東京都府中市にある大國魂神社は飛鳥時代に武蔵国の国府が置かれた際、武蔵国中の神社が当社に集められて祭典がおこなわれました。そのため「武蔵総社」と呼ばれます。
現在でも武蔵国の護り神である大國魂大神とともに武蔵国の著名な六神社が合祀されており、その御利益は絶大ともいわれます。
徳川家康ともゆかりが深いその歴史をたどりながら、境内の見どころを紹介。
目次
飛鳥時代より「武蔵総社」とされた神社
1900年の歴史を持つ古社
大國魂神社は約1900年前の第12代景行天皇41年(111年)に創建されたとされる、古い歴史を持つ神社です。
神社が所在する府中市の地名は、飛鳥時代に国の行政官である国司が政務をおこなう「武蔵国府」が置かれたことに由来します。
その際に国司は武蔵国中の神社を当社に集めて、管轄内の神社の祭典を一箇所でおこないました。
そのため大國魂神社は「武蔵総社」と呼ばれたんですね。
大國魂神社は鎌倉幕府をはじめ、多くの武将の崇敬を受けてきました。
江戸時代には幕府から神領地として五百石が寄進されています。
明治時代には明治天皇による准勅祭社にも選定されており、東京都を代表する神社の一つです。
正面の大鳥居を抜けると、厳かな雰囲気の並木道の参道が続きます。
本日は夏の暑い日の訪問でしたが、参道の木陰がありがたかったですなあ。
参道はJR府中本町駅方向に向かっているので、地元では生活道としても親しまれているでしょう。
徳川家康の江戸入城を祝す「八朔相撲祭」
参道途中にある摂社「宮之咩神社(みやの めじんじゃ)」。
大國魂神社本社と同時期の創建といわれ、天鈿女命(あめのうずめのみこと)という女神を祀っています。
安産の神として崇敬され、源頼朝の妻政子が安産祈願したとも伝わります。
そしてその近くには、なぜか相撲場が。。。
ここでは毎年8月1日に「八朔相撲祭」がおこなわれるそう。
さかのぼること天正18年(1590年)8月1日、徳川家康の江戸入城を賀して天下泰平・五穀豊穣を祈る奉納相撲をおこなたのが起源なんだそうだ。
現在でも旧四ヶ町によりおこなわれている、伝統行事とのこと。
千鳥破風の屋根と彫刻が美しい「手水舎」
境内入口手前にある「手水舎」は千鳥破風の屋根がついた随分立派なもので、思わず見惚れるわ。
近づいてみると、獅子や龍をはじめ多くの霊獣の彫刻が彫られており見事。
これらは江戸彫工の飯田家四代目、飯田勇次郎によるものとのこと。
「随身門」ヒノキ造りの巨大な門
境内入口には高さ8.5mある大きな「随神門」が現れます。
これは平成23年に改築されたヒノキ造りの門です。
門の両脇を固める狛犬は、天保10年(1839年)に奉納されたもの。
歴史を感じさせる風格ある狛犬でした!
正面には随身像が納められています。
享保20年(1736年)建立の隨神像が残っており、それを元に平成に作られました。
享保の随身像は宝物殿に展示されています。
右側は「豊磐間戸命(とよいわまどのみこと)」という神様。
左側は「櫛磐間戸命(くしいわまどのみこと)」。
ともに門を守護する神様だそうです。
後面に納められているのは恵比寿像。
そしてこちらは大国像です。
「鼓楼」「神楽殿」
随身門を抜けると風格のある「鼓楼(ころう)」があります。
鼓楼は太鼓を懸けて、時を知らせるための建物です。
元々は慶長年間(1596~1615年)に、三重塔と相対で建てられましたが、正保3年(1646年)の大火で焼失。
現在の鼓楼は、嘉永7年(1854年)に再建されたものです。
一般的に時の鐘は寺にあるもので、神社で時を知らせるものは太鼓なんだそうだ。
ふ~む、確かにいわれてみれば神社で鐘はあまり見かけませんね。
鼓楼の反対側にある「神楽殿」。
秋季祭など行事の際には、こちらで神楽が奉納されます。
「中雀門」朱塗りが鮮やかな門
社殿エリア入口の「中雀門(ちゅうじゃくもん)」は、随神門とは対照的に朱色が鮮やかな門。
明治維新百年記念事業として、昭和44年に建て替えられた門とのこと。
中雀門手前の年季の入った苔生す狛犬は、明治時代の狛犬でした。
大國魂神社は武蔵国の護り神を祀る
中雀門を抜けた先が「拝殿」です。
現在の拝殿は明治18年改築され、その後昭和に改修されたものです。
大國魂神社は、出雲の大国主神と御同神である、大國魂大神を武蔵国の護り神としてお祀りしています。
武蔵国は現在の東京都、埼玉県、神奈川県の川崎市・横浜市にあたる地域ですね。
大國魂大神は福神であり、縁結び、厄除け・厄払いの御神徳を持つといわれていますよ!
