かつて徳川将軍の居城であった江戸城。
その中心部だった場所は、皇居として使われていることは良く知られています。
しかし、実は皇居や皇居外苑は旧江戸城の一部にあたる場所で、江戸城全体は城と町が一体化した「総構(そうがまえ)」と呼ばれる広大な敷地を持っていました。
そして城郭内の要所には、見附と呼ばれる番所が設置されました。
日比谷公園にその見附の一つである「日比谷見附」の痕跡が残っている、ということででかけてみました。
目次
日比谷公園で江戸城城門跡に出会う
江戸城総構えと三十六見附
現在の皇居がある場所を中心に、かつて日本一の規模を誇った徳川将軍の居城、江戸城がありました。
江戸城の築城は、慶長9年(1604年)から徳川家康により着手されます。
工事は諸大名の御手伝普請(ふしん)により長期間かけて実施され、約30年後の3代将軍・徳川家光の時代の寛永13年(1636年)に完成したといわれます。
城郭は、本丸を含む主郭は内堀に囲まれ、さらにその外側の城下町全体は外堀で囲まれていた。
城と町が一体化した「総構(そうがまえ)」と呼ばれる造りでした。
外郭周囲の距離は約16km。
現在の千代田区・中央区が丸々入ってしまう広さ、といわれるとその広大さに驚かされます。
城郭内には見附と呼ばれる番所がいくつも置かれ、主要な見附は「江戸城三十六見附」と呼ばれました。
日比谷公園に遺構が残る日比谷見附も、その一つでした。
四谷見附や赤坂見附など、現在も地名として残っている場所もありますよね。
かつては大名屋敷跡だった日比谷公園
本日は東側中央口にあたる「日比谷門」から入園しました。
日比谷公園は近隣の皇居外苑とともに、緑が楽しめる都心の憩いのスポットです。
江戸城の主郭に近い一等地であったこの辺りは、幕末までは多くの大名屋敷が建ち並んだエリアでした。
明治に入り陸軍の練兵場として使用された後、明治36年(1903年)に日本初の西洋風公園として開園されました。
この辺りは江戸時代までは、日比谷入江が広がる海・湿地だった。
そのため地盤がビル建設に向かず、それにより公園化されたという背景があったようだ。
公園を設計したのは本多静六博士という人物。
本多静六(1866~1952年)
日比谷公園をはじめ、北海道の大沼公園や東京都の明治神宮の森など、設計した公園の数多数。
東京駅丸の内口駅前広場の設計などもおこなっている。
今日では「日本の公園の父」とも呼ばれている、公園設計の第一人者だった
園内の広さは約16.2ヘクタールで、東京ドーム約4個分。
公園内には花や緑を楽しめる施設のほか、日比谷公会堂、大音楽堂(通称、日比谷野音)、図書館、テニスコートなどの公共施設があります。
明治時代の旧日比谷公園事務所など、歴史を感じさせる建築物が残ってたりもします。
伊達政宗らが構築した「日比谷見附跡」の石垣
公園内を北に進むと、やがて池の向こうに石垣造りの土手が現れます。
お~、石垣はけっこう広範囲にわたって残っているんですね!
本日は有楽門から散策しつつ向かいましたが、最寄りの入口は北東隅の有楽門。
入ってすぐの場所です。
石垣の積み方は、大きさをある程度揃えて横に継ぎ目を通す、いわゆる布積。
そして隙間に小石を入れて固定させる、打込み接ぎで仕上げられています。
石垣の南端部分。
角部は算木積みで、内側も大きめの石を切込み接ぎで隙間なく積まれている。
説明によると、かつての日比谷門は現在の日比谷交差点付近にあったとある。
門は外側から高麗(こうらい)門・枡形(ますがた)・渡櫓(わたりやぐら)で構成されていたので、こちらは渡櫓門の櫓台ということになるのでしょうかね?
日比谷御門の一部、という記載からは確証が得られなかった。
日比谷門は、慶長19年(1614年)に熊本藩主・加藤忠広(加藤清正の3男で2代目藩主)が門周辺の石垣を築造。
そして、寛永5年(1628年)に仙台藩主・伊達政宗が門の石垣を構築したと伝わります。
心字池はかつての江戸城の堀跡
石垣造りの土手には階段で、上がることができます。
江戸時代の石垣の上のベンチから公園の景色を眺められるなんて、なかなかに素敵な場所ですよね。
土手の前の池は、かつての江戸城の堀の名残り。
公園北側には日比谷濠があるが、元々ここにも日比谷濠とつながった堀があったそうだ。
堀は公園敷設の際に埋められましたが、その一部を心字池にして残したそうだ。
旧江戸城の痕跡を残す、というこだわりを感じますなあ。
ちなみに心字池とは、上から見ると「心」の字をくずした形になっている池のことです。
この辺りが櫓台の上にあたる部分。
土手には、切り出しの際に付けられる矢穴付きの石垣石が点在していた。
この後も公園内のいたるところで見かけた石垣石は、公園デザインの一部としてオブジェ的に使われていました。
土手の裏手側。
約90m続く石垣は、ほぼ当時の原形をとどめているらしい。
石垣の南側の端。
角部は算木積みだが、周囲の石積みは打込み接ぎで入口側と比較して造りが荒い。
こちらの方が江戸初期の古い石垣っぽいな、と想像したがどうなんでしょう?
