可愛らしい建物!
屋根の上にちょこんと風見鶏がいるのも、これまた愛らしい。
「誠之堂」の名は渋沢栄一による命名で、孔子が書いた儒教の文献「中庸」内の”誠之者、人之道也”という言葉からとられもの。
栄一が儒教の教えを人生の指針としていたことが、ここでも伺えます。

壁に煉瓦で喜寿と書かれているのがユニーク。
煉瓦で書かれた文字装飾って、案外珍しい気がします。
設計は大正時代のモダン建築家・田辺淳吉

建物は栄一の希望を元に、イギリス風農家のイメージでデザインされています。
設計は大正時代のモダン建築物の設計で活躍した、田辺淳吉(たなべ じゅんきち)によるもの。
東京都北区の王子飛鳥山に今も残る旧渋沢邸の晩香盧(ばんこうろ)と青淵文庫(せいえんぶんこ)の設計もしており、渋沢栄一とゆかりの深い建築家です。
田辺淳吉(1879~1926年)
大正時代を代表する建築家。
東京帝国大学で辰野金吾に師事した後、清水組(現・清水建設)に入社し技師長を務めました。
明治42年(1909年)には渋沢栄一率いる「渡米実業団」に随行。欧米で最先端の建築を視察し、帰国後は西洋様式を取り入れた独自のモダンな意匠を確立しました。
\ 旧渋沢邸があった飛鳥山公園についてはこちら!/

3色の煉瓦が組合わさって積まれている外観ですが、経年感を演出するために、敢えて色ムラのある煉瓦を使ったそうだ。
さらに良く見ると高さも微妙に均等ではなく、小さな煉瓦だけ規則的にチョコッとだけ突き出て積まれています。
細部に及ぶこだわりの造りが、独特の風合いを生み出しているんですね。

そんな繊細な造りの建物を都内から移築したわけですが、それにはかなりの労力と費用を要したようですよ。
特徴的な技術で積まれた煉瓦を崩さぬよう、可能な限り煉瓦壁を大き目に切断して運搬。
それを移築先で組み直すという、日本でも初めての手法による試みだったそうです。
解体・復元工事は平成10年(1998年)から平成11年まで、約2年を掛けておこなわれました。

チャームポイントの一つである屋根の風見鶏。
鶏は復元されたものですが方位板は当初からあったもので、文字は古代中国文字の”てん書風”の漢字が使われています。
風見鶏は元々は教会の屋根などに魔除けとして付けられたヨーロッパの建築文化ですが、それに東洋文化が違和感なくミックスされているのがデザインの大きな特徴です。
中国風のステンドグラスが印象的な内観

誠之堂の建物内も見学できます。
ベランダ付きの大広間を中心に、次之間・化粧所・玄関などで建物内部は構成されています。
円筒型の漆喰仕上げの天井が特徴的で、そこには雲や鶴の模様の石膏レリーフが細やかに装飾されています。写真ではちょっと分かりづらいですね。。。
窓周囲の煉瓦調のデザインも良いアクセントとなっています。

暖炉上には、格調高い雰囲気の渋沢栄一のレリーフ。
周囲には渋沢家の家紋にも使われている、カシワの葉があしらわれています。

さらに目を惹くのが、ステンドグラスが施された窓ガラス。
鮮やかな色彩が施されたもので、外からの陽の光を受けて良く映えます。
洋風の外観に対し、内装には中国史がモチーフに用いられるなど、やはり西洋・東洋が入り混じっているのが面白い。

こちらでは漢の時代の高貴な人物と、饗宴を執りおこなう演奏者や料理人などの侍者が描かれています。
どうやら栄一を貴人に見立てて、喜寿のお祝いの様子を描いているようです。

化粧所のステンドグラスには龍と鳳凰。こちらも中国風ですね。
ステンドグラスのデザインは、清水組のインテリアデザイナーだった森谷延雄(もりやのぶお)によるものです。

次之間には一転して西洋風の出窓があったり。
多様な建築文化がミックスされつつ、調和がとれているのが誠之堂の魅力でした。
「清風亭」白壁が美しい大正時代の洋風建築

同じ敷地内にもう一つ、「清風亭(せいふうてい)」という美しい建築物があります。
清風亭は銀行保養施設内に誠之堂と並んで建っていた建物。
第一銀行2代目頭取だった佐々木勇之助の古希(70才)を記念して、大正15年 (1926年)に建てられたもの。
やはりこちらも行員たちの出資によって建てられました。
清風亭は埼玉県の有形文化財に指定されています。

こちらは鉄筋コンクリート造りで、屋根にはスパニッシュ瓦が敷かれている洋風の建築物です。
窓の周囲を中心に黒褐色の煉瓦があしらわれており、これが外観上のアクセントとなっています。
関東大震災(1923年)を機に鉄筋コンクリート造りが建築の主流となってゆきますが、こちらはその初期のものとして貴重な存在とのこと。

誠之堂より少し大きめのサイズの建物で、敷地面積は誠之堂の約1.5倍の広さです。
清風亭は安室奈美恵ファンの聖地だった!