拝殿には時代を感じさせる、「総社六所宮」と書かれた扁額が架かる。
書は江戸時代中期の書家・勝間龍水によるものです。
「本殿」徳川家綱の命で再建
本殿の左右の相殿には武蔵国内の著名神社六社が合祀されており、「六所宮」とも呼ばれています。
六所宮に祀られる神々
■一ノ宮: 小野神社(現、東京都多摩市)
■二ノ宮:二宮神社(小河神社)(現、東京都あきる野市)
■三ノ宮:氷川神社(現、埼玉県さいたま市)
■四ノ宮:秩父神社(現、埼玉県秩父市)
■五ノ宮:金鑚神社(現、埼玉県神川町)
■六ノ宮: 杉山神社(現、神奈川県横浜市)
私の地元の神様も祀られていましたわ。
塀越しにちょこっと撮らせて頂いた本殿。
一間社流造の社殿三棟が横に連結された相殿造り(=三間社流造)。
三棟合わさった構造様式は、あまり例が少なく珍しいそうだ。
以前の本殿は、正保3年(1646年)の火事で焼失。
その際、徳川4代将軍家綱の命により、寛文4年(1667年)に再建されたものが現在の本殿です。
「水神社・松尾社・巽神社」
拝殿での参拝後は、本殿の東西にある境内社をめぐります。まずは東側。
国歌や古今和歌集などで詠まれている「さざれ石」がありました。
さざれ石は、雨水に溶解した石灰岩が小粒石を凝結してできた石灰質角礫岩のこと。
見た目は変哲のない岩ですが、気の遠くなる年月を経て形成された石らしいですね。
水神は身体健康・子孫繁栄等を司る神とのこと。
水神社の竜頭口より流れる水は、深井戸を利用して地下水を汲み上げているもの。
この御神水を取りに来る参拝者が絶えないとのことです。
「松尾社」に祀られる大山咋命(おおやまくいのみこと)は、醸造の守護神。
寛政12年(1800年)に武蔵国の醸造家の懇請により、京都の松尾大社より勧請されたとのこと。
「巽神社(たつみじんじゃ)」に祀られる市杵嶋姫命(いちきしまひめのみこと)は弁財天ともいわれる。
芸術向上の御神徳もあり、花柳界の信仰が厚かったそうだ。
巽神社の狛犬は個性的な顔立ちだった。ヒヒみたいな顔立ちですな。
「住吉神社・大鷲神社」酉の市で賑わう
本殿西側の手前には「住吉神社」「大鷲神社」が相殿で祀られている。
大鷲神社では毎年11月に酉の日をむかえると熊手市が立ち、多くの参拝者でぎわいます。
「東照宮」徳川家康の霊輿が逗留した地
徳川家康を祀る「東照宮」が西側の奥まった場所にあり、一際特別感があるたたずまいでした。
これは元和4年(1618年)に、2代将軍徳川秀忠の命により造営されたものだそう。
徳川家康は死後、駿河国久能山(静岡県)から日光山(栃木県)に霊輿が遷されました。
その際、国府の斎場に一夜逗留し、大國魂神社の宮司が祭祀を務めたとのこと。
その遺跡を後世に伝えるために、造営されたものなんだそうですよ。
徳川家康は大國魂神社の西側に御殿を建てて鷹狩りに訪れるなど、府中の地とも縁が深かったようです。
「宝物殿」徳川将軍の朱印状が残る
境内には「宝物殿」があります。
1階には御輿や大太鼓を展示。
2階には各種資料の展示があり、徳川家康をはじめ12通の徳川将軍よりの朱印状が残っており貴重です。
ちなみに館内では写真撮影はできませんでした。
宝物殿
開館日時:土・日・祝日、神社祭礼日の10時~16時
拝観料金:大人200円、学生100円
大國魂神社の御朱印
「馬場大門欅並木」 府中市のシンボル
大鳥居の北側に続く街中の参道には、「馬場大門欅並木(ばば だいもんけやきなみき)」が続いています。
康平5年(1062年)、源頼義・義家親子が東北遠征の祈願成就のお礼として、苗木千本を寄付したのが起源。
現在のケヤキ並木は、慶長年中(1596年~1615年)に徳川家康が二筋の馬場とその両側に土手を築き、その上にケヤキの苗を植え寄進したもの。
ケヤキの並木としては国内唯一の国指定天然記念物で、府中市のシンボルでもあります。
時間があればこちらもぜひ歩いてみて下さい。
神社に参拝に行くと、神々についてや神社施設の呼び名・役割について知りたいけど、聞ける相手もいない!
ってことありません?そんな時、網羅範囲が広い本書は結構頼もしいですよ!
大國魂神社の詳細情報・アクセス
大國魂神社
公式ページ
住所:東京都府中市宮町3-1(GoogleMapで開く)
電車)
・京王線「府中駅」から徒歩5分
・JR南武線/武蔵野線「府中本町駅」から徒歩5分
車)
・中央高速道「国立府中IC」から約10分 、「調布IC」から約15分
・参拝者用無料駐車場あり
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大國魂神社へ参拝に出かけませんか?
大國魂神社は、東京都内にありながら緑に囲まれた清々しい神社でした。
境内では武蔵総社として、また徳川家康とも深いゆかりを持つ神社として、その歴史の深さが感じられました。
大國魂神社に参拝に出かけてみませんか?
記事の訪問日:2022/7/24
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