甲府盆地の端に位置している甲斐善光寺は、武田信玄が川中島の合戦の際、信濃善光寺の焼失を恐れ御本尊の阿弥陀如来などを移すために創建した寺院です。
山々を背に、国重要文化財に指定されている巨大な金堂や山門が建つ景観は実に圧巻!金堂は東日本最大級の木造建築物となります。
そんな甲斐善光寺の歴史を振り返りながら、参拝における見どころを紹介します。
目次
武田信玄が信濃善光寺の本尊を移すために創建
入口にそびえる建つ巨大な山門

甲府盆地の端にある「甲斐善光寺」は北側周囲が低山に囲まれており、自然豊かな立地に鎮座してます。
”定額山浄智院 善光寺”が正式名称の浄土宗の寺院です。
甲斐善光寺に到着するとまず圧倒されるのが、正面にあるこの巨大な山門!
入母屋造の楼門で五間三戸は正面の柱間が5つあり、うち中央3間が通路になっている五間三戸(ごけんさんこ)の造りです。
信濃善光寺の本尊を移すために武田信玄が開基

甲斐善光寺は武田信玄が開基した寺院です。
信玄は長らく越後の上杉謙信と川中島の合戦を繰り返していましたが、その折、信濃(現、長野県)の善光寺の焼失を恐れ、永禄元年(1558年)に御本尊の阿弥陀如来その他、諸仏・寺宝・大梵鐘などを甲斐に移したことに始まります。
信濃善光寺の37世住職・鏡空上人が本願主となり、当地に甲斐善光寺が開山されました。
特に鎌倉時代頃から善光寺信仰が盛んになりますが、源頼朝や北条家も厚く善光寺を信仰したこともあり、戦国武将にとっても善光寺は特別な存在だったようですね。
川中島の合戦について
戦国時代、甲斐・武田信玄と越後・上杉謙信の間で、信濃国の支配権を巡って繰り広げられた一連の戦闘。
主戦場は、犀川(さいがわ)と千曲川の合流点にある川中島の平野でした。
両雄は約12年間に渡り計5回の戦いを交えましたが、特に有名なのは永禄4年(1561年)の第4次合戦です。
第4次合戦は最も激しい戦いとなり、信玄の”啄木鳥(きつつき)戦法”を謙信が見破り、”車懸かり(くるまがかり)”で対抗したことで知られます。
この合戦では両軍ともに多くの死傷者を出し、決着がつかないまま終結しました。
この一連の戦いは、戦略・戦術がぶつかり合った戦国時代の名勝負として語り継がれています。
武田信玄(1521-1573年)
戦国時代を代表する甲斐(現、山梨県)の戦国大名で、「甲斐の虎」とも呼ばれました。本名は武田晴信(はるのぶ)で、出家後に「信玄」と称されました。
父・信虎を追放し、家督を継承。信濃(現、長野県)を巡り、越後の上杉謙信と川中島の戦いを繰り広げました。
”風林火山”の軍旗で知られ、騎馬隊を主力とする強力な軍隊を率い、領土拡大に尽力。領国経営にも優れ、分国法・甲州法度之次第(こうしゅうはっとのしだい)を制定し、信玄堤などの治水事業もおこなった。
晩年は織田信長・徳川家康との対立を深め、西上作戦の途上で病に倒れました。
江戸時代に再建された山門と金堂

武田信玄建立の伽藍は、残念ながら宝暦4年(1754年)の火災により焼失しています。これは門前の農家からの出火が原因だったとのこと。
現在の山門と本堂にあたる金堂は、寛政8年(1796年)に再建された江戸時代のものです。

内部には仏壇が置かれている
甲斐善光寺は江戸時代になると浄土宗甲州触頭(ふれがしら)を勤めます。
触頭は寺社奉行の命令を配下の寺院に伝達したり、寺院からの願書を上申したりする機関のこと。
また、徳川家の位牌所でもありました。

門の1階部分の両脇には仁王像を安置。
柵の隙間からのぞかせて頂きましたが、なかなかの強面の仁王像でした。
「金堂」東日本最大級の木造建築物に圧倒!

