「杉山城跡」を山城歩き!見事に残る土塁や堀を体感【埼玉・嵐山町】

埼玉県嵐山町にある「杉山城跡」は、自然の地形を生かした戦国時代の山城跡です。

この城郭は土塁や堀などを巧みに利用した、戦国時代の城における実戦的な防御の技巧が分かりやすく綺麗に残っています。
そして歩きやすく、見やすいのが杉山城の最大のオススメポイント。

山城歩き初心者から、城巡り上級者まで幅広く楽しめる杉山城跡を紹介。

目次

『杉山城跡について』

杉山城跡の紹介

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

杉山城跡は戦国時代に築城された山城跡です。

城の建物などは残ってませんが、山の高低差を利用しつつ、戦国時代の城の様々な防御の技巧的な特徴が綺麗に残っています。
そのため、「築城の教科書」とも呼ばれ歴史ファンからの人気も高いです。

杉山城跡は2008年に「比企城館跡群」の一つとして国指定史跡に選定されました。
2017年には「続日本100名城」にも選定されています。

築城年代や城主について

そんな杉山城跡ですが、実は残っている文字資料は僅かで、築城年代や城主名など不明点が多かった。
しかし、2002年~2006年にかけて行われた発掘調査で色々分かってきたそうだ。

陶磁器など出土物の製作年代は、15世紀後半~16世紀前半に収まること。
また、山内上杉氏に関連する出土品の発見があったこと。

これらから、築城主は山内上杉氏の可能性が高いということがわかったそうだ。
同族・扇谷上杉氏との抗争があった戦国時代前期に築城され、短期間で廃城になったと見られる。

以前より小田原北条氏が築城した城ではないか、という定説がありましたがこれにより定説は覆りました。
未だに異説はあるようですが。。。

杉山城跡の縄張構成

埼玉県嵐山町「杉山城跡」
縄張図(杉山城跡のパンフレットより)

城跡を歩く前に、縄張構成を見ておきましょう。

本郭(ほんくるわ)を中心に、北・東・南の三方向を二の郭・三の郭の区画が取り囲む、「梯郭式(ていかくしき)」と呼ばれる配置の山城です。

本郭に向かい各郭を梯段状に登って行く形状になっており、郭の間は土塁や水の無い空堀で複雑に仕切られています。

『戦国時代の山城、杉山城跡を歩く』

まずは城郭入口へ

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

車での訪問でしたが、広い駐車場があるのがまずはありがたい。
最寄りの東武線の武蔵嵐山駅からの距離は約3km(徒歩約40分)です。

駐車場からは、地元の中学校の敷地を抜けて城跡入口に向かうのがちょっと変わってます。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

里山っぽい感じの周辺景色も、なかなかよろしい。

「大手口は坂虎口」

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

大手口手前に広がる「出郭(でぐるわ)」が、城郭跡の正面入口になります。
城郭跡の概要や見学の注意書きのボードあり。

それと、縄張図記載の立派なパンフレットが置いてあります。これは特に嬉しいですね。
簡易トイレの設置もありました。

それでもってこの出郭、現在は無防備なだだっ広い空間になっています。
ですが、当時は丁度この案内板の辺りに堀があり、簡単には直進できない造りだったそうですよ。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

直進すると正面入口にあたる「大手口」が現れます。

登り坂になっており、真っすぐ上がって行くと正面を土塁が塞ぎます。
当時はさらに塀があったと考えられています。

内部に向かい左手にカーブを切りながら進みます。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

カーブは大軍では進めないような細い通路になってますね。

そして右手の土塁からは、横矢でバッチリ狙われそうな感じ。
左側は逃げ場が無い、なんともイヤラシイ地形になってますな。

この先々も、常に上の方から横矢に狙われるような造りになっています。

「馬出郭で待ち伏せを受ける」

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

大手口を抜けて入城した先は、「外郭」のヘリにあたります。
直進すると空堀が口を開けて待ち受けているので、スピードを緩めざるをえません。

その空堀の向かいには「馬出郭(うまだしぐるわ)」と呼ばれる虎口を守るための小さな郭があり、矢の待ち伏せを受けることになります。

平常時には、切り落とし可能な木橋が掛かっていたと考えられます。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

空堀の中をちょっと歩いてみます。

南三の郭の方まで続いており、箇所によっては身を隠せるぐらいの深さがあります。
ここに潜んでの不意打ちも可能ですね!

空堀は侵入した敵から見ると堀ですが、城内側からすると目立ず移動できる通路の側面を持ちます。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」
外郭の全景

城内部に向かうためUターンすると、三の郭・二の郭方面につながる外郭に出ます。

正面を突破されても、中心部にそのまま勢いを付けて直進させないような工夫が施されていました。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

こちらは南三の郭側の側面ですが、ウネウネと折れ曲がった断面が続きます。
この屈曲には、敵の見通しを悪くさせる効果があります。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」
帯郭状土塁

外郭の先では「帯郭状土塁」と呼ばれる、堀に挟まれた帯状の道が現れます。

二の郭方面に向かうにつれ細い通路に押し込められ、城側の術中にはまってゆく感がハンパ無い。
攻め手からすると、いや~な感じの造りだ。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」
外郭の切岸

振り返ると「切岸(きりぎし)」 と呼ばれる、人工的に削られた断崖が見えます。
斜面からの侵入者への防御の仕掛けですね。

ビニールシートが掛けられおり、補修を要する箇所のようですね。

「南二の郭」 横矢が待ち構える

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

外郭の北端にあたり、右の本郭方面や左の南二の郭方面に向かう要所。

見通しの悪い、堀切と思われる土塁に挟まれた細い道を抜けることになる。
右手は深い切岸が控えているので、この道を抜けざるをえません。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