こちらも建物内部が見学できるので入ってみると、内装も純洋風の造りとなっていました。
広々とした部屋で、晩餐会なども開けそうですね!
清風亭を設計した西村好時(にしむらよしとき)は、誠之堂を設計者した田辺淳吉の片腕として活躍した人物で、後に銀行建築の第一人者となります。施工は誠之堂と同じく清水組。
装飾は誠之堂と比較するとシンプルな感じ。レンガ製の暖炉が室内のアクセントとなっています。
西村好時(1886~1961年)
大正から昭和にかけて活躍した建築家。銀行建築の名手として名高く、第一銀行を中心に数多くの金融機関を手がけました。
東京帝国大学卒業後、清水組(現・清水建設)で田辺淳吉のもと研鑽を積み、大正8年(1920年)に第一銀行へ入行。建築課長として本店や支店など30以上の拠点を設計しました。
建築スタイルは銀行らしい重厚な古典主義様式を基調としながら、内部には最新の設備と機能性を備えた堅実かつモダンな意匠が特徴です。

アーチ型のサッシの出窓が優雅な雰囲気を惹き立てています。
窓枠には控えめなステンドグラスの装飾もありました。

実はこのスタイリッシュな空間を生かして、平成16年(2004年)には安室奈美恵さんの曲のプロモーションビデオも撮影されているんですよ!
コアなファンの間では良く知られており、聖地としての訪問もあるとのこと。
「GIRL TALK」という曲ですので、気になる方はYouTubeなどで探してみて下さいね。

平成29年(2017年)には天皇皇后両陛下が深谷の渋沢栄一関連の史跡を視察されており、その際、誠之堂と清風亭も見学されています。
天皇皇后両陛下訪問時のパネルに、深谷の人気のゆるキャラ・ふっかちゃんが映り込んでいるのが楽しい。
東京には素敵な名建築が沢山ありますが、そこでお茶できたり食事できたりすると素敵ですよね。
テレビ大阪,BSテレ東の真夜中の人気ドラマ「名建築で昼食を」の原案本!
俳優・鈴木亮平さんが、世界遺産旅に想いをめぐらせ挿絵を描き下ろし。実際に行っていないのに(笑)。
妄想爆発で書き下ろした前代未聞の楽しい旅行記。
誠之堂・清風亭の詳細情報・アクセス
誠之堂・清風亭
住所:埼玉県深谷市起会110番地1(大寄公民館敷地内)(GoogleMapで開く)
開館時間:9時~17時(入館は16:30まで)
休館日:年末年始(12月29日~翌年1月3日)
料金:見学無料
アクセス:
電車)
・JR高崎線「深谷駅」より、深谷市コミュニティバス「くるリン」の北部シャトル便・渋沢栄一記念館行乗車で約20分、「大寄公民館」下車
*深谷市のコミュニティバス「くるリン」のページ
車)
・JR高崎線「深谷駅」より約15分
・駐車場あり
深谷のランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
周辺おすすめスポット(渋沢栄一記念館ほか)
~近隣スポット~
渋沢栄一記念館
渋沢栄一記念館では渋沢栄一ゆかりの遺墨や写真などの多くの資料を通して、その偉業に触れることができます。
また、とってもリアルな渋沢栄一のアンドロイドが見学者に講義をおこなう、というのが記念館の目玉。
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渋沢栄一記念館
住所:埼玉県深谷市下手計1204(GoogleMapで開く)
※誠之堂・清風亭から徒歩約30分(約2km)。コミュニティバス”くるリン”北部シャトル便の最寄りバス停は「渋沢栄一記念館」
渋沢邸 中の家
栄一や渋沢家を知ることができる貴重なスポット。
渋沢栄一の生家があった場所には栄一の妹夫婦が暮らし、栄一は帰郷の際にはこちらに滞在した。
2023年8月のリニューアルにより建物内部が公開され、見どころが増えています。
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中の家
住所:埼玉県深谷市血洗島247-1(GoogleMapで開く)
※誠之堂・清風亭からから徒歩約40分(約3km)。コミュニティバス”くるリン”北部シャトル便の最寄りバス停は「渋沢栄一生家入口」
尾高惇忠生家
若き渋沢栄一が学問を師事した、尾高惇忠の生家が一般公開されています。
栄一はかつて惇忠らと高崎城の乗っ取り計画を謀議しましたが、その話合いの場所がここの2階だったといわれています。
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コミュニティバス「くるリン」について
渋沢栄一記念館などがあるエリアは、深谷駅からは5~6km程離れています。
電車で訪問の場合は駅からタクシー利用も良いですが、市内を循環するコミュニティバス・くるリンを上手く使うと安く移動できます。
谷市コミュニティバス「くるリン」
北部シャトル便では、深谷駅(北口)と渋沢栄一記念館間を折り返し運行する便があります。
運賃は1km以内は100円、2km以上は200円(1乗車あたり)。
ホームページでコースマップや時刻表が見れます。
深谷市・コミュニティバス「くるリン」のページ
\ 農畜産物のほか、渋沢栄一やふっかちゃんグッズも!/
誠之堂・清風亭へ出かけてみませんか?
渋沢栄一生誕地・深谷にある栄一ゆかりの誠之堂は、こだわりの詰まったとても美しい建築でした。
誠之堂がある場所は渋沢栄一記念館や旧渋沢邸とは少し離れているので見逃しがちですが、渋沢栄一生誕地訪問の際には是非立ち寄ってみましょう!
誠之堂と清風亭の見学で出かけてみませんか?

記事の訪問日:2023/8/20




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