現存天守が国宝指定されていることで知られる松江城ですが、城郭や城下町を取りまく広範囲におよぶ堀も、水の都といわれる松江ならではの特徴です。
その堀を小船に乗って周遊できるのが、「ぐるっと松江 堀川めぐり」。水上から見ると、改めてその堀の壮大さに驚かされますよ。
船頭さんの軽快なお喋りや小船に装備された特殊な仕掛けも楽しい、水上からの松江城下町めぐりを紹介します。
目次
「松江堀川めぐり」国宝松江城の堀を船でめぐる
松江城の堀は築城時に堀尾氏が整備
松江城は豊臣秀吉・徳川家康に仕えた堀尾氏が戦国時代に築城した城で、山陰地方唯一の現存天守は国宝指定されています。
天守がある本丸や二之丸などの主郭は内堀に囲まれ、さらに城下町も広範囲にわたり外堀に囲まれているのが松江城の大きな特徴です。
堀割りは慶長12年(1607年)~慶長16年(1611年)頃に、堀尾氏がおこないました。
当時の城地ですが、本丸・二之丸は小高い亀田山に置かれるも、それ以外はほほ低湿地帯。
城下町の建設には屋敷地確保のための盛土の確保、堀による物資運搬や防御の強化、などの必要性が大掛かりな堀の造成につながっています。
現在でも築城当時の姿を良く残している松江城の堀。その堀を船でめぐることができるのが、「ぐるっと松江 堀川めぐり」です。
\ 国宝 松江城の詳細についてはこちらへ!/
「ふれあい広場乗船場」小泉八雲記念館の近隣
堀川めぐりの乗船場は「ふれあい広場乗船場」「大手前広場乗船場」「カラコロ広場乗船場」の3ヶ所にありますが、今回はふれあい広場乗船場からの乗船。
松江城の北西にあるこの乗船場は、かつての旧武家町である「塩見縄手通り」に比較的近い場所です。本日も、そちらで武家屋敷や小泉八雲記念館を見学した流れでの訪問です。
乗船時間になり船着き場へ移動。
チケットは一日乗船券になっており、同日中は何度でも乗り降りが可。観光時の移動手段としても便利です。
遊覧船は全長約8m・幅約2m、定員は約10~12名の小さな船。古風な外観ですが、エンジン駆動式の乗物でした。
周遊ルートを見ておきましょう。
・「ふれあい広場乗船場」(左上)からスタートして東に進み、内堀に合流して南下。
・南に下り切ると外堀の京橋川に合流し、東へ進む。
・カラコロ広場を過ぎた先で米子川に入り北上。
・米子川の突き当りを西に入り、城山内堀川の先の「大手前広場乗船場」で下船。
内堀・外堀の両方をめぐるルートで、コース全長は約3.7km、遊覧時間は約50分を要すコースです。
土足厳禁の畳敷きの船内に座ると、なんだかアットホームな雰囲気(笑)。冬場はこれにコタツが加わるとのことで、さらにアットホームな絵になりそうですね。
この船の大きな特徴は、低い橋の下を通れるように屋根を電動で下げられること。乗船すると、早速その屋根下げの予行演習がおこなわれます。
「はい。本番ではもっと下がりますからね!」と、船頭さんの一言に船内は失笑で和やかな雰囲気に。
船頭さんによる名調子の語りも、堀川めぐりの魅力の一つです。
「縄手通り」武家屋敷の面影が残る
ふれあい広場乗船場がある場所は外堀の一部ですが、内堀と外堀をつなぐ役割の川でもあります。
まずは内堀に向かって東に進みます。
今日は天気も良く遊覧船日和ですね。日差が強い日でしたが、屋根があるので快適ですわ。
最初の橋となる新橋を抜けると内堀に合流。
城郭北側のこの辺りは内堀と外堀を兼ねた堀割りなので、川幅がかなり広々している。
これが人工的に掘削された堀だと考えると、物凄い大工事だったことでしょう。
