埼玉県さいたま市の浦和にある「調(つき)神社」は、平安時代の延喜式神名帳にも記載がある、由緒ある歴史を持つ古社です。
その一方、境内入口には鳥居が無かったり、普通は狛犬がいる場所には狛兎がいたりして、ちょっと変わった神社なんですよね。
そんな個性派神社である調神社を、その歴史をたどりながら境内の見どころを紹介します。
目次
『歴史を感じる調神社で、沢山の兎に出会う』
狛兎がお出迎え、ツキ(=運)神社ともいわれる
人の往来が多いJR浦和駅西口から、歩くこと約10分。
駅前通りからは少し外れた、旧中山道ぞいの静かな場所が「調神社」の鎮座地です。
調神社と書いて「つきじんじゃ」と読みますが、確認しないとちょっと読めないかもですね。
地元では「つきのみやさま」の呼び名で親しまれています。
そんな調神社は、なかなかの個性派神社として知られます。
まずこちら神社正面ですが、鳥居がありません。
そして、入口に座して参道を見守るのは、一般的には狛犬ですが。。。
こちらでは狛兎になります!
社名の調(つき)の名が月と同じ読みであることから、中世の月待(つきまち)信仰の神社とされたそうなんですね。
それにより、境内各所に月の使者である兎のデザインが施されています。
本日は、これらも探しながら参拝してみたいと思います。
ちなみに、月に兎がいるという伝承の起源は、インドの神話らしいです。
それが日本にも伝わり、平安時代の今昔物語集や民話を通じて広がったみたいですね。
調神社の月信仰は、現代ではさらにツキ(=運)の意味に掛けられ、勝運や金運のご利益を頂ける神社とされているらしいです。
せっかくなので、本日の参拝でツキを頂いて帰りますよ!
入口の狛兎は、平成25年(2013年)に造られた比較的あたらしいものでした。
一方、初代の狛兎も境内に保存されてます。
こちらの先輩狛兎は、江戸時代の万延2年(1861年)のもの。
江戸時代当時も、狛兎は珍しがられたでしょうなあ。
境内の至るところに兎が!
そして手水舎の奥からも、何やら視線を感じる。。。
「参拝前に清めていってね」。はいっ!
かつて伊勢神宮への貢物が集まった地
一風変わった神使いに、どうしても目がゆきがちな神社。
なんですが、調神社は平安時代の延喜式神名帳(えんぎしき じんみょうちょう)にも記載がある、歴史と由緒のある神社なんですね。
調神社の起源は約2000年前で、第10代崇神天皇の命による創建とされます。
その際、伊勢神宮へ納める貢物(=調物)である初穂を納めた、倉庫群の中に造営されたそう。
そのため、その搬出入の妨げにならぬよう鳥居がなかった、と伝えられます。
なるほど、鳥居がないのには理由があったのですね。
主祭神として、天照大御神(あまてらすおおみかみ)・豊宇気姫命(とようけひめのみこと)・素盞嗚尊(すさのおのみこと)の三神が祀られています。
- 社殿の変遷
- ・ 延元2年(1337年):南北朝時代、足利尊氏の命にて社殿を復興。
- ・ 天正18年(1590年):戦国時代、豊臣秀吉の小田原征伐の戦火により再び焼失。
- ・ 江戸時代初期頃:次第に再建。
現在の社殿は安政6年(1859年)の建築物で、総欅(けやき)造りのもの。
建築様式は、拝殿と社殿が一体化した権現造りです。
落ち着いた素朴な感じの社殿で、彫刻からも柔らかい質感を感じます。
社殿の横で、兎でなくて狛犬を見つけましたよ!
でも、ちっちゃ!
狛兎と比べて、ここでは狛犬の立場はなんだか弱そうですね(笑)。
「十二日まち」は歳末の風物詩
神楽殿には、干支の大絵馬や熊手が飾られていました。
毎年12月12日におこなわれる「十二日まち」の熊手。
調神社の十二日まちでは、例年大歳の市が開催されます。
熊手をはじめ縁起物を売る露店がならぶ、明治時代から続く歳末の風物詩なんですよ。
「神輿庫」には、祭りの神輿を保管。
地元偉人碑や不思議な像も!?
社殿の東側には神池があります。
水面に映し出された木々の緑が、清らかな感です。
はい、神池の中にもやはり兎がおりました。
池の歩道沿いには「長谷川かな女」の碑。
長谷川かな女さんは高浜虚子の指導をうけた、大正・昭和初期を代表する女性俳人。
俳句界の発展に貢献した方だそうだ。
40年あまり調神社の近くに居住され、浦和市の名誉市民となった地元の偉人です。
(浦和市は現在はさいたま市に編入。)
こちらは祭神と関係がありそうな雰囲気の石像ですが、詳細不明。
いかつい棍棒のような物を持ってますが。。。
旧本殿は江戸時代中期の建造物
神池の先には、旧本殿が保存されています。
旧本殿の建築物は、ガラス張りの枠越しに拝見することができます。
枠越しとはいえ、こんなに近くで本殿の建築物が見れるのは貴重。
江戸時代中期の享保18年(1733年)の建立ですが、まだまだ綺麗な状態ですね。
こちらは市有形文化財に指定されています。
建築様式は一間社流造り(いっけんしゃながれづくり)と呼ばれる様式。
色彩豊かな装飾が施されています。
おっ!こちらには黄金に輝く兎がいますね。
色鮮やかな霊獣の彫り物も。
旧本殿は、現在は稲荷神社の本殿という位置付けになっているようです。
調神社の御朱印
御朱印にも兎がおりますが、背中向きでちょっと哀愁を帯びた感じが(笑)。
兎の柄の、可愛らしい御朱印帳。
浦和の街中で神輿に出会う
参拝の帰りに、JR浦和駅前にあるデパートの浦和コルソに立ち寄ったところ、たまたま!調神社の神輿が展示されてました。
展示の詳細は分かりませんでしたが、街とのつながりも深いようですね!
神社に参拝に行くと、神々についてや神社施設の呼び名・役割について知りたいけど、聞ける相手もいない!
ってことありません?そんな時、網羅範囲が広い本書は結構頼もしいですよ!
調神社の詳細情報・アクセス
調神社
住所:埼玉県さいたま市浦和区岸町3丁目17-25(GoogleMapで開く)
アクセス:
電車)JR「浦和駅」から徒歩約10分
車)東北自動車道「岩槻IC」から約20分
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\ さいたま市の返礼品は、結構グルメが充実してますよ!/
調神社に参拝に出かけませんか?
調神社は、古社としての歴史を感じられる神社でした。
そして、境内でかわいい兎を探しつつの参拝も楽しかったです!
浦和駅にも近くアクセスも良い神社なので、ツキを頂きに参拝に立ち寄ってみませんか?
記事の訪問日:2021/7/22
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