かつての堀はここで屈折して、外堀に設けられた「山下門」方面に向かった。
山下門の位置は、現在の有楽町2丁目の山下橋架道橋のあたりだったという。
積み石には刻印らしきマーキングも見られる。
階段脇にも無数の石垣石がワイルドに積まれていた。
石垣残材がこんな風に使われている公園は見たこと無いなあ。
和でも洋でもない、斬新かつ無骨なデザイン。
はつり仕上げで表面を化粧したっぽい石も見られる。
ちなみにこちらで不要となった石垣石は、皇居内の梅林坂・汐見坂間などの修復石材として再利用されているそうですよ。
「仙台藩上屋敷跡」は伊達政宗の終焉地
こちらは心字池近くにある「伊達政宗 終焉の地」の案内板が立つ一角。
江戸における仙台藩の上屋敷の跡地で、伊達政宗が徳川家康より江戸屋敷を付与されたのに始まります。
慶長6年(1601年)~寛文元年(1661年)にかけ、政宗から3代目の綱宗の代にかけ外桜田上屋敷として使用された。
敷地の範囲は、東西は心字池西岸から現在のテニス場東端まで、南北は日比谷濠沿いの道路から小音楽堂付近まで。
敷地は約3万m2と広大で、そこには伊達政宗の居地に見合った大豪邸が建っていたのでしょうなあ。
伊達政宗は寛永13年(1636年)年5月に、ここで70年の生涯を閉じました。
遺構らしきものは特に見当たりませんでした。
大名屋敷の痕跡の石桝
園内には、江戸時代の上水道木管用の石桝(いします)の跡がいくつかありました。
いわゆる水道菅ですな。
こちらは、日比谷門から入ってすぐのことろにあったもの。
石桝は大通りの各所に設けられ、そこから大名屋敷などに水が供給されたそうだ。
こちらは土手から後述の三笠山へ行く途中にあった、別の石桝の跡。
巨石を四角にくり抜いた、精密な感じの造りでした。
三笠山周辺にも多くの石垣石
最後に公園北西部にある小山、「三笠山」に行ってみました。
日比谷公園内にこんな小山があるのも、初めて知りましたわ。
三笠山は公園造成時に発生した残土で作られた、人工的な山なんだそうだ。
笠を伏せた形状の山が三つできたため、この名が付いた。
現在はその山の一つはテニスコートとして整地されており、二笠山状態になっております。
例によって矢穴や刻印入りの石垣石が、庭園の置き石のごとく配置されています。
標高約9mの頂上に、あっという間に登頂。
高層ビル街と緑が楽しめて、なかなかの眺望ですよ!
さらに奥まった場所にはもう一つの山。
こちらにはアメリアから贈られた、自由の鐘が設置されていました。
明治時代の初めにはまだこれだけ様々な城が残されていたんですね。
貴重な写真の数々に思わず釘付け!
石垣の時期ごとの加工方法や積み方の特徴、そして各曲輪の石垣の丁寧な解説あり。
読めば、さらに興味深く江戸城跡歩きができますね。
日比谷公園の詳細情報・アクセス
日比谷公園
公式ページ
住所:東京都千代田区日比谷公園1-6(GoogleMapで開く)
開園日:常時開園 ※サービスセンター開所時間 8:30~17:30(除、年末年始)
入園料:無料(一部有料施設あり)
アクセス:
電車)
・東京メトロ丸ノ内線・千代田線「霞ヶ関駅」下車、B2出口すぐ
・東京メトロ日比谷線・千代田線・都営地下鉄三田線「日比谷駅」下車、A10・A14出口すぐ・東京メトロ有楽町線「桜田門駅」下車、出口5から徒歩5分
・JR「有楽町駅」下車、徒歩8分
車)
・有料の地下公共駐車場あり(日比谷自動車駐車場の公式ページ)
丸の内風辺ランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
さらに周辺の旧江戸城跡をめぐってみる
皇居東御苑
事前の予約なしで気軽に皇居内の旧江戸城跡の見学ができるのが、皇居東御苑。
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皇居(江戸城跡)
住所:東京都千代田区千代田1-1(GoogleMapで開く) *Mapは大手門
※大手門までは徒歩約25分(1.5km)。電車の場合は、「日比谷駅」から都営地下鉄三田線乗車約1分にて、「大手町駅」下車。
皇居周囲の内堀をめぐる
皇居周囲の内堀沿いには、思わぬほど数々の城門が残っています。
しかも、高麗門・枡形・渡櫓門のセットで残っている門も多く(復元含む)、城好きが歩けば至福の時間が過ごせますよ。
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江戸城の外堀跡を歩く
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しかし一部の城門の跡は残っており、しかも結構意外な場所に保存されていたりします。
東京歩きがてら出かけてみませんか?
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日比谷見附跡を見に出かけませんか?
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記事の訪問日:2024/4//21
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