写真は進行方向と逆の景色ですが、こちらはかつて武家屋敷が置かれた「塩見縄手」エリア。
現在も古い建物が並ぶ松江市の伝統美観保存区域で、旧武家屋敷や作家・小泉八雲の明治時代の旧宅などがあり見どころも多いです。
自然区で多くの生き物に出会う
橋の先には豊かな緑が見えてきました。内堀の西側のこの辺りは、自然区と呼ばれています。
内堀西側の中間地点にある亀田橋のあたり。
どこかの渓谷にでも来た気分になる、緑豊かな自然の景観が広がる。
特に自然区では色々な生物と出会うことができます。
涼し気に浮いている鴨たち。
こちらには鷺(さぎ)が。
こちらでは亀が甲羅干し中。
堀川では外来種の亀が多く繁殖しており、川の生体系に悪影響を与えているとも。
野趣あふれる景観が楽しめる自然区で、マイナスイオンを満喫。
県庁に残る「松江城三之丸の石垣」
やがて島根県庁の北西の角に差し掛かると、川側に突き出た石垣が見えてきます。
県庁はかつての三之丸跡にあるので、これはその遺構ですね。櫓台跡っぽいですが。
三之丸の南東から南にかけての堀は、県庁前庭として整備するために石垣ごと埋め立てられてしまっている。こちらは三之丸の石垣遺構として貴重ですね。
三之丸には御殿があり、そこが松江藩主の住居でした。2代目藩主の松平綱隆の時代までは、藩主は二之丸に居住していました。
その先に綺麗に残っている石垣も、当時の遺構のようですね。
4つの橋で屋根が下がる!
県庁西側に流れる、内堀南側と外堀をつなぐ位置付けの比較的狭い川を進む。
自然区では土手だった両岸が、この辺りに来ると石垣の護岸に変わってきます。
これは松江城築城の際、特に南東方向からの敵を想定したことに起因するらしい。
乗船直後に屋根下げの練習がおこなわれましたが、ここでようやく本番を迎えます!
コース上には屋根を下げる橋が全部で4つありますが、その最初がこの「うべや橋」です。
船頭さんの「おろしま~す!」のかけ声とともに、徐々に下りて来る屋根。おおっ~、やはり練習時よりも低いですね~。
身を低くしたまま、橋内の通過を待ちます。この橋、けっこう幅広だわ。
通過後に再び船頭さんの「あげま~す!」の声。そして、それに続く「ありがとうございます。だんだん。」の決めゼリフ。
可愛らしい響きの”だんだん”は、こちらの方言で「ありがとう」の意味なんですって。
町人町として栄えた京橋川沿い
外堀の京橋川に入ると、この辺りから「市街地区」になります。
川幅が広がり視界も開け、外堀らしい街中の景色に一変です。
内堀と外堀の両方を通るこの堀川めぐりは、景色が単調にならないのがセールスポイントの一つ。
築城当時から外堀沿いは町人地とされ、かつては水運を利用した商人や職人たちの店や蔵が立ち並んだそうです。
特にこの京橋川の南側は町人町として栄え、現在でも染物屋、醤油や清酒の醸造蔵、米穀店等々の営業を続けている店が多いとのこと。
川の水を利用した時代の石段が残ってますね。
昭和初期までは川で染物を洗う風景や、船による物資運搬をする風景がまだ見られたとのこと。
松江は水の都といわれるだけあって、暮らしと河川が密接な関係だったようだ。
「カラコロ工房」旧日本銀行松江支店
市街地区で印象的な建築物といえば、こちらの「カラコロ工房」。
昭和13年(1938年)に「日本銀行松江支店」として建てられた建物が、国の登録有形文化財として保存されています。銀行建築に相応しい重厚な建物ですよね。
多くの銀行建築に携わった設計者の長野宇平治(1867年-1937年)氏は、日本を代表する建築家である辰野金吾の弟子として知られます。
ところで「カラコロ」の語源が気になりませんか?