宝暦4年の火災後の現在の金堂の再建には、実に30年以上の歳月が費やされたそうです。
総高は27m、総奥行は49m。東日本の木造建築物としては最大級のもので、その巨大さには圧倒されますよ。金堂は山門とともに国重要文化財に指定されています。
建立当時は金堂や山門の他にも、三重塔・鐘楼、そして本坊三院十五庵の大伽藍を有していたとのこと。
それらが残っていないのは非常に残念ですね。

金堂の建築様式は、善光寺に特有の撞木造(しゅもくづくり)と呼ばれる形のもの。
これは上空から金堂を見下すと棟がT字型に見え、その形が鐘を叩く撞木に似ていることから、そう呼ばれるとのことだ。

善光寺の扁額の下辺りにあったのは武田氏の家紋である武田菱と、その右側には徳川の三つ葉葵の紋。
これは金堂各所で見られ、両家の歴史が刻まれていることが感じられます。

ところで信濃善光寺からやって来た御本尊が、最終的にどうなったか気になりませんか?
武田氏滅亡の後、善光寺の御本尊は織田氏・徳川氏・豊臣氏の間を転々とします。
しかし慶長3年(1598年)に、ようやく元の信濃善光寺に帰座することができました。
こちら甲斐善光寺では、新たに前立仏を御本尊と定め現在に至っています。
御本尊が元の信濃善光寺に戻されて、なによりでした!
金堂内で”鳴き龍”と”お戒壇廻り”を体験

拝観料を払って金堂内の見学ができますが、堂内は撮影NGだったため写真はありません。
堂内には大きな見どころが2つあります。
一つが「鳴き龍」。
お堂の天井の一部が吊り天井となっており、そこには巨大な2匹の龍が描かれています。その下で手を叩くと、叩いた音が共鳴して龍の鳴き声のように聞こえる、という不思議なものです。
これは確かに鳴いて聞こえました!私には”ヒューン”と聞こえましたが、皆さんにはどのように聞こえているのかな?
もう一つが、「お戒壇廻り(おかいだんめぐり)」が体験できること。
これは、堂の裏手から階下に下り、御本尊の真下にある暗闇の小部屋を壁づたいに巡るというもの。
そこにある鍵に触れると御本尊様と繋がった、ということになるんだそうだ。
そもそもは修行体験の一つらしいのですが、「マジですか?」と思うほど真っ暗な中を歩くもの。
出てきた時には光のある世界に有難みを感じたという、非日常感を感じた一時でした。
「鐘楼堂銅鐘」信濃から引き摺って来た!?

鐘楼堂に架かる「銅鐘」も、実は御本尊とともに信濃から移されたもの。
引きずって運ばれたため”引き摺りの鐘”と呼ばれています。それは重かったでしょうなあ。。。

鐘は鎌倉時代に鋳造された古いもので、正和2年(1313年)に信濃善光寺において補修された際の銘も残っているとのこと。
銅鐘は現在でもこの地で時を告げています。

鐘楼堂そばには「正一位王子稲荷大明神」があります。
境内に神社があるのは、江戸時代までの神仏習合の名残りなんでしょう。
「大仏像と宝物館」鎌倉時代の源頼朝像

境内には立派な大仏様もいらっしゃいましたが、特に説明書きも無く詳細は不詳でした。
境内には「宝物館」があり、金堂との共通拝観券で見学することができます。
源頼朝像・源実朝像・熊谷直実像などの鎌倉期の肖像彫刻など、貴重な展示物があるので、参拝の際には是非立寄ってみましょう。
タイトル通り、いまいちばん美しい日本の絶景写真が楽しめます!
その場所・その季節・その時間帯などの組合わせが創り出す絶景。
「なぜ、こんなところに?」に、と驚くような場所にある寺や神社の写真入り
の紹介を見れば、きっと実施に見に行きたくなるはず!
甲斐善光寺の基本情報・アクセス
甲斐善光寺
公式ページ
住所:山梨県甲府市善光寺3-36-1(GoogleMapで開く)
拝観受付時間:9:00~16:30
御開帳期間中:8:00~17:00
拝観料:大人 500円、小学生 250円
アクセス:
電車)
・JR中央線「甲府駅」よりタクシー12分、「酒折駅」より徒歩15分
・JR身延線「善光寺」より徒歩7分
車)
・中央自動車道「一宮御坂IC」より20分、「甲府南IC」より25分、「甲府昭和IC」より20分
・駐車場あり(通常乗用車用30台)
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甲斐善光寺に出かけてみませんか?
この地を代表する名将・武田信玄ゆかりの甲斐善光寺は、歴史ロマンを感じさせるスポットでした。
甲府市内の中心部からも比較的近いので、山梨観光の際には是非立寄ってみてください。
甲斐善光寺に参拝にでかけませんか?

記事の訪問日:2022/8/14




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