細い通路を、南二の郭虎口側からの守り手視線で見下ろしてみました。

ポコッと突き出た小さな郭(虎口受け)があり、陰になっている先が先程の通路部分です。
手ぐすね引いて潜み、侵入兵を待ち構えている場面が思い浮かびますねえ。

平常時はここには木橋が掛かっていた、と想定されます。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

同じく南二の郭から、今通って来た外郭側を望む。丸見えな感じですな。。。

写真右手側が正面の大手口方面。
侵入者は内部の見通しが効かない状況で、この通路に至るわけですね。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

こちらは「南二の郭」。

本郭手前に位置し、本郭手前の防御を行う要所ですね。
この西側には井戸がある郭があります。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

南二の郭から見た本郭側で、道なりに左に登った先が本郭。

杉山城跡は要所の高木が伐採されており、遺構を見やすい。
コース路面も手入れが行き届いており、抜群に見学しやすいのが素晴らしい点です!

「本郭」 梯段状の縄張を見晴らす

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

階段を上った先の、本郭の東側虎口。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

こちらが城郭の中心部「本郭」の全景。
北側に残された木々が色づいており、季節感を感じられます。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

入城してきた方角を見下ろすと、梯段状に上がって行く城郭の構造がわかりやすい。
様々な箇所に兵を潜ませることができそうですなあ。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

本郭の北側には、「史跡杉山城跡の石碑」と小さな祠があります。
石碑の背後は一段高く盛土されてるので、その上に櫓的な建物があったのでしょうね。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

本郭の北東側のヘリの切岸。
結構な高さの傾斜があります。

「井戸郭と井戸跡」 枯れない井戸

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

本郭と二の郭に挟まれるような配置に、「井戸郭」と呼ばれる小さな郭がありました。

その名の通り、郭後方の水場を守る役割です。
籠城戦の際には、水源は重要ですから!

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

こちらが井戸の跡。
石で塞がれているにも関わらず、今も枯れずに水がしみ出てますよ!

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

井戸郭周囲の本郭・二の郭との間にある堀切も印象的。
ここも普段は木橋で行き来していた箇所でしょう。

「東二の郭・東三の郭」 自然の地形を使用

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

本郭の東側尾根に向かって緩やかに下る「東二の郭」。
この辺りは元々の自然の地形を生かした造りになっているそう。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

東二の郭の先にある「東三の郭」。
こちらも特徴的な郭の形が良く残っていますね。

「北二の郭・北三の郭」 杉山が残る

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

本郭裏手にあたる「北の郭」は山のヘリにあたり(左側)、城名の通り杉山状態だ。
元々の山城の風情を最も残す箇所なんでしょうね、きっと。

傾斜が急で木々も邪魔なんで、谷側からの侵攻は難しそうです。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

この辺りが「北二の郭」ですかね。

山麓に向かって「北三の郭」や虎口もあるのですが、この辺はあまり整備されておらず遺構の形が分かりづらいですね。

山城歩きの雰囲気を味わうには楽しいかと。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

木々の間からの北側の眺望。
城郭の最高部の高さは98.6mになります。

いにしえの昔も、このへんから周囲の状況を偵察してたんだろうな。

御城印・城カード・続日本100名城スタンプの情報

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

登城記念に御城印を購入。

デザインは杉山城の城主だった、山内上杉氏の家紋「竹に雀」を中央に配置したもの。
御城印の販売は東武線「武蔵嵐山駅」西口にある「嵐山町ステーションプラザ嵐なび」で購入できます。

埼玉県嵐山町「杉山城跡」

あと、通り掛かりの嵐山町役場で無料配布の城カードを頂きました。
裏面には杉山城の概要説明がもありなかなか良い。

ちなみに訪問日は日曜日で窓口は開いてなかったのですが、事務所の方にお願いしたら探して頂けました。
ありがとうございました!

(城カード配布場所)
配布場所:嵐山町役場 嵐山町教育委員会事務局窓口
住所:埼玉県比企郡嵐山町大字杉山1030番地1(GoogleMapで開く
配布時間:8:30~17:15
休館日:土曜日・日曜日・祝日・年末年始

(続日本100名城スタンプラリー)
上記、嵐山町役場庁舎の玄関ホールにスタンプが設置されています。
対応時間:8:30~17:15
*土・日・祝日もスタンプ設置対応されています。連絡先:0493-62-0824

アクセス

基本情報・アクセス

杉山城跡公式ページ
住所:埼玉県比企郡嵐山町杉山513ほか(GoogleMapで開く
電車)
・東武東上線「武蔵嵐山駅」から約2.9km(徒歩約40分)
・東武東上線「小川町駅」から小川パークヒル線バス乗車、「小川パークヒル」下車、徒歩約1.5km (約20分)
車)
・関越自動車道「嵐山小川IC」から 約2.6km (約5分)
・駐車場あり

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埼玉県嵐山町「杉山城跡」

杉山城跡はいかがでしたか?

杉山城跡は、戦国時代の縄張を構成する郭や土塁・堀などが分かりやすい形で構成されています。
そのため、初心者でも上級者でも楽しめる城郭跡ですよ。

また、この城郭跡が素晴らしいのは、敷地内が良く整備されており見やすく歩きやすい点。
これはボランティアの方々を中心に、地元の中学校の生徒さんも参加した保存活動の賜物なんですよ。

そんな素敵な杉山城跡を歩いてみませんか?

記事の訪問日:2021/12/14


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