これは明治時代に松江市に在住していた作家・小泉八雲氏が、松江大橋をわたる下駄の「カラコロ」と響く音に深く心魅かれた、ことからきています。
ギリシャ生まれの小泉八雲氏ですが、日本情緒への造詣が深かったようです。
カラコロ工房の向かい岸にある「カラコロ広場乗船場」は、乗船者がいる場合のみ定時便が立寄る乗船場。
乗客がいなかったため、手を振る係員に見送られながら通過。
カラコロ工房を過ぎた後、京橋・東京橋・栄橋を通過してゆきます。
米子川で再び”屋根おろしま~す!”
進路が北に変わり米子川に入ると、「甲部橋」「新米子橋」の2つの屋根下げポイントを迎えます。
右手の赤いブイのような物が浮く場所が、屋根の下ろし始めの地点。
船頭さんはここで乗客の1名を指名し、「おろしま~す!」の声掛け代理を依頼。
合図とともに態勢を低くしますが、ここはかなり低いな。
お見せできないが、ほぼ寝っ転がったお行儀の悪い態勢で通過ちう(苦笑)。
アジサイ咲く花スポット
新米子橋を過ぎた辺りからは「歴史区」に入ります。住宅街ながらも自然を感じるエリア。
ここ辺りの河岸では、梅雨の時期にはアジサイの花が楽しめるらしい。訪問は7月中旬なのでアジサイの季節もとっくに過ぎ。。。
おっと、アジサイがまだ結構残ってますね、これはラッキー!
こちらのアジサイは花期が長いのだろうか。
船から望む「国宝松江城天守」
米子川の端に到達して、左手へカーブ。
最後の難関「普門院橋」が見えてきます。
再び「おろしま~す!」の掛け声とともに低姿勢に。ここも結構低いですわ。
普門院橋を抜けると「そろそろ松江城天守撮影のベストポジションですよ」との船頭さんの案内。天守のお出ましを待ちつつ身構えます。
お~、国宝天守だ!だが正直ちょっと遠いな、う~む(苦笑)。
「松江藩家老長屋」城下町の風情を残す
宇賀橋を越えると船は左手に旋回し、大手前広場乗船場がある城山内堀川に入ります。
松江城主郭の石垣も見えてきており、いよいよ終盤。
城山内堀川沿いも風情ある景観が楽しめるエリアで、前方には木橋で復元された「北惣門橋」が見えます。
東側の堀沿いに見えてきたのは、松江市立松江歴史館の一部として公開されている「松江藩家老朝日家長屋」。
江戸時代、この辺りには4家の重臣屋敷がありました。朝日家長屋はその内の一つで、天保年間(1830~44年)に建てられた建物の一部が残ります。
大手前広場乗船場に到着
右手の石垣の上は二之丸下ノ段(外曲輪)。
二之丸下ノ段には米蔵が置かれていたので、物資運搬の船を接岸しやすくする、という目的も内堀東側の岸が石垣造りになっている理由の一つ。
大手前広場乗船場が見えてきました。
そして名残り惜しみながら、堀川めぐりの終了です。
とても楽しかった!
明治時代の初めにはまだこれだけ様々な城が残されていたんですね。
貴重な写真の数々に思わず釘付け!
「松江堀川 地ビール館」乗船場手前で一杯!
最後に、ふれあい広場乗船場と同じ敷地内にある「松江堀川 地ビール館」を紹介。
1階には松江の地ビールを提供する立ち飲みカウンターや土産物屋があります。2階はビアレストランです。
こちらの2階で、クラフトビールの飲み比べセット(1000円也)を頂きました。
違う種類をちょっとずつ飲み比べできるのは楽しい!それぞれ癖もなく飲みやすい感じでした。
最後にご紹介しましたが、実は最初に一杯(三杯?)やってからのほろ酔い乗船でした(苦笑)。
松江堀川 地ビール館
公式ページ
住所:島根県松江市黒田町509-1(GoogleMapで開く)
營業時間:物産館 地ビールカウンター 9:30~17:00 / ピアレストラン 11:00~15:00 (ラストオーダー14:30) *平日は当面団体予約のみの対応
堀川めぐり遊覧船の詳細情報、アクセスなど
堀川めぐり遊覧船の詳細情報・アクセス
堀川めぐり遊覧船の利用案内
■乗船場所:
・松江堀川ふれあい広場(黒田町) *ふれあい広場の定時便は各乗船場に立ち寄り。
・大手前広場(殿町) *大手前広場発の定時便は各乗船場に立ち寄り。
・カラコロ広場(京店) *カラコロ広場発の定時便はなく、ふれあい広場・大手前広場発の定時便が立寄るのでその際に乗船可。(乗船人数に定員があり、直近の立寄り定時便にご乗船できない場合もあり)
■定期便時刻表:3月1日~9月30日)9時~17時 / 10月1日~2月末日)9時~16時
*「ふれあい広場」からは20分~30分間隔で出航、「大手前広場」からは15分~20分間隔で出航
*カラコロ広場からの定期便はなく、最終出航時刻は16:45(10月1日~2月末は15:45)
■定員:10名~12名 *電動遊覧船は9名
■遊覧コース:コースの全長は約3.7km、遊覧時間は約50分。
■一日乗船券料金:大人1,600円、中人(中学・高校生)1,300円、小人(小学生)800円
*幼児(小学生未満)は小人料金の半額。ただし大人1名につき1名無料。
*現金のほか、各種キャッシュレス決済が利用可能。
*同日中は何度でも乗船可(イベント等特別運行は除く)。
堀川めぐり遊覧船
公式ページ
住所:島根県松江市黒田町507-1(GoogleMapで開く) *マップ場所は松江堀川ふれあい広場
アクセス:
電車
・JR山陰本線「松江駅」から「松江城」まで徒歩約30分(約2km)
・R山陰本線「松江駅」から「ぐるっと松江レイクラインバス」を利用の場合、大手前広場乗船場利用の場合は「大手前堀川遊覧船乗り場・歴史館前」が最寄り、ふれあい広場乗船場利用の場合は「堀川遊覧船乗場」が最寄り。
・一畑電車北松江線「松江しんじ湖温泉駅」から「松江城」まで徒歩約15分(約1.2km)
車)
・山陰自動車道「松江玉造IC」から松江城まで約5km(約10分)
・有料駐車場有り(大手前駐車場 67台 / 城山西駐車場 158台)
これは便利!県庁構内駐車場の閉庁日の開放について
県庁閉庁日(土曜・日曜・祝日)には、観光者向けに県庁構内の駐車場が開放されます。詳しくは島根県庁のページ でご確認下さい。
松江のランチは事前予約やクーポン利用で、並ばずお得に!!
松江市内の移動手段の紹介
ぐるっと松江レイクラインバス
市内の観光には、JR松江駅を起点する観光ループバス レイクラインが便利です。
観光ループバス レイクラインの公式ページ
路線バス
路線バスは市営バスと一畑バスがあります。
松江市交通局の公式ページ(市営バス)
一畑バスの公式ページ
空港連絡バス
出雲空港・松江市街間の空港連絡バスです。フライトの時間に合わせて運行されているので便利です。
松江一畑交通の空港連絡バスの案内ページ
国内旅行もHIS(エイチ・アイ・エス)がプラン豊富!
松江堀川めぐりに出かけてみませんか?
松江堀川めぐりですが、想像していたよりも楽しめました!
船頭さんの軽快なトーク、そして上がり下がりする屋根のアトラクション性。
そして何よりも、自然の川と見紛うばかりの 広大な堀には、松江城のスケールの大きさを感じました。
松江城の見学に出かけたら、せひ松江堀川めぐりも体験してみて下さい。お勧めです!
記事の訪問日:2024/7/21
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・一畑電車北松江線「松江しんじ湖温泉駅」から「松江城」まで徒歩約15分(約1.2km)
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